アメリカの首都に到着したら
https://www.youtube.com/watch?v=4CeCxWPI1JY
デモンベイン~街~
MD215年 9/10 19:08
「な、ななななななんですの貴方は毎回!?」
「ひえぇぇぇぇぇぇぇっ! ぽまーどぽまーど!!」
「ポマード、古い、効かない」
六つの太陽は沈み、世界は夜の帳に包まれつつある頃。
野宿を始めた二人は突如現れた喋る生首に怯えていた。
アレーラは魔除けの呪文を唱えるが、生首は平気な顔をして自身には聞かないと言い放つ。
「トレンド、いあいあ、世界の常識」
「そ、そんなことはどうでも良いですわ! 牢屋で初めて出たときからずっと付きまとって……何なんですの貴方!?」
「私? イツカー──」
「名前ではなくて! 一体どういう理由で私達を尾けてますの!?」
「お前達、守る、仕事」
「…………仕事?」
ベルは怯えながらもアレーラの前に立つと果敢に言葉を発し、怖気を吹き飛ばしながら生首へと問う。
だが生首は要領を得ない言葉を返すばかりで二人は困惑する。
「仕事って、どういうことですか? 誰かに頼まれて……その、私達を尾行してるんですか?」
「違う、外交、仕事」
「全く要領を得ませんわね……」
「すまない、会話、苦手」
全く会話がかみ合わず、イツカーも申し訳なさそうな顔をする。
するとアレーラは恐る恐るだがゆっくりとイツカーへと近づき、しゃがみこむ。
「よ、良く分からないですけど……襲ってくるわけじゃ、ないんですよね?」
「イツカー、お前達、守る」
アレーラの問いかけに、イツカーは顔を少しだけ上下させ頷く。
「あ、アレーラ……貴女もしかしてその生首……」
「連れていきませんか? 守るって言ってくれてますし」
「駄目ですわ、信用できません! 大体生首だけで生きてるなんておかしいです! 自然の摂理に反してますわ!」
「イツカー、吸血鬼、死に難い」
そしてゆっくりとイツカーを抱えあげると、アレーラはベルへとにっこりと微笑んだ。
だがベルは即座に腕を交差させ×印を作って反論した。
「吸血鬼だと言うのなら余計に不浄ですわ! 寝首を掛かれるに決まってます!」
「な、何でそんなに怒ってるんですか? 吸血鬼……っていう事場は初めて聞きましたけど、そんなにその、危険なんですか?」
「そうでしたの、知らないのなら仕方ありませんわね……吸血鬼というのは、簡単に言うと人間や魔族の血を吸って生きる不死の存在です」
「父子?」
「そうそう、父親と子供の……って違います! 不死です、不死、死なないってことですわよ」
アレーラのボケにベルは華麗に乗り、突っ込みを入れる。
「死なないって……そんな事あるんですか?」
「それは……私にも分かりません、実際の所市長──芽衣子市長から話に聞いた事があるだけです」
「聴聞、のみ、よくない」
「むっ……そ、それは」
「そうですよベルさん、確かに頭だけで出てきたときはびっくりしましたけどこうやって助けるって言ってくれてるんですから信用しましょうよ」
イツカーに痛いところを突かれ、ベルはたじろぐ。
アレーラが更に追い討ちを掛けると小さいため息を吐き、ベルが頷く。
「……仕方ありませんわね、実際この土地についてもよく知りませんし、守ってくれると言うのなら少しは連れて行く価値もあります」
「わーい! やりましたね、イツカーさん!」
「感謝、感激、雨あられ」
「はぁ……アレーラさんのお人よしにも困ったものですわね、これから先が少し思いやられますわ」
ベルの許しを得ると、アレーラはイツカーを両手で掲げ、二人は喜び合った。
その二人を他所にベルは再びため息を吐くのであった。
こうして、監獄から開放された初日の夜は過ぎていった。
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MD215年 9/13 11:08
かくして、二人と生首一つは町へ向けての旅を続けた。
イツカーは首に止血用の包帯を巻き、流血を止めた状態でアレーラが背中に背負った状態で進んだ。
時に二人と一つは道に迷い、荒野であらゆるエネルギーを食う怪物と出会い、またある時は互いの境遇や仕事に関しての話で親交を深めていった。
そして彼女たちが出会ってから二日後……ようやく彼らはアメリカの首都、ワシントンへと到着した。
「わぁっ……! こ、ここが噂に聞いたワッシントンですか!?」
アレーラは目を輝かせながら、そう言った。
彼女の目の前には溢れんばかりの人、人、人。
それはかつて日本の首都、東京で見た人数よりも大幅に多い人間が街中を闊歩していた。
彼らは様々な装備を着込んで居たが、その誰もが最終戦争前のスポーツ服をファッションに取り入れていた。
ある者はアメフトのヘルメットを兜の代わりに使い、またある物は背中にアメリカの国旗を背負ったりと奇抜な格好で町を歩いてく。
「何か、皆さんすごい格好してますわね」
「この国、最終戦争、被害軽微」
「成る程、それで物資が残っているから最終戦争前の服を着る文化も根強く残ったんですわね?」
「正解、ベル、頭いい」
「二日も一緒に居ればある程度貴方の言葉を読み解けるようにもなりますわ……」
イツカーは口でパチパチと拍手の代わりの言葉を紡ぎながらベルを褒めるが、ベルは疲れた顔でそう返した。
だがアレーラはそんな二人のやり取りにも気づかず、アメリカの光景に見入っていた。
東京や彼女が暮らしていた村、そして札幌とも違う風景は彼女の好奇心を沸き立たせるには十分すぎるものだった。
アレーラは一目散に街の中へと駆けていこうとし、ベルは慌てて背中に背負ったイツカーの位置を固定するとアレーラを追いかけていく。
「あっ、ちょっとアレーラさん!? ちょっとお待ちになってー!」
「アレーラ、好奇心、旺盛」
そんなアレーラにイツカーも少し眉を上げ、ベルの背中に揺さぶられていった。
だがアレーラはどんどん一人で前に進んでいき、人ごみの中に消えていってしまう。
「ちょっと、アレー……あぁもう、退いてください!」
「ベル、遅い、見失う」
「私に背負われてる身分でそういう発言はお止めになってくださる!?」
「弁解、余地無し、申し訳」
「あぁもう! 別に貴方を責めた訳では……」
「ベル、アレーラ、消えた」
「嘘っ!?」
街にごった返す人ごみに、イツカーやキャンプ道具等を背負ったベルは思うように身動きが取れず一気に進んでいくアレーラを追いきれない。
そうしている内にアレーラはどんどん人ごみを掻き分けて進んでいき……二人は完全にアレーラを見失ってしまう。
「消失、撤退、進言」
「帰る場所なんてありませんわよ!?」
「む、む、う……」
「無理に三文字縛りしなくてもよろしいですわよ!?」
「マジか」
「貴方普通に喋れましたの!?」
未だに最終戦争前の面影を残す町並みの中で、二人は途方に暮れていった。
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そして、ベルと一人離れたアレーラは……今、とある場所にたどり着いていた。
「ぐすん……ど、どうしよう……つい興奮して一人で先走っちゃった……ベルさんにまた迷惑を……」
アレーラは一人、大理石で出来た荘厳な場所に迷い込み、目尻に涙を溜め込みながら頼りなく歩いていく。
大理石の柱に手を当てながら、彼女は出口なのか、それとも入り口なのかも知れぬ扉を開き、先へ進んでいく。
そうやって何枚目の扉を抜けただろうか……アレーラは室内の様子が少し変わったことに気づいた。
完全に白一色だった室内の壁に、大きな石像とその足元に文字が書かれた石版を見つけたのだ。
「わぁっ……! 大きな石像……誰が作ったんだろう」
アレーラは、その大きな石像に驚きと感動、そして少しの畏怖を感じた。
彼女は石像の元へと駆け寄り、それを見上げた。
石像は顔の無い球体の頭部を持ち、蛇の下半身を持つ天使が空から人間へバットとボールを手渡しているものだった。
「これ、もしかしてベスボルの道具? それにしても、この石像……何だろう、気持ち悪い感じ……」
バットとボールを持つ天使の像に、アレーラは嫌悪感を覚え体を震わせる。
そして直視し続けてはいけないというかの様に石像から目を背け、下の石版に目を向けた。
「あれ、この文字……何で読めるんだろう」
何となく目を向けた石版に書かれた文字は、とても古い言葉で書かれていたがアレーラは何故かそれを読む事が出来た。
石版は掠れて所々が読めなくなっていたが、それでもある程度の文字を解読する事ができた。
「偉大……大…………我ら……文明…………ベスボル……駄目、全然読めない……」
「偉大なる大天使は我らに文明の光を齎し、ベスボルという解決方法をお与えくださった」
「だ、誰!?」
アレーラが石版の解読をするが、掠れた文字に苦戦する。
すると彼女の後ろから男の声が響く。
アレーラは突然の声に驚き、手に持っていた杖を構える。
「オォウ! ぼ、暴力反対!」
アレーラが杖を構えると、声を掛けてきた男は即座に両手を挙げた。
「へへっ!」
そして、その金髪の男は楽しそうに笑った。
新たな挿絵のラフ画像が完成したので初投稿です。
オイオイオイ
金使い切ったわ俺
都市を護する者 ③白白
飛行
このクリーチャーが戦場に出たとき、貴方がコントロールする人間一体を対象とする。
そのクリーチャーが受けるダメージは全て代わりに都市を護する者へ与えられる。




