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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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59/88

奇妙な仮面の人物

いつも読んで下さる皆様、有難う御座います。

慌てて投稿しましたので、誤字脱字が多く読みにくかったら申し訳ありません。

また読み返して直して行きたいと思います!

洞窟に突如現れた背の低い人物は、大きな杖をポンポンと叩いた。


「数ヶ月前から付近で強い魔力反応があると思って調べてみたら…ここいら周辺を辿ってみれば此処にまだ生きた魔族の遺跡があったんだよね。

調査していたら地中深くに機能が停止したアビスゲートを発見したまでは良かったんだけども…いくら魔力を込めても調べてもゲートが開かなかった。

それで仕方なく戻ってきたら、遺跡に驚いたことに人がいるじゃん?

で…この遺跡について何か情報を知ってたら教えてくんない?」


置かれている状況を考えずにモノを喋る人物に、一同は警戒心がより強くなった。


「さっきからお前は何を言っている?何者だ…何処から来た」


直属隊がグレファン達の前に壁となり、警戒している。


「ありゃ、その反応は何も知らないっぽいネ。やっぱり自分でコツコツ調べなきゃ駄目か」


そう言って、サッと大きな杖を一振りすると周辺に燃え盛る火球ファイアーボールが幾つも出現した。


「馬鹿な…詠唱など無かったぞ」


驚く周囲を可笑しそうな口調で笑いながら、杖の先端を近くの兵士へと向けた。


「バイバイ〜」


火球ファイアーボールは高速で飛来して兵士達に直撃する。

躱すことも出来ずに焼け焦げた死体を量産していく。

攻撃は尚も止まらず、その後も近くの兵士達に次々と火球ファイアーボールが襲い掛かる。


盾を構えるが防ぎきれるはずもなく…悲鳴が飛び交い、歴戦の兵士達が一時的にパニック状態になる。

それを防いで場を静めたのは、無数の水球を飛ばし、火球を相殺させたナタリーだった。


「総員、戦闘準備しなさい。

第2班は研究員と負傷した者を優先にこの場を離脱。

残った者達は私を守りなさい」


ナタリーが指示を下す事で、兵に落ち着きが戻る。彼女は矢継ぎはやに魔法詠唱を開始していた。


ナタリーが得意とするのは、守りよりも攻撃魔法を主に置いた水属性魔法である。




詠唱中の水属性中級魔法【ウォーターカッター】は現在彼女が使える水属性魔法の中で1番最高の威力を誇る。

一定の水圧で押し固め、魔力で凝縮させた水で刃を形成して相手を切り裂く。

難点は魔法構築における難易度が高く詠唱に多少の時間は掛かるが、その分威力は他の中級に比べて高い威力を誇り、BOSSである焔巨人戦でも活躍してきた中心魔法だ。


その間火球がナタリーを襲うもの【水護防御ウォータープロテクション】の魔法を掛けられた兵士数名が何とか火球を防いでいた。


彼らが代わる代わる盾となる事で詠唱時間を稼ぎ、放たれる水刃。

己へと向かってくる水刃を避けようともせず、大杖を持っていない方の手で片手を突き出した。

その手で接触した水刃は被弾したと同時に露のようにかの人物のローブを濡らすだけに止まった。

よく見ると突き出した手には不気味な眼玉の様な宝石を付けた指輪がはめられている。


「まさか…いえ、吸眼の指輪?それもグリードアイ製の」


魔眼の魔物と呼ばれる目玉型の種類がいる。

生息数が少なく希少な魔物である種は、ここより遥か北に生息する固有種である。

その中でも亜種に属し、魔力を吸い取る事が出来る珍しい魔物の一種をグリードアイと呼び、別名魔法使い殺しとも呼ばれている。

仮面の持ち主の左指にはめられている装備は、その生体素材を加工したアクセサリーである。

魔力を吸い取るドレイン系のアクセサリーは下位から上位まで効果は様々であり、実戦レベルに使えるモノは闘技大会などの賞品にも出される魔術師ならば垂涎の品。


「御名答。君って物知りだね。

属性や魔力の質にもよるけど、中位くらいの4属性魔法なら問題なく吸い取れる便利モノだよ。

昔どこぞの闘技大会に参加した時に貰った品でさ〜今の人間達には作れる人が少ないらしくてね、迷宮産みたいだよ」



唯の野良魔法使いではなく、かなり高レベルの相手のようね…ナタリーは警戒レベルを最大までに引き上げた。


仮面の人物はこの人数差も脅威とは感じていないようで攻撃を中断し、ナタリーとの会話をし始める。


(この相手は、少なくとも私達の知らない情報を幾つも持っている。

この遺跡は只の研究所ではなかったの?まだ地下があるだなんて…。

なるべくそれも引き出しながら時間と情報を集めなくては)


ナタリーは話に付き合いながら、水護防御ウォータープロテクションを自身に掛けて隙を伺っていた。


最初の魔法で2名が焼け焦げ、この魔法を掛けても火球に耐え切れずに戦闘不能になった兵は5名もいた。

研究所へと続く通じる道へ退避出来た者を含めると、今ここにいる戦力は20名を切っている。


魔法で無理ならば、人海戦術を仕掛け、相手の魔法を使わせないようにするしかない。

戦いの最中グレファン達は波状攻撃を掛けるべく少しずつ包囲出来るように兵士達を動かしていた。

幸い、包囲される事も気にせずに仮面の人物はナタリーとの会話を楽しんでいた。

ミランダ達【拳嵐】は一斉攻撃の際に突破口となるため、各々は淡々と準備を整えていた。


包囲がようやく完了した頃に、かの人物は機嫌良さ気な声で話し掛けた。



「ずっと調査で地下に籠りきりだったんでね。久しぶりに楽しい会話だった。

では、もう遊びはお終い。

囲んでくれたお礼にトッテオキを披露…って、うげ…スゲー魔力吸われるじゃん」


大杖を天上へと掲げると、杖の先端部に埋め込まれた大粒の魔石が光り輝いた。

同時に天より魔法陣が描き出され、高温度に熱せられた隕石が6つ覗く。

とんでもないスピードでサザン火山の地表に降り注ぎ、爆発音を奏でた。

周りを包囲していた直属兵を巻き込んで凄まじい揺れと熱波が襲い、同時に破壊音が辺りに響く。

そして唯一この場で外界へと通じる路であった通路が崩れ落ち、更に岩石と土砂が外界との通路を塞いだ。


「嘘…こんな魔法なんて見たことも聞いた事もない」


土埃を払い、ようやく揺れがおさまった辺りを見渡すと、先程までは無かった円形のクレーターが6つ地面を穿っていた。


相手の魔法の原理はわからないが此れほどの威力を持つ魔法は、殲滅魔法といった上位系統の魔法に違いない。

現代魔法理論では考えられない規模の破壊…同じ魔法使いであるがゆえ、分からない事が恐ろしい。

恐怖を抱きつつ真っ先にその危険性に気が付いたナタリーは、絶句に近い表情と共に呟いた。

ナタリーは水護防御ウォータープロテクションを掛けていた為に熱波による余波を防げたが、包囲陣を組んだ兵士達は例外なく直撃を喰らい、跡形もなく全滅していた。


グレファンは直ぐに異変を感じたミランダ達に抱えられて、その身をその場を逃れていた。

後方に控えていた数名の兵と共に退避した為無事である。

惨状を目の当たりにして歯軋りを抑えながら、恐怖よりも怒りを以ってグレファンは仮面の人物を睨み付けた。



「一掃するつもりだったのに、随分と生き残っちゃったね…面倒になるし仕方ない」


そう言って首を揉みほぐしながら、片手に持った大きな杖を地面に突き刺した。

すると大きな地鳴り音と共に地面が大きく盛り上がり勢い良く裂けた。

地中から土煙を上げて這い出て来た2匹の巨大な魔蟲。

それぞれが黄金の甲殻に覆われた全長8メートルの巨躯をさらす。

その大きさに否応にもBOSSクラスの圧迫感を感じる。

頭部には突起物と4つの複眼。裂けている大口には大小並んだ牙が見え、キチキチと歯ぎしり音を奏でている。脚は無く、どうやら蛇のようにくねらせて移動するようだ。

頭頂の突起物に光るモノが見えた。よく見れば魔獣紋の刻んである装具が付けてある。

ともすればこの巨大な魔物は野生の魔物では無く、この人物がテイムしている可能性があり…強敵の出現に固まるグレファン達。


「【メテオラ・フォール】を受けて生き残ったんだからね、運がいいよ。

だから、このまま魔法で一掃する事は止める。

その代わり、この子らに生きながらにして喰い殺される感覚を味わいながら…死ね。

さっきの魔法で一瞬で死んだ事を後悔するだろうけどね。これ以上魔法を使ってこの場を傷付けるのも避けテーし。

アビスゲートの機能を調べる為に一度部屋に戻って準備を整えてくるから、魔蟲共、あとはヨロシク」


一方的にそう言うと、懐からクリスタルを取り出して地面に叩きつけた。

ガラスが割れるような音が鳴ると同時に眩い光がその場を覆い、全員が目を開いた時には姿が掻き消えていた。



「何だったんだ、アイツは…」


そんな事を呟くよりも、魔物が命令を受けて動き始めた。

どうやらノンビリ考えている暇は無いらしい。


2匹の内の1匹の黄金色の魔蟲は、直属隊を目掛けて身体をうねらせてながら移動してきた。

その動きは素早く巨躯を活かした横薙ぎの攻撃を行う。

何度か避けていたが、遂に逃げ切れないと判断して盾を構えて防御した兵士を纏めて吹き飛ばす。

そして、何人かを蛇のように巻き付いて締め付けた。

悲鳴を上げる仲間を助けようと、大斧を持った兵士と剣使い達が駆け寄って一斉に攻撃を加えた。

斬撃や戦技による攻撃は黄金の甲殻を捉えるものの、甲殻に傷付ける事も叶わず、殆どの攻撃を弾いた。


それでも諦めずに攻撃を加え続ける。鬱陶しく感じた黄金魔蟲が放つ尻尾の横薙ぎをマトモに喰らい、兵士達が吹き飛ばされていく。

後方からミランダも雷光を迸らせながら駆け付ける。



「ちぃ、デカぶつが!私が相手だよ」


「落ち着きなさい、ミランダ」


ミランダ達【拳嵐】が更に前に出ようとした所で、同時に駆け付けたグレファンが押し留めた。



「この魔物は物理防御が異様に高い。皆の攻撃も余り通用していないようだ。

ここは魔力武器を持つ私と【拳嵐】が相手をしよう。

ナタリーはこのまま直属隊とゴート達を率いて至急研究所の援軍に向かってくれ」


「お兄様!戦力の分散は危険ですわ。それに魔法による攻撃には少なくないダメージが与えられています。そうであれば…私が此処に残ります」




先程からナタリーは水属性魔法による攻撃を開始していた。

水刃ウォーターカッターは黄金の甲殻を突破し、少なくないダメージを蓄積させていた。

魔蟲はダメージを与えてくる魔法を警戒して、一定距離を保ちながら威嚇音を出して此方を伺っていた。


「ナタリー、どうやら研究所では何かが起こりつつあるようだ。

ガリウならば我々が来るまで持ち堪えてくれていると信じている。

しかし、時間は有限だ。最悪研究所が落ちればまだ脱出路が残されている我々の勝機が無くなってしまう。

何度も言うが時間がない。我々が此処に総員で残るより、研究所へ援軍を送って彼方の安全を先に確保する。

研究所での戦闘は魔物の群れだそうだが、状況が不透明だ。

なればこそ、ナタリーの魔法の力があれば戦況はすぐに覆るはすだ。

ここは大丈夫、必ず魔物を倒して必ず追いつくから…心配せず、我らの帰還を待っていてくれ」


優しく妹の頭を撫でていたグレファンは、名残惜しそうに手を離した。


「必ずですよ。お兄様」


「皆、ナタリーを頼むよ」


涙目に直属隊を纏め、背を向けて駆けて行った妹を眺めたのち、魔蟲へと振り向いた。

魔蟲は自身にダメージを与えた存在が遠ざかっていく事を感じ、のそりと此方に警戒しながら近付いてきていた。


「さて【拳嵐】よ、私と共にあの無粋な魔物相手に戦闘の調べを奏でよう」


グレファンは両腰に凪いでいる細身だが片刃の付いた双剣をスッと抜いた。

刀身は鈍色の魔力の淡い光を帯び、薄っすらと輝く。


「御意」


「若様の御心のままに…」


「はは、グレファン様の華麗なる双剣演武、拝ませて頂きます」


巨大な魔蟲相手に怯むこともなく、4人は相対した。














レガリア達も遠くに離れたいた為に直撃は避けており、熱波を最小限のみ受けただけで、全員無事だった。

辺りに怒号と悲鳴が飛び交う中、もう1匹の黄金色の魔蟲は隅にいたレガリア達をターゲットにしていた。

長い胴体を揺すりながら迫る巨大魔蟲は、まずはコウランを目掛けて向かってきている。


「あら、私が一番弱く見えるからかしら?良いわよ、来なさい」


その言葉が合図となり、戦闘は開始された。


迫る黄金魔蟲の噛みつきを躱したコウランは、ウォーメイスを振り向きざまに全力で叩き込んだ。

鉄製の鎧をもウォーメイスで凹ませてきたコウランだったが、同じ攻撃は甲殻を少し凹ましたものの、分厚い筋肉にウォーメイスが弾き返された。


「痛っ…見掛け倒しじゃないようね」


コウランのウォーメイスを持つ手は痺れていた。



即座にお返しとばかり、胴体の先を尻尾をしならせて反撃してくる。

巨躯から繰り出された豪快な1撃は、風を凪いで轟音を奏でる。

慌てて回避し間一髪で直撃を免れたが、通り過ぎた風によってコウランがよろけたぐらいパワーは凄まじかった。


ダンテが大盾を構えながら近寄る。注意を此方の方へと向ける為に黄金魔蟲にヘイトする。

コウランに再追撃しようとした黄金魔蟲は、ダンテに引き寄せられた。



ダンテが盾役を熟し、コウランは遊撃役兼回復役を担当。

レガリアとNo.6は接近戦を仕掛け、No.7は初級の土属性魔法【土杭】を放ち、注意を逸らさせる。

衝撃は通るものの、土属性に強い耐性があるのかナタリーの水属性魔法よりはダメージを与えらていないように見受けられる。



レガリアはダンテが引きつけている間に尾側に回り込み、限界まで白木刀に闘鬼オーラを込めて何度でも斬りつけ続けた。

しかし黄金の甲殻に攻撃力の殆どをいなされ、鋼鉄をも切断する威力は甲殻と筋肉の壁によって各所へと分散させられ、大したダメージにはなっていない。



これ程高い物理防御力を誇り、亜竜の如く巨大な体はここ一帯の魔物のヒラエルキーの中でも上位の方では無いだろうか?

本来ならばこんな所にいるレベルの魔物ではないのだろう。


自身の傷んだ大太刀を使う事に一瞬の躊躇はあったが、白木刀をアイテムボックスへとしまい込み、愛刀に持ち替えて再度接近戦を挑んだ。


なるべく刀身に負担をかけないために【蒼炎】は発動せず、修羅鬼形態の炎熱攻撃による付与補正(極)のみを刀身に宿して斬りかかる。


炎熱伝導が充分に伝わり、紅く染まりきった大太刀の刃は黄金の甲殻が弾かんと拮抗した。

しかし、この斬撃には強力な太刀補正(AA)も加わっており、一瞬の抵抗のもと深く傷付けた。



ちなみに鬼種族専用の闘鬼術は、鬼族の中でも先天的にしか獲得できないレアなスキルである。

人族の闘気術に似通っており、武器よりも肉体の身体強化に付与する方が補正が非常に高い。

普通の人族では闘気術を肉体に使える事は出来ても、操気術などのように高い補正で武器や防具などに纏わす事は非常に難しい。

それに例え纏す事が出来ても操気術に比べて弱い事から、非効率的であるとされており、道場などでも基本教えてはいない。


レガリアは擬態の素体となった修羅鬼が、我流ながらに闘気を操り、研鑽精通していた事でより強力な固有の闘鬼オーラ術に目覚める。

また類稀な戦闘センスを宿していた肉体の為、爆気バーストプラーナのような肉体強化以外の技術や、不完全ながら闘鬼オーラも武器にも纏わす事が出来た。

それ故現在も扱いが非常に難しく繊細であるが、使い熟せば今より少ない体力などで使える技法である。


残り少なくなった闘鬼オーラを、回避や防御に回す闘鬼をも捨て自身の攻撃のみに関しての闘鬼オーラを纏い直す。

闘鬼オーラの緻密な気が身体中の細胞を活性化させ、全ての感覚を動員して刹那の間に黄金魔蟲の背後へと到達した。

その結果、渾身の力を込めて振り抜いた一太刀は、黄金魔蟲の甲殻と筋肉をスッパリと切断することに成功する。


使役されてからというもの黄金魔蟲は主人に従い戦い抜いてきた。

その戦いの中でも傷付けられた事もあったが、堅い甲殻に護られた肉体には痛痒など感じた事は無かった。切断されるという、生まれて初めて味わう痛みに絶叫を上げてのたうちまわるが、即座に怒りに燃えた4つの複眼はその原因を作ったレガリアを捉えた。

切断された胴体から液体が零れ落ちるのも構わずに、生物を溶かすために生成された強酸を口から複数吐き出す。

【見切り】スキル発動によって酸を何とか回避するが、攻撃に全てを使い果たした身体は満足な運動能力を残していない。

そして不運な事にレガリアが斬り落としたはずの胴体が不規則にして飛び跳ね続けていた。

意思のない不随運動のように飛び跳ねていた胴体は、咄嗟に回避してきたレガリアを巻き込み、下敷きにして押し潰した。



そんなレガリアを横目で確認したが、ダンテにも余り余裕は無かった。

強酸の大粒がダンテ達へと襲う。

大盾で受ける事はせずに、全て横へと転がりながら回避する。


強酸が飛んだ地面にはジュッ…と地面が溶け抉れている。

その威力をみれば下手な初級魔法よりも強い攻撃力を秘めていた。



不運だったのはNo.6だった。

初めて見たレガリアの大太刀による太刀筋に見惚れてたが故に、予想だにしなかった強酸攻撃に対して反応が遅れた。

初見の攻撃をギリギリ躱したものの、レガリアが下敷きとなった瞬間を目撃し、愕然として動きが一瞬硬直してしまった。

そのため、続けさまに吐き出した酸が襲った時には回避行動が間に合わず、頭部に降りかかったのだ。


大爪双剣で頭を咄嗟にガードしたが、完全に防げなかった強酸が身体のあちこちを焼け爛れさせ、硬い毛皮も溶けて煙が上がっていた。

その場で蹲り、余りの痛みとダメージに動けずにいた。


狂乱モードさえ発動出来ない程のダメージを負ったNo.6はトドメを刺される事は無かった。

その前に駆け寄り、ダンテが立ちはだかって防御体勢を取った。

即座に腰に付けていたポーションの蓋を開けて中身をNo.6へと降りかけた。


そして目撃していたNo.7は少しでも黄金魔蟲の関心を此方へと向けさせる為に、最大展開させた3つの【土杭アースニードル】を同時に操って4つの複眼へと集中させた。

首を振って躱していた黄金魔蟲だったが、限界を超えて連続放出していた【土杭アースニードル】が、運良く複眼の一つに命中して片目を潰す。

ドロリと潰れた片目越しに殺気を撒き散らす黄金魔蟲はNo.7を睨み付け、口を大きく開けて襲いかかった。

迫る黄金魔蟲にNo.7は、魔力欠乏と魔法の連続酷使と言う荒技が負担となり、自身に向かってくる脅威に対して何の防御もとれないまま、糸が切れたように前のめりに倒れ伏す。



ポーションを降りかけたのち、コウランへと回復行動を任せたダンテは、時折放たれる酸による攻撃を躱しながら、体当たりの攻撃を戦技【盾打ち】で対応する。

最初よりも弱まっているが、生命力が強く上半身だけでも4メートル強もの巨躯を誇り、侮れない。

戦っているうちにNo.7へと注意を向け其方を向いた時に切断された切り口が見えた。

No.7に襲いかかる際に大盾から手斧ハンドアックスを取り出して牽制のために投げつける。

スナップを効かせた一撃は切り口へと吸い込まれる。

斧の刃先はテラテラと体液を流す筋肉にブッスリと喰い込んだ。


新しい痛みに直ぐ様反転して、ダンテへと向かってきた魔蟲は突進する。


至近距離にて大盾を構えてしっかりと防御体勢をとる。


大盾は非常に頑強に作られている為に殆ど損耗はなく、また補正の為に大幅に能力が上がっている。

半分くらいになってはいたが、身体の全体重をかけた体当たりはダンテの身体を弾き飛ばそうと圧力を掛けてくる。

これまでの経験と強化された盾補正のお陰で何とか力の流れを逸らしていく。


何度か衝突を繰り返すが、ダンテは持ち堪える。拉致があかないと踏んだ魔蟲は時折酸攻撃を交えてくる。

何度か防いでいる内に飛沫が上位炎鬼製の装備にかかる。

レア級装備であったとしても、表面から僅かな煙を上げ損耗していく。

身体に影響はないものの、ゾッとする感情が身を襲う。普通の者の装備ならば既に死んでいる。

受け続ける攻撃に精神が消耗させられていくが、それでもダンテが逃げ出さずにいられるのは、彼が幼き頃から慕うお嬢様が背後にいるからである。

彼女コウランがいる限り、何人たりとも其方へ向かわせてはならない。

レガリアの姿が先ほどから見えない。No.7が倒れ、No.6はコウランが中級回復魔法を駆使しながら化膿止めの薬を塗り込んで応急手当中だ。

治療中の時は集中しているため、使役魔物であるフレイはコウランの万が一の守りとして主人の側に控えている。


現在、残る戦力は俺のみ…守護盾士は守りに非常に強力な補正がかかった職種だ。

また生まれつき魔力が弱く、MPが少なかったダンテでもこの職業を得る事で自身の持つ戦技と応用力の幅が増えた。

今日何回使ったか判らぬ程の盾の戦技と、守護盾士としての能力を駆使して立ちはだかる。


「来い!!」


そう叫ぶダンテはもう恐れなど微塵もない。槍を片手に1人、黄金魔蟲と相対する。











巨躯の下敷きとなる寸前、レガリアは地面に接触する前に不十分な練り上げいない爆気バーストプラーナを咄嗟に真下に放ち、地表面に少しの窪みを作る。

そこへ身体を潜り込ませる事で、押し潰される直撃を避け、受けるダメージと衝撃を軽減させていた。


己の修羅鬼状態の装備と身体の確認をする。赤い鱗鎧スケイルメイルは左肩の部分が破損が酷く、胴部と腰部にはヒビが入っていたが動きに支障破損ない。

あの重量の下敷きとなったにも変わらず、この程度の破損状態で済んでいたのは奇跡である。

幸い両腕は折れてなかったが、左肩の動きが悪い。また鋼鉄のガントレットは落下時の衝撃の為に凹んでしまい、使い物にならず脱ぎ捨てた。


頭上を覆う巨躯は疲弊したレガリアの腕力では持ち上がらなった。

急激な空腹感を覚えたレガリアはアイテムボックスから食物ポイズンリザートを取り出そうとした所で…この頭上を覆う巨躯をアイテムボックスへと収納出来ないか?と思い付く。

既に元の肉体から離れていたのか、すんなりと黄金魔蟲の切断された部位は収納された。

すぐに食べたい衝動を我慢しながら穴から飛び出した。




どれくらいの時間が経過したのか判らないが、戦闘音は聞こえており、ダンテ達は生きているようだった。


大盾を主軸に守りに徹し、槍を片手に黄金魔蟲相手に1人戦いを挑んでいた。

攻撃を良く防いでいるが、時に咬まれたり捨て身の攻撃を仕掛けられ、カバー仕切れない部分や酸による攻撃を避けきれなかった装備から煙が上がっている。

ダンテの背後ではコウランの姿既になく、応急手当後は邪魔にならない所まで退避して治療を続けていた。


自由に動けるようになったダンテは、隙あれば槍で甲殻部位を集中攻撃し、黄金魔蟲の体力を削って確実にダメージを蓄積させていた。



状況を把握したレガリアは、残り少なくなった最後の闘鬼オーラを両脚に纏わせる。

両脚に闘鬼オーラによる活力が漲り、内側から爆発するような錯覚が襲う。

その感覚を制御しながら自身の限界以上の力を引き出して黄金魔蟲の背後へと襲い掛かった。


端の複眼でレガリアの接近を察知した黄金魔蟲は、自らを傷付ける可能性が一番高い個体を優先順位にしている。

体液を流しながらその存在の攻撃を何とかくねらせて躱そうとしたが、ダンテが戦技【盾打ち】にて体勢を僅かに崩す。


風の如く飛び込み、背面を捉えたレガリアは、重要臓器を含む為1番堅いであろう背部甲殻を目掛けて上段から袈裟斬りにする。

甲殻と刃がチェンソーのような削った金切音が響き、大太刀を持つ手に激しい抵抗が伝わる。

肉体を切り裂かれ、堪らず上体を仰け反った黄金魔蟲。

その隙をここぞとばかりダンテが精鋭小鬼ゴブリンエーススピアを構えた。

槍に宿る常時発動型の武技【小鬼痛打ゴブリンヒット】を発動させて、大きく開いた口内を目掛けて全力投擲した。


装備者よりも大きい相手に対して攻撃力が増大する特性を活かした武技スキルは、赤い残光を放ちながら口内より脳天へと突き刺さる。

体内に破壊魔力が浸透し、存分にその威力を発揮した。


「手斧が喰い込んだ通り、体内は柔らかい」


暫く暴れていたが、やがて力尽きたのかぐらりと頭部が落ちる。振動と共にぐったりと倒れ込んだ。



連戦の後に黄金魔蟲との戦闘…スキルと闘鬼オーラ術の酷使によって、流石のレガリアの残存体力とHP、MPは底を付きかけていた。


(全てが美味しそうな食材に見えます…お腹が空き過ぎました)


直ぐにでもむしゃぶりつきたい感情を我慢しながら黄金魔蟲に近寄り、レガリアがアイテムボックスへと回収した。







遠くから戦闘音が鳴り止まず、グレファン達の方を見ると彼等は連携を取りながら戦っていた。

ミランダが雷撃を纏いながら超スピードで舞っている。

彼女の一撃一撃は甲殻を劣化させ、脆くしていた。

中肉中背の戦士はその事を理解しながら、ミランダに翻弄されて他を攻撃出来ない黄金魔蟲に重斧を的確に加えてどんどん弱らせていく。


物理耐性の高い魔蟲は全身がボロボロになっていても戦意は高く、時々酸を吐く等して暴れることをやめない。

グレファンの双剣や重戦士の重斧は魔力を宿している逸品らしく、非常に硬い甲殻に対して浅いながらも傷を付け、時折弾かれる事はあっても武器には刃こぼれは無い。


そして一人離れた場所で、青年の持つ魔法を封じ込めた巻物スクロールが激しく発光して、属性魔法による魔力光を伴って燃え尽きる。

使い捨ての稀少な巻物だったが惜しげもなく使うことで、黄金魔蟲に更なる痛手を与えていた。


彼らの持ち味を活かしたとても鮮やかな連携は、黄金魔蟲を確実に死へと突き動かしていた。

そう時間は掛からない内に彼方の決着も着きそうだ。


手助けはいらないと判断したレガリアとダンテは、コウラン達の元へと戻る。


「回復魔法は万能じゃないって痛感したわ」


そう残念そうに伝えるコウランだった。

座り込んでいたNo.6は見ると、両腕と両脚、青く硬い毛皮に守られた身体には飛び散った酸により、少し禿げた部分が見え隠れしていた。


大爪双剣を盾にして咄嗟に頭部を庇ったお陰で、脳にダメージも無くマトモに喰らわなかった…生命は助かったがその代償は大きい。

酸によって溶けた大爪双剣の右手剣は持ち手しか原型は残っておらず、持っていた右前腕部の状態も酷い。

左手は焼け爛れた痕もあるものの、回復魔法にて機能の支障は無いまでに回復していた。


ただし右腕はダメージが大き過ぎて回復魔法ではこれ以上の回復効果が見込めず、このまま放っておいたら壊死していく可能性が高い。

コウランは、No.6に右腕の切断ないし除去しなければ回復魔法の効果が薄く、出血が止まらず腐り落ちる可能性を話す。

自身の状態を把握していたのか、切断に対して迷う事もなく頷いたNo.6。

右前腕を前面に差し出して切ろうとしたが、回復したのばかりの自身の左手では充分に力が入らない。

これでは切断するまで何度でも右腕を斬りつける事になって、切断までに何度も激痛を負わせる。

コウランは、No.6の左手から小ぶりの大爪双剣を取り上げた。


「私がやるわ。覚悟してね…かなり痛いわよ」


布を口に噛ませた後、せめて切断箇所を最小限に留めるように…一瞬で済むようにと、右前腕部に狙いを定める。

片手でNo.6の右腕を押さえ、掛け声のもと骨と筋肉とを切り離した。

とめどなく出血が溢れ、激痛に耐えているNo.6の痛みをなるべく感じさせないように、回復魔法を手早く掛けていく。

創部からは肉が盛り上がり、切り離した傷を完璧に塞ぐことができた。


今後切り離した部分は生体再生魔法などでしか治せない。

使い手はカナリ高位の司祭や神官に限られ、今のコウランには使えない。またこの魔法の恩恵を受ける為には非常に高額な金額と社会的ステータスが必要だ。

コウランにとってこれが現在出来る精一杯の事だった。




返してもらった大爪双剣の片割れを左手に持ち、素振りをしながら動作を確認するNo.6。

戦闘には参加は出来るだろうが、著しく戦闘能力は落ちるだろう。


『コウラン…タスカッタ』


短い一言だったが、感謝の気持ちがよく伝わってきた。



処置が終わった所で頃合い良くグレファン達が戦っていた方向から、眩い光を纏ったグレファンの双剣が舞い、黄金魔獣の断末魔の咆哮が聞こえてきた。


「ようやく倒せたか…時間を食ってしまった。急がねば」


グレファン達の全員の身体には至る所に生傷や咬み傷があった。

特にミランダは右腕がダラリと脱力しており、腫れていて力が入っていないようだ。

倒された黄金魔蟲は甲殻に大小の様々は傷と、致命傷になったであろう腹部から尻尾にかけての傷が抉れていた。

ダンテがその技量に感心しているとグレファンが寄ってきた。



「君達も倒したようだね。私達は早速研究所への援護に向かう。

閉じ込められた我らに残された道は、研究所にある隠し通路しかないからね」


そう短く言い残して、グレファン達は直ぐに立ち去ろうとする。


コウランは僅かに逡巡したのち、彼等を呼び止め、全員に回復魔法を掛けた。


全員の身体に回復魔法の効果が働き、傷を癒していく。長年回復魔法を使い続けていたコウランの技量はベテランである【拳嵐】メンバーをも驚く程の回復量を誇る。

ミランダは無言だったが、重戦士と青年は共にコウランに黙って黙礼した。


グレファンからは笑顔で礼を述べた後に、揃って研究所へと続く道へと駆けて行った。


見送ったコウランはダンテとNo.7それぞれに回復魔法をかける。

特にダンテの身体には打ち身や皮下出血で紫色に所々変色している。

特に盾を持っていた左腕や指の骨折などと酷い。

回復したダンテはずっと攻撃を受け続けた装備の点検を行っている。

この1ヶ月で、今まで潜り抜けてきた戦いより濃厚な日々だった。

身を守る上位炎鬼シリーズの防具にはまた傷が増えていたが、補修がしっかりとしてあった為に留め具や機能は問題ない。

粗方点検が終わると、その後について2人で意見交換を始めていた。


No.6は兵が持っていた手頃な大きさのスチールソードを拾い、左手で感触を確認しながら素振りを始めた。No.7は研究所方面への警戒から奥で見張りをしている。


彼等グレファンの倒した黄金魔蟲は横たわり、急いでいたので素材も剥がされる事なく放置してあった。

その巨躯には大小様々な傷が付いており、素材となりそうなモノも少ない。

まずは頭頂の魔獣紋の装具を外し、素材となりそうな無事な部位を手分けして剥ぎ取っていく。

終わったら素材以外は空腹感の激しいレガリアが有難く頂く事にした。

そして、焼け焦げていない緑装備の直属兵や装備、また最初に出てきた回復魔法の使い手の死体をついでに喰べる。


黄金魔蟲の肉を咀嚼する度に、レガリアの中で高濃度の魔力が満ち溢れる。濃厚な味に夢中で口に頬張れば、噛めば噛むほど脂の旨味と肉の旨味がバランスよく…傷付いた甲殻やクリッとした複眼などはバリバリと硬めの歯応えもあって、良いアクセントになっていた。

8メートルもの巨躯を全てを食べ切るまで少し時間はかかったレガリアだったが、美味しく頂く事が出来た。

高レベルだと思われる魔物だったため、レガリア本体のレベルや防御ステータスも軒並みに上がり、更に宝箱ミミックの形態を構成する身体構築部分にこの黄金魔蟲の甲殻が取り込まれ、本体の防御力が底上げされた。どんな状況下で生き残る為にも防御力のアップは必要な事だったので満足のいく獲物だった。

また、本体のレベルがもう少しで100近くまで達成しそうな予感を感じていた。


解放感を味わいながら、次に何体かの直属兵と装備品を食べる。

殆どは【体内吸収】スキルにて経験値にしかならなかったが、回復役の兵だった死体を食すると、レベルアップと共にレガリア本体にスキルが発現した。


初級回復魔法【回復光キュアライト


狂乱兎を支配していた割れた首輪からは【呪い耐性】を得ることが出来た。


体力魔力とも全回復する事が出来たレガリアは、アイテムボックスに残ったポイズンリザードや巨大なブロンズゴーレムを非常用食料としてアイテムボックスに残しておく。


この戦闘では様々な情報を得る事が出来た。特に気になる事柄を確認する。


「ところで…アビスゲートって何のことなのかしら?」


「聞いたことも無い言葉でしたね」


(…以前、御主人様から聞いたことがあるような?太古の封印だったかしら)


黄金魔蟲を召喚した人物が話していた内容に出てきた言葉だ。

レガリアには聞き覚えが微かにあった。

ソウマがここにいたら、その言葉を聞いてこの世界の成り立ちを思い出していただろう。

エルダーゲートの成り立ち…世界に纏わる重要なストーリーに関係のある言葉だからだ。

この言葉の意味は後に判明することになる。




周辺を見渡すと、魔法使いが使った魔法により、天から降ってきた爆ぜる隕石の衝撃で出来たクレーターが見えた。

その破壊の規模から、とんでもない威力の魔法だった事が改めて解った。

クレーターの跡ではキラッと光るモノが見える。

近寄って調べて見ると15cm程に小さくなった光沢を放つモノが落ちていた。



銀光に輝く物体は吸い込まれそうな不思議な魅力を放っていた。

結局のところ、誰も【鑑定】などの系統スキルが無いので、結局何かは分からないままだった。


ギルドに持ち帰り、この物体を調査する必要を感じたが…僅かな量しか無いし、手掛かりは少ないから無駄だろうと思ってもいた。

何より【体内吸収】スキルがその物件を吸収したいと反応している。

珍しい反応に、レガリアは全員に断りを入れてから、その全てを口に入れて頬張った。


コリコリと感触を口の中で楽しみながら嚥下する。

コレは喰べた方が良いと強く直感が囁くだけあり、スキルを手に入れた。


隕鉄膜ギベオンメッキ


本体である宝箱ミミックに新たに追加されたスキルを確認しながら、今後の対応について話し合う。


改めて外へと通じる通路には土砂と岩石で埋められており、外界へ行くには研究所に行くという選択肢しか無さそうである。

土砂も岩もアイテムボックスに収納を念じてみると、収納は可能であったが、土砂の量も多すぎるために繰り返して進んでも出口へと辿り着くには時間がかかり過ぎる。

また、下手に収納し続けて進んでいては再度新たな土砂と岩に埋もれる危険性が高く、生き埋めとなる可能性が高いとの結論に至った。


「結局帰るには彼らの後を追うしかないってことね…異論はあるかしら?」


コウランから問いに対して他の案の意見はない。No.6とNo.7に先導されながら一行は研究所方面へと向かった。

時折、奥から怒号や戦闘音が聞こえて来る。戦いはまだ終わっていないみたいだ。向かう速度を上げる。




研究所を塞ぐ巨大な扉は壊れていた。その周辺には倒れている兵士が2人と青銅製のゴーレムが半壊した状態で機能を停止していた。


扉の中を潜ると見た事もない程の白い空間に、折り重なるようにして倒れている魔物群。僅かに人の死体も見えた。


見渡す限りは黒一色。黒色の甲殻類のダンゴムシ系のような昆虫型の魔物だ。

体長は90cm程で這いながら動いている姿は不気味だ。

兵の死体やよく分からない機材も関係なくこの魔物が喰べているらしく、頭部から伸びる2つの太い触角を器用に動かし、突き刺して破壊してながら進んでいる。

移動スピードは遅い代わりにこの触覚を操るスピードは素早く、この魔物の数も多いために油断していれば手痛い攻撃を喰らうことになる。

直属兵はこのクネクネとした触手のよな触覚に剣や斧を用いて反撃しているが、硬い皮膚に対して彼らの持つ武器では傷付けているものの、大きなダメージを与えられていない。



中央には円陣を組んで中央の研究員を護る兵と魔法陣を貼ったガリウ、残った青銅製のゴーレムが応戦している。ガリウ達からはずっと続く戦闘に疲労の色が隠せていないが士気は然程落ちてはいない。

彼らが主人と仰ぐグレファンの妹たるナタリーも中央にて防衛に参加しているからだ。

彼女も大分疲労困憊で魔力を使い果たしたのか杖で身体を支えているが、叱咤激励を護る兵達に下していた。


そこに援軍として駆けつけたグレファン達が挟み込むように、周囲から襲い掛かる魔物相手に各個撃破していた。

グレファン達は総勢15名程で其処にゴーレムが2体加わり対処している。

いかんせん魔物の数が多すぎて新たに出現した魔物に対して対応が追い付いていないようである。

割れた壁穴からはまた10体ほどが新たに出現し、中央にいる者達を包囲しようとしていたが、先に此方に気付いたようで、向かってきた。


「よくもまぁ此れだけの魔物が…これもあの黄金の魔物を操る人物の差し金か?」


「うげ、気持ち悪いわね。さっさと潰さなきゃ」


動きは然程早くは無いが、小さな脚でカサカサと動く姿はコウランには気持ち悪く思えていた。

ダンテがため息を吐き、己に喝を入れ直した。

取り敢えずこの群れを討伐しない限りは先はない。


硬い皮膚を重ねた装甲状の魔物だったがダンテが槍を繰り出すと、アッサリと重ねた皮膚を貫通して薙ぎ払った。

コウランはウォーメイスで叩き潰していく。ピギッと破裂音を鳴らしながら緑の体液が飛び散り、軽鎧に付いて気持ち悪そうにしていたが。


現在敵の魔物は見渡す限り50体はいる。殲滅戦が開始された。

もう1、2話で纏められたらソウマ編を始めたいと思います。


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