第九話 自己紹介6 〜東間 蓮という人〜
あやめ先輩が連行され一人欠けてしまったが、教師の皆様とのお話が長くなりそうだから俺の自己紹介を終わらせてしまうことになった。
「東間蓮です。中学では煌と同じく帰宅部でした」
「よし終わりー」
このチビ完全に飽きてやがる!
「はいしゅーりょー!あやめが帰って来たら解散ー」
ソファーから飛び降りると自分のカバンが置いてある棚へ向かっていってしまう。
水仙先輩と煌も蘭先輩と同じく帰る支度を始めた。
納得いかねぇ……。
と、その時ポケットに入れていたスマホが振動した。何気なく画面を見ると
『蓮ドンマイ。愚痴が言いたいなら帰りにでも沢山聞いてあげるよ☆
とてもよく気が利くあなたの元カノより』
どうやら俺の心中を察したらしい煌がメールを送ってくれたらしい。視線を送ると親指を立てウインクまでしてくれた。
なんて優しい娘なのだろう。ちゃんと返事してやらなければ。
『キモイ』
「オラァッ!」
煌が手元にあった座布団を投げてきやがった。間一髪でそれを避ける。
「何すんだこらぁ!」
「優しく気遣ってあげたのになんなのキモイって!」
「あ?俺が思ったことをそのままお前に伝えただけだろうが!なんだあの☆は!」
さっき投げられた座布団を手に取り構える。煌も既に次弾を装填済みのようだ。
「いずれ決着を着けようとは思っていたが、よもやこんな所でとは……」
「こい、煌。貴様の全てを向けてこい!」
「なになに、新しい遊びでも考えたの?有望だね二人とも!」
「枕投げはありますけど、座布団投げってなんか危なそうです」
ここに第一次座布団大戦が開戦した。
ーーー・ーーー
「……何があったの?」
帰って来たあやめ先輩は入口で固まっていた。
「敗戦しました」
その視線の先には恐らく、ボロボロになり倒れ込んだ俺の姿。
「一応、何に負けたのか聞いておく」
「煌と些細なことが原因で座布団投げになりました。んで、先輩二人も乱入してきまして。最初は皆バラバラに戦っていたんですが……」
「ですが?」
「煌がそのメールを二人に見せた途端俺が標的になりました」
「……その内容には触れないでおく。辛い戦いだったろう」
頷いて肯定する。座布団って意外と重いのな。全力で投げられると普通に痛いわ。
「それで……その相手達は?」
「なんかテンション上がり過ぎて『次はこの腐った世界を正す!』とか言って出ていきました」
「……だからさっき職員室に乗り込んできたのね。おかげで抜け出せた訳だけど」
何してんだあの人達……。
「暗くなってきたし、私は帰るけど」
時計を見ると、既に18時を過ぎていた。
マジか、全然気づかなかった。
「あー……俺は三人を待ってから行きます」
「ん、分かった。また明日」
「お疲れ様でーす」
三人が涙目になりながら戻ってきたのは、それから三十分後の事だった。