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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ハワイ編
104/207

彼女を解放したら

https://www.youtube.com/watch?v=0xq-f4FrEX8

Persona 5 OST - Butterfly Kiss [Extended]


────────────────────────────────────────


「装置?」


 白一色で覆われた部屋に、永村の声が響いた。

 永村は手に持っていた湯飲みを机の上に置くと、興味深そうに山坂へと目線を向けた。


「そうだ、地球環境浄化用装置三つ。 それらについての説明をこれから行う」


「あー……そういえばこの計画に乗ったときにざっくりそんなの使うって言ってたねぇ、忘れてたよ」


「お前それでよくこの計画に乗ったな……普通計画の骨子部分について聞くだろ」


「ま、多少はね? ところで説明するってのに田崎君が居ないけどそれはいいの?」


 椅子の背もたれに寄りかかると、永村は周囲を見回した。

 部屋の中には中央にある机と椅子、そして永村と山坂の二人しか居らず田崎の姿は何処を探しても見当たらなかった。


「あいつは良いんだよ、元々兵器製造と開発は俺とあいつの分野だからな。 既に知ってる事を話してもしょうがねぇ」


「成る程、それは失礼したね」


「問題ない、お前は金とシステムにしか興味が無いのは知ってるからな」


 真顔で永村に対してそう答えると、山坂は手に持っていた紙の資料を永村へと放った。

 机の上に放られたそれは重量感のある音を立てながら机へ落下し、資料が少なくとも数百ページはあるであろうことを証明した。


「……今時紙の資料とは、山坂君も懐古主義だねぇ」


「これだからスパイクは困る、紙だからこその良さが分からないとは……嘆かわしい」


「はいはい、んじゃ説明よろしくね」


「いけ好かねぇやろうだ、だが請け負った。 仕事は仕事で大事だしこれからはお前もパートナーだからな」


 山坂はそう言うと、自らもまた椅子へと座ると手元の資料を広げた。

 最初の一ページ目にはこう書かれていた。

 人類変異種、並びに霊力根絶の為の浄化装置概要集と。


「ま、最初から数十ページは後で目を通しておけ。 大事なのは……えーと、78ページだな」


「はいはい……っと、こりゃ凄いね」


「どうよ、それが地球環境浄化装置、通称三神の一体タリブだ」


「名前はどうでもいいや、性能は?」


「お前のそういうところほんと嫌い! ……次のページを開け」


 山坂の自信満々なタリブの紹介を、興味なさそうに一蹴する永村。

 その対応に青筋を浮かべながら不機嫌な顔になる山坂だったが、素直に感情を吐露すると永村に次のページを開くように指示する。


「では掻い摘んで説明する、三神というのは霊力によって汚染された地球を浄化するための装置の通称だ。 こいつはその内の一体のタリブ、名前の下ネタは……興味なさそうだな」

 

「うん、全く無いね」


「マジで死ね! ……でその性能の中身だがやる事は基本的に三神は一緒だ、霊力を有する生命体から霊力を吸い上げて抹消する」


「抹消?」


「そうだ、霊力に汚染された生命は生きる為に必要なエネルギーに霊力が追加される。 そいつを枯渇させる事で塵にするんだよ」


 山坂はそう言うと資料の次のページを捲り、永村もそれに続く。

 次のページにはネズミが、その隣のコマには白い塵が映っていた。


「なるほどね、でも何で三体も作ったの? 凄くでかい一体でもいいんじゃない? 勝てれば良いわけだしさ」


「分かってないな永村……切り札っていうのは常に三つあるべきなんだよ、いや素直に言うと作業効率や司令塔としての役割とか色々あるんだがまあ大体は僕の趣味」


「ナルホドナー」


「ごほん、ともあれ三神の通常機能についての説明は以上だ。 次はタリブ独自の機構についての説明だな、114ページを開け」


 棒読みの永村をスルーしつつ、山坂は次のページを指定する。

 指定されたページと今のページの開く枚数を理解し、少し面倒そうな顔をする永村だったがそれは山坂も一緒だった。


「こんなに資料いらなかったな……誰だ紙で印刷したの」


「君なんだよなぁ……」


「次は気をつけよう、ではタリブの説明に入る。 こいつは簡単に言うと三次元空間に干渉できる影みたいなもんだ」


「影?」


「そうだ、まあこいつを見ろ」


 そう言うと、山坂は机の上に自らの手を翳す。

 手の下には影が出来、山坂は手を動かし影で机の上の書類を掴もうとする。


「普通は影ってのは現実には干渉できない、影は現実が動いた時に付随するシミみたいなもんだからな」


「つまりそのシミが現実に干渉できる様にした?」


「そう言う事だ、本体を三次元空間に置きながらもその位相を少しずらす事で無敵の存在が完成したのだ!」


「成る程、よく分からん。 所でそのタ何とかってのが無敵なのは良いんだけど、もし敵に回った時はどうやって対処するわけ?」


「はっはっは、タリブはAIにお前の思考をトレースしてるから裏切る時はお前も裏切ってるだろうが、まああれだ! タリブを何とかする方法は────」


────────────────────────────────────────


MD215年 8/5 14:35


 唐突に、それは世界を割って現れた。

 陽の光が差すと影が生まれるように。

 強大な霊力を持つオケアノスと天照の戦いに惹かれる様に、それは現れた。

 タリブ、現実を侵す染み。

 そしてその眷属を目の当たりにした山坂は、一瞬昔の事を思い出し青ざめる。


「もし敵に回った時はどうやって対処するわけ?」


 そんな永村の言葉が脳裏に響く。

 その時、山坂は何と答えたのだったか。

 顔の無い眷属の顔と目が合った時、山坂はそれを思い出した。


「対処方法は────存在しない」


 元々時間すら操る魔族を地球上から根絶する為に作成された装置だ、何があろうとも干渉されない様に設計されている。

 それは例え作成者達であろうと、例外は無い。

 この世に絶対はないと言うが、これは絶対の例外の一つなのだ。

 山坂は息を飲んだ。


「まさか……あれが敵になるとはな」


 そう呟くと、山坂は大きく空気を吸い込むと大声で叫んだ。


「田崎ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 撤退するぞ、タリブの相手は無理だ! 今すぐこのリヴァイアサンの外部に出てエクィローへデータをアップロードしろ!!」


「断る! メハメハを助けるまでは撤退はしない!」


「おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」


 渾身の叫びを即座に却下された山坂は先ほどの叫びと全く同じ声量で叫ぶが、それを更に掻き消すように甲高い金属と金属が擦れる音が響いた。

 眷属だ。

 およそ8メートルか9メートルはあるであろう巨体が、オケアノスの皮膚とも言える金属を引き剥がし動力炉へ進入しようとしていた。


「な、なんだあの怪物は……!」


「まさかオケアノスを襲っている怪物か!?」


「マルフォス様、ご、ご指示を!」


 そして、天井に空いた穴から覗き込む眷属を見た人魚達もうろたえ始めた。

 天使の輪を模した頭部の飾りに球体の頭部、そして本来あるはずの無い場所に無数に生えた目。

 眷属はその全身を使って恐怖を振りまいていた。


「くっ……こ、この化け物は」


「ふん、お前も終わりだな」


 眷属の姿に畏怖を覚えたのか、少し腰が引けるマルフォスに対して田崎が変わらぬ口調で話し掛ける。

 田崎は未だに人魚三姉妹に防がれていたが、田崎を抑える三人の内一人は既に床に倒れており、残り二人もまた時間の問題といった形になっていた。


「……どういうことです」


「言葉通りだ、俺達が作ったタリブは一切の例外なく全てを消す」


「俺達、作った……? まさか、あの化け物を作ったのがあなた方だとでも?」


「そう言う事だ、何で……タリブが本格的に来る前にメハメハは回収させてもらう! どけぇ!」


「きゃぁっ!!」


「中姉さま!」


 銛で田崎の両手の動きを封じていた二人の人魚だが、田崎は一瞬腕を引っ込めるとその場で回し蹴りを放ちセミロングの人魚を蹴り飛ばす。

 人魚はその田崎の蹴りの衝撃で動力炉の中心に備え付けられた水槽へ叩きつけられ、力なく水滴が落ちるように水槽をなぞって地面へと落下する。


「後はお前一人だ、雑魚に用事はねぇ、失せろ」


「お断りします、私達はマルフォス様を守る盾にして矛、貴方の様な侵入者──」


 姉が蹴り飛ばされても尚、田崎を抑えていた人魚の一人は田崎の問いかけに首を横に振る。

 そしていなくなった姉の分も含めて田崎を抑えようと銛を動かした瞬間、人魚は腹部に猛烈な痛みを覚えた。

 焼けた鉄を押し付けられるような、そんな痛みを。

 最初は鈍く、だが徐々にそれは鋭さを増し、最後には彼女の体を貫いた。


「に、ぃ、!」


「覚悟は立派だが、仕える相手と挑んだ相手が悪かったな」


 田崎は人魚の腹部に深々と突きたてた腕をゆっくりと引き抜くと、人魚を無造作に地面に投げ捨てる。


「待たせたな、次はお前の番だ」


「くっ、ぐっ……! 何故だ、何故私の邪魔をするのです! 私は人類の為にこの千年……!」


「頑張ったんだろうな、そいつは認める。 認めるが……こっちの計画とは相容れないんでな、お前の成果だけ貰っていく」


「そんな横暴が許されると──!」


「許されるさ、力の無い奴は有る奴に従う以外に道は無い。 今のお前の様にな」


 そうして、田崎はゆっくりと近寄りながら問答を続け……。

 ついにはマルフォスの眼前まで辿り着き、胸倉を掴み上げる。


「さぁ、メハメハを開放しろ! その後何処へなりとも逃げ失せるが良い!」


「断る……!」


「無限に蘇れるからか? そんな事をしている時間の余裕はないと思うがな、俺が無限に殺すし、そもそも3度目辺りでタリブが駆けつけてくるだろうよ」


「く、くそ、この私の計画が、お前の様な男に……!」


 田崎の要求を一度目は退けるマルフォスだが、田崎は掴んでいる手に更に力を入れる。

 更にその手は溶け行く鉄の様に赤みがかり、マルフォスの肌を服ごと燃やしていく。

 マルフォスはその痛みと、天井の上から中の光景を観察してジッとしている眷族を視線に入れ、項垂れると田崎の要求を飲んだ。


「メハメハをドリームマシンから開放しろ!」


「マルフォス様!? し、しかし……!」


「速くしなさい、私が死んでもう一度マシンから生まれる前に」


「は、はっ! 了承しました!」


 田崎に胸倉を捕まれた状態で、マルフォスは周囲の人魚達へ指示を送る。

 最初はマルフォスを助けようとする人魚達だったが、マルフォスの指示と状態を見て素直に指示に従う。

 かくして、眷属が彼らの動向を見守る中メハメハは装置から取り外される運びとなる。

 そんな中、山坂だけはしきりに田崎に怒鳴り散らしながら撤退を叫んでいた。 



今日を月曜日だと思っていたので初投稿です

すまぬ、すまぬ……


欺瞞の神、タリブ/Talib,the Deceiver   ⑫


伝説のクリーチャー:エクィロー


欺瞞の神、タリブを貴方が唱えた時各対戦相手と貴方は手札を7枚になるように山札から引く。

その後貴方は対戦相手の手札のカードを望む枚数、そのマナコストを支払う事無く唱えても良い。


欺瞞の神、タリブは各アップキープの開始時にフェイズシフトする。


12/12

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