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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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72/88

ソウマ編 久しぶりのステータス確認

9月11日

誤字脱字報告ありました。訂正させて頂きます。有り難うございます。


あれから幾度と転送陣を渡り、敵を全滅させながら進むこと一気に9階層。

進むごとに出現する敵の数は多くなってきており、今まで1フロアに出てきたヘブンズツリーも、エンゼルナッツやヘブンズナッツの他に、黄色の実から更に熟成させてウールナッツ・マンまでオレンジ色となった実から生成するようになってきたから、厄介だ。


9階層にたどり着き、このヘヴンズツリー・亜種と周辺の生成された魔物を倒した俺達。

全て倒して現れた転送陣は普段の色の発光とは違い、より赤く危険なプレッシャーを感じさせる転送陣が地面に浮かび上がってきた。

恐らくその事から考えられるに、この赤の転送陣に飛び込めばbossの間へと繋がっている可能性が高い。


カタリナに相談し、先へと進む前にここで少し一旦休憩を挟むことにした。


カタリナにアイテムボックスより取り出したリンゴのような果実を渡す。

果実をかじると新鮮な果汁が口の中を満たし、芳醇な甘い香りが鼻腔を伝い、疲れた心を癒してくれた。





因みに攻略中に契約の指輪(白銀)の中で服従中のエンゼルナッツの名前をエルと決めた。

安直なネーミングセンスなのは解っているが、なかなか他に浮かばなかったんだよ。


エンゼルナッツのモンスターランクは、確かゲーム中ではハイノーマル級だったかな。



名付けたあとエルのステータスを確認したらこんな感じだ。








名前【エル】


種族 エンゼルナッツ


職業

ーーー


スキル

殻再生・生成(F) 殻脱着(E)


常時スキル

絶対服従 聖属性(小) 未果実

精魂接続(アルトラルリンク)→現在マスター側の強制封印中のため接続出来ません。


魔法

ーーー








基本的に魔物に職業はない。

後天的に取得することもあるが、エルの職業欄は何も表示されていなかった。


エンゼルナッツはその名の通り天の実使い…御使いではなく実使いだ。

イベントモンスターの中でも一番弱いのだが、希少な属性である聖属性を持ち合わせていた。


しかし、精魂接続(アルトラルリンク)はやはり俺が原因なのか。

強制とあるが…多分、召喚器【漆黒星天】の無理な使い方をした副作用だと思われる。他にも表示されてないだけでバットステータスかついている可能性もある。

まぁ、アレをしなければ間違いなく死んでいた。だから甘んじて受け入れよう。


エルの変わったスキルとして絶対服従…いや、何も言うまい。







気を取り直してついでに自分のステータスも久しぶりに確認してみる。




名前【ソウマ】


種族:人族→New


職業

閃弓士 LV24


サブ職業

魔物使い LV50 limit→New


スキル

弓術補正(C) 片手剣補正(D) 軽量防具装備補正(C)

魔眼(魔力感知) 思念操作

召喚器【漆黒聖天】→神気補充中

刀剣技補正(E→D)New 弓技(D)


常時スキル

見切り 体術 鷹の目 モンスターテイム+New

精魂接続(アストラルリンク)→現在使用不可

全ステータスup(恩恵)


魔法

巨人魔法【巨人の腕】(第2段階)

取得条件を満たすことで他巨人魔法解放可能】


身体強化

全身身体強化魔法(小)→全強化へと昇華(中)

2段ジャンプ



称号

継承者

異世大天使の加護

亜神討伐者→New(ステータス補正(中)神系統に対して補正+)












全身身体強化魔法をちょいちょいと使っていたお陰か、昇華を果たして全強化へと至ったようだ。

これまでの強化よりも効能が上がったのは地味に有難い。消費spは少し増えるが気にならないほとだ。


他にも剣技を使い続けたせいか【刀剣技補正】が上がっており、逆に弓技補正は全く上がっていなかった。



ついにサブ職業である魔物使いのLVがこれ以上は上がらず、限界が来たためにlimitの表示があった。

limitボーナスとして常時スキルであるモンスターテイムの精度上昇により+となり、若干だがテイムが成功しやすい仕様となったようだ。

また使役する魔物の成長も補正される。

いずれサブ職業の限界を最大の100へとしたいものだ。





他に気になるとしたら、ステータス欄の種族のマークが点滅している。

気になっていると、アナウンスの声が聞こえてきた。



【キャラクター名ソウマ

……秘匿性の高い種族クラスチェンジアイテムを感知。特定の必要称号を感知。


クラスチェンジアイテム名 サンダルフォンの神血石(イコル)と媒介するグランドアイテム 漆黒の短剣。

これらを使うことに事により高位(ハイ)種族(オルタナティブ)へとクラスチェンジすることが出来ます。


また、使用時元のアイテムは全て無くなります。

クラスチェンジしますか?

Yes or NO?】




































…はっ、意外なことで驚き過ぎて暫く固まってしまっていた。

身に覚えがないが、サンダルフォンの神血石(イコル)なんていつの間に?あの修練の時にだろうか?全く記憶にない…ぞ?



兎も角、これはラッキーな話だと思う。寧ろ、少し怖いくらいなのだが。


しかし、失うモノも少なくない。焔巨人となったサンダルフォンとの闘いで入手できた漆黒の短剣。

恐らく失えば2度と入手不可能だろう。

修羅鬼や竜鳥戦などと文字通り死闘を繰り広げた時に、苦しいときに何度も救ってくれた。

bossのような高い異常耐性値持つ存在にも構わず、突き抜けて状態異常にしてくれる頼もしさは、ソウマを何度も助けてくれた…切り札のような存在なのである。



迷っていると、異世界大天使の加護の知識補助より補正説明が表示された。







【ハイヒューマン・エリヤ】

人の身で極限を越えて完成された希少種族(ハイヒューマン)

更に巨神の系譜であるサンダルフォンの持つ深淵(きょじん)神秘(てんし)(イコル)を限りなく濃く受け継ぐ唯一無二の存在となる。

高い戦闘能力に加え戦闘感に長け、戦えば戦うほど成長しやすい特性を持つ。



人族→全ステータスアップ(小)*戦技補正(微)は種族変更に伴い、変質します。





新たに種族特性として

古巨人(オールドブラッド)(デプス)(生命力増大と巨人魔法負担軽減)】

第六感(シックスセンス)強化】

【全抗魔力(魔力を伴う全ての攻撃に対して抵抗値上昇)】がスキル覚醒されます。


また、継承者の称号を有しているため、種族変更にて特定巨人より一部チカラを受け継ぐ継承、倒すことで一部略奪が可能となりました。











うーん、うーん…ハイヒューマンかぁ。しかも、唯一無二の新しい種族へと進化。

何だかお腹いっぱいな…胸焼けする気分だな。一旦保留だ保留。



勿論、サンダルフォンの加護を得ているからこれほど優遇された種族へと変更する機会に恵まれているのだろうけど。

ゲームの時は種族変化や進化は各ユーザー一度きりだと決められていたし…もし他のプレイヤーがいれば贅沢な悩みだと映るだろうな。





俺の友人であるユウト…恐らくはユウトもこの現実化したエルダーゲート・オンラインの世界にいるはずなのだ。しかも、70年もの前に。


ユウトの所属するギルドの長アイラ・テンペストと出会い、彼がこの世界に来ていることを知った。

しかし、現在はユウトはどうやら何か大事の案件を扱っているらしく、ユピテルの町にはいなかった。

…よし、この件が片付いたら紹介状を片手にすぐサルバドール迷宮遺跡へと向かいたかったけど、ユピテルへ立ち寄ってアイラさんにユウトの所在をしっかりと聞こう。

何だかあのとき聞けない雰囲気というか…そんなものを感じていたからな。



因みにユウト自身の種族は人族ではなく、長であるアイラさんと同じく魔人族と呼ばれる種族へと変更をすませていた。







体と心を休めた俺達は、10階層となる転送陣前にて最後の準備を行う。

武器の点検、持ち物の確認…っと、アイテムボックスに焔巨人(フレイムタイタン)の項目を発見した。




そう言えば、レガリアに後で与えるために焔巨人(フレイムタイタン)の肉体をまだ持ってきたままだった。

肥やしにするのもアレだし…栄養になるなら思いきってエルに上げようかな?


「カタリナごめん、仲間にしたエルのことで確認したい事があるから、ちょっと待っててくれる?」


「ん、解ったよ。私に気にせずにね」



指輪の中にいるエルへ念じるように尋ねてみる。

精魂接続(アストラルリンク)は未だに繋がらないが、指輪を通してだとそういった魔法機能があるのか、何となく魔物との意志や体調、ステータスの確認やエサとして嗜好が何となくわかる事が解った。


エルに対してアイテムボックスにあるものでサンドイッチ、鉱石や果物、水袋と焔巨人の死体を提案してみる。




植物(エンゼル)系統の魔物であるエルは、魔法生物のジャンルであるレガリアとは違い、使役者からの魔力だけの配給だけで良いのか?疑問だった。

テイムを終えてからそろそろ3時間は立つ。流石にお腹は空いてるだろうし…空腹のままboss戦に突入するのは可哀想過ぎた。


「エル、俺の声が理解できるなら教えて欲しい。この中でお前が栄養に出来るものはあるかな?」


植物は土と光と水とで育つと思うが…魔物であるため何が食べ物として必要なのか今一ピンとこないのだ。


エルが選んだモノは2つ。それをアイテムボックスより取り出して指輪へと入れた。

この契約の指輪(白銀)はアイテムボックスとも繋がっている機能がある。レガリアの時は気にしなかったのだが、今回初めて使って見たのだ。


指輪の中は広い空間が広がっている。

その中で入れた食材へと歩みより、下部から白く細長い根を伸ばして器用に水袋から水を吸収していた。

他には果物を根で包み、バキバキっと音を立てて砕き、吸収していく。



選ばれなかった焔巨人とサンドイッチも試しに入れてみるも、全く触れようともしていない。

レガリアを基準にしていたので魔物の肉やサンドイッチ、果ては鉱石を用意したが食べなかった。


エルが心なしか満足そうにしている姿を確認し、必要なかったモノをアイテムボックスへと戻していく。

手元にサンドイッチだけは残し、食べようとするとカタリナが見つめていたので「食べるか?」と聞くと頷いたので渡す。


生憎サンドイッチは1つだけだったので、カタリナの小さな口に収まっていく過程を見守る。

じっと見つめていたのに気付いたカタリナは顔を真っ赤にする。


「もう、ジロジロ見てないでソウマくんも食べたらどう?」


「いや、生憎とサンドイッチは1つしかなくてね。つまるようなら水もあるぞ。

それにカタリナが可愛く食べてる姿を鑑賞してるから遠慮なく食べててくれ」


「君って男は全く…私は子供じゃないよ」


「ああ、知ってるよ。子供のように可愛いくて、どんな姿でも美しい大人の女性だけどな」


「もう!!」


我ながらこんなキザな台詞は恥ずかしいのが、躊躇いもなく自然と口に出ていた。

少しからかい口調なのは流石に恥ずかしいからなのだが、それは表情には出さない。



そんな楽しい時間を過ごした後、赤の転送陣へと飛び込む。

視界が赤い光で埋まる。

さて、どのbossが待ち構えているのか解らないが…不思議と今の自分だったらどんな相手でも負けない気持ちでいっぱいだった。

















視界が赤一色から徐々に元に戻っていく。

転送先にある空間は今までとは違い、広大な空間が広がっている。

地中から入ったはずなのに青空が広がっており、地面には草原が広がっている。

そして、目の前の20m先には緑の葉が生い茂る立派な巨樹が聳え立っていた。

それはヘヴンズツリーとは比べ物にならないほど巨大であった。

どうやら予想通り、ここが最終地点のようだ。



注意して見ていると、その巨樹に変化が訪れた。

大人の胴体ほどある特別に太い幹から1つの実が成る。

それは他の幹にもなり、合計4つの実になった。どれも黄金色であり大きさは様々だった。

それは瞬く間に膨らみ、幹が急激に痩せてきた。実が急成長して養分を本体から吸い上げているのか、キィィイと痩せ細った幹が遂に折れて、ポトンと落ちた。


その後、4つ黄金実が落ちる頃には巨樹は痩せ細り、枯れ果てて消滅した。

養分の全てを実に捧げるためだけに生まれてきたような存在だった。


巨大な4つの黄金実は落ちてから、ビクンビクンと振動する。まるで鼓動に感じられ、内側から破砕音を鳴らして誕生した。


3角を雄々しく振り上げる雄牛。

黄金に輝く鬣と強靭で躍動感溢れる体躯の獅子。

両翼を広げ鋭い目付きで此方を睨む大鷲。

最後に白と紺のローブに身を包み、全身を隠した2対の白い翼を持つ天使のような存在。






実が4つも成っていたから、何となく予測はついた。いや、もしかしたら違うかも知れないと目を逸らしていたのかも知れない。


「そりゃ、どんな相手にも負けないって気分だったけど、まさか4体全てのbossが相手なんてな…想像もしてなかったよ」


一体だけでもC級迷宮bossクラスと推定される。それが4体…楽な相手でないのは間違いないのだ。

4体同時となればC級の冒険者ならば最低限魔力の通るレア装備で纏めた者達30人以上いなければ相手にならないし、A級冒険者ならば生き残ることを考えても一組(6人)は欲しい。


予想外の出来事に諦めたように呟くソウマに、ポンポンと肩を叩いて微笑むカタリナ。


「そうかな?私も驚いたけどソウマくんならこんなこともあり得るんだと思ったよ」


愛用の木弓を引き絞り、大鷲へと向き直る。


「私は大鷲を相手にしながら君の援護をするね。そして…私の1枚、切り札を出すから」


鋭い眼差しで敵を睨みながら、精霊の門を開く。既に下準備は終えていたのか、詠唱も僅かに門から精霊が一体飛び出す。

黒く霧状に浮遊する精霊は一目見ても只者では雰囲気(プレッシャー)を感じさせる。


上位影精霊(シャドウ)よ命に応え、我が姿を模倣せよ…影分体(ドッペル)


そう言うと、黒い塊となり、形を作っていく。

瞬く間に真っ黒なカタリナと成った。


「これで精霊魔法以外は私とほぼ同等の実力を持つもう一人の完成よ。消費が激しいからそう何度も使えないけど…ね」


少し息も荒めに、自慢するかのように教えてくれるカタリナ。


「初めて見たよ。いや、これは凄い。正直に助かる」


数的にはこれで3対4。2対4に比べれば遥かにマシだ。こんな時、レガリアが召喚できれば…と、思わざるを得ない。


そう思っていたら、天使の存在だけ白い翼を羽ばたかせ一人後方へと下がっていった。

そして、手を一振り下げると雄牛と獅子、大鷲が此方に向かって動き始めた。



面白い…この面子にそんな余裕を見せていたらどうなるか思い知らせてやろう。

カタリナも相手の行動を見てムッとした表情を見せた。

舐められている…ソウマと目を合わせると勝ち気な顔を覗かせ、相手に目にもの見せると言わんばかりにニコッと笑った。





カタリナは当初の宣言通り大鷲の相手をするとして、俺と影分体(ブラックカタリナ)はどうしようか?


悩んでいる間に獅子が黒カタリナに飛び掛かっていったため、必然的にソウマが3本角の雄牛と戦うことになった。

雄牛の大きさはソウマの2倍は見積もっても良い質量で、見るからに筋肉塊である。


その塊が猪突猛進に迫ってくるのは、トラックが唸りを上げて迫ってくるのと同じプレッシャーがあった。


(うん、スピードもまあまあ速いが…あの竜鳥程じゃない)


今のソウマはその比較した竜鳥以上の相手とも命懸けで戦ったこともある。

一般的な冒険者には避け切れないスピードや反応速度だったとしても、ソウマにとっては違う。


スキル【見切り】【体術】を上手く活用してかわし際ギリギリまで見極め、頸椎にフォースダガーを突き刺した。

ダガーは硬い皮を破り、筋肉の壁を抵抗しながら通過するが、堅牢な牛骨に阻まれ致命傷は与えられていない。


逆に雄牛は小さな金属片で自らの体を傷つけられた事に酷く驚いた。

魔法の攻撃などなら兎も角、自慢の皮は分厚く、傷がつきにくい。あの程度の欠片などは造作もなく弾けるからだ。

それに少しくらいの傷ならば放っておけば直ぐに治るし、四肢や首が切断されかける重傷を負っても魔力をそこへ費やし、時間をかければ回復できる程の回復能力を要している。



このケルビムの雄牛は、知能は低いが自身の防御と回復能力を強化し、攻撃よりも守ることに優れる。

愚直なまでに単純(シンプル)に繰り返し、相手が疲れてきた所でじっくりと仕留める守護タイプはHPも生命力もバカ高い脳筋でもあった。


つまりこの程度の攻撃では、攻撃は通るがダメージの蓄積は少ない。時間をあまりかけずに更なる大ダメージを与えねば持ち前の回復力で致命傷になりえないことを指していた。


その為、驚いたもののこの目の前の相手(ソウマ)は大剣や戦槌などといった自身にダメージを通す武器は持ち合わせていないと判断。

実際、短剣しかない。それでも驚異的な攻撃力だったがそれだけだ。

自身の勝ちは揺るがない…と油断した事が3本角の雄牛の最期となった。


雄牛の目の前に恐ろしい存在感を放つ巨大な腕が出現。それも2つもだ。

非常に重い一撃は、雄牛に今まで感じたことのない激痛と振動を与え、守る皮膚を波打たせ肉体の奥にある腰椎を簡単に砕いた。

それでも意識を保ち、何とか耐えきることは出来たが…寸分違わずに立て続けの巨人の両腕による第2撃は、許容範囲を遥かに超えて容赦なく体を打ち抜いた。


そこへ駆け付けたソウマが雄牛の頭部へと狙いをすまし、フォースダガーを横一閃に振り抜いた。


意識を刈り取られていた雄牛だったが、本能がソウマの一閃を感じとり、首を下へと反射的に動かすことで切断を回避した。

しかし、首を下にして回避ことによって3本の立派な角はまともに一閃を喰らう。

相当硬い部分だが、一瞬の抵抗すら許さず綺麗な断面を残して全ての角が一撃で切り取られた。



ソウマは知らなかったが、3本角は己の身体強化、爆発的な回復力、防御力向上のそれぞれをコントロールして司るもの。

ともすれば心臓よりも大事な角は雄牛の体の中で最も硬い部分だったのだ。


それを失った雄牛は優れた回復能力を活かすこともできずにその場で膝をつき、ぐったりと沈む。

その後、全身が大きな光となって上空へと還っていった。



「ふぅ…早めに倒せて良かった。

流石に体の調子が本調子では無い上にあんな体力の化物相手に長々と戦闘は出来ないからな」


そう言うほど簡単な敵ではなかった。

【巨人の両腕】を使い、体力とspを多大に消費したが早めに仕留められたのは幸先が良かった。

これまでの戦闘の蓄積が、ソウマの戦闘能力を次の段階へと押し上げていた。


一息つく間もなく何かキュィィンと集音がなったかと思えば、次に眩い発光。

咄嗟に眼を瞑り手で防御体制をとった。

しかし、何も起こってはいない。

発光した場へと目を向ければ、そこには鬣をたゆんたゆんに揺らして金色に発光させている獅子と、黒カタリナとの凄まじい攻防が見えた。


「よし、まずはあそこを攻略してから空中戦のカタリナを助けに行こう」


「そうだね、早く倒してあの偉そうに奥で眺めてる奴の顔を拝もうよ」



まさか…と、声のする方を振り返るとそこには傷らしい傷も負っていない無傷のカタリナがいた。

カタリナが戦っていた場所にはいつの間にか太く天高く伸びている蔦がある。

それも、じきに地中へと失せる。あれも精霊なのだろうか?


「…おわ!ビックリさせるなよカタリナ。俺のガラスの心臓が止まるところだったぞ」


「ん?ガラス?というものが良く解らないけど、そんな簡単には君の心臓は止まらないさ。

大鷲も倒したら光となっちゃって消えていったし…残りは獅子とアイツだけさ」




俺も強くなった気でいても、やはり上には上がいる。

…鍛え甲斐あるなぁこれは。




そうこうしてる間に、獅子の吐く光輝く光線を紙一重で避けた黒カタリナか獅子の眉間に小剣を根元まで突き刺して、獅子を光へと還した。


もっと苦戦するかと思いきや…これは嬉しい誤算だ。



「ふぅ、召喚で大分sp削られたけど助かったわ。有り難う上位影精霊(シャドウ)


黒カタリナは一瞬で黒い靄となり、精霊の門から還っていった。




黒カタリナが消えた所でパチパチと手を鳴らす音が聞こえる。

空へと移動した白と紺のローブに身を包んだ2対の翼が生えているbossが拍手をしていた。


『いや、これは予想外の展開だ。資格者の選定でこれだけの強者が引っ掛かるとは…どうりで私も出向かなくては行かないわけだ』



ん、この声色からしてあのbossは男のようだ。

しかも何だか聞き覚えがあるような…?


ソウマの既視感と違和感は晴れぬまま、更に台詞は続く。


『そこの人族とエルフ…思い上がるなよ?奴等は四天王の格の中でも一番弱い』


そう言ってローブのフードを脱ぎ捨てて素顔を表したのは、金髪の若い男だった。



(少し若いが…アイツに似ている)


その顔を見たとき、既視感が、違和感が確信へと変わっていく。もしかしたらと、ドクンと心臓が拍動し興奮で口調が震える。



「お前…まさか」



問いかけようとしたその時、



『あー、口を挟むのはちょっと待っててくれるかな?そこの人族。悪いけどもう少しでセリフ終わるから…此方も仕事なんだよ。

えっと、どこまでだったか…やばい、忘れたぜ』


ハァと物憂げな表情でため息を付いていた。



『まぁ、いいか。面倒(めんどい)し。

では、待たせたな。私こそが天樹の一柱より遣わされし隠しbossである智天使(ケルビム)が一人。我が威光の前に平伏すがいい…』



荘厳な雰囲気と共にひしひしと重圧(プレッシャー)が放たれた。


そんな演出も色々と台無しな気がしてならないが、言わねばならない。


「おい、お前Aklraだろ?何やってんだよそんな格好してさ」


Aklraと呼んだ相手が眉をしかめて除き見るように俺を観察し始めた。

優に1分は経過した。

そして疑りから放心、驚きへと表情がみるみる変わっていく。




『…………ん?ありゃ??おーーー…?お前もしかするとソウマ??』



そう、彼は以前このイベントで一緒に組んだプレイヤー軽装闘士Aklraだった。




「久しぶり。とりあえず、そこに待ってないで話さないか?色々聞きたいこともあるし」



『おう、いいぜ。いやぁーソウマもあっちの世界から来てたんだな。久しぶりに同郷の人間と話せるぜ。

あー、それと説明しにくいんだが、今の名はAklraじゃなくてケルビムってことで頼むぜ』



空から白い翼を羽ばたかせながら、ゆっくりと降りてきたAklra。


間近で見てもあの時イベントで一緒になったプレイヤーである。

髪は黒から金髪へと代わり、歳も成人男性から青年へと若返っている感じを受ける。

それと翼が生えていることを除けばだけど。



そして、俺たちのフレンドリーないきなりの展開にカタリナは「知り合いなの?ソウマくん」と困惑しながら聞いてくる。


そんなこんなで困惑しながら、久しぶりの再会を果たす2人であった。

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