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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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迷宮洞窟内の戦い2

少し過激な表現が入りますので、読む方はご注意お願い致します。

女魔術師は、瞬く間に自身の組むチーム2名を失ったことに戦慄していた。


「デタラメな相手よね…流石は高額討伐対象」


槍使いと組んでいる女性魔術師は、慄きながらも生き残り、勝つために現在の状況を整理していた。



チームで鉄壁を誇る味方の盾使いを最初に殺され、長年組んでプライベートでも仲が良かった女弓使いも、必死の攻撃も虚しく殺された。


こんな依頼を受けるくらいだから、自分達も真っ当な存在では無い。

だが、組んできた同じ仲間は大事なのだ。


「だから、仇くらいは取ってあげようかしらね」


女の得意属性である火属性の魔杖を握り締め、攻撃魔法を詠唱を開始する。


残った最後のパーティメンバーである槍使いには、護火防御ファイアプロテクション火属性付与ファイアウェポンを掛けた。

槍使いの彼は付与と同時に飛び出していき、早速彼方の大盾使いと交戦中である。


彼も長年組んできたメンバーであり、腕前は充分に保証出来る。


時間はかかるだろうが大盾使いを斬り伏せて、必ずこの状況を変化させてくれるはずだ。

後方の討伐隊の援護が来るまで…そう信じている。







チームの切り込み隊の役目である俺は、討伐対象であるソウマのパーティメンバーの大盾使いと交戦に入った。


この身に宿った一時的な火属性付与を受けて、今日の俺も絶好調だ。


この依頼で長年組んできた仲間も2人も殺された。



俺たちは金の為に人を殺し、どんな汚い依頼も受ける。

俺は恐喝や喧嘩、気に入らない奴はぶちのめす。そして夜は毎晩酒を呑み、女を抱き…そんな人生を送ってきた。


人生って奴は教会が説くような平等なんかじゃない。

俺のような奴等が世界の大半を占めているだろう…うーん、そうに違いない。


取り敢えず、難しい話は俺には無理だ。

だから、この邪魔な大盾使いを殺し、後ろの女を殺して犯して終わりだ。


まずはこの防御でガチガチの大盾を持つ臆病男を、景気づけに血祭りに上げる。

しかし、勢いを持って繰り出された槍の一撃は、相手の大盾に阻まれて表面を滑っていく。


それでも次々と一点に集中攻撃を兼ねた槍捌きを素早く繰り出していく。

ブレもなく揺るぎもなく…大盾を構える男は引かない。



火の力が宿った一撃がまた逸らされた。

クソッ…何だってんだこの臆病男め!


こちらの渾身の力を上手く誘導して逸らしてきやがる…仕方ねぇ、槍系統の戦技【薙ぎ払い】を発動させる。


横殴りにくる力強い一撃は、僅かにダンテを下がらせたが一進一退で状況は変わらない。

むしろ、完璧にこの場に足止めされていた。


槍使いは短期決戦を急ぎ、男が唯一使える魔法を槍に掛けた。

切断能力効果上昇(小)の効果を持つ【鋭刃シャープエッジ】。


魔力の力で槍の切れ味を高め、切り裂く能力を発揮する。


この片手槍はお気に入りだ。


以前、暗殺依頼を受けて殺した冒険者が持っていた槍である。

迷宮で活躍していた冒険者で、ソロで有りながら腕もよく、心優しい若者だった。


冒険者ギルドの覚えもよく、その男に次々と報酬の良い依頼が舞い込むようになると、実力も無いのに…と妬む者や、それまで受けていた冒険者達が若者を邪魔だと思うようになってきた。


このままでは全て良い依頼を奪われてしまう。

彼等の身勝手な思いが暗殺を決意。

俺たちにくる依頼を奪われたと憤慨し、多くの荒くれた冒険者を結託させた。

遂に暗殺依頼を出してしまった。


その依頼を受けた槍使いのチームは、まず酒場で暗殺対象を観察。


十分に観察し終えたと判断したら、話し掛け仲良くなっていく。

いつしか酒を奢り、そっと眠り薬をいれ、眠った後にサクッと殺した。

酒場にも裏で手を回し、目撃者はいないように配慮してある。

若者の死体は同業者に渡し、処理して後は知らない。


手に入れた装備品は足が付かないように全て売り払うんだが…槍の輝きと質から、素人目にも逸品だとわかる代物だった。


戦士としての感が槍は手元に残すべきだと…勿体無いと囁く。


良い武器は己を守る。


これは俺の信条である。チームメンバーも納得してくれ、結局は売り払わずに愛用することに決めた。


鑑定などしてない為、槍に秘められている武技などは分からないが、それでも充分であり、軽く扱いやすい槍だった。

その後、ギルド側も不審に思い調査が始まった。

しかし、その時には充分な報酬で潤った彼等は、暫く行方をくらます為に地下へと潜っていた。

この依頼を受けて久しぶりにチーム全員で出てきたのだ。






美味しい依頼のはずが何故こうなった?!

戦い、金を稼ぐ事が俺の存在目的だ。それと仲間以外は…糞だ。


僅かな隙を見つけ、隙間を縫うような1撃がダンテに当たる。

このように俺の攻撃は確実に当たっているが、肉体を切り裂く感触が伝わってこない。


悉く身体を覆う大盾に防がれるか、威力を落とされて、穂先を逸らされ鎧に当たるがままにされている。


大盾使いの鎧は普通の鎧とは違い、【鋭刃シャープエッジ】で強化された穂先ですら弾き、通さない。


たまに微かな傷が付く程度で、腹正しいほど手応えが感じられない。


俺の腕前が悪いのか、奴の鎧が凄えのか…あぁ、ワカンねぇ!


今も腕に当たった筈なのに…だから畜生、何で逸らされるんだよ!


腕はしっかりと大盾を構えたまんまだ。衝撃なんかは腕に伝わってる筈だろ?火属性の付与も熱くねぇのか??


攻撃し続けて、腕も痺れてきた。

手応えもなくどんどん焦る自分だったが、後方より聴きなれた詠唱が聞こえる。

少し安心すると同時に頭がスッと冷えた。


何度も聴きなれた味方の魔法詠唱である。条件反射とも言えるように、ある詠唱のフレーズを聞いた時、巻き込まれぬよう大盾使いと一旦距離を取った。


入れ替わりに後方から波形の火の渦が大盾使いの盾を巻き込む。

それでも尚消えずに、身体全体を火が燃え移った。


火属性上位魔法【ファイアウェイブ】


この魔法で仕留めた奴らは魔物、人間種問わず数知れない。

今もダンテの身体中を炎が覆っている。高熱を発する炎は絶え間なく燃え盛っている。


暫く様子を見るが…大盾使いはジッとしたまま、全く動かない。


ざぁまあみろぉーー!!

丸焼けだ、其れとも窒息して息絶えたか?

此れで後は愕然としている弱そうな女だけだ…どぅ殺して犯してやろうか?


安心からかニヤニヤしながら、コウランの元へ足を進めた。燃え盛る火の横を通り過ぎようとした。


直後、待っていたかのように火の塊が動く。



動きはゆっくりとだったが、標的はしっかりと槍使いを向いていた。


意識が朦朧としながらも戦技【盾打シールドバッシュ】を発動させたダンテは、高熱で熱せられた大盾ごと槍使いに打ち当てる。


突如の行動ゆえ予想もしていない。槍使いは反応出来ず、押し付けられた大盾は、槍使いに当たって肉が焼け焦げる臭いと熱した金属が鳴く音がした。

そして、それに負けないほどの大絶叫が辺りに響く。



体勢を崩し、無防備になった胸部に熱しられた鋼鉄の長剣がジュッと音を立て革鎧を貫いた。

余りの痛さと熱に槍使いは己の胸を思わす覗いた。真っ赤に熱せられた長剣が心臓部を1突きにしていた。


「あ?」


口から吐血した奴は、そのまま目を見開き死んだ。


掠れた声で言い放つ。


「お前なんぞにお嬢様は死んでも渡さん」


鋼鉄の長剣は高熱で痛み、心臓部を貫いた後、溶け出して使い物にならなくなった。


ダンテが火属性の上位の魔法を耐えられたのは、ひとえに火属性と熱耐性を持つ特化された装備。


そして、統一ボーナスと事前に掛けられた耐性魔法。

複数の魔法耐性を持つアミュレットのおかげでもある。


ここまで準備し、備えていた。だからこそ…耐えられたのだ。

少し前の装備だったら瞬時に炭化して生きてはいなかっただろう…そう思えばゾッとする。


鎧の中は酷い火傷だ。腕は度重なる攻撃を受け、打身や打撲なども酷い。盾を持つのも億劫だ。


もう息をするのも辛く、気管まで損傷しているかのように呼吸するにも激痛が走る。

体重を支えきれず、堪らず片膝をついて息を整えた。


激痛で意識を手放しそうだが…そうなる前にコウランお嬢様が駆けつけてくる。


「凄い火傷。ダンテしっかりしなさい。大丈夫、直ぐに癒すわ」


回復魔法の光が俺を包む。

酷く爛れていた皮膚が再生し始め、回復していく。少し楽になった。


定期的に各部を診て回復魔法が掛けられる。火傷による損傷は大分楽になった。


一先ず落ち着くと、側に槍使いが使っていた槍が転がっていた。


丁度いい…奴の使っていた槍を貰おう。

上位炎鬼ほどでは無いにしろ、この槍の攻撃を受け流すのに苦労したからな…。



役割を全う出来た。俺も少しは成長したという所だろうか…。


もやもやと考え始めた思考を切り替える。残る敵はまだいる。

今はお嬢様を守ることに専念しよう。







ファイアウェイブを放った女魔術師は荒い息を整えていた。


ふと隣を見ると、闇ギルドのマスターである男に多才な魔法を操る恐るべき男と相対している。

しかし天才的な無属性魔法を操るあの男であれば、遅れはとらないだろう。


そう考えながら、眼前の敵に集中しようと魔杖を握り締める。

何故ならソウマが凄いスピードで接近してきたからだ。


「くっ…後衛はまだこないの!?」


思わず背後を振り返りたくなるプレッシャーに耐えながら、詠唱を開始した。


彼女とて裏で名の知れた魔法使いである。恐怖に打ち勝つ術を知っていた。


火系統上位を修めた魔術師として、魔杖に集中した魔力を解き放つ。

足元に魔法陣が現れ護火障壁ファイアウォールが張り巡らされた。



もはや自分達のパーティでは打ち倒せはしないが、此れで後衛がくるまで時間を稼ぐ事が出来る。


少し安心した所で周りの状況を確認出来た。



槍使いの方を見ると、火達磨になった大盾使いは死んではいなかった。

炎の塊が動き、あっと思う間まなくチームの一員である槍使いは心臓部を1突きにされて倒れた。

…残念だけど、あれではもう助からない。


それにしてもあの大盾使いは、あの上位魔法を受けて何で生きてるのよ。しかも動けたなんて…予想外な化物が多すぎるわ。


女魔術師は勘違いしていた。それが良い方向に働いて、魔法による追撃が無かった。


幸い、大盾使いも大怪我で回復魔法を掛けて貰っている。直ぐに完全に回復は無理だろうし、暫く時間を稼げる。


完全な守りに入ったけど、反撃は彼等が到着してからね。覚えておきなさいよ!



女魔術師が護火障壁の中で、火系統上位殲滅魔法の詠唱を始める。

一発逆転の魔法と信じて、唱え始めていた。






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