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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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迷宮洞窟内の戦い3 レオンの決意

ご指摘アドバイスありがとうございます!

先発隊が戦いに入り、暫く経ったが戦況に変化があった。

カザル達が下へ降りてきた時に目にしたのは、半壊した2つの討伐隊チームであった。

正確には全壊しそうだったのだが…。


2つのチームのリーダーのみが生き残っているという、異例な展開だった。


「これは…少し予想外だった。今回の獲物は楽しめそうだな」


ニッコリと嬉しそうに呟くリガインは既に戦闘態勢に移り、どの獲物にしようか悩んでいるようだった。



同時に最下層に降りてきたレオンとイルナも、状況を確認しながら戦闘態勢を維持している。


イルナはクロスボウに大きめの矢を番え、何時でも発射できるように構えていた。

クロスボウ自体も結構な重さがあると思うのだが、特別な樹木である樹齢100年物の木材で作られたクロスボウは装備者に重さを軽減させる魔力が宿っている。

彼女の故郷で作られた特別製であった。


狙撃手スナイパーを職業として持つイルナは、命中精度を上げて必殺を狙う為にスキル【鷹の目】を発動させて待機している。


因みにソウマはのちに知ることになるのだが、この世界の住人によるスキル会得とは、習得した職業から必ず得られる訳ではない。


職業によるステータス恩恵は与えられるが、スキルを会得するには才能などやステータスによる個人差が必要とされている。

適正値に足りていない人間は職業には何とか就けても才能が無いと見なされ、世界からスキルが発現しないとされていた。

諸説ではあるけど…と、ある人物に後に説明を受ける事となる。



その為、グリッサのように職業とは関係無しに両親より受け継がれる遺伝的なスキルや、種族特性としてのスキルを持つ者も、非常に稀だが存在する。


【鷹の目】を会得しているイルナは、年若くして才能のある女性である。


矢を固定して、覗く先を忌々しそうに狙う相手はソウマ達ではなく…味方の一団に向けられていた。




一方レオンは戦況を確かた後、この戦いに参戦しようか迷っていた。

余りにも相手ソウマ側の戦力が強過ぎていたのである。

最初から討伐隊など、彼等にとってとある人物を帯び寄せる罠のようなモノであったが。



レオンは幼馴染のイルナと郷からの密命を帯びていた。

それは故郷の森の郷で重要人物を殺した者の抹殺である。


その殺戮者は事もあろうか、郷の英雄でもあった兄のゼファーを殺し、またその場にいた全員を纏めて切り殺す凶行に走ったのだ。

その中には郷の守り人であった、レオンやイルナの肉親も含まれた。


特にレオンはその戦いで天涯孤独の身となり、イルナは両親を失った。

彼等にとっては敵討ちも兼ねている使命だ。



闇鍛治士と言う稀有な職業に就き、天才的な腕前を持つゼファーの打った一振りの両手剣は、殺戮者リガインに多大な攻撃力を与えた。


金属板鎧ラメラアーマーは、魔法耐性と傷も付かぬ程の防御力を誇り…最悪な人物に最高の二物を与えた。


リガインと兄は親友同士だったのに何故…。幼い時から遊んでくれた記憶が、今でも蘇ってくる。


使命を帯び、郷を出てからの2年間リガインの足跡を追う毎日。

調査の結果リガインは何百人という人間を殺していた。

それも血竜剣ゼファーの武技スキルを試すかのように、殺された死体は著名に物語っている。


殺された人間の特徴は様々だったが、共通している特徴は腕が立つと言われている一点だった。


リガインは高額賞金首であり、放っておいてもある程度の腕前以上を持つ者が狙ってくる。

殺された人間の殆どは冒険者や高名な騎士、そして数少ないが魔術師迄もが含まれていた。




だからこそ、この依頼にリガインが現れると踏み、予測したレオン達だったが…狙い通りアッサリと奴は現れた。

再会したリガインは狂人と化しており、レオンやイルナを見ても気付かなかった。

初対面のような振る舞いと、舌なめずりするような笑顔を浮かべていた。


リガイン発見というこちらの目的は叶った。最早討伐隊等どうでも良い。

どうやったらあの殺戮者リガインを殺せるのか…しかし、郷を出た時からいくら考えても2人だけでは無理だと結論に至る。


いくら不意を突こうが下手をすれば自分達が殺されるのは目に見えていたからだ。



「何を迷っているのか知らないが…必要なら手を貸そうかい?」


悩んでいたレオンに突然声をかけたのはカザルであった。



カザルとしては、自身が前に出てソウマを試しても良かったが、試金石として丁度いいリガインとレオンがいたのだ。

彼等に任せてみるのも面白いと感じていた。


しかし、レオンはどうやら悩んでいる様子を受ける。そう思って声を掛けてみたのだ。


「貴方は…何者かは知らないが、信用が出来ない。レヴィも注意した方がいいと警告してきたし。

しかし、出来れば何もしないと確約してくれるなら…見守りをお願いする」


と、頭を下げてくるレオン。


レヴィと言うのはあの妖精の事であろうか。

昔から妖精はイタズラも大好きだが、認めた者には協力や警告を惜しまず、尽くそうとする不思議な存在だった。


カザルにとって珍しい事だが、レオンの事が少し気に入り始めた。


「ふーん…何もしないでか。それはそれで困るけどイイっす。

なら面倒な目撃者だけは消しておこうかな」


そう言うや否や、同じく付いてきた仮面の男に笑顔で近付いていく。


「やっ、ここまでご苦労さん、後は俺が引き継ぎしますよ」


「は?何を…」


そう言って仮面の男に手をかざすと、短い詠唱のあと何か剣のような物体が飛び出て突き刺さる。


すると、悲鳴を残す間も無く存在そのものが焼滅した。

あの男は瞬間的過ぎて痛みすらも無かっただろう。


カザルはレオンやリガインと言った一握りの存在は兎も角、この討伐隊はソウマに負けるだろうと…感じ取っていた。


なれば逃走などして、下手な報告などされてもらっては困るのだ。


今回の目的は、ソウマが我等の役に立てるほど使えるかどうか?

そこを見極めるのが俺の仕事なのだから。


「さ〜てと、ではお言葉通りに後は見物でもしますか」


そう言って一旦戦線を離れ、1人観戦を決め込むカザル。

降りてきた階段を引き返して行き、周囲の反応などお構い無しに帰っていく。


この偶然とも言える展開。


この時点でソウマと戦わない選択をしたカザルは、後の運命を大きく変える事となった。






カザルの行動を目撃していたのはレオンだけ。


余りの早業にゾッと冷や汗が走る…アレほどの腕を持つカザルは何者なんだ?敵なのだろうか、味方なのだろうか?



たが、此れで僕の覚悟は決まった。


レオンの持つ魔法に、妖精魔法と呼ばれるモノがある。

これは妖精固有の魔法であり、妖精以外には使えない。


レオンが使えるのは、正式に契約した妖精レヴィのおかげだ。

レオンの魔力とレヴィの信頼度の高さで、現在契約して引き出せる魔法は簡単に説明すると3つある。


魔術殺し。妖精伝達。秘中の儀。



この3つであり、その内の妖精伝達の魔法を唱える。


余りに遠くの者には無理だが、念話のような感じで対象者に直接脳裏に伝えられる妖精魔法がある。

便利な魔法だが、デメリットもある。


それは、此方からの伝達は出来るが受信は出来ないといった一方通行であることが挙げられる。

伝えられた相手側は、返答したい時はそのまま言葉で返さない限り、術者には伝わらないのだ。


それでも秘密裏の会話に感して圧倒的なアドバンテージがあるのは間違いない。

レオンは妖精魔法を使用し、イルナに考え抜いた作戦を念じて伝える。



怠け癖を消し、真面目な表情を見せたレオンを驚いたように見つめるイルナ。

作戦に頷いた彼女を安心させるようにレオンは笑った。


そしてこの戦いで最後の別れになるかも知れない。敢えてリガインと距離を取り、小声で話し始める。


「遂にあのリガインと戦うのよね…この2年間、本当は怖かった」


突然の告白に黙って聞くレオン。


「レオンは怖くなかったの?」


「怖いか怖くないかだったら…怖いさ。でも、親友だった兄さんを殺し、その後も狂人と化したリガインを放ってはおけないんだ。

何より…兄さんの作った武器が何百人と人を殺しているんだ」


暗い表情のレオンは、今にも泣き出しそうだ。


「復讐するも、返り討ちにあうも今回の殺し合いで決まる。

だから後悔だけはしたくない…ただ、今思えるのは一緒に頑張ってきたイルナを守りたい」


ずっと一緒にきた幼馴染に守ると誓う。


肉親がいないレオンにとって、妹のように大事に思っている存在がいる。

今の自分の心の拠り所でもあり、支えなくては…と、強く思える相手だ。


若干複雑そうな表情を見せたイルナだったが、大事な存在と思われていることに嬉しさを見せていた。


どうやら緊張は解れたみたいだ。

決意を新たに彼等の戦いが始まる。


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