裁判したら
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真女神転生Ⅲ ボス戦
MD215年 9/1 11:55
「いやあああああああああああ!」
「ぎょえええええええええ!?」
牢屋の中に、悲鳴が響き渡る。
突然肌の黒い男が牢を開いたかと思えばアレーラへと襲い掛かろうとし、更にその男は突然前のめりに倒れ。
そして……。
「ないすとぅーみーちゅー」
暗闇に似つかわしくない白い髪。
鮮血を思わせる赤の瞳。
艶のある肌を持つ生首が、そこに飛んでいた。
「ひ、ひええええ! はんにゃーらんにゃー!」
「いやぁぁぁぁ! ゆ、幽霊ですわ! ポマードポマード!」
ベルとアレーラは突然闇夜から現れた生首に腰を抜かし、その場に倒れこむ。
二人は後ずさりをしながら両手を合わせ、念仏や呪文の様なものを叫ぶ。
「いっつふぁいんでー」
「「いやぁぁぁぁぁぁぁああああ!」」
だが生首には当然そんなものは効かず、二人は更に悲鳴の音量を上げながら後ずさる。
二人は壁に背中をぶつけても、尚壁を登るかの勢いで後ずさっていく。
そんな二人を見て流石に気の毒に思ったのか、生首からため息が漏れる。
そしてついでに首の切断面から大量の血も漏れる。
「おかしい、日本語、話してる」
「そ、それが余計に怖いんですのよぉーー!」
「なむあみー! ナムアミーー!」
「…………自己紹介、足りてない?」
勢い良く首の断面から流れ出る血に、二人は身を抱き合わせると両手を同時に横に振った。
「「いいいいいいらないですわ/よ!」」
「イツカー・イーチィ・ノーベン142世、助けに、来た」
「「へ……? た、助けに、来た……?」」
「そう、お前達、助ける」
イツカーは空中に浮かんだ首を上下に揺らし、頷きながら鮮血を地面に撒き散らす。
「ど、どういうことですの……?」
「言葉の通り、お前達、説明する」
「えっと、それってどういう……?」
二人は身を寄せながら、イツカーの独特の言葉遣いから彼女が言おうとしていることを読み解こうとした。
「お前達、侵入、外交問題」
「が、外交……?」
「お前達、死ぬ、日本外交問題」
「…………も、もう少し分かりやすく説明してくださらない事? えっと──」
「イツカー・イーチィ・ノーベン142世」
「い、イツカー……さん?」
ベルがイツカーの名を呼ぶと、イツカーは無表情で首を縦に振った。
その表情は何処と無く嬉しそうでもある。
「説明する、お前達死ぬ、イツカー凄く困る」
「な、なるほどぉ~~~」
「納得? なら───」
とても分かりやすい、良く分からない説明にベルは思わず神妙な顔をしながら頷いた。
それを理解したと受け取ったのか、イツカーは次の言葉を紡ごうとし……別の音がそれを遮った。
「おーい、ジェイクー? そろそろ試合の時間だぞー? 観戦しないのかー?」
「まずい、消える、また後で」
通路に男の声が反響する。
その声に開け放たれたままの扉へ振り返ると、イツカーはそう言い残し部屋に広がる闇の中へと溶け込んでいった。
そして、二人は再び互いに顔を見合わせたまま固まり……通路に声を響かせてきた男が二人の居る牢屋まで現れ、こう叫んだ。
「Holy shit!! ジェイク!」
倒れたままの看守がもう一人の看守のランタンで照らされる。
その照らされた男の傍には、大量の血痕が残っていた。
「あ、アレーラさん?」
「な、何でしょうベルさん……」
「あの血ってもしかして……もしかしなくても、あの首だけ妖怪のですわよね?」
「そうだと思います……」
「不味い状況に追い込まれましたわね……私達を助けるとか言ってましたけど、その前にもっとやばい状況になってますわよ!?」
看守は黒人看守へと駆け寄り、二度三度と肩を揺するが黒人は目覚める気配を見せない。
そして看守は肩を震わせながら立ち上がると、腰に付けていた警棒を抜き放った。
「い、いやな予感がします」
「奇遇ですわね、私もですわ!」
二人は身を強く抱き寄せあい、そして看守の警棒が二人へ振るわれた。
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ダンッ、と力強い槌の音が閉所に響く。
牢屋とは違い光の溢れる空間に、二人は居た。
そしてその前には見上げるような高さの壇上と、一人の初老の男性が居た。
男性はもう一度力強く槌を振ると、こう言った。
「被告人、何か申し立てる事は?」
「…………な、なんて言ってるんでしょうか」
「分かりませんわ……とりあえず体の動作で何かを示しませんと」
「じゃ、じゃあ私が!」
男性の問いかけに、アレーラは一歩前に出る。
裁判長らしき男性との壇上の間にはかなりの距離があり、一歩近づくだけでも見上げる角度が大きく増えた。
だがアレーラはそれに負けず、深く息を吸い……頭上で腕を交互にクロスさせた。
「×……? ふむ、被告人は何も言う事が無いということですか」
アレーラの取ったジェスチャーは最悪の形で裁判長に伝わった。
だが言葉の通じない二人にはとりあえず何かが伝わったということだけがかろうじて分かったのだった。
「や、やりましたベルさん!」
「えぇ! 言葉が通じなくても肉体で語り合えば分かり合えるんですわね!」
裁判長は頷くと、右に眼を向けた。
右側には二人の眼鏡を掛けた天使が座っており、裁判官の視線に頷きで返した。
「検察は被告人に強制労働刑を求刑します」
「被告人は旧世代の兵器を用いてこのアメリガへと侵攻し、また事情を聞く為に留置されていた際に看守一名に暴行を行い負傷させました。 看過できるものではありません」
「ですので本当は死罪が相応しいですが、偉大なる主の御名においてその次の刑である強制労働刑を求刑するものであります」
「なるほど、では弁護人の意見は?」
天使二人は立ち上がり、相応しい刑罰とそれに対する理由を説明した。
裁判長はそれに頷き、今度は左側へと眼を向けた。
「い、異議有り……えっと、その、ひ、被告は我が国の言葉もその、上手く理解できておらず……げ、現在自らが置かれた状況も……」
「弁護人、もっとしっかりと喋りなさい」
「は、はひっ!」
金髪の弁護士は、オドオドとした態度でぼそぼそと二人の弁護を開始する。
だがそんな弁護人を見た天使はそれを鼻で笑うと、裁判長へこう告げた。
「裁判長、弁護人を責めるのは酷というものです」
「えぇ、弁護人はこのアメリガの住人ではない非道の者を弁護しなければならない精神的負荷でこの様な状態になっているのです」
「そ、そそそそそんなこ、ことは……」
「どうでしょう、裁判長。 こんな状態では我が貴重なアメリガの住人も辛いだけ、どちらにせよ罪があるのは確定的に明らかなのです」
「裁判を早期に終わらせ、裁きを下すべきかと」
弁護士の否定の声は、二人の天使の大声に掻き消された。
裁判長は強気に押す天使の意見に傾きつつあった。
「ふむ……では、被告人に問います。 貴方達は早期の裁きを求めますか?」
そして、裁判長は再び視線を正面の二人へと向けた。
二人は何事かを言い合っている事は気づいていたが、相変わらずそれが何を言っているのか理解できていなかった。
「……何言ってるのか全く分かりませんわね」
「あっ、アレーラさん、何かあの人またこっち見てますよ! どうします?」
「オーッホッホッホッホ! それでは今度は私が華麗な体裁きをお見せいたしますわ! 行きますわよ!」
裁判長の視線に気づいた二人は、どうするかの話し合いを少しした後こう対応した。
ベルの頭上に、手で出来た○という形で。
「なるほど、被告も自らの罪を受け入れる準備が出来たようですね」
ベルのジェスチャーを見て、裁判長は再び勘違いをすると持っていた槌を二度打ち鳴らした。
「それでは被告人二名を十年間の強制労働刑に処す!」
「そ、そんな馬鹿な…………! さ、裁判──」
裁判長の発言に、弁護士は勇気を振り絞り立ち上がるとか細い声を上げるが。
「見苦しいぞルーレン!」
「ふふっ、これで私達の17連勝……罪在る者は裁かれるべきということが理解できましたか?」
「う、くっ……き、君達は……!」
「負け犬の遠吠えにしか聞こえんな」
「弁護をしようというその志は立派ですが、そんな体たらくでは弁護される被告も哀れというものです」
弁護士が立ち上がり声を上げると同時に、天使二人もまた立ち上がり声を上げた。
二人の天使は勝利の笑みを浮かべ、そのまま背後にある扉から退出していく。
「え、え!? な、なんですの!?」
「や、やっぱり体の所作だけじゃ意思表示は無理だったんですよ~!」
「貴女が最初にやったんじゃありませんの! あ、ちょ、どこ触ってますの!」
「うえぇ~ん、アデルさぁ~ん……」
そんな天使達を横目に、二人の被告もまた全身を鎧に包んだ兵士達に連行されていく。
「こんな、こんなのは……間違っている……!」
弁護士は、そんな光景を見ながら己の拳を強く握り締めるのだった。
挿絵の依頼を頼んだので初投稿です。
給料がどんどこ減るなぁおい!
嘘を晴らす者、ルーレン 青
伝説のクリーチャー:人間・アドバイザー
防衛
青:土地を一枚手札に戻す。 嘘を晴らす者、ルーレンはあなたかあなたがコントロールするクリーチャー一体を対象とする呪文一つを対象として、それを打ち消す。
0/1
「ぼ、僕にはベスボルは出来ないから……こんな事でしか君達の役に立てないんだ」




