第一話 イカれたメンバー紹介するぜ
「さぁ、入って入って」
ちっさい先輩が俺を部室に引っ張る。
「新入部員ですか?」
部室のなかにいた生徒の内の一人が、ちっさい先輩に話しかける。
「うん!」
いや、違いますけど。そう訂正しようとしたが、
「そうですか。我が部へようこそ!」
笑顔の前では、不可能で
「…まだ、見学だけですよ。決めてはいません」
そう言うのが精一杯だった。
「あ、自己紹介。まだだったよね」
ちっさい先輩が俺の前に立つ。
「私は、咲野 蘭。私は二年生だから、君の先輩だよ!」
やっぱり先輩だったらしい。…ちっさいのに。
次に、先ほど笑顔を向けてきた先輩が俺の前に立つ。
「私は、菊原 水仙といいます。蘭ちゃんとは同級生です。よろしくお願いいたします」
ちっさい先輩…蘭先輩とは真逆の、大人な先輩のようだ。よかった、普通の先輩がいてくれて。
最後の一人の生徒がその場に立ち上がる。
「えー、藍谷 あやめ。17歳。日々ここでゲームの腕を磨いて…大学に向けて勉学に励んでる。よろしく」
手に握っている携帯ゲーム機さえなければまだマシだったかもしれない。
「次、君の番だよ」
蘭先輩がこちらを向く。
そこでようやく、俺がまだ名乗っていなかったことに気づいた。
「えと、一年の東間 蓮です。この部に拉致されたかわいそうな男子生徒です」
「拉致じゃないよ。任意同行だよ」
任意という言葉を知っておいでだろうか。
「でも、冗談抜きでこの部はなんですか?本当にただ遊ぶだけの部活なんですか?」
「そうだよ」
「よくこんな部活が認められてますね…」
「…権力って、便利だよね」
この先輩は、どうやら汚れているらしい。
「でも、部活は最低5人の部員が必要だったと思うんすけど」
「そうだよ。だから、勧誘してたんだよ!」
…じゃあ、あと一人必要ってことか。
…。
ここまでしてやる義理もないが、ここに俺が連れてこられたのも何かの縁だろう。
「一人、知り合いがいます。多分まだ部活決まってなかったと思います」
「本当に!?今すぐ呼べる?」
蘭先輩が身を乗り出して聞いてくる。
「聞いてみます」
ポケットからスマホを取り出すと、その友達に電話をかけ、今の自分の状況を伝えた。
返事はシンプルだった。『今すぐ行く。逃げるなよ』
…なに、喧嘩売られた?
とりあえず、その返事を蘭先輩に伝える。
「ホント?やったやった!」
子供のようにはしゃいでおられた。
…心も体も子供なのかもしれない。やはり年齢詐欺をしているのだろうか。
冗談。