第四話 自己紹介 1
突然開かれたドアに部室内の全員の視線が向けられる。
ドアの隙間からこちらを覗く顔は俺のよく知るものだった。その来訪者は俺の顔を見つけると安心した様子で中に入って来る。
「あ、こいつがさっき言った部活の決まっていない友達です」
「どもー」
誰?というような空気の先輩方に簡単な紹介をする。
「ホントに来てくれたんだ!」
ハイテンションの蘭先輩が飛びつく。その様子はどうみても高校生ではなく、幼い子供のそれだ。
「えと…何年生?」
友人が飛びついてきた蘭先輩を剥がしながら尋ねる。
「二年生だよ」
「小二かぁ。挨拶できて偉いね」
蘭先輩が笑顔のまま固まった。漫画とかではよく見る光景だけど実際見てみるとすげぇ悲惨。
…俺も同じこと考えていたから何も言えねぇけど。
とりあえずフォローはしておこう。
「おい、その人は『一応』高二だ」
「マジか、『一応』先輩でしたか!どうもすみません」
「グハァッ!」
フォローしたつもりが追撃してしまった。
断じて狙ったわけではない。
ーーー・ーーー
「第一回、自己紹介タァァァァイムッ!」
数分かけて復活した蘭先輩が高らかに宣言する。
今俺達は部室の隅に置かれた二つのソファーに、二年生側と一年生側とで別れて座っている。ホントになんでもあるなこの部室。
「先輩方はやらなかったんですね」
「この部は今年度作ったので私たちには先輩がいないんです。私達は高校に入る前から仲が良かったので自己紹介はやらなくてよかったんです」
水仙先輩が丁寧に答えてくれた。
てか、この部新設だったのか。
「それじゃあ1人ずつやってこうか。まずは私からねー」
勝手に話が進んで行く。いやまぁ自己紹介は俺も賛成だけど。
「ね、アタシはどうすればいいのかな?」
「流れに身を任せろ」
一年生二人はそれを眺めるだけだった。