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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ハワイ編
100/207

作り変えるもの/Matter Reshaper

https://www.youtube.com/watch?v=899kstdMUoQ

Persona 4 -Reincarnation- Specialist

MD215年 8/5 14:18


「メハメハ、助けに来た!」


「げぇっ!? 何でこれがこんな所に!?」


 オケアノス内部、人魚達が住むコワーラの町を越えて更に奥。

 動力炉と呼ばれる場所に彼らは居た。

 その動力炉に進入した田崎、山坂は思い思いの声を上げる。

 

「何だこりゃ……気色悪いな、おい山坂、お前何か知ってるのか?」


「あ、あー……」


 動力炉の扉を吹き飛ばし、中に入った田崎が最初に見たものは10メートル程はある骸骨だった。

 その骸骨は腹部の辺りに巨大な球体の水槽を抱きかかえており、中にはこぶし大の大きさの細胞卵が幾つか浮遊していた。

 それを見た田崎は、あからさまに怪しい声を上げた山坂へ質問する。

 だが山坂は間延びした返事をすると顔を背ける。


「よーし、何か知ってんな? 怒らないから正直に答えろ」


「あからさまに拳を握りながら言う台詞じゃねえだろ! あ、やめ、やめて! 殴らないで!」


「────山坂?」


 田崎と山坂がいつものじゃれあいを見せる中、田崎が蹴り飛ばした扉に潰されていた男が声を上げる。

 歌姫の祭祀マネージャー、マルフォス。

 マルフォスは重たい扉を両手で脇に避けると立ち上がり、服の埃を払いながら自身のモノクルをゆっくりと直す。


「今、山坂と仰いましたか?」


「あぁ? 誰だてめぇ」


「失礼、申し遅れました。 私は……マルフォス・J・クライスと申します。 ……それで、貴方のお名前は山坂憲章様でよろしいでしょうか?」


 モノクルを直しながら、ゆっくりと近づいてくるマルフォスに山坂は敵意の眼差しを向ける。

 だがそんな敵意を向けられてもマルフォスは優雅に一礼をし、自己紹介を行う。


「まあ正しいが、それがどうした。 ぬっ、もしやこの僕の名声が文明崩壊後にも響いているのか!? 照れる」


「本人なのですか!? では、このドリームマシンを設計、開発した……山坂様ですか!? 本当に!?」


「え、お前これの事知ってんの?」


「えぇ、えぇ! 存じていますとも! 私はこれを使用する為に技術者として最終戦争に参加していたのです!」


「おい、何の話してるんだ? 山坂」


 名を尋ねられた山坂は、それが正解であると告げるとマルフォスの今まで対外的な関係の為に取り繕っていた様な顔が人間的な笑みを見せる。

 そして骸骨を手の先で指し示し、更に山坂に尋ねると山坂は驚いた顔でマルフォスへと尋ね返す。

 その会話についていけない田崎は、自らの肩に乗っている山坂へと小声で話しかける。


「あー……どうやらあの男は最終戦争以前、つまり俺達と同じ人間らしい。 おまけにあの失敗作の技師だったとか」


「マジか」


「らしい」


 二人がこそこそと話し合う中、感極まったのかマルフォスは目に涙を浮かべながら最終戦争前のアメリカ軍が取っていた敬礼のポーズを取る。


「私は、今再び人類最高の頭脳を持つお方に会えて感動致しました!」


「お、おう……ありがとう」


「それで、何時魔族の殲滅を開始なされるのですか? 私はその時の為に、このオケアノスを建造し長い時間を掛けて人魚達の統制に成功しました!」


「あん? 作った? 統制? どういうことだ」


 マルフォスの言葉に、山坂は珍しく引きながら適当な返事を返す。

 するとマルフォスから思いがけない言葉が飛び出し、田崎は猜疑的な視線と質問を投げかける。

 

「……おや、貴方もいらっしゃいましたか。 失礼、山坂様しか目に入っていませんでした」


「こいつ今すぐ殺してもいいか?」


「まぁまぁ……で? 作っただの統制ってのはどういうことだ」


「聡明な山坂様であればお分かりかと思いますが、ご説明しましょう」


 だが田崎からの質問を受けたマルフォスは、山坂へと取っていた態度を突然硬化させる。

 それが気に障った田崎は、戦闘体勢を取るが山坂がそれを宥め、マルフォスに改めて同じ質問をする。

 するとマルフォスは再び態度を軟化させ、丁寧に説明を始めた。


「まず、最終戦争中にあの忌々しい長老級の魔族に凍らされた我々の艦隊はそのまま水底へと沈みました……私は偶然、氷から逃れる事が出来ましたが他の船員は皆氷漬けに」


「凍らされた……そんな長老級も居るのか」


「その後全てが凍りついた船の中で私はこのドリームマシンを起動させたのです、望んだ者の願いを叶えるこの機械を!」


「起動させた? ってことはお前、まさか……」


「えぇ、当然望みを叶える為の対価は払いましたよ。 氷漬けになった職員達が丁度334人居ましたので」


 嬉々とした顔で、マルフォスは己の過去を告げる。

 最終戦争で技術仕官として参加していた事、長老級の魔族によって乗船していた戦艦や他の艦隊が氷漬けとなり海へ沈んだ事。

 そして、このドリームマシンと呼ばれる骸骨を起動し、自らの仲間を生贄に捧げた事を。


「私が望んだのは魔族に負けない兵器の製造と、手足となる駒の作成、そして私の長寿でした。 ドリームマシンはその願いを見事に叶えてくれましたよ」


「……成る程、それで人類が何れ再起する日をずっとこの海底で待っていたということか」


「仰るとおりです、そして今日、貴方が現れた! この日をどんなに待ち望んでいた事か……不本意ですが、その隣に居る田崎氏も含めあなた方二人は人類最高の頭脳を持つ人たち。 そんな人たちがただ何の意味もなくここに現れるとは思えません!」


「いやまぁ……うん……ここに来たのは偶然なんだよなぁ……って言えない雰囲気」


「恐らくは人類復興の為に備えていたプランか何かがあるのでしょう!? 私にもそれを手伝わせていただきたい! その為にこのオケアノスと人魚達は存在するのですから!」


 マルフォスは若干早口でそう告げると、更に田崎たちへと歩み寄り、右手を差し出す。

 田崎と山坂はそれを見て二人で顔を見合わせると、互いに頷き……マルフォスの右手を払った。


「!?」


 そして、間髪いれずに田崎は驚愕するマルフォスの顔面へ拳を叩き付けた。

 マルフォスは先ほど田崎が入ってきた時と同じように壁へと叩きつけられ、潰れたトマトの様なマルフォスが出来上がる。


「答えはノーだ、クソ野郎」


「お前が生身の人間のままだったんなら手を取ってやったんだが……ドリームマシンを使って得た長寿があるってんなら残念ながら不合格だ」


「な、何故……私は、人類の為に……」


「人間じゃないからさ、我々が助ける人間の定義は『霊力に適合していない二足歩行を行うホモサピエンス種』であることだからな」


「そう言う事だ、お前の努力は認めるが……お前は助けるに値しない。 メハメハのこともある、大人しく消えろ」


「馬鹿な……私は、私の千年は……こんな──」


 そう言われ、マルフォスは絶望した顔で力なく顔を項垂れさせる。

 

「……死んだか、存外あっけない終わりだな?」


「まああいつが残した技術と成果は接収するとしよう、お前もさっさと自分の目的を果たせよ」


 壁面に大きな赤い染みを残したマルフォスを哀れんだ目で見ると、山坂は田崎の肩から飛び降り機械を操作していた人魚達へと走っていく。

 田崎もまた、マルフォスへ手を合わせると手近な場所に居る人魚へ目を付け、声を掛けようとする。


「成る程、あなた方の答えは理解しました」


「「!?」」


「大変悲しいことですが仕方ありません、あなた方がそういった行動を取るのであれば私も対抗せざるを得ません」


「……さっきの奴は完全に死んでる! 生体反応は確認できん! 何処に居る!?」


 人魚達へ近づいていた山坂は、突然のマルフォスの声に立ち止まる。

 即座に先ほど田崎が殺したマルフォスへスキャンを走らせるが、その生命活動が停止している事を確認すると田崎へ向かって叫ぶ。


「ここですよ、あなた方の目の前です」


 マルフォスを探し回る二人に対して、声は二人をドリームマシン──骸骨──の方へと視線を誘導する。

 骸骨が抱える水槽、その中の一つの細胞卵が急速に細胞分裂を始め……数秒後には先ほど死んだマルフォスへと生まれ変わる。


「困りましたね、これで生まれ変わるのも102度目です」


「そういうところが人間じゃねぇって言ってんだよ」


「それはあなた方にも言えることでしょう、どういった方法でかは知りませんが最終戦争以前から生きているというのであれば。 それとも自分達は例外だとでも?」


 新しく生まれたマルフォスは、水槽の内側から透明な膜を通り抜けるように外へとすり抜け、外へと着地する。

 すると人魚達が新しい衣服を運び、着せていく。


「ふん、この計画に例外なんてねぇ」


「その通りだ、僕達はテロメラーゼ延長手術を受けた時から……いや、そもそもこの計画に乗った時から自分の人生なんて投げ捨ててるんだよ」


「テロメラーゼの延長……成る程、思い出しましたよ。 あんな成功確率0.0000001%の手術を受けた人が居るとは正直驚きです」


「何、70億居た人類の内7人も成功するんならいけるだろ。 僕はガチャ運は強い方でな」


 マルフォスの言葉に、田崎は真顔で、山坂はやれやれと言った様子で首を横に振り答える。

 自らの人生は既に捨てていると。

 そして、二人が語った寿命延長手術の名前を聞きマルフォスは再び驚く。

 だが山坂はしたり顔でそう告げ、笑う。


「無駄話は終わりだ、メハメハを開放しろ」


「お断りします、あれは私の手足となる為に作った道具。 そもそも道具とはいえど体は魔族の女、何故其処まであれに拘るのです?」


「強い奴がお前みたいな雑魚に利用されてるってのが俺は嫌いでな、もっと言うなら……お前のやり方が気に入らない」


「……貴方達は本当に私を驚かせてくれますね、人類最高の頭脳の一つからそんな頭の中まで筋肉が詰まったような台詞を聞くことになるとは思いませんでしたよ」


「僕も正直引く」


「お前はどっちの味方だよ!」


 マルフォスの言葉に同意して頷く山坂に、田崎は怒鳴る。

 山坂は少し悩んだ後、自らを指差ししにやりと笑う。


「それではそろそろ時間稼ぎも良いですか……千年振りに同胞に会えたと思っていたのですが、殺し合いをしなければいけないというのは悲しい事です」


 そう言うと、マルフォスは指を打ち鳴らす。

 すると今までの会話中、ずっと背後で増えていた細胞卵が活性化し……要塞のように兵器を積んだヤドカリや、二足歩行をする真ん中に大きな口の空いたヒトデ等が大量に現れる。


「あ、やべ、普通に会話に夢中で気づかなかった」


「雑魚がわらわらと……さっさと片付ける! 行くぞ山坂!」


「玩具の機械犬ボディにあんまり期待すんなよ、田崎!」


「では始めましょう、あなた方が私を否定するのなら私は私のやり方で人類を救うだけです」


 かくして、動力炉内部での戦いが始まる。

 海上のオケアノスとの戦闘が始まってからおよそ2時間半が経っていた。



来月末には無職に戻っている可能性が高いので初投稿です

車のローンだけが残るのはやべぇよやべぇよ……


作り変えるもの、マルフォス/Marfoth'Matter Reshaper  青白②


クリーチャー:多相の戦士


作り変えるもの、マルフォスは多相の戦士であると共に人間としても扱う。


作り変えるもの、マルフォスが戦場に出た時あなたは自分のライブラリーの上から3枚を見て一枚を手札に加える。


作り変えるもの、マルフォスが死亡した時、このクリーチャーを戦場に戻す。


2/6


「全体の為には仕方の無いことです、効率的なシステムを構築しましょう」


「それが例えどんな犠牲を払うものでも」

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