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第05話 - 「冒険者ギルド その1」



昨日はロズンさんから僕等が迷い人だと言う事でこの辺りの基本的な知識は教えて貰った。

この王都から遠く離れた辺境に在るこの街には、住人が迷い人には寛容らしく困った時は何かと助けて貰えると教わった。

理由は、この街には既に何人かの迷い人が住んで居た事が在るらしく、その人達が少しずつ築いて来た信頼の証なのだと教えてくれた。


そしてこの街は辺境でもかなり魔獣達の棲みかとする森や山が近く昔は多くの被害を出していたそうだ。

今では獣や魔獣対策として、街の周りを岩から切り出したブロックを積み重ね、高い壁を作り、出入り口を東西南北の4箇所に制限する等の対策を取っている。


今日のお昼時に街の様子を見て気になった事だけど、この街は規模の割りに極端に人が少ない。

いや、少ないのでは無く、人が居る所と居ない所とでの差が極端に激しい。

まるでゴーストタウンの様に一区画が丸々店を閉め、住人が家を空けている様な場所も在ってかなり驚いた程だ。

でもその理由もロズンさんが教えて貰っている。



その昔、この街はここから馬で10日はかかるという霊峰、【ノームス山脈】の恩恵を受けて成り立っていた街だった。

山から流れる川は水資源として使い、ノームス山脈で採れる鉱石は他の山より質が良く、より良い武器や防具が作れると挙って人々が集ったものだが、在る時から魔物の力が増し鉱石の入手が困難になり、段々と住人や職人は四属領や王都へと流れて行った。


その為、今ではこの街の主な名産は、珍しい魔物の毛皮や角などの素材アイテムだ。

武器・防具・装飾など、職人の腕次第で何にでも組み合わせる事が出来、尚且つ魔力耐性も高いと有って冒険者や珍しい物好きな貴族に欲しがる者が多く結構な金になる。

表通りはそういった魔物討伐の仕事を求めてやってくる冒険者とその冒険者相手の商売をしようという人で溢れている。


僕達もそういった討伐の仕事に就ければと思いここ冒険者ギルド【辺境支部 ロックガーデン】にやって来た。

ロックガーデンの建物は木造の2階建ての建物だった。


「へー、ここがロックガーデンか?思ったより立派な建物だったな。」

「そうですね、辺境って言うぐらいだからボクはまた無骨で飾りっ気も無い建物を想像してましたけど・・・」


桜火と育兎が率直な感想を述べる。


「とにかく入って見ましょう。とりあえず登録は光矢さんと桜火さんの二人で良いわね?」

「あ!待って待って!?俺も登録したい!」


凛姉の確認で建物中に入ろうとする皆に待ったを掛ける者が、直前まで興味無さげに周りを見回していた八雲だった。


「八雲君、これは遊びじゃあ無いのよ?依頼に拠っては危険なモノも在るのかも知れないんだから年長者の二人に任せておいた方が良いと思うけど・・・。」

「そうだぜ八雲、わざわざ危険を冒さなくても俺等が確り稼いで来てやるから安心して待ってろよ!」


凛姉と桜火が八雲の無茶を止めようとする。

凛姉は八雲の性格を知っているせいか後半やや諦めムードではあるが・・・。


「うーん、でもせっかくこんな面白そうな世界に来たんだから、一度は冒険者になっておかなきゃだろ?」

「いやお前、おかなきゃだろうって。命の危険を冒してまでする事か?」


余にも大胆な意見にボクは呆れながら待ったを入れた。


「じゃあ育兎、お前この世界でずっと宿屋の部屋で縮こまって暮らすのか?何があっても?」

「だって、外にはどんな危険が在るか分からないんだ、俺等が今まで相手にしてた町の不良とはレベルが違うんだぞ?」

「そんな事は分かってる。でもだからこそ外に出ないとダメだろ?」

「はぁ?何訳分かんない事言ってんだよっ!?」


突然白熱する二人に周りはついて行けず、ただ見守る事しか出来ない。


「ちょ、ちょっと二人共、少し落ち着きなさい!?」

「や、八雲ちゃん! い、育君!?」


慌てて凛と碧が声を掛けるが二人には耳に入っていない様だ。


「だから、弱い俺等は外に出て強くならないとダメだろ?この世界に俺達を助けてくれる者は俺達しかいないんだからさ?」


八雲の口から出た正論の様に聞こえる屁理屈に育兎は言葉が詰りそうになり、カッとなった頭がその答えを拒絶した。


「そんな事は分かってるよっ!でも何の情報も無い状況で、素人の俺等が冒険に着いて行って大怪我でもしたらどうするんだ?

クエストには失敗、報酬は入らず、怪我で治療費だけがかさむなんて最悪だろうが?

だから最初はそう言う事になれてそうな光矢さんと桜火さんに頼んで様子を見るんだよっ!!」


育兎が全てを言い切り「ぜいぜい」と肩で息をしている。



「・・・なぁ光矢、この人選ってそんな理由だったのか?」

「え?まあ全てでは無いけど、概ねそんな感じだよ?僕等二人なら多少は体も動くし、実際どんな依頼が有るか分からないからね。お金も有限だから登録料も馬鹿にならないと思って削れる所は削ろうかなぁと。」



 育兎の剣幕を吃驚した顔で聞いていた八雲。


「お前、またそんなゴチャゴチャした事考えてたのかよ?頭良いくせにバカだなぁー」

「五月蝿いっ!?そんな事はお前に言われんでも分かってる。逆にお前も少しは周りを意識して行動しろっ!!・・・ぁ!?」


育兎は「まずった」と言う顔をして八雲の顔を覗き見た。


「そっかぁ~、俺はま~た昔見たいになってたかな?」

「違う・・・、今のはそう言う意味じゃあ無い。・・・第一、お前はまだ何もしていないだろう?さっきのは・・・俺が悪かった。」

「いや、俺が状況も見ないでやりたい事を優先させようとしたから注意してくれたんだろう?俺こそ悪かったよ。」

「・・・でも八雲が言う通り、俺等には力が必要だよな?それは宿屋のベットで燻ってて手に入るもんじゃあ無い。」

「まぁ確かに。冒険するのが一番楽しそうなんだが危険も相応に伴なうだうな。」

「だね。宿屋に帰ったらちょっと考えて見るよ。庭先とか借りてトレーニングぐらいは出来るかも知れない。とりあえず中に入ろう、まずはそれからだ!あ、あれ?凛姉?桜火さん?」


辺りを見回すと知らないアルムや獣人の人だかりで一杯だった!?

人々が行きかう冒険者ギルド辺境支部、ロックガーデンの店先で始まった寸劇に少なくない数のギャラリーが集っていた。

八雲と育兎が少年漫画臭い熱い会話をしている横で、完全に我関せずを貫き通している仲間は少し離れた所に避難していた。


「あっ!?おい育兎、あっちに居た!先行くぞ・・・!?」

「えっ!?マジで?あ!?すみません通して下さい。ここ通して・・・」


亜人達を掻き分けて少し離れた建物壁に皆が集っていた。


「皆酷いよ、何も言わずに居なくなるなんて!?」


育兎はちょっと焦ってそう訴えるが。


「そう言うがなお前等、店の出入り口の真ん前で行き成りあんな少年漫画ばりの熱い討論を繰広げられたら、・・・普通たまらないと思うぜ?」

「ヴっ!?」


確かにと思い、何とも言えない顔をする育兎。


「それに、内容も深刻なのかと思ったらそうでも無いし、ちょっと話せば済む様な話をあんな大袈裟にされたらちょっと恥かしくて席を外しても仕様が無いと思うの?」

「・・・・うっわ!?ハズッ!!マジで!?」


容赦無く恥ずかしい青春(現実)を叩き付けて来る桜火と凛姉に、頭を押えながら「ガクっ!?」と、真っ赤な顔でしゃがみ込む育兎。


「まぁまぁ、一応話してる内容は僕等の今後に関わる問題だし、二人ともその辺で・・・」

「何だ光矢、お前も熱い青春がしたかったのか?俺はパス、参加はお前だけにしてくれよー?」

「えっ!?僕だって好き好んで人前であんな恥ずかしい事したくは無いよッ!!・・・・・あッ!」


光矢の軽口に全力で否定した光矢だが、言ってしまった後に気付きばつが悪そうに困り顔を育兎達へ向けている。


「ご、ごめん、育兎君?」

「いえ、ボク等が悪いんで光矢さんは謝らないで下さい。」


そんな風に醜態を晒しているとと後ろから間延びした女性の声がかかって来た。



「あっ!!いたいた~!!みんなやっぱこっちに居たよぉ~♪」



育兎が後ろに振り向くと、そこには大きくてはち切れんばかりに張った白い壁が現れた。

そしてその壁は喋っている。

直ぐには気づかなかったがその後に聞こえて来た会話で直ぐに正体が分かった。


「ほら!?人族の女の子二人と男の子四人のパーティだよ♪あれ?人族の男の子が一人足りない?」

「違うぞリリー。君のその大きな胸で見えないだけで、ちゃんと目の前に居るぞ?」

「え?本当リコッタ?」


そう言って体を横に捻り正面を探す、そこには頬を赤く染めた育兎の姿が、育兎を見付けるとリリーと呼ばれた女性は嬉しそうに育兎へ抱きつく。

リリーの胸部の装備が育兎の顔面を捉える。「あたっ」と声が漏れるがリリーは気づかず大きな胸で育兎の顔面を襲い圧迫する。


「やっと見つけたわっ♪貴方達がアリカちゃん達を助けてくれた子達でしょう?貴方達を探してたの、ようやく見つかって良かったわ♪」


リリーと言われた狐耳のアルムの行き成りの抱擁を避けれる訳も無く、育兎は戸惑いのままに綺麗な狐耳のお姉さんに抱擁されていた。

仲間は突然の出来事に警戒する暇も無く、ただ呆然と見守っていた。

若干数名、心穏やかでない者も居る様だが・・・。

その心穏やかでない内の一人が、気を持ち直し彼女に話しかる。


「あの、その前に私の弟を放して頂けませんか?」怖い笑顔で凛姉がリリーと呼ばれたアルム(獣耳族)に話しかけた。

「貴女の弟さんなの?可愛いわね~、貴方お名前は?」


リリーと呼ばれた狐耳の女性は凛の問いには答えず、育兎に質問を続ける。


「えっと・・・育兎です、姉ヶ崎育兎。あの、すみません放して下さい。あ、姉が見てますので放して貰っても・・」


大きな胸を押し当てられて嬉しい気持ちと、凛姉の機嫌を損ねない為に拒もうとする気持ちで頭の中をグルグル駆け回っていた。

ちなみに、装備で服は少し硬いけど、胸の柔らかさはヤバイ程に伝わって来るので、かなりすごい。


「そうイクト君ね、私はリリットよ。私達はロズンさんに頼まれて貴方達を迎えに来たのよ♪」


後ろで凛姉が何か言おうとしたが思わぬ所でロズンさんの名前が出で来たので口をつぐみ、少し様子を見ていた。


「え?ロズンさんから?」と育兎も思わず声を漏らすとリリットさんが笑顔で「ええ、そうよ」と言ってようやく手を放してくれた。


すると今度はリリットさんの後ろから頭に犬耳を生やした女性が凛とした声で現れる。


「仲間が突然失礼しました。私は彼女が所属するパーティーを率いているサイネリアという者だ、よろしく。ああ!見た目通り私は狼のアルム(獣耳族)だよ。犬耳族じゃあ無いからな!」


そう言って犬耳女性の・・・では無く、狼耳の女性サイネリアさんの頭には、昔ネットで見た狼の様に黒と言わず褐色と言わず灰色とも言えない綺麗にグラデーションがかった配色の髪から「ピンッ」と立った三角形の耳を「ピコピコ」させていた。


「私達は今朝方ロズンさんのお店に用事が在ってね、偶々出向いた先で君達の事を聞いたんだ。確かリンさんだったね?あのロズンさんに気に入られるって結構凄いよ?相当の悪人か本物の聖人ぐらいのモノだよ、一体何をやったんだい?」


皮肉っぽい言葉とは裏腹にサイネリアさんの声と表情は明るく笑っていたので凛も戸惑いながらロズンさんとのやり取りを話して上げた。


「え?じゃあ、お金突き返しちゃったの?金額も見ずに?」

「ええ、だって既にお礼はして頂きましたし、偶々助ける事が出来ただけの事でそこまで世話になる訳には行きませんから。」

「うっわ~勿体無~いっ!!只で貰えるんなら貰っておけば良かったのに、お金無かったんでしょう?使えるモノは何でも使わないと。人族のお姉さんもお嬢ちゃんも綺麗なんだから、この国でそんなお人好しだと大変な事になっちゃうよぉ~?」

「否、ただのお人好しならあの方は気にも留めないだろう。彼女達の事もわざわざ私達に話さなかったと思うぞ?それに聞いた話だと、彼女は説得されたとはいえ、一度突っ撥ねた金を受け取ってるからな。しかもキッチリ返す気でいるらしい。人族では今時珍しい程高潔な女性だな。」


凛の答えに突然サイネリアの脇から顔を出して来た猫耳を生やしたアルムの少女が面白そう笑いながら凛に話しかけて来た。

そしてその後ろからは、声から女性で有る事は予想していたのだが、見えて来た姿は予想を大きく覆す者だった。

率直に言ってしまえば彼女はアビス(亜人種)、獣人なのであろう。

高い背に大きな身体、大きな頭には小さく可愛らしい丸い耳、全身を覆う体毛が黒と白に分かれている彼女は、日本の動物園では人気者のある動物を彷彿と思う出させた。

しかし、先に聞こえて来た理知的な女性の声と現実とのギャップに少し戸惑いを隠せない凛達であったが一人例外が居た。


「わぁ~!?パンダさんッ!!ねぇねぇ、ほらほら八雲ちゃん見てよ!パンダさんがしゃべってるよ?きっと昨日教えてもらったアビスって種族だよねっ♪」


自分が話しかけた事で固まってしまった凛達の反応を当然のモノとして受け入れていたパンダのアビス女性だが、碧のこの感動っぷりは予想外らしく、かなり戸惑いの表情を浮かべながら声をかけて来た。


「・・・・人族のお嬢さん、アビスは亜人種全体に対する名だ、間違ってはいないが、正しくは無い。」

「あ!?そうなんですか?それじゃあ貴女は何族なんですか?」

「私か?そう言えはまだ名乗ってなかったね。私はアビスのベアント族、名をリコッタと言う。さっきのサイネリアと同じパーティーの一員だよ。」

「ベアント族のリコッタさんって言うんですね。はじめまして、私の名前は如月碧と言います。碧って呼んで下さい。」


笑顔で自己紹介を始める碧にリコッタと名乗ったアビス女性は未だ軽い戸惑いを残した笑顔を浮かべて碧と笑顔を交わしている。


「おぉ~凄ぇ~!!リコ姐と初対面で全く動じない娘って、アルムでも少ないよね? むしろリコ姐が挙動不審って凄く新鮮っ♪」


クララが碧とリコッタの様子と楽しそうに語る。


「ああ、クララの言う通りだな。彼女はとても仲間想いだし、その上子供好きで凄く良い奴なんだが、見た目がベアントなせいでかなり怖がられて来たからね。アレは見てて面白い。」


碧とリコッタの会話を聞いて狼耳のサイネリアと猫耳のクララがリコッタの近くでニヤニヤと笑いを堪えていた。

                               

「私はアルムなのに、ミドリ君は名乗ってくれるのだな・・・・」

戸惑いの声で碧に聞いてくる。


「え?名乗ったら名乗り返すのが普通じゃあ無いんですか?あっ!もしかしてお名前を聞く前に自分から名乗った方が良かったのかな・・・・」

無作法を咎められたと勘違いした碧があたふたとしだした。


「あぁいや、違う。そう言う事ではない。この国の人族はアビス相手にわざわざ名乗る事など無いからな、まあ辺境等では多少の違いはあるが・・・」

「え!?そうなんですか?名前なんて呼ばれる為にあるんだから、意地悪しないで教えて上げれば良いのに・・・・。」

「意地悪、か。ふふっ・・・確かに呼ばれる為の物なのだから教えてくれれば良いのだがな・・・・」


リコッタは一度言葉を区切り、もう一度話し始めた。


「・・・・この国の人族は気位が高いらしくてな、我々の様な(ケダモノ)に名を呼ばれたくは無いらしい。名が穢れるのだそうだ。」


そう言ったリコッタの表情に翳がかかり、それを聞いた碧が眉間に皺を寄せて「えっ!?」と息を呑んだ。

それを聞いた碧は段々と表情を険しい物にしてこう言った。


「それはまた、ここ国の人はさぞ見る目が無いんでしょうね。こんな綺麗な瞳を持った人に名を呼ばれて穢れると思うなんて、逆に自分達が穢れている事を証明しているみたいなモノなのに。そんな人達の戯言(たわごと)なんて聞く必要無いですよ?だから、リコッタさんがそんな顔しないで下さい。」


最後には笑顔でそんな台詞を言う碧。

先程までのぽやぽやと頼りなさそうにしていた少女が言ったとは到底思えない辛辣な台詞に、言われたリコッタも彼女の仲間達もちょっと動揺を隠せずに居た。

それでも年上としての意地か冒険者としての経験か、リコッタは碧の言葉に困惑しながらも言葉を返した。


「・・・ははは、ミドリはもしかしてドワーフかエルフだったのかな?ビックリしたよ。余計な話でミドリを心配させたみたいですまなかったね。でも、どうして会ったばかりの私をそこまで庇ってくれるんだい?さっき仲間がああ言ってたからからかな?」

「う~ん、ちょっと違うかな?リコッタさんが良い人なのはこの短い間でも分かる事だよ?だってさっきの話が本当だとすると、普段嫌われてる人族相手にこんなに理性的に会話をしてるんだよ?かなり私に気を使って会話してくれてますよね?私それは分かったもん。」

「・・・・・・・・・。」


戸惑い顔のまま何も言えずにいるリコッタ。

それでも笑顔のまま碧は話し続ける。


「それにね、私本当は人と話すのがとっても苦手なの。いつもは凛お姉ちゃんや仲の良いお友達としか話さないの。」


まるで悪戯を成功させた子供の様に楽しそうに、嬉しそうに笑いながら話す碧。


「・・・うん?」


「どう言う事だ?」と疑問に思うリコッタをそのままに、碧は話し続ける。


「私ね、人と話そうとすると上手く話す事が出来なくて、良く会話を止めて相手をイラつかせちゃうの。

それで良く相手に怒鳴られたりしてお話するのが苦手になっちゃったんだけど・・・・。

でも、リコッタさんは違ったわ。私を見て私を知ろうとしてくれた。

目で表情で私の話を聞こうとしてくれた、だから私もとても話し易かった。

ねえリコッタさん、初めて会ったこんな小さな女の子相手に、真剣に相手の事を思いながら会話が出来る様な人の名前が、どうして穢れていると思えるの?

むしろ、そんな優しい人の名前なら教えて欲しいと思わない?」


碧はさも当然の事の様に、まるで自分の友達を自慢するかの様に得意げに語る。


「それにね、仲間の人もね。内容はあれだったけど、言葉のトーンが凄く温かくてリコッタさんをとっても信頼してるんだなぁ~って伝わったよ?」


碧はクスクスと笑いながら彼女の仲間の話をした。

不意の碧の言葉にサイネリアとクララの頬に赤みが差し込む。

皆が恥ずかしさに口を閉ざしていると、その後ろからまた新しい女性の声が聞こえて来た。


「スゴイなぁ!クセの強い内の連中がみんな骨抜きだよっ♪」

「本当ね、迷い人って皆こんな人達がやって来るのかしら?」


そう言って出て来たのは耳元から羽を生やし二本の剣を帯刀した女性と、弓を背負うエルフの様に細く長い三角の耳と美しい顔立ちの美少女の二人組みだ。

まず二本の剣を持った女性から自己紹介が始まった。


「私はそこで赤くなっている彼女達の仲間でアルテシアだ。リコッタと同じ剣士だ。まあ力では彼女に一歩及ばないが、速さなら私も剣に自信があるよ。そんな訳でそこの少年、お前がバックに背負っているのは剣だろう?後で私が鍛えてやる。」

「私はルッテ、同じく彼女達と同じパーティーの一員。一応、弓が得意。」


そう言って皆に挨拶の言葉も終わらない内に桜火へとの修行の話を持ちかけるアルテシア。

そして、それをマイペースにスルーして自己紹介を始めるルッテ。


「いやいや、待てくれお姉さん。俺には既に師匠がいる。だからこれ以上誰かに師事する気はねぇぞ?」


いきなりの師事に反射的に反発してしまう桜火。


「へぇー、確か君は迷い人らしいね?その師匠とやらも一緒に飛んで来たのかい?」

「いや、俺等だけだけど・・・」

「じゃあ君はどうやって強くなるんだ?見た所このパーティーで一番戦闘に適しているのは君に見えるが・・・。まさか実践で経験を積んで・・・なんて悠長な事は言わないよね?もしかして君達が居た国って結構平和だったのかな?」

「それは・・・・」

「悪い事は言わないから私達の元で力を身に着けていきなよ。冒険がしたいんだったら、その後たっぷり楽しめば良いさっ♪」


明らかに「冒険」の部分には「お遊び」と言うルビが当てられているであろう、揶揄するような雰囲気に呑まれそうになるも、むしろ闘争心を燃やして立ち向かっていく桜火。


「・・・はは確かにな。俺の名は一色桜火。これからよろしくお願いします、アルテシアさん。」

「ふふっ・・・・。こちらこそよろしく、少年剣士くん。ああ、さんは不要だよ。」

「了解、アルテシア。」


結局アルテシアは態と子供をあやす様な言い方で優しく桜火へ話し挑発し続け、最後に桜火も状況は分かっているのか、悔しそうな顔で頬を吊り上げ、顰められた笑顔でまるで挑むかの様に挨拶を交わしていた。

そしてアルテシア達も全員揃ったので、皆で簡単な自己紹介をすませてみた。


「さてと、うーんそれじゃあ取り合えず場所を移動しようか。・・・・ちょっと回りが五月蝿くなってきたし。」

「そうですね、私達の家で構いませんか?これからの事もゆっくり話したいですし。」

「そうだね、それじゃあ皆さん行きましょうか?」

「ま、待ってください、私達冒険者登録をする為にここまで来たんです。ロズンさんからある程度のお金は頂ましたが、仕事を探さない事には・・・」

「リンは律儀ですね。登録はいつでも出来ますし、それに運が良ければ・・・君達の頑張り次第でちょっと面白いギルドカードも手に入りますから。あ!?でもお金が直ぐに必要なら今登録した方が良いのかな?ちなみに登録料は一人500アース、小銅貨5枚分です。今どのくらい残ってますか?」

「まだ銀貨19枚程残ってますけど・・・・」

「銀貨19枚、19万アースですか。それだけあれば十分余裕がありますね。まぁ細かい話は向こうでしましょう!」


アルテシアは笑顔で大丈夫だと凛を説得し皆で彼女達の家へ向かう事にした。




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