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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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36/88

マックス参戦

ギルドで新しい情報を得たソウマはコウラン達が待つ場所へと向かった。


自分が要注意人物として指定されている事実に不快感も覚えたが、アシュレイやエステル、マックスのように助けようとしてくれる人間もいる。

人の役に立てることはあっても、迷惑はなるべく掛けたくないものだと思う。


そう考えながらゆっくり歩いていると、町の住人達の働く姿が見える。この町を守ってきた人達。


この王国で王都とユピテルの街は有数の施設と巨大な人口を持つ。

その中でもアデルの町は戦争や幾多の戦いを乗り越えた復興の町であり、ユピテルの町から1番近い町として知られている。


鍛治場に着くとレガリアが出迎えてくれた。話しながら作業場所まで案内してくれる。


先程ギルドで起こった出来事を話す。

面倒な事が起こる前に1度この町を離れ、熱りが収まるのを待つ事を伝えた。


先ずは先立つモノを稼ぐため一週間ほど迷宮洞窟で過ごし、旅の資金を貯める。その後サルバードール遺跡へ出発。そこでまた迷宮遺跡に潜る予定である。

そして装備品が完成する一ヶ月後に戻ってくる予定を伝えた。


黙って聞いていたレガリアに、一緒にサルバードール迷宮遺跡に来るか?それとも町に残るのかを聞く。


今までの様子から、ソウマと来たがるのでは無いか?と思っていたが、本人の口から出た答えは違っていた。


「御主人様、お許しを頂ければ私はこの町の鍛治場に残らせて頂き、ジュゼット殿の指導を受けて鍛治の道を鍛えたいです」


「…わかったよ。なら装備諸共よろしく頼む」


「お任せ下さい」


スンナリと此方の話は決まった。

後はジュゼットにレガリアの事を頼む。


裏事情を知っているドワーフは深妙な顔で承ってくれた。




大事なレガリアを置いていくのだ。

そうとなれば、可能な限り迷宮にで支度金とレガリアの滞在費、また装備品を整えるために稼がねば!



迷宮洞窟へはダンテ達も付き合ってくれることになり、各々準備をすることにした。2時間後にアデルの町の門に集合の約束をして別れた。


迷宮洞窟に潜るメンバーはソウマ、コウラン、ダンテ。





道具屋へ向かい、色々と品定めする。

普段は買わない日用品だが、シャベルやピッケル、それにロープ。そして大鍋と火の魔石がついたコンロセットを買い、長期の滞在に向けて念の為買っておく。


次に料理を買いに行く。

料理に臓物の味噌煮や焼き鳥。調理肉の状態になったモノを買い漁り、旬の野菜などを次々とアイテムボックスへ詰め込む。


暫く歩くと道場が見えてきた。グリッサとは久しく会っていないが、他の冒険者相手に忙しく指導しているのだろう。

それと、まだ師範は不在らしく、弓の派生技は覚えられないでいた。


気を取り直し、冒険者ギルド近くにある魔法屋では、レガリアが折角無属性魔法の低位を覚えたので、目的の感知魔法と魔法解錠の低位無属性魔法を2つ買った。

魔法書はかなり高額の値段だったが、惜しくはない。出掛ける前に忘れるずに渡しておこう。


他に魔法アイテムの魔法回復薬を少し入手した。



次にソウマの当座の防具を見に行く。防具屋では良質な鉄で作ったアイアンメイル、丁寧な処理をされた魔獣革の戦闘衣など、品揃えはユピテルと変わりない。

急所を鉄で覆い、他を魔獣の毛皮で作られた灰色のハイノーマル級の軽鎧をセットで買って着込んだ。他人には少し重いだろうが、自分には全く問題のない。


装備すると見た目は一般的な冒険者に見える。



長く迷宮に潜るため、手続きの為に1度宿に戻ると、エステルとマックスが待ってくれていた。



「よう!邪魔してるぜ」


グラスに並々と酒が揺らいでいる。宿の女将さんに注文してこの町特産の蒸留酒を2人で楽しんでいたようだ。


マックスに来訪した理由を聞く。彼等は1週間程でこの町で用事を済ませた後、迎えに来た馬車に乗り込んでバーナルを引っ捕まえて実家に1度戻るそうだ。

エステルが任せろ…と、言った意味が分かるような暗い笑みを浮かべていた。


エステルはいつソウマ達がサルバードール遺跡へと出発して入れ違いで会えなくなると思い、真っ先に挨拶に来たそうだ。


ここからが本題だが、マックスはエステルから魔物祭モンスターカーニバルをクリアし水晶核を入手していることを聞いていた。

水晶核は超難解な魔力加工しないと唯の美しい展示物と変わりない。

そこで、ソウマの持つ水晶核に加工は必要無いか聞きに来たと言う。



と、言うのもマックスは珍しいスキルで【魔力微細制御】を身に付けていた。

魔法を扱うスキルの中ではかなり希少なスキルであり、才能もあるだろうが、自身マックスの弛まぬ訓練の賜物の末に身に付けたスキルなんだと思う。



この前、試作型鎧を任せているジュゼットからこの過程を専門で行う魔法使いのツテを頼ると言っていたが…膨大な金額と此方に到着するまでに時間が掛かるらしい。


出来れば加工の過程を見てみたかったが、残念ながら諦める所だった。

魔力加工を出来る人間がいればそれに越したことない。

時計を見ると、ダンテ達との集合時間まで幸いまだ1時間程あった。

ノンビリしていた2人に説明し、連れだってその足で鍛治場へと急ぐ。



鍛治場に到着すると奥の作業場には、レガリアがいた。

槌を振り上げ、魔力を込めて振り下ろす。丁寧にかつ重厚に金属と竜素材が奏でる硬質音が鳴り響く。

奥でレガリアは真剣に竜の牙を加工する為に打っていた。

声掛けて集中を解くのも申し訳ないので心の中で応援する。


作業場を通り抜けると体格の良いドワーフがレア級と思わしき魔力を伴った鎧を点検していた。

作業を終えるまで待つ。点検時間は然程掛からず、ジュゼットに事情を説明して理解を示してもらう。


初顔合わせのマックスとエステルを紹介する。魔力加工を請け負う魔法使いだとも付け加えておく。


まじまじと眺めていたジュゼットが、何かに気付いたように眉をピクッとあげた。


「ん?人相は違うがその腕輪はあの時の客か」


「その通りだが…覚えててくれたのか。大将、ソウマが説明してくれた通り、俺に水晶核を預けてくれないか?」


ソウマに許可を得たものの、ジュゼットは渡しても良いか考えあぐねていた。

魔物祭でしか獲得出来ない希少な素材である水晶核。

相場で売るだけでも半年は遊んで暮らせる金額になる。用心して仕方の無い事なのかも知れない。

暫くの葛藤後、ドワーフがマックスの手へと置いた。


マックスは仕方ないさと苦笑しながら、立会いのもと水晶核の魔力加工が始まった。






最初に水晶核に手を触れた場所からマックスが魔力を通す。

すると、水晶核の中央から蒼く光った。徐々に魔力光が強くなり、溢れんばかりに水晶核に魔力が貯まると次第に大きく点滅する。


そこから魔力を込め過ぎて傷付けないように、繊細な注意を持って丁寧に練り上げて順々に仕上げていく。

その光景は芸術的に美しく、魅せられる過程がそこにあった。


全ての過程が終わったあと、薄っすら汗をかいているマックスはゆっくりと息を吐き出した。


「やれやれ、終わったぜ?」


「いや…マックスよ、疑ってすまんかったな」


「気にしないでくれ。希少な素材だ。持ち逃げや壊されたらたまったもんじゃないからな。当たり前の事だ」


「普通は何日もかけて行う過程をこの男は30分程で終わらせた。余計な時間を掛けさせなかったからな」



謙遜するマックス。エステルからは私の夫は凄いだろうとドヤ顔になっており…仲の良い夫婦だと感じさせた。


加工された水晶核は、透明感はそのままに淡く黒色に輝いていた。


ジュゼットはその水晶核を丁重に保管庫の魔法金庫の中へと閉まった。

後をお願いして、一同は外へ出た。



改めて2人にお礼を伝える。


「律義だな。迷惑料だから気にしなくていい」


「そうだぞ、この男が勝手にやっただけだ」


この世界において戦闘能力の高さや、何より信用出来る人格者である2人。

個人的には仲良くなりたいモノだ…せめて本来他の魔法使いに頼んだ際に掛かったであろう手数料に何かお礼に品を贈らせて欲しいとしつこく頼むと、悩んだ挙句2人ともこう答えた。


「そうだな…ならドラゴンの素材を手に入れたらくれ」


「私は研究材料に。夫は装備品に必要なのでな。竜の素材を2つ頼む」


と、面白がって言う。

一般的にドラゴン素材を入手するなど、一生掛けても難しい話だ。


つまりは本人達的には冗談のような滅多に無いレアな素材を比較に出すことで気にするなと言うことだと思うが…。

手持ちにあるし、この2人なら信用出来ると思うからいいか。


人通りが無い場所へ案内し、マップで念の為確認をしてから魔法袋仮アイテムボックスから竜の牙を2つ取り出し、2人の手に握らせた。


1つ40㎝以上にもなる竜の牙は魔力に満ちて輝き、存在感を放っていた。


正体は分からないモノの内包する魔力に絶句する2人。

竜の牙だと説明すると、即座に突き返してきた。


「冗談で言ったモノだ。コレは受け取れない」


「そうだぜ。冗談は抜きにしても手数料にしては高過ぎる」


本来なら持ち逃げしてもおかしくない品に対して、キチンと返してくる。

そんな態度も好感が持てた。突き返した素材を首を振って拒否する。


「これは自分なりの好意と、2人に対しての先行投資のつもりなんだ」


この頼りになる2人に此れからも機会があれば仲良くして欲しいし…。

その事を説明し、なんとか理解を得て貰った。


「やれやれ、高い評価は有難いが私や夫を過大評価し過ぎだぞ?」


「そんな事はないつもりだ。本当に頼りにしている」


どう突き返しても、受け取る気がないソウマ。

マックス達は墓穴を掘った事を理解し…有難く頂くことにする。


「こりゃあ、逆に高くついたかも知れないな…だが、この素材は俺の新調しようとする装備品に必要でね。1番入手が難しくて諦めかけていたんだ」


一息ついてマックスが続ける。


「で、ソウマ。そういやお前さん固定してパーティを組む気はないか?

もしその気があるなら俺達もその一員に加えて欲しいんだ」


何を言いだすかと思ったら…固定パーティか。ソロが多くて余り考えたことも無かった。

そんな表情が顔に出ていたのだろう。

マックスが補足してくれた。


「まぁ、難しく考えるな。それに難しいなら固定パーティと言ってもずっと組まなくても良いぞ?必要な時に加えてくれたり、自分達も必要ならパーティを依頼をする程度に考えてくれていたら良いんだが」


成る程…ギブアンドテイクの精神。それなら良いかも知れない。実際、ウェスター達から話を聞いていた場所は1人では攻略が不可能な場所もあるだろうし、信頼出来るメンバーならなお安心だし。


出発までまだ時間はあるから、ゆっくり考えておいて欲しいと頼まれた。



「今から迷宮洞窟へ向かうんだろ?竜の牙分くらいは働きたいしな…誘った手前、何ならお試しに俺だけでも付いて行こうか」


「わかった。各所への連絡や後の手続きは私に任せておけ」


マックスがそう決め、エステルが了承した。それにより急遽マックスが参戦する。


色んな人達に出会い、どんな場所に行けるのだろう。

新しい期待感に胸が躍る。


集合場所でダンテ達と合流した。

ソウマはかつてないほどのやる気を燃やし、迷宮洞窟へと出発した。

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