第十五話 爆発迷宮1
「いやー、持つべきものは金持ちの友達だね」
「寝坊を許してくれる心優しい後輩も追加しといてください」
「蓮、細かいこと気にしてると禿げるよ」
「寝坊は細かくないと思うんですけど。つか、こんなんで禿げてたらやってらんないっす」
右手にソフトクリーム、左手にクリームソーダという最強装備の蘭先輩がホクホク笑顔で前を歩く。
かくいう俺も、同じようにソフトクリームを片手にその後をついて行く。
「二人共満喫してくれてなにより」
「ても、本当にいいんですか?こんな……」
「大丈夫。今回のは最終チェックも兼ねてるから」
あやめ先輩が連れてきてくれたのは来週オープン予定の大型ショッピングモールだった。あやめ先輩の一族が治める『藍谷グループ』の傘下らしい。相変わらず世界観が違いすぎる……。
今日はあやめ先輩の言葉通り、テスト的なものも兼ねて好きにぶらついていいらしい。飲食物は全て無料というオマケ付き。ここは天国か。
「さぁ、次はUFOキャッチャーでもしてやろうか!それとも洋服を『ここからここまでください』してやろうか!!」
開店前から潰す気だろうか。
「あやめ先輩、アレ止めなくていいんですか?」
「あれくらいで潰れるようなヤワな店じゃないよ」
あらやだカッコイイ。
「蓮、あやめ、あっち行こー!」
蘭先輩が何かを発見したようだ。指差す先には『面白いものコーナー』の看板。
「……あやめ先輩?」
「最終チェックも兼ねてるって言った」
「なんのチェックをする気ですか」
「…………」
「黙られると怖いんですけど!」
「アブナクナイヨ」
「まだ死にたくない!」
「蓮、あやめ、早く!」
いつの間にかこちらへ近づいていた蘭先輩に手を取られ、看板の指すコーナーへと連れてかれる。
基本無表情のあやめ先輩が、こちらを見て口の端を少しだけ上げた。これはアカンやつや。
ーーー・ーーー
「蘭先輩!何処ですか!」
「ここ何処ー!!あやめぇぇぇ出してぇぇぇ」
怪しさ満載の『面白いものコーナー』に足を踏み入れた瞬間落下する感覚。数秒後、柔らかいクッションのような何かの上に着地。
あたりを見回しても両側に壁、前後に道が伸びているだけ。これあれだ、多分迷路的ななにかだ。蘭先輩も近くには居るようだ。多分。最悪置いて出てしまってもあやめ先輩が何とかしてくれるだろう。
「あー、あー、マイクテスト」
突然どこからともなくあやめ先輩の声が聞こえてきた。
「ここが二人にチェックしてもらいたいアトラクション、『爆発迷宮』。頑張って」
なにそのネーミング。
「30分以内に脱出しないと」
「しないと?」
「爆発します」
「ショッピングモールになのつーもん設置してんだぁぁぁっ!!」
「蓮、出口見つけたー!」
救世主現る!
「先行ってるねー。アイス食べたいからー」
違った、ただの無能だった。
「さぁ、頑張りたまえ後輩」