頭領の一人と出会ったら
https://www.youtube.com/watch?v=gLr_EHgY9jo
mozell バンバード
MD215年 9/13 11:26
「へへっ」
金髪の青年は、そう鼻を鳴らすと鼻の下を指で擦った。
そしてゆっくりと右手をアレーラへと差し出した。
「僕はマイク、マイク・バーンズ! よろしく!」
マイクと名乗った男はアレーラへと笑いかけると、差し出した右手を更に前へと出した。
「え、あの……」
「あぁ、もしかしてあれ? 僕の事怪しんでる?」
だが手を差し出されると、アレーラはゆっくりと後ずさりをし構えた杖を下ろさない。
マイクはそんなアレーラに少し困惑した表情を浮かべながら更に問いかけると、アレーラはゆっくりと首を縦に振った。
「いやーそれは参ったな、僕としてはむしろ君の方が怪しいんだけど……君、ここで何してたんだい?」
「あ、その……それは」
マイクの問いにアレーラはうろたえる。
確かに彼女はこの神殿の様な場所には不釣合いだった。
三日間の旅で当初来ていたピンク色が残っていた服も土に塗れ、何処と無く薄汚れて見える。
更には背中に移動用の荷物を背負い、魔術を修めた者が用いる杖を手にしている。
マイクがこの施設の関係者であるのなら、確かに彼の言い分は正しい。
「う~ん……もしかして、悪人?」
「あ、いや、違うんです! 私別に怪しい者とかじゃなくて──」
「ははっ、ごめんごめん! 大方間違ってここに入り込んだんだろ? 今はここの警備は手緩くしてるからね」
「は、はい! そうなんです! その、すみません!」
疑いの眼差しを向けられ、アレーラは慌てるがマイクは直ぐに謝罪する。
そして再び右手をアレーラの前へと差し出す。
「改めて自己紹介だ、僕はマイク・バーンズ。 このアメリガで頭領をやらせてもらってる」
「私、アレーラ・クシスと言います! 先ほどはすみませんでした……って頭領、ですか?」
「そう、頭領。 あれ、もしかして僕のファンだった? サイン要る?」
「あ、いえ……すみません、頭領っていうのが実は良く分からなくて」
「…………そっか、いやそっかー……ちょっとショック」
「す、すみません!」
アレーラはマイクの右手を自らの手で握り返す。
そして彼の自己紹介を聞き、きょとんとした顔をする。
頭領、という言葉はアレーラがこの北米大陸に来てから初めて聞いた単語だった。
彼女はマイクにそう告げるとマイクは悲しげな顔をし、アレーラは慌てて謝罪する。
「いや、いいんだ……僕もまだまだ活躍が足りないってことかぁ……はぁ……」
「な、何かすみません」
へこむマイクにアレーラは再び頭を下げる。
「何て落ち込んでてもしょうがないか! よし、アレーラ、君の名前は覚えたぞ!」
「え、あ、は、はぁ……ありがとう、ございます?」
「それじゃあ君を外まで案内しよう、それとも奥まで見ていくかい? その大天使像が奥にはまだ沢山あるんだ」
だがマイクは直ぐに復活すると、少年の様な笑顔を浮かべながらアレーラの後ろにある像へと指を向け、問いかけた。
アレーラは先ほどまで見ていた思い出すのも憚られる様な姿の像を思い出し、直ぐに顔を真横に振った。
「は、速く外まで案内してください!」
「はは、そんなに怯えなくても良いと思うんだけど……まぁあれ気持ち悪いもんね、OK! 直ぐに外まで案内するよ!」
マイクはそう笑い、彼女の手を取り歩き始めた。
アレーラは急に手を握られたときは驚いたが、何となくそれが嬉しかった。
そうして二人は小走りしながら互いの事について少しずつ話していった。
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「で────道に迷いに迷った挙句、侵入者捕縛の罠に掛かったト」
「へへっ! その通り!」
「正直情けなさ過ぎて見ていられませン、頭領を辞職なさった方がよろしいのでハ?」
「相変わらず辛辣だね!」
「よ、良く分からないですけど助けてください~~」
二時間後、アレーラとマイクは神殿の中で逆さまに吊り上げられていた。
蓑虫のように揺れる二人を、一人の天使が冷徹な表情で見上げる。
「それにそちらの女性は何なのでス? 幾ら警備を緩くしたと言えども簡単に入り込めるような警備ではないはずでス、偶然迷い込んだ等ト──」
「ジェフ、糾弾したい気持ちは分かるけどまずは降ろしてくれないか?」
「では本日の執務をきちんとこなすと約束していただけますネ?」
「あー……そいつは」
「出来ないのなら少し頭を冷やしてもらう必要がありまス」
天使は冷ややかな目でアレーラを見る。
その目は何処か家畜や虫を見るような目に見えた。
そんな目線を遮るように逆さまに吊られたマイクは天使へと声を掛け、降ろすように頼むが天使は逆にマイクへと条件を突きつける。
マイクは天使の条件に途端に目を泳がせ始める。
「な、何で答えを渋るんですかマイクさん!?」
「だってベスボル三日も禁止して書類仕事しろってんだよ!? 僕には耐えられない!」
「このまま頭に血が上って死んじゃうよりはマシですよ! 私も手伝いますから!」
「ほんとに!? OK! 直ぐに降ろしてくれジェフ!」
「アー……どうしてこんな男が頭領の座に着いてしまったのカ……」
天使の条件を身を盛大に捩らせながら拒否るマイクに、アレーラもまた身を振り子のように横に動かしながら説得する。
するとマイクは即座に頷き、ジェフと呼ばれた天使に自分達を降ろすように言う。
そんな頭領を見てジェフは額に右手をやり、頭を抱えながら左手に持つ槍で二人の足を捕まえていた縄を断ち切る。
「アウチッ!」
「ったぁ…………!」
「では早速仕事に取り掛かってもらいまス、そこの女を職務に参加させるのは気が進みませんのデ……先に尋問からですガ」
「う、うぅ……が、頑張ります!」
「尋問は僕もフォローしよう! だから仕事は君に殆ど任せるよ!」
「えぇー!?」
勢い良く地面に落下した二人は、そのまま顔から着地し顔を擦りながら起き上がる。
そんな二人をジェフは見下しながら、何処と無くカタコトに聞こえる言葉遣いで二人に仕事の指示を与えていくのだった。
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一方その頃……。
「え、知ってますの!? この田舎っぽいけど村では3番目か2番目くらいに可愛くてでもどことなーく間の抜けてそうで実際の所もそうだけど根っこの部分はとてもいい子なこのアレーラを!?」
「ベル、台詞、長い」
「あ、あぁ……そんな感じの格好の子ならこの先の……ほら、あそこに入っていったよ。 でも──」
「おーっほっほっほっほ! やはり天は私に味方しましたわ! 感謝しますわ名も知れぬお方! 私はベル・バスティーユ! それでは失礼!」
「え、あ、あぁ……? え?」
ベルは街行く人に声を掛け、中々に上手な似顔絵を見せていた。
するとある商店の店主らしき男が遠くに見える白い建物を指し示した。
ベルは即座に頭を下げながら高笑いをし、走り去っていく。
「行っちまったよ……あそこ、頭領の屋敷だから勝手には入れないと思うんだがなぁ」
即座に走り去っていったベルに店主は左の頬を指で掻きながら、そう呟いた。
店主には元気に走り去っていくピンク色の鎧と、背中に括り付けられた生首がうっすらと見えていた。
ざくざくアクターズの水着イベントが始まったので初投稿です。
ヘルちんいいゾ~これ




