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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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39/88

襲撃

カザルと呼ばれた男が順調に下の階層へ降りていくと、途中で変わった冒険者パーティと鉢合わせた。

全身が黒尽くめで仮面をつけた5人以上からなる一団だ。


それに彼等の下には3人の冒険者達と思わしき人物達が血だらけで倒れ伏していた。

黒尽くめの一団は一目で手練れと分かる雰囲気だ。

その証拠に冒険者達は、どれも1突きで急所を抉られている。


「あんたら、何してんの?」


カザルのその問いには答えず、彼等は無言で仲間同士にアイコンタクトをした。


カザルの近くにいた男が素早く動き、カザルの胸元に刃物を投げつけた。

カザルは避けもせず、ノンビリと見つめていた。


綺麗に胸元に吸い込まれていった刃物は、金属が重なり合うような甲高い音を立てて力無く落ちた。


一瞬硬直した男だったが、直ぐに新しい投げナイフを取り出して次々と投げつける。

ナイフはカザルの肉体には突き刺さらずに、表面で何か堅いモノに阻まれ弾かれている。


「無駄だよ」


面倒くさそうに話すカザルとは違い、黒尽くめは真剣味を帯びた口調で、


「魔力障壁か?…目撃者は消す」


4人が同士に襲い掛かってきた。後ろで指示を出したリーダー格の男は魔法詠唱を始める。


各々アサシンブレードと呼ばれる武器を持ち、斬りつけた際に毒を付与出来るレア級の代物だ。


「だから無駄なんだって」


その場から動かずに軽く腕を横に振った。収縮した魔力が魔法陣を描き、カザルの指から少し離れた宙に瞬時に出現した一振りの魔炎剣。


「滅べ、俗物…死炎剣デットフレイム


指先から放たれた死炎剣は、1つから5つに分離した。

向かってきた黒尽くめの男達に、残像を残すほどのスピードで襲いかかった。


黒尽くめの男達は回避も出来ず…刺さったと同時に凄まじい威力で発火して装備品諸共、消し炭すら残さず消え去った。


「あぁ〜綺麗になった」


機嫌良さそうに呟いたカザルは、そのまま最下層へと足を進めた。










最下層ではそんな異変に気付かず、休憩をとっていたソウマ達。


お馴染みとなった嘴長鳥の串焼きと山盛りの新鮮な野菜サラダ。

それとザール村で仕留めた大猪を切り分け、アクを丁寧にとって充分に煮込んだ肉を調味料で味付けした猪肉は、柔らかく臭みもない。

上手い食事は疲れた身体にジックリと染み渡った。


ダンテはようやく揃った炎鬼シリーズ装備に、己の格好を見た。

炎の祝福を宿した魔力鉄は鮮やかな赤色をしている。

全てを揃えた格好はまるで重装兵のように威圧感がある。


コウランから、赤鬼のようね…と呟かれて地味に落ち込んでいる様子が面白い。




ソウマはアイテムボックス内にようやく上位炎鬼の魂魄結晶を1つ得ることが出来た。

他は素材である魔力鉄と火の霊布、魔法道具マジックアイテムである耐性の霊符など様々だ。


コウランは休憩中の話のネタに、レグラントに伝わる伝説の1つを話してくれた。


レグラントは魔族が起こした国である。国設立の物語を紐解こう。


国を作った男の名はジル・レイザー。


彼はこの地に住まう少数の戦闘民族の一員だった。村長の息子であり、双子の兄であった。

兄弟は幼き頃から才覚を表し、兄は金髪で屈強な肉体を持つ雷の属性を使う戦士。

弟は風と土を専門とし、特に稀有な空間を司る魔法を使う稀有な魔術師であった。



ある日、運命を変えた出来事に遭遇する。


民族の中でも1番の腕利きだった彼は、いつもの様に狩りから帰ってくると村が炎上していた。

獲物を放り出して慌てて村へ駆け寄ると、燃える集落に混じり喰い散らかされた女子供。

そして武器を持った大人達。嫌な予感は消えない。


奥から声が響いた。武器と杖を片手に生き残った大人達が村を襲ったであろう大型の魔獣と戦っていた。


その魔獣の種類はドラゴンと言った。

年齢は100は超えないであろう生まれたばかりのドラゴンは、全長が8メートル程でこの近辺では見掛けない黒色のドラゴンだった。



食欲が旺盛で村の大人達の攻撃を受けてもビクともせず、村人を喰らっていた。


戦っていた村人の中に弟を見付けたジルは合流し、その後多大な犠牲を出しながらも黒竜を討ち取ることに成功する。

村長である父親は、弟から女子供の避難させる際の時間を稼ぐために、既に死んだのだと聞かされた。


涙を流しながら、生き残った村人達で墓を作り弔った。


黒竜の遺骸を解体すると牙と爪からは黒竜の剣を、強靭な腱と皮、鱗からは黒竜の鎧とし、ジルに与えられた。


彼はこの黒竜の装備を持って新しい村長となった。

このような悲劇を避けるため、皆で手をとり合おうと近くの村に呼びかけ、次々と併合していった。


彼の為人を知る者はその武力と魅力を併せ持つカリスマに惹かれ、やがて大きな集落となった。


当時この周辺を統治していた王は脅威を感じ、討伐軍を編成させて向かわせた。

全面降伏か全滅か…好きな方を選べと使者が伝える。


王の軍勢は1万を超す。加えて此方は千にも満たない。数の上では圧倒的に負けていた。


当然、全面降伏などしても皆殺しの目にあうだろう。

先を見越した優秀な弟が周辺の部族に声掛けや、根回しに走っていた。

しかし、今回は間に合いそうにもない。


開戦は1万対千の戦いで火蓋が切って落とされた。


いくらジルが強かろうが、彼は個人である。

状況は徐々に劣勢へと傾いていった。しかし、弟の説得にて遂に各部族の長が動き、反撃へと転じた。連合の誕生である。

その後、各部族を纏めたジルが王となり、レグラントを立ち上げる。

王獣と呼ばれる数体の超常的な存在と契約を交わし、代々の王を助け守護たる存在となる。




この昔話をレグラントの子供は必ずされるそうだ。

諸説には色々あるそうだが、助け合う大切さと過去の薫陶を教えられる。


コウランもこの話が好きで、ジル・レイザーが国を立ち上げる為に攻略した数々の迷宮もいずれ行ってみたいと思ってるのよ…と、教えてくれた。


また、今後組んでいくパーティの面々を信用して、自身コウランの持つ加護を話してくれた。


彼女は宗教国家レグラントにおける守り神である王獣の1体から、加護を貰う為の試練を受けている最中なのだと伝えられた。

12歳の誕生日にレグラント貴族の慣習となっている儀式で、王獣と対面し祝福の魔法をかけて貰う儀式だ。


祝福の魔法をかけて貰ったコウランだったが、魔法を掛けられた時に力を喪失していく感覚を受けたそうだ。

王獣に尋ねた所、かの存在からは素質あるものに試練を与える…とジル・レイザーからの遺言の通りに行ったのだと、返答を返された。


その試練とは、試練中は修練の加護と呼ばれる痣が身体に浮かび上がる。

己の力を大きく落とされる。

その状態で莫大な経験値を集めさせて第3次職業まで己の存在を昇華させるといった試練だった。


今までジル・レイザーしか達成者はいないと言われた王獣の試練に、危険過ぎると両親は断る選択を選んだが、コウラン自体はそれを進んで受け入れた為に試練は始まってしまう。


母親は遠縁の王族であり、王位継承権などないほどの貴族であった彼等の家は、国を揺るがす騒動に巻き込まれ、失脚していく。


「だって…勿体無いじゃない。人生楽しまなきゃ」


それから両親は加護を解くための手掛かりを探すために国を出て、お互いに探す旅へと出掛けた。


ダンテはコウランと組み、望みは薄いかも知れないが経験値を上げて第3次職業まで個人を高めさせようと、各地の迷宮を転々としていた。

5年かけて何とかコウランは第2次職業である戦司祭を得たが、それからは経験値がなかなか集まらなくて困っていた。


そこで、ソウマ達と出会えた彼女は嬉々として申し出を受けたのだ。


以外と壮絶な人生を送っている。信用して話してくれた出来事に対して、此方も信用で返していかなければと…ソウマは改めて思った。




彼女は此れからもダンテと旅をしていくのだろう。何故なら、


「ずっと一緒にいるのにダンテももう少し積極的だったら…考えてあげるのにな…もう、鈍んだから」


そうボソッと呟いた一言を聞いたからかも知れない。





名前【コウラン】


種族:人族と半魔人族のハーフ


職業 戦司祭LV53


サブ職業 ーーー


スキル

神官武器装備補正(E) 軽鎧・防護服装備補正(C)

聖属性(D)聖属性耐性(D)

体内魔力操作


常時スキル

回復魔法効果上昇(弱) 暗視


魔法

神官魔法


称号

修練の痣→ステータス半減。主要スキル封印中。



コウランの装備



武器 棘鉄球


頭 司祭帽子


体 司祭の軽装鎧


両腕 祝福の手袋


足 レッグガード


アクセサリー 契約の首飾り

魔力貯蔵のイヤリング



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