第八話 自己紹介5〜藍谷 あやめという人〜
「あやめ先輩って基本話さないですよね」
「うん。眺めてるだけで楽しいし」
実はこの人が一番分からない。
今判明している事といったらゲーム好きなことと、恐らく金持ちであることくらいか。
「あやめー。早く自己紹介ー」
蘭先輩が急かす。この人、自分で提案しといて飽きてきてないか?
「それじゃ。藍谷あやめ。気づいたらこの部活の部員になっちゃってた」
「あ、先輩も拉致られたんですか?」
「拉致じゃないよ!」
蘭先輩が何か言っているが無視。
「拉致というより、よく分からないうちに書類に名前書かされてここに連れてこられた」
「なるほど、詐欺られた訳ですか」
「詐欺でもないよ!」
小動物が何か言っているが無視。
「でもまぁ、この部は居心地いいし気に入ってる」
「いい事言った!」
元気だなぁこの人。
「あとはー…私は金持ち」
「自分で言っちゃいますか」
「なんでお金持ちなの?」
隣に座る煌が首を傾げる。俺も気になってた。よく聞いてくれた。
「んー……。二人共、校庭を見てて」
あやめ先輩は立ち上がり入口の棚に置かれた自分のカバンを漁ってスマホを取り出した。
「いくよ」
俺と煌、二人で校庭を凝視する。
一体これからなにが起こるんだとワクワクしていると
一筋の光が校庭に着弾し、
『…え?』
自分達の眼前に広がる校庭のド真ん中に巨大な穴が造られた。すげぇ煙出てる…。
いやマジで人生で始めて聞くような音がした。怖い怖い怖い!
「…何ですか、今の」
「うち、色んな衛星的なのを打ち上げててさ。ちょうど上にあったのを使ってみた」
この人なんでこんなところに居るんだろうか。
「アタシも何か使ってみたい!」
「よかろう。ここをタップしたまえ」
煌の手にあやめ先輩のスマホが渡った。
「えい」
煌の指がその画面に触れた。
ー瞬間。
校庭に何かが落ちてきた。数秒遅れて轟音が鳴り響き、大量の砂埃が舞い上がる。
「…あれは?」
「対異星系戦闘機用固定砲台MK-Ⅱ。上から呼んでみた」
何てもの作ってんだ。そんな物校庭に落としてんじゃねぇ!
この後直ぐ、彼女が職員室に呼び出されたのは言うまでもない。