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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
北米編
127/207

ゴーレムと戦ったら

https://www.youtube.com/watch?v=4PQ6oeaQ9Y4

advance-on-v2-

MD215年 9/19 13:24


 室内に赤いサイレンが灯される。

 それは甲高い不快音と共にベルとアレーラ、そして背負われているイツカーを三秒ほどの間隔を空けながら赤く照らし出した。

 その首筋に伝う、少量の冷や汗と共に。


「べ、べべべべ、ベルさん……!」


「落ち着いてアレーラさん、通路への道は作れます?」


「や、やってみます!」


 ベルは床からせり上がってくる警備用ロボット達を確認すると、それらが部屋へと上がりきる前にアレーラへと駆け寄る。

 そして慌てふためくアレーラの両肩をしっかりを捕まえ、目と目を合わせながらしっかりとした眼差しでアレーラへと確認した。

 アレーラはそのベルの眼差しに恐慌状態から立ち直ると、自らの背後にあるシャッターへと杖を向けると呪文の詠唱を開始する。


「イツカーさん、貴方戦闘はできまして?」


「時間、稼ぎ、いける」


「具体的には?」


「法魔術、壁、作る」


「…………! 貴方、法魔術が使えるんですの!? 本当に!?」


 イツカーの頷きに、ベルの首筋から流れる冷や汗が少し減った。

 法魔術。

 術者が指定した範囲内に術者が法を敷き、その範囲内で禁を犯したものに罰を与える魔術。

 およそ人間には使用できない、高位の魔術、魔法の領域に触れるそれをイツカーは使えるというのだ。


「本当、だが全部、止められない」


「……何体までなら止められますの」


「──8体」


 数字を聞いた途端、ベルは跳んだ。

 正方形の形をした室内、その右側の中央部分でアレーラはシャッターを溶断する為の詠唱を行っている。

 イツカーはアレーラの背中。


「やはり等間隔で二体ずつ競りあがってきていますわね……となれば、まずは近場の───!」


 そして床からせり上がってくるゴーレム達は二対ずつ、10個の窪みから現れる。

 天井近くまで体を捻りながら飛び上がって確認をすると、ベルは右手と左手両方に集めていた白の霊力を右手から握りつぶし、解き放った。


「My faith is stronger than fang, claw, or mindless hunger!」

( 我が信仰は、牙や爪や意思無き飢えよりも強い!)


 霊力は握り潰した途端、その輝きでベルの肉体を包み込む。

 そしてベルはそのまま天井に足を付けると、そのまま下へ──アレーラの左側へ向かって跳躍した。


「(今確認しただけでもおよそ20体……一度に殺すのは至難!)」


 床から競りあがりつつあった窪みの中に、ベルは愛剣を抜いたまま突撃した。


「一つ!」


 窪みの中へと着地する間際に、ゴーレムを一体頭上から刺し貫きながら。

 ……ゆっくりと、ゴーレムが前のめりに倒れていく。


「敵影を────」


 その奥側に居た一体が、胴体に付けられた巨大なレンズを赤く輝かせながら右腕をあげた。


「て、敵──影を、をををををぉぉぉ──」


「When in double, kill 'em twice"」

(怪しかったら、二度殺せ)


 だがその赤い輝きも直ぐに消え、競りあがる昇降機の中は再び暗闇へと戻る。

 ベルがレイピアをレンズから引き抜くと、頭上へ顔を向け、再び跳躍する。


「……一呼吸で倒せるのは二体が限界ですわね」


 2メートルほど跳躍し、ベルは再び展示場へと戻った。

 今の戦闘に要した所要時間はおよそ5秒ほどだろうか、だがその五秒間にゴーレム達は順調に展示場へと上ってきていた。

 間に合わない。


「それに、入った時から感じていましたがここは霊力が薄い……魔術は使えて後二度といった所ですわね」


 この思考に、二秒。

 ベルは逆側へと駆けた、自分に出来る現状で最高の努力をするのだと最後に思いながら。


「はぁぁ──!」


 頭部が見えつつあった窪みはベルは勢いを付けたまま滑り込んだ。

 突然自らの股下へ現れた女に、ゴーレムは一瞬判断を遅らせる。

 

「三つ!」


 そのままベルは真上へレイピアを突き上げ、胴体のレンズを叩き割った。

 

「残存17機、脅威レベル上昇、拘束から制圧へ移行します」


 三機目のゴーレムが倒されると、その真横に立っていたゴーレムが掠れた音声を奏でる。

 ……四機目は、そのまま腕を振り上げた状態で力尽きた。


「……四つ!」


 そして、全てのゴーレムが展示場へと姿を現した。


「アレーラ、敵、来る」


「わ、分かってます! 霊力が薄くて、焼ききれない……!!」


 一斉に現れたゴーレム達のレンズが輝く。

 16個の巨大な水晶は、その紅い瞳でベルとイツカー、そして退路を作り出そうとするアレーラを映し出す。


「セーフティロック解除」


「────早く、早く!」


 アレーラは杖により一層の赤の霊力を籠め、防護シャッターを焼ききろうとするが……。

 奮闘むなしく、シャッターはただ赤くなるだけで一向に焼ききれる様子は無い。


「電磁ネット、投射」


 ゴーレムは一斉に右腕をアレーラへと向け、その──ロックマンの様な──腕の先端から光が放出される。

 一向に焼ききれる気配が無いシャッターにアレーラは焦りながら、ふと後ろを振り返った時にそれを見てしまう。

 アレーラの動きが固まった。


「ひっ───」

 

「我、法を編む者、敵意はその身へ還る!」


 光と共に、電気を纏った小さな弾が発射される。

 それはアレーラへと向かう道中に徐々に解け、電流を纏った鉄製の網へと変化しアレーラの退路を完全に消失させた。

 左右上下、あらゆる場所からそれは迫った。


「させませんわ!」


 ベルは咄嗟に、左手に握ったままだった霊力を解き、紐の様にネットへと振るった。

 それは二つほどのネットに絡みつく。

 

「たぁーーっ!」


 ベルは放たれたネットの勢いを利用し、ハンマー投げの様に体を半回転させるとゴーレム達へ向けて掴んでいたネットを霊力の紐ごと放った。


「投──トウ──と……」


 放たれたネットは、数体のゴーレムへと絡みつきダメージを与える。

 だが。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「ぐぅ……、熱い……」


 ベルは全ての網を掴みきれず、残った網はアレーラをあっという間に絡めとった。

 身を焼くような電流にアレーラは悲鳴を上げながら床へと倒れこむ。

 イツカーもまた涼しげな顔をしてはいるが、口数がいつもよりも減った事で若干ダメージを受けているようにも見えた。


「くっ……アレーラ、ごめんなさい!」


 アレーラの悲鳴に、ベルは唇を噛み締め両の手に力を籠めながら近場のゴーレムへと走り出した。

 正方形の形をした部屋で、アレーラ達は右側中央の壁際に。

 ベルはその下方の壁際に真っ直ぐに駆けだした。

 先ほど投げ返したネットによって自らの反対側に居るゴーレム達は動きを止めている。


「てぇっ!」


 そして、ベルはアレーラの方を向いているそのゴーレムへとレイピアを今日一番の速度で突き出した。

 ずんぐりむっくりとした、一見するとトトロの様なそのゴーレムは腹部に備えられたレンズを……。


「う、そ……」


 破壊されなかった。

 今日一番に放たれた突きは、ゴーレムのレンズに触れる前にその腕を貫いていた。

 ゴーレムは突きに対して、自らの腕を生贄に捧げる事によって効果的に防いだのだ。

 ベルは目を見開き……急いで小剣を抜こうとしたがゴーレムはそれを許さず、勢い良く小剣が刺さったまま腕を壁へと振り払った。


「ごはぁっ!」


「対象の戦闘不能を確認」


 小剣を手放すことも出来ず、ベルは勢い良く壁へと叩き付けられた。

 ベルはその着ている鎧の見た目通り、機動性と美しさのみを重視している。

 その為打撃や切り傷のダメージは直接彼女に響いた。

 壁に叩きつけられた一瞬で、彼女の肉体は戦闘の継続が不可能となった。


「ぅ……つ、つよい……」


 僅かに呻くベルに対して、ゴーレムはゆっくりと近づくとその頭部を掴み上げる。


「外部との連絡不能、緊急時の命令を捜索中……………………発見」


 ゴーレムのレンズが、赤から緑、そして青へと輝きの変化を見せる。

 その光景に頭部を掴み上げられたベルは血を流しながら、霞む眼で不思議そうに見下ろす。

 だが次の瞬間、その不思議な色合いは高速で通り過ぎ、続いて地面に叩き付けられる衝撃が彼女の脳を貫いた。


「っ…………!」


「外部との連絡が不能の場合、暴徒、狂信者、その他反社会的行動を取る対象は焼却処分」


 そして、ゴーレム達は再び右腕を輝かせ始める。


「尚、この行為によって生じる不利益に関して当リープリヒ兵器産業は一切の責任を負わない事とする」


 ゴーレム達は、そんな責任逃れの単語を発し終えると右腕から光を放った。

 今度は高圧電流を纏ったネットではない。

 制圧の為の武装ではなく、殺人を犯す為の兵器。


「あ、れ……ら」


 ベルは弱々しく目を開き、近くに倒れているアレーラを見た。

 アレーラは体から白い煙を出しながら気を失い、イツカーもまたぐったりとしている。


「あでる、さん……」


 ゴーレム達から放たれる炎が三人を包む寸前、ベルは昔の事を思い出していた。

 あの時もそうだった。

 味方を逃がす為に自らが囮となり、そして敗れた。

 今回もまた……そんな自らの不甲斐無さにベルは泣いた。

 そして、男の名を呼んだ。


「だぁぁああありゃあああああああああああ!!」


 紅蓮の炎が、一つの小さな盾に弾かれる。

 その盾は、儚い霧の様なものだったが……それは確かに彼女達を助けた。


「遅れてすまん!!」


 展示場に、赤いパトランプ以外の光が差し込んだ。

 それはアレーラが焼ききろうとしていたシャッターが強引に切り裂かれたことによって生じた光であり……。

 その原因を作った男は、先ほどベルが名を呼んだ男だった。


「アデル・レスディン! 故あって助太刀するぜ!!」



今年二回目の投稿なので初投稿です


二度裂き (赤/白)


インスタント


クリーチャー一体を対象とする、それはターン終了時まで二段攻撃を得る

(二段攻撃を持っているクリーチャーは先制攻撃を行った後、通常の攻撃も行う)

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