借金を背負ったら(地味に挿絵あり)
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Persona 5 OST Wicked Plan
MD215年 8/25 09:15
八月二十五日、朝九時。
この日の東京はそろそろ夏も終わりという時期を迎え、秋の匂いを街へと匂わせていた。
しかしそれでも街の暑さは払拭されず……それは東京の中央にある病院の内部も同じだった。
「…………申し訳ない」
東京中央病院。
最終戦争後、病院の中央に植樹されていた樹は霊力によって意思を持つ樹木となり、生きとし生ける者を治癒する事を生業としていた。
だが樹木である院長は病院の中央から動けない為、診察や手術以外の大まかな事は院長が生み出したドライアドと呼ばれる女性型の樹木達が行っていた。
「………………暑いのう」
そんなドライアドの看護師に包帯を巻きなおされながら、徳川は正面のベッドに居る芽衣子へと謝罪した。
芽衣子はベッドの上で右腕にギブスを付け、その白い肌には幾つかの擦り傷が残されていた。
だが謝罪する徳川もまた、頭部や足に包帯を巻かれており、二人の傷は軽くは無い事が見て取れた。
「気にするな、とお主に言うのはこれで何度目じゃったか……八度目か?」
「9度目です」
「覚えてるならもう言わんでええ、むしろ命が繋がっただけ儲け物という奴じゃよ」
「ですが……」
「あれはお主のミスではあるまいよ、それを気に病む必要は無い」
芽衣子の言い分に納得できないのか、徳川は食い下がる。
だがそんな徳川に芽衣子は慈愛の眼差しを向けると、窓へと目線を移した。
「まあ何故か襲ってきた連中の中にお主の部下が居たのは不幸じゃったが……」
「だから、それを言われると私は謝るしかなくなるのですが」
「いやすまんすまん、じゃが気にする必要はあるまい、何度も言うておるがあそこへ行くように仕向けたのは連中じゃからな」
芽衣子はそう言うと、相変わらずの意地の悪い笑みを浮かべる。
徳川はそんな笑顔にどこか安堵を覚え、共に笑みを浮かべるのだった。
そして、二人は誰からともなく笑い始める。
「ふっ……ふふ」
「はははは!」
「うぇっへっへっへ!」
「うははははははは! って誰じゃ!?」
二人は高笑いを続け、だがその中に一人聞き覚えの無い声がある事に気づく。
いや、正確には聞き覚えのある声で、そして今は出来れば聞きたくない声である。
「ウチやウチ! あんたらの命助けたった女の事、忘れたんか?」
芽衣子と徳川はゆっくりと視線を天井から下ろし、その女を見た。
マン=モン。
沖縄の現統治者にして、日本の商売網を手に入れた女である。
「いつの間に……部屋に入る際に声掛けも出来ないのですか?」
「いやいやちゃんと声掛けしたで? ドライアドの姉ちゃんから許可もろとるし」
「……一切の入室を許可しない、と毎日言いつけているはずですが?」
マン=モンの言葉に、徳川は包帯を巻き終えベッドの横に佇むドライアドを睨みつける。
「────!」
自らに投げかけられた視線に怯え、ドライアドはその根で出来た足でゆっくりと壁へと後ずさる。
ドライアドは首と手を横に振り、私ではないアピールを行う。
「はぁ……まあ良いでしょう、治療が終わったのなら退出を。 私たちは少しこの商人と話がありますので」
「──! ──!!」
徳川は眉間を抑えると、ドライアドにそういい付ける。
ドライアドは即座に首を縦に振ると、芽衣子の治療を行っていたドライアドも含めて一気に部屋から逃げ出していく。
「ちょっと脅しすぎじゃないかのう」
「上限関係というのはこれ位の方が良いものです、むしろそちらは甘やかしすぎなのでは?」
「そんなんじゃから今回部下に離反されたんじゃないかのう……」
「聞き捨てなりませんね、あれはそもそもあの痴れ者が──」
「はいはい喧嘩はやめやめ! あんたら仲良いのか悪いんかどっちなん」
先ほどまで二人で笑いあっていたかと思うと、突然言い争いを始める二人の間に割ってはいるマン=モン。
「元はと言えば貴女が突然入室してくるから悪いのです!」
「一国の頭領ともあろうもんがえらい狭量やなぁ……まぁええわ、ウチは金の回収しに来ただけやし」
「うっ……それは」
徳川の責任転嫁も全く気にせず、マン=モンは自らの足である浮遊装置の中からそろばんを引っ張り出すと計算を始める。
パチパチと小気味良い音が響き、暫くすると華麗な指捌きと共に音も止まる。
「ほな、しめて1500万イェン貰おか」
「いやいやいや、儂そんな大金出せんぞ……サツホロの金銭事情しっとる?」
「1500万!? あ、あの時言っていた金額と大幅に違う!」
「利子っちゅう奴や、ほ~れちゃ~んとあの時サインした契約書に書いてあるやろ?」
マン=モンが提示した金額に二人は度肝を抜かれる。
「契約書の中身は兵士一人を助ける度に1万イェンを支払う、そうだったはずだぞ!」
「せやな、そやけどそら基本部分っちゅう奴や、細則んとこよぉく見てみ」
そんな二人へマン=モンは浮遊装置から契約書を取り出すとそれを二人へ見せる。
二人はベッドから体を前に乗り出し、契約書の下の方に書かれた細々とした字を見る。
そこにはこう記されていた。
「上記を基本の契約とし金額は即日支払うものとする、もし期日を超える場合は一日につき基本金額分を上乗せとする」
「「はぁ!?」」
「な、ななな……」
「うーむ……夢か! 儂寝る!」
「一人だけ現実から逃げるのは卑怯ですよ!! 一蓮托生です!」
契約書の細則を見て、二人は顔を蒼褪めさせる。
そして芽衣子は静々と元の位置へと戻ると、布団を被りなおし眠ろうとする。
だがそんな現実逃避はさせまいと、徳川は叫ぶとベッドから起き上がり芽衣子へと飛び掛る。
「ば、ばか者! こんな金額払えるわけなかろう! サツホロは既に赤字経済じゃっつーの!」
「トウキョウとて同じです! 度重なる戦費や復興費でこちらも限界なのです!」
「ほうほう……ちゅうことはあんたら、銭無いっちゅうわけか?」
「うっ……い、今は少し厳しいだけだ!」
「ぐ、ぐぐぅっ……まぁ、そうなるか、のう……」
マン=モンは二人の苦しい顔と返答に満足げに頷くと契約書の細則の更に下を指差した。
「ほんなら、ウチも契約通り……やらせてもらうで」
そう言うと、マン=モンは二人へとゆっくり近づき……商人の顔から悪魔の顔へと変わるのだった。
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病院で徳川達がマン=モンに襲われている頃、エクィロー内部でも男たちが協議を繰り広げていた。
「毒ガスも駄目、ウィルスも駄目か……オーストラリアの生物は無敵か何か?」
「というよりは人工的に作り出されたものが駄目なんだろうね、本当に自分の力だけで何とかしないといけないって法則があるらしい」
「野生的過ぎる……田崎みてぇだ」
「あぁん?」
モニターに映るオーストラリアの動物達と、それを田崎と比較して見る山坂。
山坂の表情は心なしか楽しそうである。
「何でもねーよー」
「そうかい、いやしかしどうしたもんか……動物の他に居るこの男がな……」
「海外に行く途中で普通に死ぬと思ってたんだけどね……私の見通しが甘かったね」
「霊力恐ろしすぎる……ところでこの間リヴァイアサンと戦ってる時のデータ見返してて気づいたんだけどよぉ」
「ん?」
山坂は楽しげな表情で、ハワイ沖での戦いを映し出す。
「……これがどうかしたのか?」
「いや、この隅っこの方によ……赤い、鎧を着た虎牙がさ……居るんだよね……」
「「えぇ……(困惑)」」
映し出された映像の右端に、虎牙伊織は確かに居た。
赤い戦装束に身を包んだ姿で、タリブの眷属と戦っていたのだ。
「やはり手元においておくべきだったのでは?」
「いやぁ……逆にこれが居るとこいつを旗印に結束してた気もするし、ベストな選択だと思ったんだけどね~」
「起きちまったもんはしょうがない、今は反省よりも方針を決める方が先だな」
「だなぁ、となるとオーストラリアは暫くこっちの魔族戦力が拡充されるまで放置だな」
「しかないねぇ、となると次は……」
一人で眷属と互角に戦う伊織にドン引きした三人は、自らの選択に若干の後悔をしつつ映像を消し新たな侵略先を探し始めた。
三人は一分ほど沈黙し、そして同時に手元のボタンを押した。
するとモニターに世界地図が浮かび上がり、とある大陸が赤く光った。
「「「アメリカ大陸!!!」」」
三人の意見は完全に一致していた。
ハワイから程遠くない距離にあり、そして最終戦争前は人類の最後の砦であった文明地。
次の侵略先は、こうしてアメリカ大陸へと決定された。
FGOのイベント周回あきたー!!
もう少しで100開け終わるので初登校です




