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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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呪縛せし魂

いつも読んで下さる皆様ありがとうございます。

ペースが遅くなりいつもごめんなさい。

書き溜めておいた分も修正しながら載せていこうと思いますので、またよろしくお願いいたします。

それと修正・誤字脱字ご指摘ありがとうございます。自分でもおかしな表現が有りましたら、随時修正していきたいと思います。

イルナはレオンが窮地に陥り、壁まで蹴り飛ばされた時に堪らない焦燥感を隠しきれずにいた。



前々からレオンと相談し、この暴風矢弾を使う場合を決めていた。

そして場合によって勝機が掴めない・ないし重症を負い状況が不利そうな状況に転じた時は、最悪レオンごと巻き添えにしてでも、リガインを道連れに葬ることであった。




決めていたものの…苦楽を共にし、郷の幼馴染みでもある大切なレオンを犠牲にして迄、この仇討ちなどしたくなどない。


時間と共に焦燥感ばかりが募っていく。

状況は悪いわ…このままではレオンが殺される時に使用することになりそう。


迷いがイルナの焦燥感を更に掻き立てる。レオンの危険を前に飛び出そうとする気持ちに我慢が出来るか…イルナは自信が無かった。


血だらけのレオンの姿が郷の殺された皆と被って見えた。

リガインが振り下ろした絶体絶命の瞬間を見たとき、力が抜けてクロスボウを取り落とした。



しかし殺される寸前でソウマがリガインの攻撃を喰い止め、膠着状態に入る。


ホッとしたのも束の間、クロスボウを慌てて拾い上げ、再度強く握りしめた。

たった今、大切な存在を殺そうとしたリガインに対して、憎悪がとめどなく溢れ出す。

冷静になどなれず、怒りの感情に支配され、歯止めが効かない程にイルナの理性を奪う。


気が付けば、我を忘れてリガインの背に向かって躊躇いなく引き金を引いていた。

レオンが近くにいる事も忘れてしまうほど…。



あっ…と気付き、青ざめたイルナ。

暴風矢弾はリガインを中心に効果を発揮し、周囲を巻き込み吹き荒れる。








その時ソウマはレオンが倒れている壁を背後に、血竜剣の刃を止めていた。

偶然にもリガインの後ろに控えた女の子が、クロスボウを構え直した様子が見えた。

暴風矢弾といった特殊な矢の事情は知らなかったが、死角から攻撃を仕掛けると言った様子が分かった。

同じ弓系職業であるため、狙いの意図が何となく分かったような気がした。


その行動に対して補助サポート出来るように全力で大鉈を振るい、矢が飛んでくるであろう方向を定め…後方へとリガインを後方に弾き飛ばした。


不意にきた強力な一撃。しかし、対応は出来ていたので力をいなしながら後退するだけで済んだ。

狙いが見えず、訝しんだリガインがソウマを警戒して距離を空けようと、更にバックステップをした所で暴風矢弾が来た。


背後に迫る握り拳程の大きな物体に気付かず、矢弾が直撃して何かが砕ける…そんな感覚を味わった後、地面に縫い付けられたかのような指向性を持つ力が加わった。

急激な状況の変化に理解が追い付かない。

そこを中心に存在するモノ全てを吸い込むような暴風が吹き荒れた。



リガインが距離をとってくれたおかげでよく見えたが、矢弾が当たったと感じたと同時に魔法陣が瞬時に2つ浮かび上がり、構築される。

1つは暴風の嘶きと呼ばれ、風魔法の上位殲滅魔法。暴風が吹き荒れ目標の全てを灰塵とかす。

本来なら間違っても個人に対して使われることの無い代物だ。


もう1つの魔法陣は着弾した対象をそこに拘束する強力な呪縛系の魔法だった。

逃げれないように念には念を押して追加された魔法であり、リガインを何が何でも討伐したいと言う執念を感じられる仕様だ。




魔法陣が2つも浮かび上がり、変だな?と感じる前に悪寒がソウマを襲う。反射的に距離を開けなければ感じた時に、風の吸引力が強まってきてそこに引っ張られる力が加わってくる。


比較的浅い力だが、レオンがその力に引っ張られようとしていた。

暴風矢弾の効果は良く知っていたし、このままじゃ不味い、と感じても身体は満足に動かない。

離れていても余波からくる風圧に抵抗しきれずにレオンは吸い込まれそうになる。

その前にソウマが大鉈を地面に突き立て、レオンの手を何とか掴んでグッと引き寄せた。

無理矢理な痛みに顔を顰めているが、構わず片手で抱き寄せる。


暴風が吹き荒れる中、鬼の大鉈の武技【旋風撃】を発動させた。

旋風の抵抗に一瞬暴風が止み、駆け抜ける為の道が出来る。

アイテムボックスに大鉈をしまい、その一瞬でレオンをお姫様抱っこして全力で駆け抜けていく。


「お、おい。僕は女の子じゃないぞ」


真っ赤に照れているレオンは、怪我はあるもののシッカリとソウマに抱きついていた。


(余裕あるなぁ)


と、思いつつ


「怪我人は黙っててくれ」


背中におんぶし直す余裕は無い。

お姫様抱っこは初めてなのか、そのあとは反論もなく大人しく言われたままになった。


駆け抜けている途中で旋風撃の効果が無くなり、余波で弱まった暴風が横殴りに襲ってくるが、何とか突破して無事安全圏内に辿り着く。


風による影響は感じない。どうやら暴風矢弾の範囲から抜け出たようだ。


ソウマは荒い息を吐きながら、レオンを降ろしてハイポーションを渡す。


「これは…ハイポーション!!こんな高価な回復薬は初めて見たよ」


変な所で感動しているレオンを急かし、飲んで貰った。

先のポーションで痛みは引いていたようで、ハイポーションにより残っていた傷口も瞬時に塞がった。


妖精であるレヴィは見届けて安心したのか、今はレオンの肩に留まり機嫌が良さそうだ。



イルナと呼ばれていた女の子も慌てて駆けつけて来た。

表情は泣きそうだ。顔色は青ざめており後悔した顔をしている。


「ごめんなさいレオン、わたし…」


最後まで言い切る前に


「ナイスタイミングだったよイルナ。流石、僕の幼馴染みだ」


謝るイルナを途中で制し、レオンは笑って答えた。

クシャッと泣き笑いの表情のイルナはレオンに抱きついた。


若いよな〜羨ましい…と横目で見たソウマは、暴風の影響が収まり、倒れているリガインを警戒しながら戦闘態勢を続行する。







暴風矢弾の直撃を背後に喰らったリガインは身体中を襲う激痛と螺子切れそうな力の渦に耐えていた。


轟音と暴風による永遠とも言える体感時間が過ぎ去り、静寂が場を支配した。

頭部を庇い、うつ伏せに倒れていたがようやく顔を上げた。


全身は青痣がついている。しかしまだ全身打撲程度ですんでいるのは、高性能の防具と咄嗟に使った闘気術のおかげだった。


身体のダメージを確認しながら、装備の点検をする。

金属板鎧ラメラアーマーの金属板は所々剥がれている。

ただ、凹んでは無いので着用や機能には然程問題は無いと判断する。


持参したポーションは今の攻撃で砕け散っていたが、一本だけ迷宮でしか獲得出来ないレアポーションが壊れずにあった。

勿体無さを感じる事なく、躊躇わず口に含む。


瞬時に傷と体力を大幅に回復させる効果を持つハイポーション程ではないが、重傷だった傷がある程度回復した。



この鎧を盗み出し、加護を受けた以来負け無しの自分が初めて地べたに転がされている。


苦戦している…この私が!

こんな刺激的な相手がいる事が堪らなく嬉しい。


狙った相手はすぐに死ぬし、偶に手応えのある者もいるが本気を出せばその相手も死ぬか逃げるかのどちらかであった。

今回は歯応えがある相手がある。

近年感じていた飢餓感。

この飢えたような乾きが少しずつ癒されている感じが身を満たしてくれる。


「さて、じっくりと狩ろうか」


ダメージ確認もそこそこに満面の笑みを露わにリガインが立ち上がった。











「アレを直撃して生きてるなんて…化物にも程があるね」


「レオン、残る暴風矢弾はあと2本よ?またクロスボウにセットしておく?」


「ああ…いや、普通の金属矢にしてくれ。援護を頼むよ。

それにソウマが協力してくれる事になったから前衛を任せたい。

僕は加護をまた再発動するまで時間がかかる。それまで魔法での攻撃・援護を担当するから宜しく」



この表情に先程までの悲観的な感じは見受けられない。

郷を出てから、いつも2人で一緒に困難を乗り越えて来た。

そんな苦労が多かった中で笑顔で入れた時間は少ない。


(レオン…こんなに嬉しそうな表情は初めて見たわ。私になんて見せてくれたことなんて無いのに)


嬉しそうにレオンに紹介されたソウマは、軽くイルナと自己紹介を交わした。


ちょっと表情が堅いイルナだったが、簡単な挨拶と握手をする。


ポニーテールの似合う可愛い女の子である。

表情が堅いのは見知らぬ自分に緊張しているからで、断じて小声でレオンは渡さないから…と呟かれたのはきっと気の所為だ。


気の所為に違いない…よな!?



よく分からないライバル視をされて釈然としないソウマだったが、3対1となった戦闘に対して、相手側に降伏勧告を勧めて見た。


「おや?何故降伏などせねば為らない。君はこの剣の栄えある生贄となるのに…」


やっぱり予想はしていたが駄目だったか。

なら、後は迅速に片付けるだけだ。




その後の戦闘は協力した甲斐もあり、リガインを徐々に追い詰めていった。


特に風魔法に特化しているレオンは攻撃魔法のレパートリーが幅広い。



前衛も兼任出来るソウマの参戦により、お互い協力しながら追い詰める事が出来た。

やがて千載一遇のチャンスが訪れた。風圧槌エアハンマーの魔法が横殴りにぶつかった。


リガインが僅かによろめいて脇がガラ空きになる。

誘いかも知れないが…一瞬の躊躇いを捨て、出来た隙に思いっ切り斬りつけた。


紫紺に輝く金属板鎧が大鉈の威力を分散しようと抵抗してくるが、反動に負けずガッチリと大鉈を脇腹に喰い込ませる。


たたらを踏んだリガインの追撃に巨人の腕を発動。

目の前の巨大な腕の直前に危険を察知したのか、両手剣を盾にして防御する。



そこにレオンがようやく魔法の詠唱を終えた。

風魔法 中位 風圧槌エアーハンマーを超える上位の風魔法である竜巻トルネード大鋸グレードゼーゲを唱えた。



風によって精製された螺旋刃が複数の波形の大渦を伴ってリガインを巻き込み、侵食していく。

本来なら直径10m級の殲滅魔法である。それをたった1人に使う。

逃げ場の無い風の渦に捕らわれ、螺旋を描く刃物様の鎌鼬が地面を剃りながら縦横無尽に暴れまわる。


ようやく竜巻大鋸トルネードグレードゼーレの魔法効果がおさまった。

魔法金属板鎧の発動スキルと加護の闇風の力で魔法が相殺され弱まったものの、魔法の中心にいたリガインは肉が削げボロボロになった両手でまだ血竜剣を握りしめている。


イルナが顔面を精密射撃で狙い、そちらに注意を引き付ける。

その間にソウマは背後から忍び寄り、巨人の腕を直撃させた。


破砕音が鳴り響き、魔法金属であるランバード鋼の板が砕け散って弾け飛ぶ。

余りの破壊力に初めての絶叫を上げ、のたうちまわった。

片腕が反対方向にねじくれ、肩の繋ぎ目から血だらけになったインナーが顔を除く。



攻撃の手を休ませずそこを狙ったイルナは前方からクロスボウに戦技【共鳴矢】と【爆風矢バーストアロー】を織り交ぜた精密射撃の援護を行った。


戦技の影響で金属矢は紅く輝き、残像を残しながら飛来する。

長年の経験則から血竜剣を振るうも全て撃墜は出来ず…爆発音と共に矢は高熱を発し、肩を覆う金属板ごと吹き飛ばして筋肉を抉った。


「あと1体…1体で何だぞ」


満身創痍のリガインは、片手で血竜剣を杖のようについて呻く。



敗色が色濃いものの、如何にかして活路を導き出そうと画策する。

ソウマは手強い…それ以外のレオンかイルナへと何とか接近し、武技【飢牙】を発動させて自身を回復させようと企んだ。

なけなしの体力を闘気術へと変換しようとすると、血竜剣からリガインの脳裏へと声が響いた。


(貴様ハ、モウヤブレタ。アトハ我ガ生贄トシテ喰ラオウ)


血竜剣に宿りし契約の意思がそう呟くと、一際妖しく光り輝く。


訝しむ間も無く、剣身に張っている血管のような魔力紋の光がリガインの折れた両腕を覆う。

そして血竜剣が勝手に動き出し、腹を突き破る。夥しい出血が腹から溢れ、大量の新鮮血を口から吐き出しながら倒れ伏す。

血竜剣は貪るよつにグイグイと傷口抉り、徐々に融合して侵食していく。

ビクッ…ビクッとしたリガインはムクッとゆっくり起き上がった。


「ハッハッハァ…ここまで俺を追い詰めるか!

人も契約主すらもこの俺を…イイダロウ。全てノリコえて遥かな高みヘと登ってヤル。面白い、面白い…面白くナッテキタゾォォオ」


様子や言語がおかしくなり始めたリガインは、今まで受けたダメージの痛覚が無いかのように振舞う。

反対側に折れ曲がっていた片腕も異常に膨張し…分裂した。




また身体全体に激しい痙攣が起こり、直後にブチブチブチと…筋繊維が千切れる嫌な音が聞こえ、背部から肉が裂け、筋肉が引き千切れていった。


大量の鮮血が背部から噴き出すも構わず、其処から糸を引いて褐色の翼が生えてきた。


「最高だ。気分がイイ。頭から全てが抜け落ちていく感覚がタマラナイ」


身体に深く突き刺さっている巨大な血竜剣の剣身がリガインの体内にゾプリと溶けるように身体に染み込んむ。



血竜剣の半身を全て吸収した時、全身の体色が褐色から血竜剣のような闇赤ダークレッドに変わっていく。

身の毛のよだつ咆哮を放つ。


身体が膨張を繰り返し、金属板鎧がはち切れそうなほど膨れ、弾け飛んだ。

徐々に身体に凸凹な突起物、分裂をし始めている。

最早人間離れしすぎてきたリガインの目には、加護による色が呪印へと変わる。

竜のような縦の亀裂が入った竜眼が見えた。


闇の術式により呪縛せし魂 1000の契約。


新たなる異形の存在が誕生する事を伝えてきた。

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