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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
北米編
124/207

アメリガについて学習したら

MD215年 9/13 13:27


「ナる程、つまり貴方達二人が外海から来た者達だったのですネ」


 天使はその背中の羽を器用に畳みながら、壁に寄りかかり視線をアレーラへ向けた。

 アレーラは天使の視線に歯切れの悪い笑みを浮かべながら、視線を真横にずらす。


「あははは……」


「ソれにしても、どうして外海から来た者達は皆不法侵入したがるのでしょうかネ?」


「た、確かに不法侵入ではありますけれど……これは色々な手違いとか勘違いとかが重なった結果ですわーーー!」


 アレーラがずらした視線の先には、先ほどまでアレーラとマイクが吊られていた様な形でベルが吊り上げられていた。


「降ろしてくださいましーーーー!」


──────────────────────────────


 10分後……ベルは無事侵入者除けの罠から降ろされ、アレーラとベルは数時間ぶりの再会を果たした。


「全く、酷い目にあいましたわ」


「すみませんベルさん、私のせいで……」


「いえ、貴女が無事で何よりでしたわ。 でも今後はああいった行動は控えてくださいね、危険ですし」


 椅子に座り、ぷんすかと怒るベルにアレーラは椅子から立ち上がると深々と頭を下げる。

 だがベルは怒った表情を直ぐに柔らかい笑みへと変え、アレーラの肩に手を置き優しく諭した。

 ベルのその言葉にアレーラもまた同じく笑みを返す。


「感動の再会という奴だナ」


 そんな微笑ましい二人に、天使はわざとらしく手を打ち鳴らした。


「ジェフ……流石にそれは性格悪いんじゃない?」


「事実を述べたまでダ、それに余計な者も連れてきていル……協定違反を許すわけにはいかなイ」


「協定違反?」


 アレーラは怪訝な顔で、壁に寄りかかる天使──ジェフにそう尋ねた

 ジェフはアレーラの質問にイツカーを顎で指し示す事で答えた。


「イツカーさんが、どうかしたんですか?」


「そうか、君達外海から来たんだもんねぇ。 いいよ、僕が説明する」


「……望まぬとはいえ客は客、私は飲み物でも入れてこよウ」


「さ、二人とも立ちながらってのもなんだし座りなよ。 イツカーは……テーブルの上にでも置こうか」


 マイクは感慨深そうに言うと、ソファの上で足を組みアレーラとベルへ着席を促す。

 そしてベルへ背中に背負うイツカーを机の上に置くように指示をすると膝の上に手を乗せマイクは少し間を置いてから話し始めた。


「まず……初歩的なことから話そう、ここはアメリガという国だ。 国っていうのはー……まぁ街が沢山集まったみたいなもの?」


「街が沢山……!? す、凄いですね」


「なのかな? 僕は生まれた頃からここに住んでるから正直実感は無いんだよねぇ。 んでアメリガという国はかなり広い、なので──」


「イツカー、マイク、モリー」


「の三人の頭領がそれぞれの地域を治めているってわけだ、大事な決定とかをする時は基本的にこの3人で話し合いをする」


 街が沢山という言葉にアレーラは驚き、ベルも感心した様子を見せる。

 

「アメリガは広いって……そんなに広いんですか?」


「あぁ、かなり広大だ。 そうだな……あの壁に掛かってる古ぼけた地図が見えるかい? あそこに映ってるのが全部アメリガなんだ」


「へー……あら、でもこの位の大きさなら私達の居たサツホロも──」


「ベル、縮尺、違う」


「え?」


 壁に掛かっていた色褪せた地図を見て、マイクは自慢げに国の広さについて説明をする。

 だが以前に札幌や東京の地図を見ていたベルは意地を張り、大したことは無いと言おうとする。

 しかしイツカーはベルの言葉を遮り、今見ていた地図の隣にある世界地図を見るように言った。


「何ですの、この地図?」


「それ、世界地図、アメリガは右側」


「右側? 右側って……これ全部ですの?」


「肯定、ベル達の国、真ん中の小さいの」


「え? 小さいのって……これですの? え? マジですの?」


 ベルがイツカーの言う通りに目線を動かすと、古ぼけた世界地図があり地図の右側にはアメリガと書かれていた。

 そしてアメリガから左に行くと中国大陸の手前に、日本はあった。

 ベルは何度も何度も目線を往復させ、信じられないといった表情を浮かべる。


「真実、アメリガ、でかい」


「だから頭領も三人必要ってわけさ、まずは僕が北を治めている、って言っても基本やる事はないんだけどね」


「イツカー、中間、統治」


「ソして南がモリー……狼男達が支配する地域です、皆さんヒーコーが入りましたヨ」


「あっ……ジェフさん」


 不意に聞こえた扉が開く音と声に、部屋に居た全員が地図から部屋の入り口へと顔を向ける。

 全員の視線の先にはその天使にはおよそ不釣合いなトレイとその上に載ったコーヒーカップ物を持ち、割烹着を着た天使が立っていた。

 

「私の事は良イ、話を進めてもらって構わン」


 相変わらずぶっきら棒な態度でジェフはそう言うと、部屋の中央にトレイを置き一人一人が座る椅子の前にコーヒーカップを置いていく。


「あの、これは……?」


「ヒーコーだ、苦いゾ」


「ひ、ひーこー……? それに苦いんですか? え、飲み物、なんですよね?」


「そっか、君達は飲むの初めてか、この苦味が癖になるんだよヒーコーは」


 コーヒーカップに入った真っ黒な液体に、アレーラはカップを両手に持った状態で硬直する。

 そんなアレーラにマイクは笑いながら自らのカップに入った液体を口につけ、飲み始める。


「……こほん、それでその三人が治めているのは分かりましたけれど地域の特徴とかはあるんですの?」


 アレーラがカップに口をつけ、その味の苦さに目を×印にしているのを見たベルは咳払いをし話題を切り替えた。


「特徴、全地域、ある」


「エぇ、まず今貴方達が居るここ北アメリガですが……人間と天使以外はほぼ魔族は存在しませン」


「うぅ~……そ、そういえば確かにここに来てからイツカーさん以外の魔族を見てないですね」


 ヒーコーの苦味に苦しみながら、アレーラはカップを机に置きジェフの言葉に頷いた。


「居ない訳じゃないんだけどね、まぁ住み分けって奴さ。 逆に中央アメリガなんかは人間と魔族が大体半々で生活してるんだ」


「へー……それじゃあもしかして、南の方は魔族だけが住んでいるのかしら」


「正解、加点、100点」


「やりましたわ!」


「特段意味のない加点ですがネ、アメリガの各地域における特徴は以上です。 他にご質問ハ?」


 ジェフはかつてアメリカ大統領が過ごした執務室の入り口に陣取ったまま、そう二人に尋ねた。

 ベルとアレーラを見るジェフの目は、何処となく速くこの厄介ごとを終わらせたいという雰囲気を醸し出していた。


「んー、そうですわね……それでは最後に一つ聞きたいのですけれど、先ほど言っていた協定違反というのは何なのです?」


「あぁ、それか……簡単な事さ、アメリガは広いってさっき言っただろ? だから統領が3人で各地域──僕らは州って読んでる──を管理してるわけだけど」


「頭領はその州の代表でス、その頭領が管理すべき地域以外に肩入れをした場合本来管理している州の者達が不利益を被ります」


「だから、頭領、他所に関与しない」


「成る程……よく考えられていますのね」


 ベルの質問にイツカー、ジェフ、マイクは一瞬顔を見合わせると交互に答え始める。

 それはアメリカという広大な土地を円滑に管理、運営するために作られた、この時代にしては合理的なシステムだった。

 ベルは感心したように頷く。


「ま、これを考えたのは僕らじゃなくて大──」


「マイク」


 続けて何事かを言おうとしたマイクに、ジェフは即座にそれを咎めた。

 まるでその名を軽々しく出してはならないとでも言いたげに。


「……ごめん」


「サ、もう良いでしょウ。 頭領はこれから仕事がある身、中央アメリガの頭領共々お引取りヲ、そして願わくば速やかにこの地からの退去を願います異邦人」


「ジェフ、そんな言い方は──」


「いえ、構いませんわ。 元々あんな形で侵入してきた私達相手にむしろ色々と説明をしていただいて、感謝していますわ」


 ジェフはマイクに鋭い視線を投げかけた後、横にある扉を魔術でそっと開いた。

 そして左手で入り口を示しながら、二人と一つに退出を指示した。

 言葉こそ優しげではあったが、それは排他的な温度を含んでいる。

 だがベルはそんな態度にも怒らず立ち上がり、身支度を整え始めた。


「さ、行きますわよアレーラさん」


「あ、は、はい! すみません、飲み物ありがとうございました!」


「撤退、再見、また会おう」


 ベルは手馴れた手つきでイツカーを背中に背負いなおし、アレーラと共に入り口近くまで歩いていく。

 そして二人は部屋から出ると、部屋の中に居る二人に向かって頭を下げた。

 それを見たマイクは二人へ大きく手を振るが、ジェフは何も言わずに部屋の戸を閉め切った。

 ……乾いた音が、白い空間に響いた。


「何か、ジェフさん怒ってましたね」


「まぁ私達が来た経緯とかを考えれば仕方ないと思いますわよ、それに……」


「イツカー、悪くない、偶然」


「イツカーさんを連れてきたのも悪手だったみたいですしね」


「もう少し仲良くなりたかったんですけど……残念です」


 締め切られた扉を背にし、二人は一方通行の通路を歩いていく。

 大理石で出来た通路は二人の靴の音を反響させながら、二人は小声で話し続けた。


「次の機会がありますわよ、とりあえず今日はどこかで宿を見つけましょうか」


「そうですね、また野宿は辛いですからね……もうあんな怪物に襲われるのは……」


 宿という単語でアレーラは野宿を思い出し、徐々に目から色が失われていく。

 

「この間の出来事が相当聞いてますわね貴女……でも今日はちゃんとした宿に泊まれますわよ! あんな怪物にはもう襲われませんわ!」


「そ、そうですね! それじゃあ宿に泊まりにいきましょう!」


 二日間のアメリカ野宿の旅は、アレーラの心に少しだけ傷を残した。

 だが今日はそんな出来事の起こらないと彼女達は希望を持ってホワイトハウスから外に出た。

 そして彼女達は宿に着いてから気づいた。

 この国のお金を持っていないと。




ぎりぎり月曜日なので初投稿です

ね、寝るのだ・・・

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