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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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34/88

ジーニアスと呼ばれた男2

今回2話構成です。

アイラさんに頼まれて潜入した先で、ソウマなる人物を捕獲に向かった俺だったが…こいつは驚いた。


遮断結界符を使用してまで慎重に行動し、氷魔法 縛氷を発動させてテントにいるソウマごと保護する予定だったっだが…中には誰もいない。

配下は兎も角、隠密行動のスキルと地形補正を駆使している俺までも気付かれていたみたいだ。



突如、配下の何人かに矢が刺さった。弓で遠距離から攻撃してくるソウマを発見した。その後も攻撃は続き、凄まじい威力で配下が倒れていく。



装具に魔力を注ぎ、SPが急激に減る事を感じる。

位置を予測し、次々と氷槍アイスジャベリンを投槍した。


コレだけの力がある人間相手に中途半端な手加減などしたら…最悪此方が死んでしまう。

実際に殺さないように留意しなければならないが、殺す気でかかる必要がある。


かなり無茶をしても大丈夫だろう。





アイラは気配遮断するアイテムを身に付け、更に極限まで力を抑えて2人の戦いを見守っていた。


アイラはユウトからソウマの事について予め聞いていた。巨人の腕のことは知らなかったが…彼とソウマ、最悪両方失わないように、団員に連絡を受けてから直ぐに駆けつけていたのだ。


戦闘を見ていて最初は思う所があったが…最後はアイラが見ても納得がいく戦いだった。


巨大な氷が割れた時点でソウマが無傷で飛び出してきたのには驚いたけど。



(及第点だけど…よく頑張ったね)



最終的に激痛で薄れゆく意識の中、俺にはアイラさんの声が聞こえたような気がした。



気付けば、蒼銀騎士団内の治療室のベッドにて寝かされていた。

腕の骨が粉々になった左手も元通りになっており、痛みもない。


「起きた?酷い目に合わせたわね、今回は有難う」


アイラが申し訳なさそうな表情で立っていた。


「いや力及ばず申し訳ない」


「君は殺してはいけないって手加減してからね。最後まで戦いを見守っていたけど、いい戦いだったわよ」


アイラさんにその後の経過を聞いた。


盗賊団は蒼銀騎士団と街の無数のギルド団員の協力者により、そのまま全員逮捕に成功した。

裏で指示していた有力貴族の関係の自白が始まり、逮捕は目前になるそうだ。


盗賊団は今後、どう扱われるかはまだ決まっていないが首領は死刑。

他の人材などについては魔物ギルドからの打診もあり、有罪になるか組織ごとそのまま吸収されるか決まるそうだ。


それとソウマと戦いを共にした子飼いの4人は、治療をすませ保釈金を支払い、蒼銀騎士団の末に置いて身柄を預かっているそうだ。


前科もないし、本人達が望めばそのまま入団しても良いそうだ。

それを聞いて少し安心した。ユピテルの街で巨大なギルドであるアイラさんの所なら彼等も喜んで入団するだろう。



あんな化物ソウマ相手に助かった命を無駄にすべきではない。

そんな事を考えていたら、アイラさんから話し掛けられた。


「これで私からの依頼はおしまい。腕輪の代金はこれでチャラよ。ところで此れからどうするの?」


2ヶ月と長期になる拘束で、魔獣や魔物ばかりと戦っていた。


怪しまれないため、日々の訓練も最低限しか出来なかった身体と戦闘の感は訛っていた。


リハビリも兼ねて知り合いのいるアデルの町で活動する予定を告げた。


アイラさんは何か言いかけたが…結局何も言わず笑顔で見送ってくれた。


何かあれば連絡が欲しいと告げて、アデルの街へ出発した。



道中街道をゆっくりと歩きながら、昼にはアデルの街へ到着した。その日は宿をとりゆっくりと休んだ。




翌朝、早速ギルドへ向かう。俺は冒険者登録をしてないため、いつもフリークエストを受注して迷宮で稼ぐ。

討伐依頼やソロでも稼げるように浅い階層で魔物討伐して部位を確保したりなどして稼いできた。



アデルの冒険者ギルトを訪れると職員も冒険者も人が少なかった。受付で話を聞くと、どうやらギルド内で冒険者同士の騒ぎがあったようで…揉め事を解決するためにギルト長までもが町外れの闘技場へと向かったそうだ。


アデルの町の知り合いにユピテルの街から同じ孤児院出で昔から手先が器用な男がいた。

俺の同期で魔法の才能は無かったが、類稀なる記憶力が武器で頭の切れる印象があった。

盗賊系職業でも宝箱を開けたりマッピングを得意とするトレジャーハンター。

また、華奢な体つきでも厳しい訓練にも耐え、皆と必死にこなすガッツのある男だ。


確かユピテルの孤児院を出た時にアデルを拠点にして一旗上げるって言っていた。

大分会っていないが、ジーンは元気だろうかな。



受付で彼の情報を聞くと、固定パーティを組んでからはユピテルを中心に活動をしているそうだ。

…入れ違いだったようだ。

まだまだ現役で頑張っているみたいだな。ユピテルに拠点を移したのなら、また会う機会もあうだろう。




軽く宿で腹ごなしをし、南方にあるDランク迷宮へと向かう。


今日はリハビリも兼ねてソロで探索した。またフリークエストで受注した幼虫型の魔物の触角を集め、討伐部位として提出せねばならない。


単調な体当たりや糸吐きを躱し、順調に討伐部位を集めていった。


そこで若いが実力がありそうな冒険者パーティに出会った。


ソロを気遣い、自分達のパーティに入りませんか?と声かけられる。

礼儀正しい態度に好感を覚えたので、折角なので明日彼等と一緒に迷宮を探索することにした。





次の日もギルトへ足を運んだ。受付の人に頼み、依頼書を確認させて貰った。

ざっとフリークエストを見ると目ぼしいモノは見当たらない。


たが、よく見ると面白そうな依頼が1つだけある。

狂乱兎マドネスラビット・希少種を探して討伐して欲しいか…希少種なんて聞いたことが無い。

依頼者はサザン火山研究者の地質研究学者ミハイル・ホーネットさん。住所はここから少し行った所だ。ますば話を聞きに行こうか。


ミハイル・ホーネットの家へ行き、話を聞いた。

サザン火山を研究している彼は、火山の中でも立ち入り禁止区画に入れる許可を領主から得ていた。

そこでこの数ヶ月の間で、複数の見たことの無い狂乱兎が現れたようだ。

明らかに亜種とも違い、現在確認されていない種の為、暫定的に希少種と仮扱いとしているそうだ。


ミハイルの目撃証言からはどうやら、冒険者や旅人を襲うわけでは無く、その地域の魔物を中心に狩り続けている風に見えたそうだ。


通常個体に比べて大きく、毛並がブルーという変わった種類だ。稀に武器を持つ個体も存在したという。


他の冒険者に目撃証言を頼むもそんな区画に冒険者が入れず筈もなく…。


ミハイルさんは冒険者ギルドでは信憑性が低いと取り扱って貰えず…フリークエスト枠なら依頼書を貼り出しても構わないと言われたので出していたそうだ。


この依頼を受けるに当たり、自分の経歴を確認され、戦闘能力も申し分ないとミハイルさんに判断されたようだ。


未知の相手であることを考慮し、1人では危険である。存在自体が未知の相手に俺の他に受注するような暇な冒険者なんているだろうか…。


依頼の期限は取り敢えず無期限で、他の依頼の次いでで構わないというので、他の人が集まるまで試しに受けて見た。


探索するときはミハイルも一緒に行かないと立ち入り禁止区画に入れないため、行く際は必ず彼も連れて行く必要がある。







そういう訳で今日は狂乱兎・希少種?の探索へ行かず、昨日約束した冒険者パーティの元へ出向いた。


リーダーは20代の若い男で6人編成のパーティ。実力が付いてきた彼等は今回のDクラス迷宮で調整を重ね、Cランク迷宮洞窟内のBOSSの討伐を視野に入れている。

サザン火山の迷宮洞窟には何度も入っており、明日初めて上位炎鬼と間見えるので緊張感と興奮が感じられた。



俺はユウトに連れられ、1度ここのBOSSを討伐している。

経験者であり魔法を使える事を話すと、明日も是非にとお願いされた。




生憎と明日の夜からフリークエストで受注した依頼がある。

数日間仕事に拘束されるが、それ以上に破格とも思える金額の用心棒の仕事が入っていて、参加出来ない事を伝えた。

残念がっていたが…次はお願いしますと笑顔で頼まれた。


今日はじっくりと迷宮洞窟へ篭り、彼等のフォーメーションにアドバイスと指導を重ねた。

俺の見立てでは彼らは迷宮洞窟のBOSS相手に実力的にはギリギリ…やや防御面は心配だ。

しかし、水属性が得意な魔法使いも1名いる事だし大丈夫なはず…なんだが心配だ。

俺も誰かの心配をするなんて歳を撮ったものだ。無事成功を祈る。



アデルに着いて3日目の朝、道具屋にて消費が多い中位回復薬と毒消し薬を持てるだけ買う。


次にこの町の武器屋と防具屋に装備の補修を頼んだ。

ハイノーマル製の武具は担当してくれたが、レア級でもある氷乙女フラウの腕輪セットは出来ないとのこと。


この町の鍛治場にいる大将なら大丈夫だと言われ、そこに向かった。


受付で腕輪を渡し、点検整備を頼む。

ジュゼットと呼ばれた奥から出てきたドワーフは貫禄があり、疲れた顔をしていたが活気に満ちていた。レア級装備に対して目の前で慎重に丁寧に点検してくれる。

点検後に良いモノを見せて貰った、不都合があればまた来い…と言ってくれた。

自慢の装備を褒められ、気分も良くなった。夜の仕事に備えよう。






町外れの宿に着いた。受付にいたガラの悪そうな男に冒険者ギルドで依頼を受けた事を話した。


そこで簡単なテストをして合格を貰う。そこでこの仕事の簡単な説明を受けた。


………胸糞の悪い仕事だった。

金が良いと思ったら、ここは貴族を専門にしている売春宿だった。

しかも今回くる相手はとある伯爵家の家臣らしい。


その家臣は手癖が悪いと評判で悲鳴を聞くことが好きな性格らしく…貴族主義の男でことが終わった後は、必ず抱いた相手を切り刻むとんでも無い相手だった。


今回は東方にある村で攫ってきた少女が何も知らされず、薬でベッドで寝かされていた。



この高額な日当は口止め料と、万が一が無いように…と雇われた護衛料を兼ねていた。


すぐに依頼を放棄したかったが、このままでは少女が危ない。

そんな訳で部屋に忍び込み、少女を起こした。幼さの残る顔立ちで可愛い顔をしている。


見知らぬ場所、見知らぬ男にパニックになる少女だが大声を上げる前に口を手で塞いだ。

冷静に冷静に声をかけ、落ち着いた事を確認して手を話す。


「髭のおっちゃんだれ?ここどこ?私を家に帰して…」


そう言えば身なりを整えて無かった。長い間そのままだと気にもしなくなっていた。


小声の涙声をあげて懇願する少女に優しく声かける。そんなガラじゃないんだが…ユウトだったらどういう風にするか考え、真似をする。

少女が次第に落ち着いて話を聞けるまでゆっくり宥めた。



少女が安心した表情を見せ始めた頃、扉の先から男達の声が聞こえた。


ビクッと強張る少女に大丈夫だと伝え、寝ている振りをするように促す。俺はベッドの下に隠れた。


声が近くなり、歩く音も聞こえてきた。気持ち悪い声の主から話の内容がわかり、反吐が出る。

しかし…聞いた声だと思ったがバーナルの奴だったか。陥れた男に憎悪が沸き立つ。


氷乙女フラウに刻んだルーンの紋様で【縛氷】を選択する。

殺しても良いが、それでは奴の痛みは一瞬だ。

どうせ叩けば埃のでる男だ。コレを皮切りに捕まえる事が出来たら、地位も権力も失う可能性がある。

奴の被害にあった人達の分まで制裁してやる。





と、まあそこからはソウマの介入もあり、あっという間に片がついてしまった。


宿に待機している間にギルドの警備兵が来て、少女ごとギルドへと案内・保護された。

そしてギルドへ到着すると、昔懐かしい顔がそこにあった。


あの時より大分時は過ぎたが、大人になったエステルがいた。

スッと伸びた鼻筋や切れ長のきれいな瞳は、男の知っていた時より数段魅力的に思えて…声をかけるのを躊躇う。


しかし、事情聴取も兼ねた出会いだったので、聞かれた事に正直に答え、起きたことを説明する。


話す声と名前で髭面だったが、エステルにも俺が誰か分かったようだ。真剣な表情で此方を確認している。



一通り事情が分かったとこで、エステルから2人きりになりたいと警備兵に伝えられ、部屋には男とエステルのみになった。

気まずさも有り、ポツポツと話し始めた2人。


あの時から8年近くの時が流れたが、話し始めたら止まらない。話す言葉は尽きなかった。


どうやら俺は犯罪に加担した罪でこのままだと奴らの一味として極刑になるそうだが…エステルが裏から手を回して無罪になるようだ。正直助かった。


そして、驚くべき話が彼女から出た。

なんと…信じられないかも知れないが、俺の子供を産んだと告げられた。しかも男の子と女の子の双子だ。


詳細を聴くと、あの後エステルは学校を休学していたのは、妊娠した事を隠して産むためであったのだ。


「いつか子を産みたいと思っていた。お前の子をどうしても欲しくてな…あの時、絶対に種を貰おうと思った。もらった時は孕んだと思ったぞ」


と、笑顔で伝えてきた。呆気にとられたが、彼女らしいのも事実だ。


双子の子は順調に育ち、実家ではなく別荘にてしっかりとした乳母と執事に預けているとのこと。


そんな娘の行動を両親は許さなかった。

しかし、学校の理事である祖父は誰が父親なのか検討がついており、温かくエステルを見守った。

そのため両親はそれ以上の口出しはしなかったが、実家とは縁を切られた絶縁状が送られてきた。


因みに子供達の為に別荘を貸し出し、必要な物品、優秀な人材を派遣してくれたのも祖父であった。




エステル曰く、女の子は俺に似た顔立ちでキリッとしているが、自分にも似ていて将来美人になる素質があると教えてくれた。

子供特有の可愛いらしさがある勝気でお転婆な女の子だ。

しかも珍しい属性である氷魔法を使える。ブランドー家にとって魔法とは価値の高いモノであり、初めての氷の属性を開花した子に、一族を上げて喜んだみたいだ。


それと男の子の方は、顔立ちはエステル似だ。

争い事を好まない優しい性格なんだそうだ。この子も魔法の才能も開花しており、7歳で無属性と支援・強化魔法の中位を扱える秀才である。


どちらの子も将来が楽しみであり、いつか逢える日の事を楽しみに思えるようになった。



エステルから両親が子の才能を聞きつけ、是非父親となった人物を一族に取り込みたいと言ったらしく…絶縁状を突きつけたのも関わらず、探し出して来いと言う。

現金なことだと思うが、両親とて認めるざるおえない…と判断したのだ。


元々バーナル程度を使いに出してきた実家に帰るつもりのないエステルは、両親にこの男を紹介する気はない。


但し、非常にお世話になっている祖父にはこの自慢の男を紹介したかった。

そして今日こんにちの逮捕劇には、男の釈放やアデル老伯爵の迅速な面会などに、またもその祖父の権力を借りる形となった。


その話をされると俺自身、自分の子供とエステルを護って頂いた貰った恩がある。この件が片ついたらエステルと一緒に挨拶にいくと決めた。




学校での退学の件はバーナルが主に関わっていた事を話すと、ピクリとエステルの顔が憤怒に近い表情を表した。


「…任せておけ」


…何を任せておけなのかは分からないが、奴の命運は尽きたといっても過言では無いだろう。


「しかし髪も伸びたな。よし、わたしが切ってやろう」


明日、色々と打ち合わせを兼ねて話し合うことを決め、解散した。





ギルドを出たところで銀髪の1人の男が突っ立っていた。

やれやれ、どうやらまだ俺は解放されないようだ。


面倒臭そうに話しかける。


「ああ、有る意味じゃ知り合いだよ。取り敢えず、ここじゃなんだ?どこか話せる場所へ行こうぜ?」



夜はまだ終わらない。




本編を読まなくても大丈夫なので、必要のない方は読み飛ばして頂いても大丈夫です。


また修正がありましたら徐々に直していきたいと思います。

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