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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
北米編
114/207

計画が始まったら

https://www.youtube.com/watch?v=dLoAEciXqOQ&index=146&list=PLytSLP_Ox6H5pMFUdQpK-I9oDHoMQB50v


星のカービィ ロボボプラネット 80.戦闘力測定プログラム

MD215年 8/30 10:44


「いやあああああああああああああああ!」


「オーッほっほっほっほっほっほっほっほ!!


 晴天。

 雲一つ無い海の上で、女性二人の声が響く。

 一人は悲鳴を。

 もう一人は笑いを。


「おとうさアアアアアあああぁぁぁぁん!」


「おーっほっほっほっほっほっほっほ!」


 ミサイルの頭に設置された椅子に括り付けられた状態で、二人はマッハ3の速度で飛んでいた。

 飛んでいたというか、飛ばされていた。

 マッハ3の速度は彼女たちの整った顔を引き伸ばし、皮膚は元の位置から置きざられるように引き伸ばされる。

 胸も当然左と右で後方へと風圧で押しのけられるが、括り付けられた体がそれを許さない。

 少なくとも、この今の状況をアデルに見せる事は絶対に出来なかった。


「おがあざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーん!!」


「おーっほっほっほっほっほっほ!!


「この二人の姿を見ているとコアが軋む様な痛みを感じます、永村様、防護の展開許可を願います」


 そんな二人の姿を真横から見ていた白銀の天使、ペスは何故か自らの胸が痛むのを感じ管理者へと要請を行う。

 ペスからの連絡に永村は暫し考え、後ろで漫画を読む山坂へ何事か言う。

 二人の口論が少し響いた後、ベルとアレーラの乗るミサイルの前面部に防護の盾が張られる。


「─────」


「おーっほっほっほっほ──ん? 風が止みましたわね……」


 半透明な膜が二人の前に現れ、アレーラは死体のようにぐったりと、ベルは突然止んだ風に不思議な顔をする。


「ご無事ですか? お二人とも」


 そんな二人に並ぶ様に飛ぶペスが、気遣いの言葉を投げかける。

 アレーラは相変わらずぐったりと前のめりに倒れたままだが、ベルはペスは頷きを返す。


「えぇ、突然風が止んで驚きましたが……貴女がしてくれたんですの?」


「私は要請を出しただけで、許可を出されたのは永村様です」


「とはいえ願い出てくれたのでしょう? ならば許可を出した側にもするように言った側にも感謝はしますわ、ありがとうございます」


「いえ、私は──」


「ね、アレーラ? ……ってし、し、しししし、死んでますわー!?」


 ベルは小さく頭を下げると、左を向きアレーラへ顔を向ける。

 だがぐったりとしたアレーラを見てベルは今日一番の叫び声を上げる。


「そ、蘇生を行いませんと!」


「ご心配には及びません、一時的に意識を失っているだけです」


「あらそうでしたの、なら安心──ってそんな訳無いですわよね!? この飛ぶ筒の操作とかどうするんですの!」


「問題ありません、操作できるのは左右上下ですが基本的には真っ直ぐ飛ぶように自動で操縦されています。 手動操作が必要な場合というのは非常事態以外では──」


 その時、ペスの目が光を捉えた。

 それは遥か遠方の大地、目的地であるアメリカ北西部の海岸からの光だった。


「……ペスさん?」


 突如として途絶えたペスの言葉に、ベルはある未来を予想しながら恐る恐る呼びかけた。

 そしてその予想は正しい事を次の瞬間に理解する事となる。


「ベルさん、お手元の右手部分にある赤いボタンを押してください」


「…………もしかして、もしかしますの?」


「はい、緊急事態です、着弾まで残り5、4、3──来ます」


 ペスの言葉通り、前方から一つの光が見えた。

 光が見えた瞬間、ベルは激しい強風と圧を自らの右側に感じた。

 そして自らの後方から激しい水音と水柱が吹き上がった。


「な、なな、なんですの!?」


「リープリヒ兵器産業製のレールガンと推定されます」


「れーるがん?」


「ローレンツ力を用いた電磁兵器です、単純に言うと小石一つで象一頭を倒す事が出来ます」


「ろーれんつりょくに象……?」


「前者は魔法の法則、後者は熊の1.5倍強い生物と理解していただければよろしいかと」


 熊の1.5倍の強さと言われ、ベルの表情が少し蒼褪める。

 自身でさえ熊を倒すのは命がけだというのに、それよりも強い生物を一撃で葬る兵器に今自身が狙われているのだ。


「それ、防げませんの?」


「防護の盾を張っているので多少は耐えられますが、目的地までは持たないかと」


「つまり……避けるしかないってことですわね?」


「そうならざるを得ません、ですが……」


 ペスは含みを持たせながら、未だに気絶しているアレーラへと顔を向けた。


「彼女が気を失っている以上、私は彼女の防護に回らざるを得ません」


「では、私は──」


 ベルが言葉を紡ぐ最中、再びベルの目に光が映る。

 その光が見えた瞬間には衝撃が走り、彼女が乗るミサイルを覆ううろこ状の防護の盾が一部剥がれていく。


「ッ……!」


「射撃精度の向上を確認、今後は連射速度も上昇すると予測されます。 ベルさんは光が見えた瞬間に回避運動を開始してください」


「無茶苦茶仰いますわね……!」


「出来ないのならば、残念ながら死ぬ事になります」


「……アレーラさんの事、任せますわよ!」


 そう言って、ベルは右手で握っているレバーの頂点にある赤いボタンを押す。

 するとミサイルは彼女のレバー操作に連動して動き始める。


「任せましたわよー! わよー! ゎょー……!」


「了承いたしました、とはいえ……」


 レバーを操作し、ベルは一度ミサイルを上昇させると自由軌道を開始しながら二人から離れていく。

 ベルの言葉が残響を残していくのに合わせペスは頷き、アレーラを乗せたミサイルの前へと出る。

 ペスは白銀の翼をはためかせ、霊力を放出しながらアレーラのミサイルが進む速度と同じ速度で飛ぶ。


「アレーラ様が目を覚まさない限りは私にも限度があります、困りました、想定外の事態です」


 そう呟き、ペスは顔を正面……アメリカ西海岸へと向ける。

 カメラが映像を拡大し、レールガンを発射した敵を映し出す。

 Rpw-33型。

 自律起動型防衛砲台……山坂がかつて組み上げた兵器の一つである。

 カブトガニ型の兵器で六足歩行をし、甲羅の中に一門のレールガンを内蔵している。


「……しかし、何故起動しているのでしょうか」


 望遠レンズとなったペスの目には、さび付いた甲羅を背負い、内部から鈍い赤い目を光らせるRpw-33型が映っていた。

 周囲には33型だったと思われる残骸が幾つか転がっており、恐らく現地の魔族かそれとも生物に壊されたのであろう傷跡も残っていた。

 故に、疑問だった。

 何故今動き出したのか、地上の機械は全て高高度核爆発による強力な電磁パルスによって全て基盤が破壊されたはずなのだ。


「霊力による変異を?」


 霊力による変異の場合、非生物は生物化を行う事が例として報告されている。

 だが映し出された映像とペスのデータベースの中にある33型の姿はまるで変わっていない。

 つまり……ここから導き出される答えは一つである。

 世界中の大多数の機械は壊れたのだろうが、残りの何割かは未だに生き残り稼動を続けている。

 

「と推論するのが正道でしょうか、何れにせよ……」


 カァン、と甲高い音が響く。

 それに続いて水柱が北太平洋に上がる。


「素晴らしい精度です、山坂様」


 右手に持った剣から煙が上がる。


「あなたの作った兵器は千年後の今でも元の性能を保っています」


 そして、再び光が迫る。

 砂浜に転がる同型機の鉄屑を、33型は打ち出しているのだ。

 目的はアメリカ大陸へと迫る魔族の迎撃。


「……千年前に設定された目的は互いに共通ですが今は敵同士、皮肉なことです」


 そう無機質な女性の声が、機械の声が、悲しげに呟きを漏らす。

 そしてペスは再び剣を振るった。

 レールガンで発射された鉄屑を切り裂く事は現実的ではない、切り裂いた残骸が己の身を裂くからだ。


「被害算定終了、再び弾きます」


 故に弾く。

 直剣の剣身部分、刃と刃の間、槌と呼ばれる部分を用いペスは弾を斜め後方に逸らす。

 この間の動作は一秒未満、機械だからこそ出来る離れ業である。


「やはり……流石と言うべきですか、威力が負けていますね」


 レールガンを弾くたびに、ペスの持つ剣からは不快な異臭が立ち上る。

 放たれる攻撃に対して、剣の耐久力が劣っているのだ。


「このままでは──」


「う、うぅん……何か、臭い……?」


 このまま攻撃を逸らせるのは後何度が限界だろうか、三度? 四度? もしかすれば五回は防げるのかもしれない。

 だがそこから先は?

 剣が折れたらどうするのか、そう考えていたときに後方からアレーラの声が聞こえた。


「あれ、私……何して……」


「アレーラ様、お目覚めになられましたか」


「ペスさん、私……ってえぇぇ!? わ、私なんでこんな場所に!? あれ? え!?」


「あまりのショックに記憶が……ですが今は説明している暇がありません、私がこれから指示する事を実行してください」


「は、はい!?」


 狼狽するアレーラを他所に、ペスは剣でレールガンを弾きながら説明を開始する。

 ペスが剣を振る度に背後で立ち上る水柱に、アレーラは驚愕し上手く説明を飲み込めない。


「───というわけです、ご理解頂けましたか?」


「そ、そんな……いきなり攻撃を受けてるから頑張って避けて目的地まで到着しろって言われても……! 私、これの動かし方も良く分からないのに!」


「今説明します」


「でも!」


「現状のままでは私は貴女を守りきれません、このままでは貴女は死にます」


 元々この任務に志願したわけでもない、行きたくないと思っていた任務の最初から起きた命の危機にアレーラは取り乱す。

 だがそんなアレーラにペスは淡々と説得を行う。


「人間は可能性の生き物だと田崎様に教えて頂いた事があります。 あらゆる可能性に手を伸ばすのだと」


「そ、それが今の状況と何の……」


「私がこれから行う説明を貴女がしっかりと理解した上でも、恐らく生存確率は30%を下回るでしょう。 そう私は結論付けました」


「さ、さんじゅっぱぁせんと?」


「100回同じ事を行った場合30回程度しか生き残れないということです」


 光。

 剣を振るう。

 ……剣が欠ける。


「ですが生き残る可能性はあります、そして……魔族は霊力によって人間が変異した生命。 であるならば、私は魔族もまた可能性の生き物だと推論します」


「ペスさん……」


「時間がありません、恐らく後三度の砲撃で私は破壊されます」


「そんな!」


「ですので、落ち着いて私の説明を聞いて理解してください。 ……説明を開始します」


 そうして、短い説明が始まる。

 ペスの説明は簡単だった、手動モードへの切り替え方とレバーをどう倒したらどの方向に動くのか、それだけである。

 そして、その説明の間に再びの砲撃でペスの剣と右腕が破壊される。


「操縦方法の理解は、完璧でしょうか」


「はい、はい……! でも、ペスさん……腕が!」


「元より私は消耗品、器が壊れようと次の器が用意されるだけです」


「でも、でもぉ!」


「幸運を、貴女とベルさんの無事を祈って───」


 ペスが、そう言いながら後ろへ振り向く。

 顔の無い頭部をゆっくりとアレーラへ向けながら……彼女の体はレールガンに打ち抜かれた。


「ペスさぁぁぁぁぁぁぁん!!」


 頭部は一瞬の内に融解し、その衝撃で捥げた肉体の破片がアレーラの乗るミサイルの防護に当たりながら海面へと落下していく。


「あ、あぁ……!」


 アレーラはそれを見た瞬間、ある記憶が蘇った。

 数ヶ月前、彼女が生まれ育った村を守っていた神木が死ぬ瞬間を。

 

「私、私……また、守られて……!」


 そして、ペスが砕ける瞬間をまた遠方からベルも見ていた。


「ペスさん……アレーラを守って」


 ベルは一瞬、アレーラを守りに行こうとするがレバーに力を入れた瞬間ミサイルに衝撃が走る。


「!? 射撃感覚が早まった……いえ、違いますわね、これは……」


 光の数が増えた。

 一から二へ。

 たった一つ、だが今の彼女たちには絶望的な数だった。


「くっ……射撃の分散が行われないということは、アレーラを助けにもいけないということですわね」


 光が走り、レバーを動かす。

 ベルは巧みに操作しミサイルを動かすが、アレーラはその悲しみからかミサイルを動かせずに居た。


「アレーラ! アレーラ!!」


 ベルは必死に叫ぶが、離れた距離とミサイルの速さが声を置き去りにしていく。

 そして、再びアレーラに弾丸が迫る。


「アレーラ……ッ!」


 この後訪れるであろう光景を想像し、ベルは目を思わず瞑ってしまう。

 親友の死を目の当たりにしたくないからだ。

 だが、そんな瞬間は訪れなかった。

 アレーラの防護の壁は崩れていなかった、それどころか……赤、青、緑、白、黒の五色の光を逆に纏っていた。


「……私は、もう」


 アレーラは、俯けていた顔を上げる。


「私はもう、誰も傷つけさせない!!」


 そう言って、アレーラはミサイルを加速させた。

 本来ならばそんな制御は出来ないのだが……今はある男が干渉していた。

 山坂憲章が。

 男は一人で邪悪な笑みを浮かべたまま……ようやく自らの計画がスタートした事を喜んでいた。



挿絵を誰にするか決まらないので初投稿です。

おいおいおい、一日書いてたのに筆がまるで進んでねぇわ

そして何かメモ帳で保存したらエラーでちゃったからこのまま投稿するね…予定が早まりすぎるが許してくれるだろうか

許してくれるね

グッドトリップ


対魔族用迎撃兵器Rpw-33型  赤赤青


防衛


①:パーマネント一つを生贄に捧げる。

クリーチャー一体を対象とし、対魔族用迎撃兵器Rpw-33型はそれに3点のダメージを与える。


「ねぇドク、何でカブトガニ型にしたの?」


「趣味」

───千年前のある日の会話

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