表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/21

第七話 自己紹介4 〜菊原 水仙という人〜

「水仙先輩はいつも眼鏡をかけているんですか?」

「そうですね。大体かけてます」

 自分の眼鏡に触れながら頷く。


「水仙がメガネを外すと凄いよ!超綺麗だよ!」

 なんでこの人が自慢げなのかは分からないけど、それは凄い気になる。

「水仙センパーイ…メガネよこせぇぇ!」

 煌も同じ気持ちらしい。既にそのメガネを奪おうと水仙先輩にとびかかっている。いいぞもっとやれ。

「やーでーすー取ーりーまーせーんー」

 水仙はというと、煌の次々と襲いかかる手を的確に弾きながら俺の背に隠れてきた。


「…やはりアタシの前に立ち塞がるか、東間 蓮…」

「退け。俺には守るべき物がある…」

「蓮君…」

 背中に守る女性がいる。

 それだけで男の戦う理由になるだろう。


「さぁかかってこ…「水仙センパイ、メガネ取って結んでる髪を解いたら絶対綺麗になると思うんだけどなぁ。誰か手伝ってくれないかなぁ」


「そこまで言われては仕方ない」

「蓮君!?」

 男には引くべき時もある。仕方ない。仕方ないんだ。

「ハイハイそこまでー」

 そこに蘭先輩が割り込んできた。こういう時だけ先輩になるのなんなん。

「蘭ちゃん…」


「水仙を好きにしていいのは私とあやめだけなんだからね!」

「そうそう」

「二人とも!?」

 この人、苦労してきてるんだうな…。

「さっきは私が色々言われたからね。今度は私が水仙の悪口を言う!」

 それを本人の目の前で言うあたりどうかと思う。


「えーっと、身長は…結構あるし。胸…ある…」

 自滅していらっしゃる。なんて可哀想な人だろう。

「運動は苦手ですね」

「それだ!運動音痴ー。50m30秒台ー。」

 煽りヘタかよ。

「は?20秒台です。嘘はダメです」

 煽りに乗った!しかも結局遅い!






「スキあり!」

 いつの間にか水仙先輩の背後に回り込んだ煌が眼鏡を取ることに成功した。


 瞬間。

『退避っ』

 蘭先輩とあやめ先輩がダッシュで部室から出て行った。


 …嫌な予感しかしない。俺も先輩達と同様、早急かつ迅速に部室から脱出しなければ。

「蓮君」

 肩を掴まれる。なになになになに超痛い!力強過ぎんだろ!

 部室の入り口へと向けていた体をゆっくりと背後に向ける。


「煌ぁぁぁぁ!」

 そこには地に伏した幼馴染みの姿が。

「アタシはダメだ…お前だけでも逃げろ…」

「お前を置いていくわけには…」

「最後にこれだけ伝えたい」

「なんだ?何でも言ってくれ!」


「メガネ無しの水仙センパイ、超綺麗だった…」

 それが最期の言葉でいいのか我が友よ。


「私の素顔を見た人は例外無く叩き潰してきました」

 俺の背中に張り付いて離れない水仙の手に力が入る。やめてください、肩割れる…。

「いや少なくとも蘭先輩は見たことあるんじゃ」


「叩き潰しました」

 この人超怖い!


 未だ顔を見せぬ声の主は俺の首に手を当てると


「最後に言い残すことは?」

 とか言ってきた。

 いやそれこの状況だとシャレにならない…。


「では、一つ、言ってみたかったことを。…我が生涯に、一片の悔い「せいっ!」


 せめて最後まで言わせて下さい…。

 薄れゆく意識の中で俺は、首に走った激痛と倒れ込んだ俺を見下ろす影を認識した。



 …よく考えたら俺まだ水仙先輩の素顔見てないんじゃ


ーーー・ーーー


 目が覚めると、見覚えのない天井が視界に入ってきた。

「あ、起きた」

 煌が俺の顔を覗き込んできた。


「蓮君ごめんなさいごめんなざいぃぃ!」

 それを聞くや否や、水仙先輩が泣きついていた。

「いやいやいやどうしたんですか水仙先輩」

「どうしたって、私のせいで…」

「いえ、元はといえば煌が原因ですし」

 当の本人は俺と目を合わせようとしない。

 おい、こっち向け元凶。


「それにしても、二人共よく一日で起きられたね」

 蘭先輩も部室中央の椅子からこちらへ近づいてきた。

「蘭先輩も経験者でしたっけ」

「…あれは怖かったよ」

「わかります」

「でも、なんで水仙センパイはあんな風になっちゃうの?」

「実は昔から眼鏡をかけていたので、素顔を見せるのが恥ずかしくて…」

 なんて理由だ…。実在するんだな、こういう人。


「今度二人にはなにかお詫びをしますから」

「じゃあ何か食べに行きたい!」

「俺は今度こそ眼鏡を外した姿を見せてくれれば」

「また気絶することになりますけど、それでいいなら」

「さて、どこへ食事に連れてってくれるのか今から楽しみだなぁ!」


 いつから絶対見てやる。

 そう心に決めつつも、今回はやめておくことにした。



 決してビビった訳じゃない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ