説明が理解できなかったら
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Persona 5 OST Wicked Plan [Extended]
MD215年 8/30 09:04
夏ももう終わりの頃を迎えつつある日本。
気温も徐々に下がり始めていたが……それでもこの日は肌寒さとは無縁の天気であった。
「あー、あー、本日は晴天なり、本日は晴天な~り~っと」
白衣を着た男が、古ぼけた施設の中でマイクを握りながらそう呟いた。
マイクに音は入っており、外からは些かの雑音が混ざったが男の声がそのまま反響された。
外に居た魔族達はその声に驚き、周囲を見回していたが監督者の一喝によって直ぐに仕事へと戻っていった。
「かっかっか、田舎者を見るようで中々面白い」
そんな魔族達の様子を笑いながら眺めていた男はマイクの電源を切ると、目の前の設備へと意識を戻した。
「種子島宇宙センター……最終戦争以前は単なる博物館になっていたが、今更この場所で2000年代と同じような事をすることになるとはな」
「使える資源は有効活用する、当然のことじゃないか山坂君」
「つってもなぁ……産業廃棄物を4日で元通りに直すってのは殆ど作り直すのと何が違うんだ?」
「材料費がこっちの方が1%安いね」
「僕の人件費入れて計算してるそれ?」
山坂が意識を戻し作業を始めると、後ろの入り口から管理者の一人永村が入室してくる。
永村は山坂のぼやきを正論で返すが、山坂の最後の問いには笑みを返すだけだった。
「ちっ……まぁ使えるものを使うって言う考えには賛同できる、僕らのモットーは出来る奴がやるだしな」
「そういうこと、君らが面倒がる資源管理とかは全部私がやってるんだからこういう技術職は君がやらないとね」
「そう言われるとそうなんだが、こりゃ参ったなぁ」
「期待してるよ?」
「……戦争前はそうやって何人部下を過労死させたんだ?」
山坂の言葉に、永村は再び笑みを返すばかりだった。
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「はぁ……まさか私が選ばれるなんて……どうしよう」
山坂と永村が談笑している中、外ではアレーラが物陰で体育座りをしながら愚痴をこぼしていた。
アレーラの目の前では鬼やリザードマンが互いに笑いあいながら金属製の部品を滑走路へと運び出していく。
「はぁ~…………」
その部品を見るたびに、アレーラの溜息は強く、深くなるばかりだった。
それもそうだろう、彼女はこれからあの鬼達が持っていった部品で組み上げられたある物で北米大陸へと移動するのだ。
しかも何が組み上げられるのかは彼女たちには知らされていない。
「深いため息ですわねぇアレーラさん、そんなに見知らぬ地へ行くのが嫌ですの?」
「あっ、ベルさん」
突然の声にアレーラは一瞬体を浮き上がらせるが、直ぐにその声の主が自らの友人であると気づいたアレーラは安堵の息を吐く。
「これから別の大陸へ旅立つと言うのに相方がそれでは私も不安になってしまいますわ、もっと元気をお出しになって!」
「あははは……すみません」
ベルは体育座りをするアレーラの前に立つと、その豊満な胸と共に両手を上下に揺らした。
「私達が先遣隊に選ばれるのは謂わばその優秀さを認められた証拠、皆が安全に進むためにも私達が頑張らなければいけませんのよ!」
「…………」
「そう、私たちはこの国の尊い兵士達の命を守る為に選ばれた者なのです!! って……どうかしました? アレーラさん」
「あ、いえ……その、出発前にこんな事を言うのはいけないって分かってるんですけど」
「構いませんわ、仰いなさい。 私達はまだ出会って一年も経っていませんが……絆の深さは親友以上だと私は思っていますわ」
ベルの言葉に、アレーラは俯けていた顔を上げる。
アレーラがあげた先にはいつものように自信に満ち溢れた、だが慈愛を感じるベルの顔があった。
「ですので隠し事や気になる事は仰って? 私達、友人でしょう?」
「ベルさん……ありがとうございます」
「お礼なんて別に良いですわよ、当然のことですもの。 さ、言いたい事があるなら仰って?」
「はい、あの……私たちの仕事が大切なのは分かってるんですけど……結局、私たちがすることが後々その大陸の人達に迷惑を振りまく事になるのが……」
ベルの笑顔で少しだけ明るさを取り戻すアレーラだが、それでも発言の前にはやはり顔を曇らせる。
アレーラの言う事は実際至極尤もな発言である。
ベルの言う通りこの斥候によって未知の危険を知り、対策を行う事で今後北米大陸を攻める時に友軍の被害は減るだろう。
だがそれは同時に北米大陸に住む魔族の被害の拡大を示している。
「それは……」
「……すみません、出発前にこんな事」
「いえ、良いんですのよ。 むしろその気持ちを持ったまま行ってあなたにもしもの事があったらアデルさんに顔向けできませんもの」
「何でそこでアデルさんが出てくるんですか?」
「はぇっ!? お、おーほっほっほっほっほっほ!!! ど、どうしてかしら!」
申し訳なさそうに言うアレーラに、ベルは首を横に振り当然であるといったように返す。
そしてアレーラの問いかけに誤魔化す様に大声で笑うと、ベルはアレーラへ目線を合わせるように座り込んだ。
「ごめんなさいねアレーラさん……私は聖人でもなければ賢者でもありません、だから貴女が納得できるような答えは用意できませんわ」
「いえ……」
「ですが貴女の疑問を仕方の無い事と割り切るわけにはいきませんし、割り切ってはいけません。 貴女の感性は……とても素晴らしい事です」
そして、アレーラの両肩に手を載せる。
「だから、一緒に探しましょう? 貴女が納得できる答えを見つけるまで、私も一緒にお手伝いしますわ」
「ベルさん……」
「その為に今は辛いかもしれませんが、貴女の成すべき仕事を為しましょう。 それがきっと将来貴女の求める答えに繋がると信じて」
「…………はい!」
ベルの説得に、アレーラはその小さな体を震わせながら目尻に涙を浮かべる。
ベルはそれをそっとハンカチで拭うと立ち上がり、滑走路へと振り返った。
「では、私は一足先に向かいますわ。 アレーラさんはもう少しお休みになってからお越しに──」
「いえ! 私、いけます!」
ベルの心配する声を他所に、アレーラもまた勢い良く立ち上がる。
アレーラの様子にベルは一瞬呆気に取られるが、直ぐに微笑を浮かべると二人は共に滑走路へと歩いていく。
「……青春だねぇ」
そして、そんな二人の様子を物陰で眺める赤毛の男が居た。
「俺が心配するほど安心したぜ……んじゃ俺も訓練に戻るか」
アデルは物陰から姿を表すと、滑走路へ歩いていく二人を見送り自らの右手を握り締めた。
「……天照の奴に助けられなくても、あの力が出せるようにならねえとな」
男の脳裏に過ぎる、ハワイでの戦い。
男は二度の死を一度の戦いで経験し、神によって救われ。
そして三度の死を迎える寸前に神によって救われていたのだ。
「必ず……俺は強くなって見せる」
そう呟き、アデルはアレーラ達とは逆の方向へ歩き去っていった。
左足を引きずるようにしながら。
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「おう、良く来たなメスども相変わらずエロい体つきだ!」
「……最低ですわね」
「私、この人苦手です……」
ベルとアレーラが滑走路へ向かうと、そこには山坂が待ち構えていた。
白衣を風に靡かせながら、六つの太陽を背にし右手にはタブレットを、そして背中には銀色のロケットが横並びで三台並んでいた。
そのロケットには先端部分に座席とレバーが二つ付いており、異様な光景を醸し出していた。
「俺が苦手だろうが苦手じゃなかろうがお前らのやる事は変わらん、というわけで今回お前たちを北米大陸まで運ぶのがあれだ」
「…………なんですの、この銀色の筒というか鏃というか」
「何か座薬みたいですね」
「あれケツに入れるの痛いんだよなぁ、慣れると気持ちよくなるんだが」
「あ、それ分かります! 気持ちよくなったことは無いですけど……」
「マジか、その内あれが快感にだな……っていうか座薬って今の地球に残ってたんだ……」
突然座薬トークで盛り上がる二人に思わずベルは強く咳き込むと、二人は正気に戻る。
「あー……まぁ座薬トークはどうでもいいんだ、今回はお前らには後ろのロケットに乗ってもらう」
「ろけっと?」
「そうだ、速度マッハ3で飛ぶので理論上は何か適当な時間に到着する筈だ、到着時間は計算するのがめどいので省略」
「はぁ……良く分かりませんが、要するにあれの椅子に座ればよろしいんですのね?」
「そういうことだ、つまりお前たちは事実上の大陸間弾道ミサイル!」
その後、二人が座席に座り申し訳程度の安全装置であるシートベルトを装着するまで山坂の小難しい説明は続いたが二人がそれを理解する事は無かった。
そして理解できなかったが故にこれから起きる悲劇を予見する事もまた不可能だった。
マッハ3はとてもじゃないが人間が耐えられる速度では……無いのだ。
また挿絵を依頼する事にしたので初投稿です
ベルとアレーラとアデルの3人か芽衣子、徳川の二人か、あるいは主人公3人の挿絵だったら何がいいんでしょうね
それとも三神全部描いてもらうのが先かな?




