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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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46/88

変貌せしモノを操るモノ

いつも読んで頂いて有りがとうございます!

毎度ペースが遅く申し訳ありません。



ソウマ達がサザン火山迷宮洞窟にてリガインの変貌を遂げていく過程を目撃していた頃、遥か遠い場所に固定された異空間より眺めていた存在がいた。

リガインに加護を授けた存在である。その名は



死と狂乱の神格を持つ霊鳥 フィアラル



元々はとある霊峰に住まう鳥類固有種で絶対数が少ない。

知能に優れて賢く、漆黒で翼を広げれば3mにもなる巨大な種族は付近の生物から黒死鳥と言う存在として認識されていた。


フィアラルは産まれた時から特殊変異体であった為、闇と風の属性を身に宿していた。

時と共に次第に大きくなり、種族の王として覚醒していく。


類なれな実力と幸運。

度重なる戦いを勝ち抜き、黒死鳥として史上初で経験値の最高まで上り詰めた。


いくら特殊個体とはいえ、普通ならそこで成長が止まるはずであるが、何の理由かはわからないがフィアラルは霊峰に住まう高位存在により、霊鳥と言われる上位の存在へと昇華ランクアップに至った。

そこで神格【死と狂乱】の低位を授かり、正確には神ではなく、神に準ずる存在 亜神へと生まれ変わった。


その頃から寿命という概念が無くなった。


次第に時は流れる。

霊峰に侵略してきた敵と交戦し、双方多大な損害を出しながらも敗れた。

かつての領土は敵に奪われ、種族は根絶やしとなり、眷属すらもいない忘れられた存在となった。



その際に力の大半を奪われ、封じられた。

全盛期の半分以下もないが、生き延びた事で口惜しい気持ちを糧に、無くした神力を蓄積させるため深い眠りにつくことにした。

自身の残された少ない力で領域を作り、そこに空間固定して深い眠りについたフィアラル。

とある時期に突かれるような不快な感覚に目を覚ました。


そこには我の領域をも超えて届く小さき者達の集まりがあった。


大量の贄も雀の涙ほどしか神力を回復させられない。また、眠りを邪魔された不快感のあまりに殺してやっても良かったが…戯れに剣を捧げた男に残り少ない神力を削り、加護を与えて見た。

ただ殺すよりも、そうする事で大いなる災いをもたらすと…亜神の格による予兆が見えた。


加護の試練を生き延びれたらの話だったが。それに生き延びて契約を履行しても呪印へと変貌するように細工した。


どの道、面白い余興になる。それに自分の種族以外の生体に加護を与える事も初めてである。

他の神やそれに連なる程の実力者は好んで守護する種族以外に加護や使徒としての力を授ける者達が少なからずいた。


我はその者たちを酔狂者だと思っておったのだがな。

長い間眠っていたフィアラルには好奇心を刺激させられていた。


小さき者共よ、亜神の1柱である霊鳥たる我を呼び出した罰を受けよ。

もしも試練に勝ちわ我が力の一端を宿したならば、半端な存在でも役に立って貰おう。

我が元に更なる糧を貢ぎ、せいぜい災いを運ぶが良い。


そう思い、契約具である血竜剣と両眼の加護(呪印)から媒介して、異空間から眷属と成り得るモノに力を注ぎ始めた。




余りの膨大な力に、元となるリガインの器が悲鳴を上げる。

肉体が膨張と伸縮を繰り返し…背部に翼が生えた。

パキパキと身体を揺らし、苦しそうに耐えながら目を瞑っている。

いつしか周りには半透明の結界が構築され、大きな卵のように球体が形成されていった。


蹲ったかのようなリガインだったモノはまだ動かない。

全身はまだ成長・変体を続けている。


首は縦に長くなり、首から尻尾にかけて立派な深緑色のたてがみと剛毛質の毛皮のような体毛が生えていた。

巨体を支えるためのガッシリと太い骨格と胸筋。

背部の付け根からなる2対の褐色の翼は成熟したのか、赤闇ダークレッドと変色した。羽毛で覆われてとても硬そうだ。

各翼の脇からは細々しく蜘蛛の脚のような関節を持つ長い腕が2本ずつ生えていて計4本ある。

この腕にはビッシリと鱗状に並び、防御されていた。


手の先にはどれも鋭い鉤爪を伴っていた。

鉤爪の最先端は剣のように鋭利で、明滅している。

逞しい胸筋に護られた場所からは硬い羽毛で覆われ、血管のような管が浮き上がっていた。

そこから身体中に張り巡らされていて…一言でいえばかなり不気味な存在となっている。


頭部にはノコギリ状の牙が細かく並んでいる嘴と未だ閉じられた両眼。

シルエットは鳥と竜の面影と、蜘蛛脚のような奇怪な4本腕。

様々な形態を持つキメラ系ような面影があった。









フィアラルの干渉率20%……25%。変貌している最中であったがこれ以上注ぐと器は形を保てなくなり、崩壊していくと判断した。


不必要に肥大化した巨体は我の力を上手く取り込めていない証拠。

しかも、我の眷属としては何とも醜い姿なり。


黒死鳥の種族としては中途半端な姿に、やはり人間と言う素体の枠組みではこの程度の眷属としか成り得なかったか…と落胆してしまう。

しかし、リガインなるモノに一千体の経験値を吸わせ、存在自体を徐々に作り替えてきた自体は無駄では無かったが。肉体強化を中心に肉体が作りかえられていった。



フィアラルは落胆もしながら、しかし新たに眷属の誕生は喜ばしいとも感じていた。


何せ、我が種族と眷属が滅んだのは何千年前だ。多少劣化していたり、醜くとも我慢せねばなるまい。


体内にフィアラルの分体として血竜剣を変換させ、血竜核として取り込ませた。

半透明の結界内では急速に進化と成長が促されていた。

ただし、直接フィアラルからの干渉を受けた眷属といっても特殊能力等はない。

精々が幼竜並の強靭な骨格や筋肉を有する事と、種族特性として闇属性の加護が宿りやすい事だ。

どんな眷属になるか…こればかりは産まれてみないとわからない。


最終的にリガインと言う邪魔な贄の意識を飛ばし、間も無く目を覚まし敵を屠るだろう。









この戦いを観察していたカザルは何が起こったのかを瞬時に理解し、驚きを隠せずにいた。

この現象は強制的な進化の影響。


まさかリガインが紛い物とは言え、神々に連なるモノの眷属となろうとは…無論、神の使徒である自分には及ばないであろうが、強敵が生まれる事には違いない。



普通の人間ならば、あり得ない確率にソウマという存在は何か運命を引き寄せているのだろうか?


まぁレオンのことは気に入っているし、ソウマの存在も見ていて面白い。危険ならば助けに入ればいいかと気楽に考え、手を貸そうかどうか悩んでいたものの…結局は静観する事に決めた。お手並み拝見である。












時間軸は現代に戻り、リガインだったモノと相対する面々。明らかな異常事態に立ち尽くしていた。


リガインから翼が生え、今では5m程に膨れあがった。今も風船の如く膨らみ、分裂して鱗や羽毛などが生えてくる。

確実に人ならざるモノに変化していく。

幸いなのはここは飛行出来る魔物にとって洞窟内の天井が然程高くない。

もし空を飛べるのならば行動に制限を掛けられる事だろうか。

また、あの巨体なら階段から上へは行けないと思う。

苦しそうに蹲る巨大な姿は半透明な卵型の中に封じ込められているようにみえた。




レオンやイルナも驚愕の余り固まっていた。そして、圧し潰すような未知のプレッシャーに恐怖していた。


「なんなのよ…あの化け物は」


「リガイン…なのかアレは」



ソウマも驚いていたが、この感覚に既視感を感じていた。

かなり強い凶暴なプレッシャーを感じる…それは、この世界に来るキッカケとなったサンダルフォンが干渉した分体と戦った時以来である。


あの時よりも感じるプレッシャーは少ないが、ソウマに死を感じさせる程の力を持っているのは間違いないだろう。

あの時はハイエルフのニルヴァージュ、長年の友であり高レベルプレイヤーのユウトが側に居てくれた。


あの時と状況は違い、このメンツの中で今回は一番腕が立つであろう自分。

この異常事態に誰も犠牲無しで乗り切りたい所だが…自分に出来るのだろうか。


そう考えている内に自然と周りに全員が集まってきた。

安全確保の為に念のため、1度BOSSの間へと通じる建物へと避難した。


「ソウマ、すまん。あの男に逃げられた」


そう言って開口一番に謝ってきたのはマックスだ。

先程レガリアと合流したものの、吹き荒れる暴風が周りを襲った。

影響は無かったが、あの混乱の一瞬の隙に奴が逃走したのだと語る。

レガリアも申し訳なさそうに俯いていた。


「いや、逃げられたのなら良いさ。皆無事だし、捕まえた人間もいるしね」


捕縛した女魔術師は魔法を使えなくする魔具を両腕と口に嵌められ恨めしそうに睨んでいた。


「後はアレをどうするかだ。逃げるなら今の内だけど、どうする?」



恐怖で顔を強張らせていたコウランとイルナ。

ダンテやマックスも内心では同じ気持ちだったが、表情には表さないでいる。


皆と相談するも、結論は決まっていた。

生命も大事だが、あの化け物をいま此処で倒しておかないと、かなり高確率で割合でアデルの町が襲われる。


但し我々だけでは全滅する可能性もありえるし、このまま戦闘を行えば巻き添えで捕縛した女魔術師も死ぬかも知れない。


まずは外部に応援を呼ぶ事を視野に入れ、折角捕縛した女魔術師を警護団へ護送する。

その為には最低1人は付き添わなくてならない。


悩む間も無く、ソウマはマックスにお願いした。

彼の貴重な戦力が減るのは痛いが、貴族でアデルの町の重鎮とも顔馴染みのある彼ならば、妻のエステルを通して女魔術師の引き渡しや増援を可能な限り早く連れてきてくれる可能性があった。


そして口封じに護送中に襲撃されても、護衛しながらも返り討ちに出来る程の実力がある人材も、マックスしか該当しないと思っていた。


その事を伝えると全員が納得したが、肝心のマックスは苦虫を潰したような表情をしている。


責任感の強い男なのだ。この限りなく死地に近い戦いに参戦出来ない事が悔しく、申し訳ないのだろう。


その気持ちが嬉しくあり…1人を護衛しながら無事町へと帰る危険性も少ない。

その為、余計に彼で無いと務まらないこと説得して、再度お願いした。

其処まで頼まれたマックスは気持ちを切り替え、全員の顔を見た。


「なるべく早く応援を連れて戻ってくるから、皆死ぬんじゃねえぞ!」


そう言って足早にマックスは町を目指して出発した。

女魔術師とマックスの手には逃亡を防ぐために手錠がかけて繋げてある。

何事も起こらず無事半透明の結界の脇を抜け、上へと繋がる階段を登っていくのを見届けた。


残った面々はレオンとイルナ以外は初めてだが、挨拶している時間も惜しい。

簡単に名前だけ紹介してもらい、あの化け物を倒す算段を付けなくては。


レオンは今回、全体サポートに回って貰った。

レオンの攻撃力も捨てがたいが、恐らくあの化け物は高い確率で風属性に対する耐性があるようだ…と、風に対する上位の加護を持つレオンから判断されたからだ。

その為、防御魔法や強化・支援魔法を中心に活躍して貰う予定だ。

仮に倒せなくとも増援が来るまで粘れば良い。


イルナにはクロスボウに金属矢をセットしてもらい、褐色の巨大な翼を優先的に狙って貰えるような頼んだ。

また、暴風矢弾はあと2つ残っている。レオンからの指示の元、タイミングを見て使う予定である。



いつも通りコウランは状況を見ながらサポートと回復魔法を使ってもらう。今回はフレイも支援魔法を掛けて貰う為に召喚したままになっていた。明らかに格上の相手に萎縮しているフレイ。

コウランに優しく撫でられ、少し落ち着いてきた見たいだ。

まぁ…フレイを構うことでコウラン自体も緊張感や恐怖が薄れてきたようで何よりだった。

本人は王獣の試練の加護の力でステータスや有能なスキルは半減ないし封印状態である。

足手纏いではないと皆は言ってくれている。だが、生涯の中で今が1番危険な状況である。これ程まで力を欲した時は無い。


皆を守る。死人も出させないわ!

どんな時も後悔は自身の妨げにしかならない事を、試練の加護を得た時に学んだ。

どんな時でも自分の力を信じ、前向きに頑張って見せる。それが彼女の原動力である。







ダンテは言わずとも盾役で前衛を買って出てくれた。

レオンとコウランからの防御・サポート魔法を受ければカナリの防御力向上が見込める筈だ。

それと普段愛用している長剣が、細工の美しい見慣れぬ片手槍へと変わっていた。


本人に聞いたら、あの襲ってきた槍使いの品だと言う。明らかに魔力が籠っており、淡く輝いている。

試しに注視してみると、やはりレア級の品だとわかった。




精鋭小鬼ゴブリンエーススピア レア級


小鬼ゴブリン種の中でも鍛治のエリート小鬼ゴブリン英雄小鬼ゴブリンヒーローへの献上品の一つとして作成された片手槍。

穂先に希少な魔鉱石を使い拵えられた片手槍で、手先の器用な小鬼ゴブリン種ならではの煌びやかな細工と加工が為されている。

装備者よりも大きな者と戦う際に攻撃力が増大する特殊な魔法が掛かっている。


常時発動型武技スキル【小鬼痛打ゴブリンヒット



これは…変わった品というか珍品?なのかも知れない。

ダンテにレア級だと伝える共に武技の効果も伝えておく。


苦笑しながらも、有難いと一言述べて感触を確かめながら、槍を振っていた。

しかし、大盾を片手で持てるダンテにとっては普通の槍よりも攻撃力も高いし重量的にも丁度良い武器なんだろう。




さて、自分とレガリアに関してはこれから要相談となる。

まず、レガリアをどうするかに関して修羅鬼に擬態したままで参戦するか、宝箱ミミックに戻り、ソウマの戦力を上げるか防御面に回るか…もしくは場合によって両方立ち回るのも良いかも知れない。


修羅鬼に擬態している場合は身体能力も高く、間違いなく単純に攻撃に関しては此方の方が上である。

新たなスキル【蒼炎】を駆使し、【亜竜の外皮】により防御面でも多大にアップしている。


本体であるレガリアに戻れば、【精魂接続アストラルリンク】スキルを使って【擬似心臓】スキルで身体能力能力のアップを始め、【亜竜の外皮】や最近手に入れた【雷球(小)】による同時攻撃も可能となる。


イルナと共に遠方から弓で攻撃し、後に接近戦では修羅鬼に擬態し共に戦う事もアリかな。

心配はあるがレガリアなら大丈夫と言う信頼もある。


他に心配な事は、レオン達に自分の手札の1枚を見せてしまう事になる事だ。


単純に悪い人間では無いし…仕方ないのかな。

簡単にレガリアのことを2人に説明した。


自身の使役する魔物である事と、種族特性としての擬態が得意であり様々な形態をとれる事などである。


でも、他言はしないようにとお願いして言い含めておく。納得してくれたので一先ず安心だ。




此方の準備が終了した。彼方はまだ半透明の結界は解かれず、明滅している。

リガインだったモノを暫定的に竜鳥ドラゴンバードと名付ける。


「取り敢えず、無理だと判断したら引こう。

改めて言うけどこの敵は普通じゃない。以前似たような相手と仲間と共に戦ったけど、死にそうになった事もあるよ」


思った以上に厳しい戦いになる事を自覚し、ソウマの言葉に各々は頷く。

どれくらい時間がたっただろうか?

半透明な結界に覆われた竜鳥が身じろぐ。

薄い金属か割れた音が響き、遂に進化し終えて産まれたての竜鳥が、洞窟内にて絶望的な鳴き声を上げた。


少しずつ読み直して各文章の修正・誤字脱字を直していきたいと思います。またよろしくお願い致します。

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