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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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70/88

ソウマ編 生命樹(ケルビム)の実使(エンゼル)達の始まり

9月11日

誤字脱字訂正させて頂きました。

?????



ここは空間が隔絶され、1つの世界といっても過言ではないほどの質量の持つ完成された約束の地。


見渡せぬ程の黄金色になびく雲が支配している。

変な言い方になるが、雲が大地となっていた。

正に黄金雲の大地と呼ぶに相応しい。そこに広大な大地にただ一本の樹がある。


遥か太古より悠然と聳え立ち、地上を見守ってきた巨大な樹があった。伝承でしか存在しないと伝えられているため、人々からは畏怖と尊敬を持って?????とも言われている。





我に与えられた崇高なる使命。


静観の時を破り、新たなる資格者が現れた今、試練を課そう。


資格者が倒れれば、それを糧にし、見事超えられれば盟約に従い、祝福を授けよう。



丁度良い事に、かの地にて良質なアニマが少なからず満ちておる。




願わくば、此度(こたび)の資格者が贄とならぬよう…更なる力への一歩とならんことを祈っておる…。





巨樹より黄金の実が1つこぼれ落ちた。

落ちたと認識したと同時に太陽光よりも眩い光を燦然と放ち、辺りを照らしたかと思うと、既にそこには実も樹も何も無かったかのように姿は消えていた。




































エンゼルナッツとヘブンズナッツと対峙しているソウマは、カタリナに注意を促す。


「カタリナ、その魔物の本体は硬い殻の中だ。一定ダメージを与えれば飛び出してくるぞ」


「ソウマくんはこの魔物の事を知っているのかい!?わかったよ」


その忠告か終わるや否や、エンゼルナッツがカタリナとソウマに向けて一体ずつ体当たりしてくる。



カタリナとソウマは寸前で回避して、かわし際にそれぞれの武器をエンゼルナッツに向かって斬りつけた。

この時点で腕が未熟で技量がない者、単純に力が足りない者、はたまた寸前でかわしきるだけの技術などがどれ1つ欠けている者ならば、エンゼルナッツによって弾かれ、体勢を大きく崩されて体当たりをまともに喰らっていだろう。



しかし、攻撃を繰り出したのは一人騎士団と異名をとる程の戦上手な剛の者。

カタリナが縦に振り抜いた一閃は、走り去ったエンゼルナッツを綺麗な断面を残して切断し、殻の中身ごと切り裂いていた。



手に持つ抜き身の剣には刃こぼれ1つもない。


「うん、なかなかの堅さだね。どれどれ、へぇ…中身はそんな人形見たいになってるだね」


そんな余裕があった。


一方ソウマはそこまでの技量はないが、持ち前のステータス補正と閃弓士のレアスキルである【刀剣技補正(E)】は剣を用いた技、技術・戦技など全てに補正がかかるスグレモノだ。

そして、少なくない死線を潜り抜けて身に付いた技術を活かす。

フォースダガーを叩き付けるようにエンゼルナッツの殻を砕き、回転する反動をモノともせずに、そのまま戦技【強斬】を発動させて真横に両断した。



「いらない心配だったな。流石はカタリナだ」


世界(エルダーゲート)では2次職が一流と呼ばれる腕前とされ、その先へ至る者達は殆どいない。

その中でも3次職へと就いている彼女(カタリナ)は、限界を超えたほんの一握りの存在(超一流)なのだと痛感した。

同じ第3職業者でも自力(プレイヤースキル)を伸ばさなければ、本当の意味で実力は完成しない。




残る一体となった2mを誇る巨大なヘブンズナッツを前に、ソウマは油断なく構える。

その存在感と既視感に否応なく、初めてこのイベントに遭遇した時の事を思い出した。


















ソウマがVRゲームで在った頃のエルダーゲート・オンラインで遊んでいた時、職業レベルを上げてようやく転職神殿にて第2職業のランクアップを果たした。

新しい狩場に挑戦しようと初めて外林境と呼ばれる狩場に到着する。

第1職業ではソロでは少し強めの魔物がいるため、効率が悪いので今まで挑戦しようと思わなかった場所へと来てみた。


新しい狩り場の魔物を相手にし攻略を開始して暫く…あるときに外部アナウンスが聞こえ、この【生命樹の実使達】に遭遇したのだった。


イベントの範囲内に存在する周りのプレイヤー達と共闘出来るイベントでもあるため、協力して行える。



後にも先にもこのイベントには出会わなかったので、本当に稀な体験だったと言わざるを得ない。


当時の俺は戦弓師(センチネル・アーチャー)になった喜びで一杯で、装備も全てノーマル級からハイノーマル級へとグレードアップさせ、今の俺ならきっと良い結果を残せる…と慢心もしていた筈だ。


イベント魔物として遭遇したエンゼルナッツ。木の実の巨大な体を活かしての体当たりは圧巻。そして防御力は高く、外を覆う外殻は硬い。

しかし、一度殻を破るか一定以上のダメージを与えると綺麗に外殻が剥ける。上手くいけば素材としてドロップすることも可能だった。


実の殻の中にある木で出来た細身の人形のような外観の魔物こそが、このエンゼルナッツの本体だ。


実のところソウマは、このエンゼルナッツを倒すことは出来たものの、その先の上位の魔物であるヘブンズナッツの外殻を剥がすことは叶わなかった。

強化魔法をかけても、どんなに矢を引き絞っても傷はつくのだが、致命打には届かない。

時間があれば倒すことも出来ただろうが、その間にエンゼルナッツや他のヘブンズナッツを相手にしていれば倒しきれなかったのだ。

それは単純に火力不足…攻撃力の不足であった。




そんな中で1つのプレイヤー集団と出会った。

彼らもまた、偶然イベントに出会った者達で攻略のために臨時パーティを組んだようでソウマも誘われた。

一人ではこれ以上進めない。願ってもない提案に喜んで了承する。




参加したプレイヤーの中でも第2職業持ちはソウマを含めて3人。


2次職の2名については、一人は前衛職でスピード補正が高く拳打による攻撃を得意とする軽装闘師の〈Aklra〉。

無属性魔法に長け、純回復職業よりは劣るものの中距離範囲内でも少量回復が可能な法撃術師の〈みゆみゆ〉。


他の参加したメンバーにはサブ職の持たない第1職業のプレイヤーが15人は参加していた。


軽装闘師Aklraと法撃術師みゆみゆの二人にリーダーシップをとってもらい、面々を引っ張ってもらう。

順調に攻略は進み、そのおかげでイベント中央にある大穴へと到達する出来た。


しかし、そこまでが限界だった。

大穴へと入り、bossの間へと近くなるに連れて魔物の数の多さもそうだが、配置されていた高レベルのエンゼルナッツとヘブンズナッツの防御力が高く、思うように進めなかったのが最大の要因だった。




あの時、もっと俺に攻撃力があれば…と痛切に思い、自身のキャラクターと装備に悔しい思いが込み上げてきのを覚えている。

その思いが後の期間限定課金コンプガチャにボーナス全額を振り込むことに繋がる。


因みにその時のメンバーの数名はこれを機に仲良くなり、やるせなさも手伝って後にギルドを作った。

ソウマも誘われたのたのだが、戦弓師(センチネル・アーチャー)が冷遇されつつある時代だったので迷惑をかけると思い、遠慮したのだった。


(アイツら、元気かな…)


それを理由に断っても気にせずに、何かとソウマに絡んできてくれた貴重なメンツだった。












現在はあの時とは違い、人数こそ少ないが今の自分は第3職業であり、側にいるカタリナは一人騎士団と呼ばれる異名持ちの凄腕である。


これなら攻略出来るかも…と、淡い気持ちを抱いてしまう。

不安があるとすれば実際に攻略したことが無いので、情報が極端に無いことが上げられる。

また、このイベントbossについても心配事があった。

調べてみると公式の発表では4種類のbossが待ち構えているとされていた。

更にエルダーゲート・オンラインの攻略ネットの書き込みから、何かしらの条件や参加人数によってこのbossがランダムに変わりやすいと言うことだった。


①2対の翼の天使のような人間形態。

②獅子を思わせる攻撃力スピード特化の獣形態と③タフネスさが売りだが攻撃力も侮れない雄牛形態。

④完全飛行型の鷲形態である。


どれか1つがbossの間にてプレイヤーを待ち受けているのだが、書き込みに1番多かったのは③と②、次いで多いのは鷲型の形態で天使のような人間形態は未確認と言うデーターがネット上に上がっていたのを覚えている。




いつか、攻略したい。


そんな気持ちを捨てきれず、ソウマはその機会が訪れるのをずっと待っていたのだ。























回想に気をとられていたのは時間にして一瞬。

目の前のヘブンズナッツがその場で独楽のように高速回転を始めた。キュイィィンと空気を切り裂く音が増す。

エンゼルナッツとは比べ物にならない攻撃力を秘めていることは容易に想像できた。



「カタリナ…精霊魔法を見せてくれたお礼に俺も切り札を1つ明かそうと思う」


そう言って己の腕を見たソウマ。


今も両腕は木精霊(グリーンウッド)が発光し、優しく自然回復力を高めながら治してくれていた。


「おや、嬉しいね。ソウマくんのお手並み拝見するね」


ソウマの言葉を疑わず、寧ろ何をするのかワクワクしているカタリナの様子を見て、俄然やる気が迸ってくる。

美人に期待されれば、男ってのはいつでもそれ以上に応えるもんさ。


頭にビリっとくる痛み。体力がごっそりと奪われる感覚を寧ろ心地よいと感じ、ソウマは念じた。




(いくぞ…【巨人の腕】)




そう念じると突如ソウマの近くの空間に一本の巨大な腕が出現した。



その腕は、見る者に厳かで畏怖を覚えさせるプレッシャーを放っている。


ヘブンズナッツは未知なる相手と攻撃に回転数を弱め、一瞬戸惑う。

しかし、エンゼルナッツとは比べ物にならないほど強固な大殻を武器により一層高速音を響かせてソウマへと突っ込んでいった。




巨腕と巨球が接触し、激しくぶつかり合う。


バキィィィンと巨腕の指があっさりと大殻を貫き、そのまま中身ごと握り潰す。


戦闘は一瞬でついた。




役目を終えた【巨人の腕】はゆっくりと消えていった。


「詳細は言えないけど、これが俺の使える魔法なんだ。他に強化魔法しか使えないけど…な」



暫く驚きで固まっていたカタリナが絞り出すように口を開いた。



「………凄まじいの…一言だね。私の知るどの魔法とも違う…これは正に人間が扱う魔法の系統とは違う…ような。気がするわ」


続けて、納得した表情を見せた。


「これを見せられたら、ソウマくんが弱っていたとは言え、不滅の巨鳥に勝ったと言うのも得心がおけるよ」


見せてくれてありがとうと、軽く言われた。


さて、イベントが始まった以上bossを倒すか、俺達が死ぬかじゃないとイベントは終わらない。

終わらないってことは、魔物が産み出され続けられるってことだ。



「俺はこのまま元凶を叩きに行くつもりだ。カタリナはどうする?一度、王都に戻って報告するか?」


着いてきては欲しいが、カタリナは元々依頼を受け、たまたま巻き込まれただけだ。予定も在るだろうし無理強いは出来ない。




少し迷いながらも、カタリナは首を横に降った。


「新種の魔物の出現。これは王国民にとって新しい脅威だよ。

調査して出来る限り情報を調べておきたいからね。それに今はソウマくんって協力者がいるし…私は足手まといにならないだけの実力は在るつもりだよ」


二の腕を叩いて、茶目っ気たっぷりに片眼をつむって微笑むカタリナに目を奪われながら、ソウマは安堵した。


やはり、一人で行く事になるかもしれないと、かなり緊張していたのかも知れない。



そうと決まった以上、カタリナがエンゼルナッツ戦に使った矢の回収をし、少しずつ進む。

ソウマは慎重にbossの間へと通じる場をマップを開いて確認して歩く。


時折まばらに現れるエンゼルナッツを一体、一体確実に駆逐していく。

今度はカタリナの矢を使わず、接近戦で仕留めていく。折角なのでカタリナの指導の元、短剣でエンゼルナッツと戦うソウマ。


刃を入れるタイミング、這わせるコツ、見極めの技などソウマの我流に対して的確にアドバイスが現地指導で変わっていく。

教えているカタリナも、ソウマかここまで飲み込みが早い事に驚いていた。実はこのカラクリは《異界大天使の加護》による能力と、【刀剣技補正(E)】がソウマの体に合わせて動作などを最適化させて調整しているのだが、本来、VRゲームで在った頃にはないスキル効果が、ソウマを成長させていく。

本人達は知る由もなかった。



そんな事を続けながら進むこと更に2時間。すると、マップ中央の場所に突然敵対マーカーが点滅して魔物が出現した事を知らせた。







カタリナにこの事を伝え、林を駆け抜けてその場所へと向かう。


ソウマは【鷹の目】で遠目からその場所を視認すると、その場には木がなぎ倒されて散らばっており、大きな穴が開いていた。奥は全く見えないし地中深くまで繋がっていそうだ。

大穴の直径は6mほどでかなり大きい。

暫く観察していると、大穴へと入っていくエンゼルナッツの姿を確認したのだった。






カタリナはダークエルフ特有の視力の良さを持って確認していた。


「どうやらここかbossに繋がる場所に間違いないみたいだ。それにエンゼルナッツがまだ少ないって事は、ここに出来たばかりなんだろう」



「こんな大きな穴があったなんてね…驚きだわ。

これは迷宮なのかしら?いえ…寧ろ何か大きなモノが空から降ってきてクレーターが出来たような感じね」



「確かに。しかし、どんな巨大なモノかどんな威力でぶつかればこんな風になるんだろうな?」



恐らくこの大穴の底にでもbossがいるのだろう。


どのbossかは解らないが、カタリナは剣盾を用いた接近戦、精霊を用いた補助から攻撃まで出来る万能型(オールラウンダー)だと思われる。



④の飛行型の鷲bossでは無い限り、俺もカタリナも前に出て戦えるだろう。

重症だった左腕も、木精霊(グリーンウッド)のお陰で4割近くも動くようになっていた。

血色も徐々に良くなって右手に限っては殆ど思い通りに動かせるようになっていた。



ここから先は更に多くなる魔物との激しい戦闘が待っている。

流石に俺の治療のためだけに精霊を使役し続けてもらうのは、万が一の事態に対応できなくなるので一旦解除してもらった。

召喚陣の光と共に送還されていく木精霊に感謝を告げ、カタリナに感謝と共にお礼としてマナポーションとハイポーションを一本ずつ渡しておく。


ハイポーションを見たカタリナは受け取れないと酷く恐縮した感じだったのだが、是非御守り代わりに持っていて欲しいと無理矢理渡した。

これくらいなら邪魔にはならないはず。




さて、何が待ち受けていても破るのみ。


準備を整えた俺達は大穴へと侵入していった。




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