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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ハワイ編
103/207

時間を稼がれたら

https://www.youtube.com/watch?v=7uJA1am5w14

紅蓮の騎士

MD215年 8/5 14:28


「さぁ次だ、遠慮せずどんどん掛かってこい」


 群がる生物兵器を焼き払い、田崎は再び装置の奥側。

 人魚達に守られている男、マルフォスへの挑発を行った。


「調子に乗って……! ならば、これは────」


 田崎の挑発を受け、マルフォスは腕を水平に振り装置の起動を促した。

 その時、オケアノスの内部を強烈な振動が襲った。

 

「!?」


「な、なんだ!?」


「でけぇな……! おい、何かに掴まれ! これは何かやばそうだ!」


 その振動は生物兵器を生み出した装置の水槽の中を大きく揺らし、同時に田崎達が立っていた地面も立っているのが難しいほどの揺れとなる。

 田崎、山坂、マルフォス、そして他の人魚達も山坂の叫びに呼応して田崎はヤドカリ型の生物兵器の死骸に。

 マルフォスは近場の手すりに、そして山坂は洗脳していた人魚を地面に体育座りさせると胸の谷間に潜りこんだ。

 

「…………お、収まったか?」


「今のは一体……」


「震災の記憶が蘇った……おしっこ漏らす所だったぜ」


 三人が物に掴まっていると、2分ほどが経過した頃には揺れはしっかりと治まり三人は安堵の息を吐く。

 そして少しして全員で顔を見合わせると、慌てて互いに戦闘の体勢を取る。


「ちょいとケチが付いたが……改めて叩き潰させてもらう!」


「俺はもう少しこの胸の中に居たい……おっぱい柔らかい……死ぬ……」


「勝手に死んでろ!」


「ほ、ほ……報告します!」


 田崎が構えを取ったにも関わらず、山坂は人魚の胸の中で只管胸を揉みしだく。

 そんな山坂に罵声を浴びせる田崎。

 そういったやり取りをしていると、壁際で機械を操作していた人魚が血相を変えて振り向き、叫ぶ。


「報告? 今の状況が見て分からないとでも言うつもりですか? 貴方の報告を聞いているような余裕は──」


「オケアノスが、オケアノスが……攻撃を受けています!」


「そんな事は今までにもあったでしょう、海生生物辺りが──」


「違います! 今までに見たことの無い存在で……あぁもう! モニター出します!!」


 人魚は決死の表情で報告するが、マルフォスは振り返りもせずに冷静に彼女の報告を取り合わない。

 そんなマルフォスに業を煮やしたのか、人魚はマルフォスに有無を言わさず壁面に備え付けられた、天井ほどまでの高さがあるモニターを点けた。

 そして、彼らはそれを見た。

 マルフォスや人魚にとっては初めて見る。

 そしてそれ以外の二人、外から来た田崎と山坂にとっては久しぶりに見る三神の姿だった。


「これ……は……一体……」


「現在、この生物の攻撃によってオケアノス頭部付近が損壊! また、各ブロックにも小型の怪物が現れています! ……マルフォス様、ご指示を!」


「くっ、この忙しい時に!」


 モニターに映し出された三神の姿を見て、人魚達は目を見開き、マルフォスは驚きを隠せなかった。

 そんな人魚達にモニターを映し出したオペレーターの人魚は報告を行い、マルフォスへの指示を請う。


「オイオイオイ!」


「何で『タリブ』がここに!?」


 人魚がマルフォスへの指示を仰ぐ中、この二人もまた驚きを隠せずに居た。

 山坂は人魚の胸を揉む事を中断し、食い入るようにモニターを見つめる。

 モニターにはオケアノスの頭部と戦うタリブが映っており、その周囲にはタリブの眷属達がオケアノスの内部へ侵入しようと群がっている姿が見えた。


「やべぇよやべぇよ……」


「ちっ、永村の奴が呼び出したのか!?」


「んなわけあるか! タリブは自分で考えて自分で任務を選ぶ自律型だ、マンジェニみたいに単一の命令をこなすだけとは違う!」


「ってことは……」


「あいつはあいつ自身が最高の効率だと選んでここに来たってことになる、そして……ここに長居する訳にはいかないってことだ」


 山坂はそう言うと、体育座りさせていた人魚の頭部へ再び乗っかり人魚の頭を叩く。

 すると人魚は体育座りを中止し立ち上がると田崎へ向け叫んだ。


「くそっ、だからあの時撤退しておくべきだったんだ! おい田崎、さっさとその何とか言う女を連れてこい! このままならタリブは間違いなく僕らも殺すぞ!」


「分かってる! おい、クソ野郎!」


 田崎もまた戦闘の構えを解かないまま、人魚達への指示を行っていたマルフォスへ叫ぶ。


「……! 野蛮人はTPOも弁えられないと見られる、暫く黙っていて欲しいものですね」


「メハメハを開放すれば直ぐにでも黙ってやる。 ……あいつは何処だ」


「答える義理はありませんし、彼女は貴方の物でもありません。 あれは私の物です」


「屑が……他人を物扱いする奴は反吐が出るぜ」


「山坂氏もそういうタイプだと思いますが?」


「あいつは俺が矯正中なんだよ」


 人魚を操り、何事かを行っている山坂へマルフォスが目線を向けると田崎は呆れた顔をしながらもそう言うと強く拳を握りしめる。


「最後通牒だ。 ……メハメハを出せ」


「相変わらずの上から目線ですね、それに最後通牒も何もあれは私の物だ。 お前に渡す様な物は何も無い」


「そうか、なら死ね」


 マルフォスの言葉を聞くや否や、田崎は力強く地面を蹴りだす。

 金属の床はその衝撃でへこみ、甲高い音を一瞬鳴らす。

 そして床がへこむ音と同時にそれを掻き消す金属同士のぶつかり合いの音が動力炉に響いた。


「ちっ、邪魔だ!」


「ここから先は……」


「まかり通る事叶いません」


「どうかご容赦を、今は火急の時ゆえ外の怪物をオケアノスが妥当するまでは我等三姉妹が時間を稼がせていただきます」 


 マルフォスへ後一歩で田崎の拳が届く、という所でそれは防がれた。

 男を護衛していた三人の人魚達が黒く輝く銛を三人同時に合わせ、田崎の拳を防いだのだ。

 その黒く光る銛は、田崎の圧倒的な暴力を受けても尚罅一つ入らずに輝きを見せていた。


霊力黒鉄ブラックスティールか、珍しい物を見た」


「お分かりになるとは」


「お目が高い」


「最終戦争以前に作られたこの金属、破壊不能の字は伊達ではありません。 お時間、稼がせていただきます」


 その輝きを見て、田崎は舌打ちをすると再び強く拳を握った。


────────────────────────────────────────


「あああやばいやばいやばいばいやー!」


 田崎が戦っている頃、山坂は……。


「マルフォス様の命令、そしてダリルの仇! 皆、あの頭部のきもいのを仕留める!」


「「「「イエス・マム!」」」」


 囲まれていた。

 指揮官と思われる人魚が一人に、残りは四人の兵士。

 そしてその後ろにはオペレーター達が外の状況を必死にモニタリングしていた。


「えぇい、クソ! タリブが来ててお前ら何ぞと遊んでいる暇は無いっちゅうのに……!」


 徐々に包囲の輪を狭めてくる兵士達に、山坂はたじろいだ。

 タリブ。

 管理者達が最終戦争以前に設計図を書き上げ、眠っている間に組み立てられた二体の内の一体。

 触れられず、叡智を持ち、欺瞞の王。

 かの神の使命を山坂は思い出していた、それ即ち……。


「人類以外の殲滅……このままここに居たら一瞬で俺の精神ごと塵芥にされちまう、何とかしてエクィローに意識データを飛ばさないとやばい……!」


 山坂はそんな事を考えながら、必死に逃げ場を探していた。

 何故そんな事をしているのかと言うと先ほどからエクィローへの意識データの転送を行っているが、電波障害が発生していて行えないのだ。

 これはひとえにオケアノスの特殊な内部構造のせいである、田崎が飲み込まれてからずっと意識を機械の体に閉じ込められていたのもオケアノスのせいである。

 そして、その特殊な構造は現状とても厄介だった。

 何せこの巨大なリヴァイアサンの体の外に出なければいけないのだ。


「田崎が女にお熱じゃなきゃぁ楽勝だったんだろうが……あぁくそ、さっさと逃げておけばよかった!」


「何をごちゃごちゃと……総員、掛かれーー!」


「「「「ウラーーーーーー!」」」」


「くんじゃねーーー!」


 隊長の号令で青い銛を構え、一斉に兵士達が人魚に乗った山坂へと突撃を開始する。

 山坂は玩具の足で自らが乗っている人魚の頭を叩くと、人魚を真上に跳躍させた。


「飛んだ!?」


「えぇい、ママよ!」


 人魚は2メートルほど跳躍すると、頭部に乗った山坂を壁際。

 巨大な水槽を抱える骸骨の方へと投げ飛ばした。


「空も飛べるはずーーー! 具体的な滞空時間は五秒ほどであるが!」


「あの方向は……、全力で止めろ! 動力炉へ到達させるな!」


 投げ飛ばされた山坂を兵士達は止めようとするが、既に突撃を開始していた為兵士達は初動が遅れ……山坂は難なく壁に激突し装置へ到達した。


「いってぇ! だがナイス投球!」


 金属と金属がぶつかるような鈍い音を立てながら、山坂は頭を擦りながら立ち上がる。

 そして目の前にあった巨大な骸骨を見て若干びびりながらも、周囲を見渡し装置のとある場所を探す。


「えーっと、確かここら辺のハッチに緊急停止装置が……」


「くそ、逃すな! 装置には指一本ふれさせるな! 止めろ!!」


「ハッハッハ馬鹿どもめ! 製作者を甘く見るなよ!」


 赤くさび付いたハッチに玩具の尻尾を差し込むと、梃子の原理を応用して山坂は少しずつハッチを開いていく。

 赤茶の埃が周囲に舞い、山坂は咳き込みながらハッチを完全に開くとその中身を見て驚愕した。


「めんどくせー……何考えてこんな沢山ボタン押さなきゃ止まらない様に設計したよ僕」


 ハッチの中には緊急停止ボタンと書かれたボタンが六つほど並んでおり、左から順に1から6までの番号が割り振られていた。

 そして、山坂の文字と思われる掠れた字で『左○ら○すこ○』と虫食い状態で書かれていた。


「あー……左から押すこと?」


「居たぞ! 捕まえろ!!」


「げっ、やべぇ!」


 文字の解読に目を細め考えていると、背後から人魚の兵士の声が響く。

 それに気がつき、山坂は慌てて左からボタンを叩いていく。


「そ~れ、ポチっとな!」


 どこぞのロボットアニメの主人公の様な台詞を言いながら、山坂は左から順番にボタンを押していく。

 1、2、3、4───

 山坂がボタンを押すと水槽の中に波が広がり、メハメハが治まっている黒い球体から煙が噴出す。

 煙が噴出すと次に球体に繋がれていたどろどろの液体が流入を止め、徐々に球体が開かれていく。


「捕まえたぞ!」


「おげぇーっ!」


 だが山坂が3つ目のボタンを押したところで、山坂は人魚達に掴まってしまう。

 胴体を両手で抑えられ、山坂は玩具の手足をばたばたと動かすが鍛えられた人魚達には大した抵抗にもならずそのまま持ち上げられる山坂。


「この気持ち悪い人面犬が……死ね!」


「ぐわー! 頭部だけは許して! 頭部だけは許して!!」


 そして兵士は渾身の力で床に山坂を何度も叩きつける。

 一度目で視界が揺れ、二度目で目が眩み、三度目には火花が散った。

 山坂が四度目の衝撃を覚悟した時、不意に叩き付ける動作が止まった。

 動作が止まり、山坂は気づいた。


「……揺れてる? 何だ、下か? いや、これは……」


 動力炉が揺れていた。

 先ほどのタリブの一撃ほどの揺れではないが、だが確かに揺れていた。

 そして揺れと同時にバキバキと金属を引き剥がす音が鳴り響き……山坂の視界に六つの太陽が映った。


「…………勘弁してくれ」


 太陽と同時に、それを遮る灰色の存在。

 タリブの眷属もまた視界に映った。 



七月もそろそろ半ばなので初投稿です

また挿絵を頼みたいけど色々とお金が足りなくてピンチでごわす


そして更新が遅れるといったな、あれは嘘だ


霊力黒鉄の銛   ⑥


装備 ⑥


装備しているクリーチャーが攻撃かブロックに参加したとき、そのクリーチャーはターン終了時まで破壊不能を得る。

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