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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ハワイ編
106/207

外に脱出したら

https://www.youtube.com/watch?v=bfmhkq7RYsE

Persona 5 OST 14 - Will Power

MD215年 8/5 14:47


 豆腐へ指を突き入れるような、そんな感触で。

 田崎はタリブの眷属の顔面を突き破って行った。

 オケアノスという名の牢獄めいた生き物の内部から、希望溢れる外へと。

 顔を突き破ると、眷属はゆっくりと力なく前のめりに倒れ……そして勢い良くオケアノスの体に頭部を打ちつけるとそのまま海面へと滑り落ちていった。


「おいおいおい! 何だ……こりゃ!」


 本来であれば歓喜に打ち震えるはずの二人。

 だが脱出に成功した田崎と山坂は外の光景を見た瞬間唖然とする。


「……すげぇな」


 空中に居た時間はものの数秒だろう。

 だが、それでもオケアノス全体を確認するのには十分すぎる時間であった。

 最初に見た光景は力なく水面に横たわるオケアノスの姿だった

 オケアノスの体の殆どがタリブの眷属達が蟲が群がるように集り、蹂躙していた。

 ある一部は眷属によって空中にキューブ状にされて浮かび上がり、その内部には時間が止まったような形で動きを止める人魚達が入っていた。

 またある一部はオケアノスに宿る霊力を眷属達が吸い取り、白亜の塵へと還元していた。


「何が負けるつもりはありません、だ。 負けてんじゃねえか」


 山坂はそう軽口を叩くと視線を下方から上方にすると改めて周囲を見回し、あることに気づく。


「……タリブがいねぇ」


「だが代わりにドローンどもが無数に居るな……お前が連れて来たあの自称神様はどうした?」


「知らん、死んだんじゃねえか?」


 タリブの不在に気づいた山坂は、ハワイに来て初めての安堵を覚える。

 もし未だにタリブが滞在していた場合、山坂達の消滅は確定的だったろうからだ。

 山坂がそんな風に安堵の表情を浮かべていると突然、頬を冷たい風が撫でる。


「着地するぞ山坂、ドローンどもが来る確立は?」


「おおよそ100%だな、ったく……優しく着地しろよ!」


「考慮はする」


 眷属達の奇怪な行動を眺めていた二人だったが、ゆっくりと落下が始まると田崎が山坂へと声を掛ける。

 自らの体のことを考慮して優しめな着地を期待するが、山坂は内心あまり期待していなかった。

 そして、その期待は当然の如く裏切られるのだった。

 勢い良くオケアノスの背中へ着地する田崎。

 そして勢い良く鉄板に叩きつけられる山坂。


「ぎゃんっ!」


 顔から落ちたせいか、痛みに顔を歪める山坂だったが直ぐに顔を上げると周囲の状況を確認する。

 

「おおよそ五体って所か、エクィローとの通信は……エラー!? タリブのせいか!?」


「来るぞ山坂!」


「えぇい、クソ! しっかり僕を守れよ!」


 顔に手を当てながら立ち上がると、即座に田崎があけた穴付近に隠れる山坂。

 山坂が隠れ終わる寸前、それらは現れた。

 タリブの眷属、ドローン。

 そのドローンの中でも小型の部類に入るであろうタイプ。

 空中に浮かぶ目玉から八本の蜘蛛の様な足が生え、目玉の上に天使の輪を浮かべたそれはゆっくりと、しかし自らの存在を示す様に田崎を囲んだ。


「飼い主に噛み付こうとは良い度胸だ、雑魚ども」


「BEEEEEEEEEPPPPPPPP」


「ZZZZZZZZZZ」


 歩くたびにオケアノスの装甲を白亜に染めていくドローン達に、田崎は迎撃の構えを取る。

 そんな田崎へ威嚇なのか、それとも個体同士で連絡を取っているのか甲高い電子音の様な物を上げながらドローンがじわりじわりと距離を詰める。

 ドローンが距離を縮め……海水が横たわるオケアノスへ打ちつける。

 波が二度打ちつけられた時、田崎が動いた。

 力強く大地を蹴り、オケアノスの装甲が抉れる。


「うぉらぁ!」


「BEE───」


 ドローンの体──というべきなのかは分からないが──の中央に浮かぶ目が瞬きをした瞬間を狙い、田崎は駆けた。

 田崎が一歩を踏み出すたびに装甲は削れ、勢いは増していく。

 そしてその勢いのまま田崎はドローンの目へ右腕を突き入れる。


「EEEEEEEEEE!!!」


「五月蝿い悲鳴だな、死ね」


 本体と思われる目を貫いた田崎は、それを腕を引き抜くついでに右方向へ振り払う。


「ZZZEEEEEEEE!!」


 田崎が腕を引き抜く間、仲間がやられた事を見ていた残りの眷属四体は地を這う様に移動し、田崎へと接近していく。

 接近する間、頭上に浮かぶ輪は高速で回転を行い、虹色の発光を開始する。


「JUUUUUYAAAAAA!」


 田崎の背後から二体、左から一体、右から一体が天使の輪を回転させながら高速で接近していく。

 それに対して田崎はドローンの血の様な濁った液体で汚れた右腕を気にしながら立っていた。


「RTTTTTTTT!?」


 そんな田崎へまず最初に攻撃を加えたのは左側のドローンだった。

 前足を地面へ叩きつけると田崎へ向かって飛び上がり、鋭い足を突き刺そうとする。

 そしてその次に襲い掛かったのは後方から迫る二体だった。

 その二体は頭上で回転する光輪をブーメランの様に田崎へ飛ばす。


「ったく、手間取ら──」


「避けろ田崎! その輪に触れるな!」


「ッ!?」


 飛び掛ってきた一体の前足を左手で掴むと、田崎は後ろから飛んできた輪へと振り返りドローンを投げ飛ばそうとする。

 だがそれを物陰から見ていた山坂が制止すると、田崎もまた何かを感じ取ったのか真上へ飛び上がる。

 田崎が飛び上がった直後、輪はどこまでも真っ直ぐ飛んでいき、その軌跡は虹色になって残る。

 そして、その先にある壊れた砲塔を弄っていた眷属を光輪は真っ二つに切断してしまう。


「おいおい……」


 それを見た田崎は、自らを突き刺そうと抵抗するドローンを真下に居る二体へ向けて放り投げる。

 ドローンの二つの目が田崎の動きを見つめ、二体の内の一体が飛来するドローンへ向けて前足を二本掲げる。

 田崎に放り投げられたドローンはその勢いを保持したまま、地上で待ち構える一体の足へと突き刺さるがその威力を殺しきれず二体とも地面に汚い沁みとなって死んでしまう。

 そんな隣のドローンが死骸になるのを見つめていた隣の一体は、その直後に振ってきた田崎の手刀で両断されると以後は足を小刻みに動かすだけの死骸と化す。


「ちっ、何だあのわっかは!」


「お助けーーー!」


「あん?」


 遠くに居る眷族を切断した光輪を眺める田崎の耳に、聞きなれた助けを求める男の声が響く。

 田崎が目を向けると、蜘蛛に捕食されかかっている虫の様な行動を取る山坂が田崎の視界に映った。


「見てないで助けろおらぁ!」


「しょうがねえなぁ……」


 どうやら先ほど田崎へ迫っていた内の一体が山坂の声を聞きつけて襲いに行ったらしかった。

 山坂は一生懸命玩具の体に付いた尻尾で目を攻撃するが、ドローンは物ともせず前足を振るう。

 その前足は山坂の顔を掠め、人工皮膚の下にある機械の骨を露にする。


「QQQQQQQ……」


 追い詰めた獲物で遊んでいるつもりなのか、ドローンは山坂へ一気に攻撃を行わず甚振る様な行動を取る。

 だがそれが仇となり、山坂へと最後のトドメを刺そうとするドローンへ逆に田崎がトドメの一撃を振るう。

 振り下ろされた拳により、最後の一体は地面に黒い沁みを残して死亡する。


「大丈夫か?」


「も、もう少し速く助けろ! ったく……このクソが!」


 小さな二つの前足で顔を覆っていた山坂へ田崎は声を掛けると、山坂は顔を赤くし立ち上がる。

 そして照れ隠しなのか、自らを襲っていたドローンへ蹴りを何度も入れる。


「……んで山坂、何でさっきの輪に触るなって言ったんだ?」


「いや見れば分かるだろ、あれ超危険なのは」


「確かに物凄い切れ味だったが……俺は文字通り破壊不能だからなぁ」


「…………もしかしてお前タリブの兵装について覚えてないのか?」


「ああ!」


 ありえない物を見るような顔をする山坂に、田崎は露骨に不快な表情を見せる。


「細かい説明をしてやりたいが今は時間が無い、リヴァイアサンの中で待ってるお前のお姫様を釣り上げてやったらどうだ」


「お前はどうすんだ?」


「エクィローとの通信がジャミングされてるが一部の通信は使えるみたいだからな、あのクソ雌は呼び戻すのに少し時間をくれ」


「ジャミングねぇ……タリブの仕業か?」


「さあな、そんな機能を付けた覚えは無いが……もしかしたら空間切断の影響かもな」


 空間切断、という単語に田崎は首を捻るが山坂はそれ以上の説明を行わずドローンの死骸に向き合うと自らの尻尾を工具キットに変化させる。


「さーお前はお前でやる事やってこい、そして僕が危なくなったら直ぐに助けに来い」


「へいへい、んじゃ行きますかね」


 田崎はそんな山坂に背を向けるとメハメハが待つオケアノス内部へと飛び降りていく。

 そんな姿を横目に見ながら、山坂は現状について考え始める。


「……遠くで空間を切り出しているあのドローン、恐らく僕らもさっきまでああだったんだろう」


 死骸の中にある血管ともUSBケーブルとも取れる臓器を引きずり出し、山坂は機械と生物で出来た通信機を組み上げていく。

 だがそんな作業をしながらも、目は遠くに居る大型ドローンへ釘付けにされていた。

 そのドローンが持つのはキューブ状に切り抜かれた透明な空間だった。

 内部には人魚達が固まった状態で保持されており、見るものに不安を与えた。


「空間切断、時間と空間を切り出して保持する技術……空間管理鍵の応用……成る程、だからさっき天井をぶち抜いて以後あれは動かなかったのか」


 輪が切った空間を切り抜き、その内部を保持する兵装。

 それがタリブとその眷属に与えられた能力だった。

 元々は物が増えすぎた人類が編み出したゴミ処理兼デッドスペース活用の為の道具だったのだが……山坂はそれを兵器に転用した。

 そしてそれは見事に機能していた、魔族に対しても作成者の山坂に対しても。


「勘弁してくれ……っと、完成したか。 流石は僕、素晴らしい腕前と技術力」


 山坂はそんな遠くで空間を保持するのに忙しいドローン達がこちらに気づかない事を祈りつつ、通信機を完成させた。

 それは生物の臓器のように赤黒い色と脈動を見せていたが、山坂はさして気にする事もなく通信機の電源を入れる。


「GGGGGZZZZZZZZZZZZ────」


「うるせーー!」


 電源を入れた瞬間、強烈な音が山坂の耳を劈き、慌てて耳を防ぐ山坂。

 徐々に大きくなっていく音に山坂はたまらず通信機に対して蹴りを入れる。

 だが蹴りを入れたせいか余計に大きくなる音に、先ほど山坂が眺めていたドローン達が気づいてしまう。


「やっべやっべ! お、音が止まらんし!」


「山坂──を────!?」


「田崎か!? 音が五月蝿くて聞こえねぇ!」


 あまりの五月蝿さにオケアノスの内部に戻っていった田崎も叫び声を上げるが、通信機の隣に居る山坂には声が良く聞こえていない。

 そして背後に目を向けている隙に、海中から山坂へ迫る影があった。

 それは────。


「魂刺し/Soulstinger……!」


 オケアノスが目覚め、暴れ始めた際に山坂が乗っていた機体。

 それとタリブの眷属が融合した化け物だった。

 魂刺しは驚いたまま固まる山坂へその槍の様な左腕を突き出し、山坂を────。


「うぉぉおりゃああああああああああああああ!!」


「チェストオオオオオオオオオ!」


 貫く前に、更に海中から現れた女と男が破壊した。


「へ?」


 驚き固まる山坂の前に男女はゆっくりと着地すると、女がこう叫んだ。


「さっさと逃げるわよ!!!!!!」


「アッハイ」


 山坂はその勢いに飲まれ、首を大きく縦に振った。



ホームズガチャで爆死したので初投稿です

風邪が悪化したっぽいから寝るのだ…

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