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第10話 - 「訓練 継続中 一」

すみません、再度修正を入れてます。


話の流れに違いは無いと思いますが…


 育兎、碧、光矢の三人はショートワイドを片手に額に汗を浮べながら体を休めている。

魔術の訓練を始めて早数時間、修練場では直ぐにコツを掴む者とそうで無い者に分かれていた。


「凄いよ二人とも!?

始めて数時間で魔力感知だけじゃ無く、魔力操作の感覚も掴み始めてるんじゃないの!?」

「そうですね。

初級の【シールド】とは言っても、障壁魔術は制御が難しい魔術の一つです。

それがもう少しで成功させそうだなんて・・・。本当彼方達凄いわよ。」


手放しでクララとルッテの賞賛を受けていたのは碧と光矢の二人。

最初の課題だった、自身の内にある魔力を見つける魔力感知(まりょくかんち)を早々にクリアした二人は、リリットの提案で元素魔術(げんそまじゅつ)ではなく、少し制御が難しいが暴発による二次被害の無い障壁魔術(しょうへきまじゅつ)を覚える事に成った。




 障壁魔術(しょうへきまじゅつ)は相手の魔術を防ぐ防御の為の魔術。

制御は元素魔術に比べれば難しいが、冒険者の殆どの者が使える様にするぐらい便利でメジャーな魔術らしく、早い段階で覚えておいて損は無いそうだ。

むしろ制御の難しい魔術に慣れる事で自身の魔力制御の能力も向上するらしい。



碧と光矢の二人はあともう一息の所で初級の障壁魔術【シールド】が形に成ろうとしていた。


「う~ん、もう少しなんだけどなぁ・・・?

クララさんの言う通り、盾の形をイメージして呪文を唱えてみたけど、やっぱり実物を見ないと中々難しいね?」

「うーん、そうかもね。

魔力の制御は結構慣れて来たと思うし、発動に必要な量も足りてると思うんだけどね。

後は盾のイメージが中々定まらないんだよな・・・・。」


短い修行の間に二人はすっかり打解けた様で、碧から最初出ていた緊張も無くなり、口調もだいぶ砕けて来た様だ。


「あっ!? そうだ。

育君は何か掴めたー?

あれから結構経ったけどぉ?」


声を掛けられた育兎は二人とは少し離れた場所に居た、杖を両手でまるで剣の様に掴みながら握り修行している。


順調に進んでいる二人と違い、育兎は魔力感知の段階で躓いていた。


育兎達三人は始め魔力感知の訓練を始めると、光矢が既に知っていたかの様に数分で課題をクリアしてしまい、それを聞いた碧が光也に詳しい話を聴きに行ったのを切っ掛けに、理由は碧本人にもよく分かっていない様だが、何となくで碧も魔力の感覚を掴んでしまっていた。


実質二人が魔力感知に費やした時間は30分にも満たず、早々に次の特訓へと移って行った。


一方、碧と一緒に光矢話の聞いていた育兎だったが、成果は全く表れる事は無かった。


その間、リリットは一切助言を与える事は無く、最初に魔術を見せて貰って以降は部屋の端の方で優雅にお茶を飲みながら僕等を眺めているだけだった。


もう彼此(かれこれ)育兎が修行を始めて数時間が経とうとしていた。


「ううん、全然駄目。

ねぇ碧ちゃん、さっきのもう一回教えてもらっても良い?」


育兎は余りに魔力の感覚と言うモノが解らな過ぎて碧ちゃんと光矢さんに、既に一度ずつコツを聞いてはいたが、中々上手くはいっていなかった。


「そっかぁ…大変だね。

えっとね、私の時は目を閉じると体の中心がぽかぽか温かく感じて、その温かい感覚が魔力だったんだよ?」


育兎は「コクコク」と相槌を打ちながら碧の言葉を聞き漏らさない様に耳を傾ける。


「うん…うん…そっか…、ありがとう碧ちゃん。」

「ううん、育ちゃんも頑張ってね!!」


育兎は、碧のそのほんわりとした表現の中から、どうにかして自分のヒントに成りそうなモノが無いかを考える。


「それじゃあ私からも一応、もう一度教えておくよ。」

「あ!? お願いします、光矢さん。」


普段、余り積極的に会話をしない光矢さんが話しかけてきてくれた。


突然の事で育兎も少し戸惑ったが、3人の中で最初に魔力感知を覚えた人の言葉だ。


きっと今度こそ何かを掴めるかもしれないと、気を引き締めて光矢さんの言葉に耳を傾けた。


「私の時は、魔力が全身に巡ってるって言ってたのを聞いて血液を思い浮かべたよ。

血が全身を巡ってる様に、魔力も全身を駆け巡っているんだって考えたら、血液とは違う何かもっと小さな…本当に微かだけど、感じる事が出来る温かさの様な感覚に気付いたんだ。」


ゆっくりとした口調で喋る光矢。


普段はそんな事に気にも留め無い育兎だったが、今の彼は何故かその語り口調がとても神聖なモノに思えた。


それ故にか、光矢さんの声が育兎には一言一言がとても聞き取り易く、魔力を感じる事が出来ないボクでも、まるで本当に体感している様に血液の廻りを想像してしまう程だ。


「そしたらその瞬間〝あぁ、これかな?〟って言う感じで殆んど直感で気付いた様なモノだね。」

「微かな…ですか、結構難しそうですね。

でも、分かりました。もっと集中して見ます、ありがとう御座います。」


育兎は光矢のアドバイスを受け、礼を言うと、さっそく杖を(いだ)く様にギュッと握りしめ、瞳を閉じて杖に集中にしていた。


自分の言葉を聞いた育兎の反応に、若干常軌を逸したモノを感じて、光矢が育兎の顔を心配そうに覗き見てくる。


「私が言うのもあれだけど・・・。

育兎君は少し気負い過ぎてるんじゃないかな?

早朝からこの訓練でずっと集中しっ放しで、体力的にも精神的にも消耗してるだろう?

疲れてその感覚に気付かないだけで、もう無意識的には魔力を把握してるかも知れないしね。」


今の光矢はいつのも硬い雰囲気とは違い、訓練で碧やクララ達と一緒に居たお陰か、珍しく他人を、育兎を励まそうとしているが、効果の程は微妙かもしれなかった。


それでも育兎は杖から手を離しはしなかったが、目を開け顔を上げて光矢の顔を見上げた。


「あぁ~、やっぱり・・そうなんでしょうか?

でもボク、凛姉と違って体に覚えさせないと中々覚えられないからなぁ…。」


育兎は苦笑を浮かべながら不安を口にしつつも、杖に添えられた手の力は全く抜こうとする気配は無い。


「こっちの世界じゃあコレ、何気に生活かかってるじゃあないですか?

だから早く覚えて冒険に行って稼ぎたいんですよね。」


育兎は「コレ」と言って両手で握り締めていた杖を片手で持ち上げ、光矢に見せる。


「あ!? ボクが魔術覚えたら一狩(ひとか)り、一緒に言って下さいね!」と笑顔で返され、既にもう光矢はさっき育兎に感じた危さは気のせいだったのでは無いか?と、思うようになっていた。


すると遠くから育兎を呼ぶ声が…。


「おい、イクトッ!」


最初に魔術を披露してから数時間、育兎の指導役を自ら買って出た割りにアレ以降ずっとティータイムのリリットが珍しく声を掛けて来た。


「・・何か御用ですか、お師匠様?」


今の育兎はリリットのお遊びに構っている暇は無いとばかりに、リリットを〝お師匠様〟と呼んで適当に相手をしてみる。


リリットが隅の寛いでいた場所から、こちらへ歩いて来た。


「一応教えておくけど。

ここに居る間の君達の身の安全は保障するわよ。

ここは常時アリアが複数の人形を配備して屋敷全体を護っているから、この街の何処よりも安全なのよ。」

「え? アリアさんの人形・・ですか?」


前半はともかく、後半の内容が今一理解出来なかった育兎は、それが思いっきり顔に出ていた様でリリットに話を良く聞きなさいと注意されてしまった。


「だからね、アリアは【傀儡魔術(くぐつまじゅつ)】が使えるドールマスターなのよ。

前に基本魔術以外に血統魔術が在るって言ったのは覚えてるかしら?」


リリットはまた教師の様な顔になり、説明を始めた。


「たしか、特別な才能を持った血筋の魔術師で、特別な魔術が使えるんだっけ?」

「少し違うわね。

例外も在るけど、血統が関わっているのは魔術の種類じゃあ無いわ。 ただの魔力保有量よ。

〝血統魔術〟、なんて紛らわしい名前が付いてるから余計に勘違いするのかも知れないけど、魔術の適正に因って得手不得手は在れど血統によって得手不得手が生じる事は稀よ?

まあ、名前なんて昔の人族、それも貴族や王族達が付けたモノだから少し紛らわしいかもしれないけど、勘違いして自分の才能を潰さない様に気をつけなさい。」

「あ・・うん、分かった。」


さっきまでお茶をしていた時とは打って変わって、真面目な顔でアドバイスを施すリリットに、素直に答える育兎。


「それで、アリアさんって昨日の晩御飯と今朝の朝食を作ってくれた女の子だよね?

あの人が護ってくれてるの?」


育兎の言葉に残念なモノをを見る様な視線を向けてくる。

そうしていたとかと思ったら、次の瞬間何を思い直したのか、それも仕方が無いと言った感じで小さく肯かれ、育兎は居心地の悪い思いでリリットの言葉を待った。


「あ~、まぁ仕方無いわね。

・・・これも一応教えておいて上げるけど、一応あの()はイクトより年上よ?」

「え!?」

「それもイクトの倍や3倍では済まないわよ?

リンの数倍はお姉さんね。」

「え、えぇぇー!!??」


『あの可愛らしいロリロリな見た目で凛姉の数倍年上!!

って事は100歳くらいはあるって事!?』


「まあアリアも女だからね、若く見られるのは嬉しいかも知れないけど・・、子ども扱いされるのは嫌がると思うわよ?

それにあの娘も私達『風の翼』の仲間ですからね。

あんな身形(なり)をしていてもAランクの冒険者よ。」

「え!! そうだったんですか?」


育兎はリリットの答えに驚きはしたが、アリアとの自己紹介を思い出し、自分の間違いに気付いた。


「…あっ!? そう言えば自己紹介の時にそんな感じの事言ってた様な?

でも、あの見た目は・・・」

「ああ、彼女ドワーフ族なのよ。

アレでもう当に成人はしてると思うわよ?

それで、彼女の使う人形が常時この屋敷を警護しているからイクトやリン、それにミドリや他の皆の安全は私達に任せて、貴方達は魔術の修行に励みなさい。」

「人形で警護…、そんな魔術まで在るんだね。

でも・・うん・・そっか、よかったぁ…。」


リリットの言葉に少し安心感の様な物を感じ、少し気が抜けて気持ち肩からも力が抜けた様な気がする。


「でも、ボクも一生懸命集中してるんだけど、中々魔力の感覚ってのが掴めなくて・・・。

碧ちゃんや光矢さんに色々アドバイス貰ったけど、それでも中々上手く活かせなくて・・・」


中々成果の出ない育兎の顔には、終始緊張を含んだ様な硬い表情を見せていたが、リリットの言葉に少し安心感の様な物を感じ、育兎は気が抜けたのか微かに安堵の表情を見せる。


しかし、少し経つとやはり先程までの訓練の事を考えてしまい、また思い詰めた様な表情が表れ、気持ちが落ち込んでいるのが見て取れた。


「少し思い詰めすぎな気もしますけど・・・、さて、如何しましょうか。

私も貴方に協力すると言った以上魔術は教えはするけれど、基本の魔力感知でここまで手子(てこ)()る何てちょっと予想外ね。」

「うぅっ・・それは本当にごめ・・・」

「いえ、別に謝る必要はないわ。

それに貴方達には後でその膨大な魔力でキッチリ稼いで貰うから問題無いわよ?」


知らぬ間にそんな契約(約束)になっていたらしい事に、若干後悔の念に駆られそうになるが…

しかし、ボクも凛姉程では無いにしろ、何でもかんでも貰ってばかり居るのはとても気持ちが悪いと感じる性質の人間なのだ。


むしろ強くして貰ったお礼金ないし、給料を払うって言うぐらいに考えれば、現代でも特に普通の感覚だし、何も特別な事は無い。


こっちは魔術なんて未知な力を習ってるんだから、育兎はむしろこっちからお礼がしたいぐらいだと考えていた。


「とにかく今は休息ね。・・・そうだ!?

確か彼方朝食の時彼方達の国では毎日三食も食べるのが普通だと言ってたわね?」

「え!? ああうん。

ボク達の所も昔は違うけど、今は普通に一日三食食べるよ。 それがどうしたの?」


いきなりの話題転換に少し戸惑ったが辛うじて返事は出来た。


「いえ、今朝は話さなかったがこっちでは日に三食も食べるのは貴族と王族ぐらいで普通は二食なのよ。

時間は特に決まってないけど、主に朝と夜にお腹一杯食べるのが一般的ね。」

「ああ、だから朝食なのに結構な量がテーブルに乗っかってたんだね!?

冒険者って普段からあんなに食べるんだ!?って、ちょっと吃驚したんだよね。」


納得したという様に肯く育兎。


「ええ、私達も普段一日二食だからイクト達が朝あれしか食べないのを見て少し驚いたわ。

でもまあ、その後普段は一日三食も食べてるなんて聞いて少し驚いたけど、納得はしたわね。」

「うん? どうしてリリットがそんな事で驚くの?」

「だって貴族達の様に余裕が在る訳でも無いしのに、毎日一食多く取る何て考えられ無いわ。

それに、一食分の食事の時間が無駄でしょう?

その分稼いで、夜お腹一杯食べれば良いじゃない。」


食文化の違いなのか、経済力の違いなのか、リリットはそんな事を言う。


「えっ!? いやいや何言ってるの? 無駄じゃあ無いよ?

一回で大量に食べるより、量を分けて食べた方が健康的で体には断然良いんだよ?

特にリリット達は冒険者って言う身体が資本な職業なんだから、健康には気を使ってるんじゃないの?」


行き成り興奮気味に語り出す育兎に、若干面を食らった様な態度で受け答えるリリット。


「え? そ、それはそうよ。

私達冒険者は身体が資本だもの。

でも、食事でそこまで変わるものかしら?」

「直ぐに大きな変化は起きないと思うけど、毎日続ければ早々食事で体調を崩す何て事は無くなると思うよ?

今度試しにアリアさんに言って一食の食事を減らして一日三食にして貰うと良いと思うよ?

効果の程はボクが保障するから!」

「イクトが保障するの?」


こんな活き活きとした育兎が奇妙に映ったのか、訝しげな目で見られてしまった。


「いや、ボクもともと料理は趣味で結構作ってるんだよ。

だから食生活とかちょっと五月蝿く言っちゃったりして・・・」

「・・・なにか、魔術の話からそれたら行き成り活き活きと話し始めましたね?

一体どうしたの?

まだ訓練を始めたばかりだというのに、そんなに辛かったかしら。この修行?」


リリットの言葉に育兎は慌てて…


「え!? いやいや、そんな事は無いよ?

ごめんリリット、また直ぐに修行を再開するからっ!!」


杖を構え様とする育兎をリリットが声を掛けて止める。


「うふふ…、冗談よイクト。今度アリアに教えて伝えて置くわね。

私達も別に生活に困ってる分けでも無いし、普段から体調が整うなら試す価値は有りそうね。」

「え!? 本当?」

「ええ。

でも、イクトは料理が趣味なのね。 男の子なのに珍しいわよね?

・・・あっ、そうだ!? 調度良いからお昼ご飯、自分で作って来ても良いわよ!!

料理が趣味なら丁度良い気分転換にもなるでしょう?

さっきから見てたけど…貴方、集中してる時には既に魔力を体内で錬っている感じなのに、それに気付かない様だったから傍から見てて少し怖いわよ?」

「え!! そんな事言われても、どんな感覚和分からないよ・・・」


リリットが心底分からないと言う風に頭を悩ませるが、何かを決断した様に目を見開き育兎へと向き直った。


「本当は最初の魔力感知は自力で体感して欲しかったけど、さっきまでの貴方を見ていると少し危なくてそうも言っていられないわね。」

「えぇ!? でもボク、ただ杖持って集中してただけですよね?

それなのにそんな大げさな事なんですか?」


先程まで傍観していた人の言葉とも思えない発言に育兎が驚く。


「確かに魔力感知が出来ないイクトには、ただ杖を持って神経を集中していただけかもしれないでしょうけどね。

あの時貴方の杖には結構な魔力が集まってたわよ?

まだ貴方の集中の仕方が荒いから逆に被害は出てないけど・・・これ以上続けたら貴方被害が出るまで無理してしまうでしょう?」


明確な解決法が分からない今、このまま無理を続けそうだと言う自覚が在るのか、育兎は視線を俯け空笑いを浮かべた。


「大丈夫よ、正攻法では無いけれど方法は在るわ。

だからアリアの所に行ってある道具を借りて〝初級魔術を使って〟料理をして来なさい。」

「・・はぁっ!?」


育兎はリリットが何を言っているのか意味が分からず聞き返していた。


「今までは杖を使って自分の身体の中に在る魔力を感じる事が出来るか試したけど、それは失敗してしまったわ。

本当はもっと長い時間を掛けてじっくり行うモノなんだけど、イクトの場合それをすると他に被害が出そうだから却下ね。」


先程言っていた「被害が出る」と言う事を指摘しているのだろう。


「だから、今度は身体の中に在る魔力が外に出て行く感覚、魔術を使う事によって使用される自分の魔力で魔力の感覚を掴みなさい。」

「・・・え!?

最初からそっちでも良かったんじゃあ…?」


リリットが余りに躊躇いがちに言うのでどんな方法かと思っていたら、案外普通の方法に拍子抜けする育兎。


「まあ、そう思うわよね。

でもねイクト、貴方まだ自分の魔力の感覚を把握出来て無いのでしょう?

という事は、魔力の制御も全く出来ていないのよ?

魔術を使う際、さっきみたいに集中して魔術を行うと通常より過剰に魔力を術式へ送る可能性が高いわ。

まあ、イクトは普通より魔力が高いから数回、十数回と試すぐらい問題は無いでしょうけど、その回数内に魔力の感触を掴む事が出来ずに、もしイクトの魔力が尽きる事になったら・・・」


淡々と説明するリリット、下手に感情が込められていない分、余計に向けられた言葉が真実だと、本能が告げた。


「まあ、運が良くて失神。 最悪、死に至る事も在るのよ。

貴方、最初から態々(わざわざ)そんな危険を冒してまで魔力感知を会得したかったかしら?」


育兎は思ったより大きな話しになってしまい少し驚いたが、それも直ぐに気持ちを入れ替えた。


「思ったより大事(おおごと)だったんだ!?

ううん、安全な方法で出来たならそれに越した事は無いよ。」


育兎は一先ずそう答え、そして軽く深呼吸を一つすると…


「…けどさ、そえれもきっと時と場合に由りけりだよね?

今のボクにはそれ位のリスクなら問題無いよ。

それに、そうなる前に止めるか覚えるかすれば良いんでしょう? だから大丈夫だよ。」


リリットを安心させる様に、最後は笑顔で話しを促した。


「そう、イクトがそのつもりなら問題無いわね。

それじゃあ早速アリアの所へ行って料理を作ってらっしゃいッ!!」


「ビシッ!!」と言った感じで、突然屋敷の方を指差すリリット。


『どうしてだろう?

急にリリットとの意志の疎通が、「不可能になった」感が半端無いんだけど…?

まあでも、ちょっとこのままここで続けていても魔力の感覚を掴め無さそうだし・・・。

もしかしたらリリットがボクに気を使って気分転換でもさせようとしてるのかな?』


「えぇ~と、それじゃあちょっと言ってきますね?」

「ええ、アリアに私から『初級魔術で料理を作れ』と言われたって言えば伝わるから。」

「ん? はい、分かりました。

それじゃあ言ってきます。」


育兎がリリットにお辞儀をして出口に駆けて行こうとしたら、急にリリットに止められてしまった。


「あっ!? 少し待ちなさい!?」

「え!? どうしたのリリット?」

「その杖はここに置いていって大丈夫よ。」


先程渡されたショートワイドを指差してリリットが言う。


「え!? でも、料理は魔術で作るんですよね?」

「ええ、でもイクトはその杖を使うと魔術を集め過ぎるから、今の貴方にそれで料理をするのは・・・自殺行為よ?」

「あぁ、・・やっぱりそうですよね?

それじゃあ如何するんですか?」

「代わりの物をアリアが持ってるから問題無いわ。

アリアがちょっと珍しい小道具を持ってるからそれを貸してもらいなさい。」


いやに楽しそうな顔をするリリットに育兎は嫌な予感しかしない。


「珍しい小道具、ですか。 杖じゃ無いんですか?」

「ええ、そうね。

杖の説明の時に言ったと思うけど、魔力を術式へ送る触媒になれば杖でなくても魔術は使用可能なのよ。

ただ、杖以外のワイド(触媒)では中々上級魔術の様な多量の魔力を扱う魔術が扱い切れないってだけでね。」

「へー、ワイド(触媒)のカタチにも色々在るんですね。

それじゃあこの杖、ありがとう御座いました。」


そう言って杖をリリットへと返す育兎。


「それじゃあ少し行って来ますね。」


何故か満面の笑顔で手を振るリリットが凄く気になったが、何か嫌な予感しかしなかったので育兎は考えるのを止め、取りあえず笑顔を返した。




  ◆◇◆◇◆◇◆




 剣術の修行と言う名の手合わせが始まってもう数時間が経った。


桜火は今、自身の持っていた刀でアルテシアと剣を合わせている。


「そこッ! 刃を恐れるなオウカ。

お前程度の腕で斬られる程、私の剣は弱くないぞ!」


屋敷の裏庭では、「カンッ!?カンッ!!カンッ!!!」と、甲高い金属の打ち合う音が鳴り響いていた。


離れた所では彼等と同じく凛がサイネリアと共に剣を構えて立ち会っている。


八雲の声も聞こえるので何所かでリコッタと立ち会っているのかも知れない。


「どうした、今は私に集中しろ!

お前が師匠はそんな基本も教え無かったのか?」


桜火は今まで木刀や刃引きした模造刀での立会いは何度もした経験は在るが、真剣による立会いは師匠との修行以外では今まで一度も経験が無かった。


「んなっ!? 行くぞッ!!」


今の所、アルテシアは腰に差した2本の剣の内、1本を手にして桜火と互角以上に立ち回っている。


二人の激しい剣戟はそれから暫らく続き、桜火はあれから何度目かの攻防を経て、今では肩で息をしていた。


そして今、桜火とアルテシアの二人はお互い距離を取って対峙している。


「どうしたオウカ? もう疲れたか?

やはりお前にその武器は合わないんじゃあ無いか?」

「うるさいッ!?

はぁはぁ・・・久々の、真剣で・・・ちょっと慣れてないだけだ。

はぁはぁ・・・これからたっぷりこの刀の凄さを味合わせてやるから・・はぁ・・はぁ・・はぅー・・・。

ちょっとそこで待ってろッ!!」


肩で大きく息をする桜火の台詞は、傍から見れば完全にやられ役の吐く台詞だ。


『って、俺は何ダサい台詞を吐いてるんだ!?

無駄に呼吸を乱すだけだろうが。

師匠に何度直ぐ熱くなるこの性格を注意されたんだよ…』


桜火は少し頭を冷やし、普段の練習を思い出したのか、程好く抜けた力で刀を正眼に構え、息を2回、3回と深く呼吸をする。

そして静かに〝息〟をする。


回を重ねるに連れ、肩で息をする程乱れていた桜火の呼吸が少しずつ落ち着きを取り戻していった。


「ほう、あれだけ乱れていた呼吸が・・。

それがお前の力なのか、師匠とやらの教えの賜物か分からんが・・・凄いものだな。」


素直に感心した様にアルテシアはそう呟いた。


「だが、呼吸法が優れていようと魔獣は()れないし、ましてや私に傷を負わせる事など到底不可能だぞ?」

「・・・・・・」


事実なだけに顔を歪めるだけで何も言い返す事はしない桜火。


「ではオウカ、そろそろその剣の凄さ・・・」


腰に2本剣を差している事から勿論両利きなのだろう、アルテシアは左から右手に剣を持ち代えた。


そして彼女は先程までとは違い、この立会いで始めて構えを取った。


「・・私に教えてくれるのだろう?」

「もちろんだアルテシア。」


桜火は両手に持つ(やいば)の奥に彼女を見据え呼吸を静かに整える。


そして、その瞳には決意を新たに、自分の信じる力(信念)を貫く為、アルテシアへと立ち向かう。




   ◇◆◇◆◇◆◇




 時間は桜火とアルテシアが手合わせを始める少し前に遡る。


「それでオウカ、君の武器はその剣一本か?」

「ん? ああ、そうだよ。」


桜火は刀を鞘ごと脇から外し両手に持ってアルテシアに持って見せてやった。


「これは俺が唯一向うから持って来れた数少ない相棒だ。」


桜火の手に在る刀は刀身が70㎝~80㎝程は在ろうかと言うサイズの太刀(たち)だ。


「刀身が細くて反りが在るな、サーベル・・?

いや握りが少し違うか?」

「ああ、()は【朝露(あさつゆ)】って言うんだ。

俺の国の剣で、(かたな)って言うんだ。」

「カタナ? この辺りでは余り聞かない形の剣だな?

それに(めい)が入ってるのか!!

剣の形はサーベルに似てるけど、雰囲気はまるで違うんだな。

しかしその剣、鞘越しだがお前が持つには少し細くないか?」


銘が入って入る事に若干大げさに驚いている様な気がする。


「そうか? でも、もう長い間使ってるからな、こいつが一番しっくり来るんだよ。

それに、この刀は師匠から受け継いだモノだからな、あまり手放したくないんだ。」

「・・ほぉー、そうか。」


アルテシアは桜火の言葉を聞き少し考える顔になった。


「・・また・・師匠か。

さて、どうしたモノかな…。」

「何だよアルテシア? 俺の刀に何か文句でもあるのかよ?」


アルテシアの声は良く聞こえなかったが、彼女の表情に不満を見て取れて桜火が問い質す。


「まあ、私の考え過ぎなら笑って流してもらえば問題無いのだがな・・オウカ。

お前にはその剣、少し細すぎだろう?

もっと自分に合った武器を選んだ方が良いんじゃ無いか?」

「なっ!? 俺は今までこの(かたな)で技を磨いて来たんだっ!

今更他の武器なんか使える訳無いだろうッ!!」


桜火の思いのほか激しい言葉にアルテシアは眉を顰めた。


「逆だろう?

新しい土地で不安なのは分からなくも無いが・・・武器が弱くては使い手が幾ら強くなろうと限界は直ぐに来るぞ?

今の内から早く他の武器に慣れておかなければ、今なら丁度私が・・・」

「黙って聞いていれば、少し黙れよ鳥野郎!!」

「・・・なんだと?」


桜火の低く響く声がアルテシアの話を遮った。


先程からアルテシアの言葉を黙って聞いていた桜火だったが流石に我慢が出来なかった様だ。


まだ中身も見ていない内からの刀を批判され、ムカつきながらも聞き流していたが、先程の「弱い武器」発言に到り、とうとう桜火の逆鱗に触れてしまった様である。


「この(かたな)が弱い武器だぁ?

何も知らない奴が適当な事言ってんじゃあねぇぞ!?」


熱くなった桜火が口汚くアルテシアを罵る。


しかし、暴言を吐かれたアルテシアはそんな桜火の言葉を聞いても一瞬だけ目に力が入っただけで直ぐに冷静さを取り戻し桜火との会話を続けた。


「だがな、事実そんな細い武器では私の剣はともかく、リコッタの様な獣人族が使うクレイモア(大検)やバルディッシュ(三日月斧)の様な重量級の一撃には耐えられないだろう?」

「それはお前の剣も一緒だろう?

お前の剣の方が俺の(かたな)より少し大きいのかも知れないが、クレイモア何て大剣に比べればどちらも大して差はないだろうが!!」


桜火は感情を抑えて話そうとしている様だが、完全に失敗していた。

対するアルテシアは、桜火の罵声に取り乱す事無く、冷静に話を進めていく。


「私は鳥の獣耳族だからな。

お前達人族より身体は動く。が、大きな武器は私のスタイルに合わない。

武器が大きいと私の動きが阻害されるからな、これくらいのサイズの方が寧ろ丁度良い。

手にもしっくり来るしな。」


そう言ってアルテシアはゆっくりと腰に刺さった二本の剣の内の一本を抜いた。


桜火の目の前で軽く剣を振って見せるアルテシア。


その動きは、まるで演舞の様に洗練された動きの応酬で、一つ一つの技の切れに、桜火は魅せられた様にただ見入ってしまった。



  シュンシュンッ!!


「・・・・・」


アルテシアの演舞が終わった時、何時の間には桜火の直ぐ傍までやって来た彼女が穏やかな表情で桜火の目の前に刃を差し向けていた。


一方の桜火は気をやっていたせいで全く反応が出来ず、しかし先程の手前驚かない様最大限顔に出ない様に勤めていた。


「私はこの通り剣の腕にはそれなりだと自負している。問題は無い。

だが…君はまだまだこれからだろう?

歳も若そうだ、男なら体もこれから成長する。

ならば今の内に体に合った武器で技を磨いた方が身の為だと思うが?」


桜火にとっては、いっそ強引に強要された方が怒鳴り返せただろう。


そんな事を考えていた桜火は、未だ穏やかな表情を揺るがさない彼女の言葉に自分や他の仲間の事を思っての言葉だと気付きつつも、それに肯く訳にはいかなかった。


「断る。 俺はこの刀と技を師匠から受け継いだんだ。

・・もう師匠には会えないかも知れないが、師匠から受けた恩は忘れていない。

あの人から譲り受けた刀と技で、俺は自分の仲間とこの身を守るんだ。」


桜火の言葉と共に放たれる強い意志の籠もった眼差しから、決意程を汲み取ったアルテシアの顔から、さっきまで在った穏やかさがスーっと消えていった。


「それなら仕方ないな。

その武器が本当にお前に相応しいか私が見てやる。」


先程までの柔らかな表情は露と消えさり、その眼差しには彼女の強い意志の様なモノが表れていた。

そしてチラチラと見える口元の笑みに、サディスティックなモノが見え隠れする。


「はっ!! 望む所だな。

刃引きとは言え、俺も毎日の1m近い大太刀を振り回してるんだ。

真剣だからって唯の太刀ぐらい余裕で操って、お前にこの(かたな)の凄さって奴を見せ付けてやるよ。」

「それは楽しみだな。

その細い剣で私をどう納得させるのか・・、とても楽しみだ。」


そう言って二人は距離を取ってお互い剣を抜き放ち、手合わせを始めた。




  ◆◇◆◇◆◇◆




 ここは屋敷のサイネリア達『風の翼』の人達が使っている部屋が点在するフロア。

その一室の前に育兎は居た。


  コンコン! コンコン!


「アリアさん、いらっしゃいませんか?」


「すみませーん」と部屋の前で叫ぶ育兎が廊下に響く。

先日屋敷内を案内して貰った時に聞いたアリアさんの部屋の前に来てみた育兎だったか、部屋にアリアは居ない様だ。


「あれ? 部屋で休んでると思ったけど、違ったのかな?

他に居そうな所は…厨房で夕飯の支度? ・・には少し日が高いよね?

でもそこ位しか思いつかないし、取り合えず行きながら他も考えようかな。」


と、そんな感じでアリアの部屋から厨房へと向かう道の途中、宙に浮かぶ様に存在する木箱一杯に入った食材に出会った。


「う~ん、人が増えたから今在る在庫じゃあ明日まで持たない所だったわ。

あっ!このトマトやっぱり新鮮っ♪

他の野菜も美味しそうだし、今日あの子達にお買い物行かせて正解ね♪」


木箱のしたから鼻歌でも歌いそうな程弾んだ声を出しているのは丁度探していたアリアさんの様だ。


「あっ!?アリアさん今日は。

お買い物に行ってたんですか?」


育兎が声を掛けるとアリアは体を横へずらし野菜越しに育兎を確認する。


「あーイクト君、こんにちは。

うん、そうなの。」


そう言ってアリアは「にこっ」と、いい笑顔で答えてくれた。


「あ!?ボク持ちますよ!?」


そう言ってアリアの持つ木箱を「ひょい」っと持ち上げる。


アリアの背が低いので、丁度木箱が持ち上げ易い高さに在り力は然程要らなかった。


しかし…


「・・・これ、思ったより重いんですね?

ここまで持って来るの大変でしたでしょう?」


木箱は良くある中くらいのダンボール箱くらいのサイズが有り、そこに山盛りの食材が乗せられているせいで結構な重さになっていた。


「そうでも無いよ? 私こう見えてドワーフだからね!

それに屋敷までは私の人形が持って来てくれたから。」

「あ~そういう事ですか!

ぁっ!? おっと!ちょっと拙いな・・。

すみませんアリアさん、これ何処に持って行けば良いですか?」

「これから厨房へ持って行くんだよ。

あ!?でも、辛いならやっぱり私変わるよ?」


育兎の表情に少し辛そうな色を見てアリアは育兎へ声をかけた。


「あはは…何かすみません!?

でも、大丈夫ですよ。

自分から女の子の荷物持っておいてそんな情けない事したらかっこ悪過ぎるじゃあ無いですか?

それに、そんな事をしたって姉にバレたら、また技の実験台に使われちゃうんで、ここはボクの為に運ばせて下さい。」

「え!?」


やせ我慢なのは見え見えだったが、アリアは育兎のその反応が新鮮で楽しかった。


「あはははっ!! イクト君のお姉さんって、あの可愛いくて綺麗な感じの子だよね?

長い黒い髪を後ろで纏めた!?

大人しそうな子だと思ったけど、弟君にはそうでもないみたいね♪」


上機嫌に会話を続けるアリア。


「あははは・・・」と笑って、何とも言えない返事をする育兎。


「あぁ!? そうだったわね!

うふふ、久々に女の子扱いされて舞い上がっちゃった♪

それじゃあ、早く厨房へ向かいましょうか!」

「ええ、そうして頂けると・・・」

「はいはい、ちょっと長話し過ぎちゃったわね。

それじゃあ急ぎましょう。」


そう言うとアリアは育兎を先導して厨房へと歩き出した。




   ◇◆◇◆◇◆◇




 歩き出して少し経ち、厨房も近くなって来た所でアリアさんから質問が投げかけられた。


「そう言えばイクト君、今度リリットに魔術を習うんですってね?」

「ええ、そうなんです。

昨日少し話した時、どうしてだかボクが強くなるのを手伝ってくれるって言って貰えて。」

「へーあの子がねぇ~。

あの子のは魔術が中心で基本に忠実な生粋の魔術師だから、始めて魔術を習う彼方達には丁度良いかも知れないわね。」

「え!? そ・・そうなんですか?」


育兎の声のトーンが少し落ち込む。

育兎の微妙な変化を感じ取りアリアが顔だけを後ろへ向けて話しかけて来た。


「あ、あれ!? イクト君どうかしたの?」

「いえ、朝からボクの仲間と魔力感知の訓練をしてたんですが、仲間の二人は開始30分もしない内に会得したのに、ボクは未だに全く感触が掴めなくて・・・」


育兎は自分で話して先程の事を思い出したのか、先程より若干空気が重くなっている。


「それで、リリットは何て言ってたの?」

「それが、基本の魔力感知は自力で会得してからじゃないと魔術を教える事は出来ないと言われてしまったので、せっかくそんな凄い人に教わる機会が出来たって言うのに、俺は・・・」


だんだんと自分の世界へ入って行き声が小さくなる育兎。

最後の方は囁く様な感じになってしまいアリアには聞こえていない様だ。


「イクト君。 ねぇ、おーい、イクト君!!」


いつの間にか歩みを止めていた育兎に体事後ろを向いて呼びかけるアリア。


「あ!? はいっ、すみません!!」

「ふふ、大丈夫? やっぱり私が持つよぉ?」


慌てて返事をする育兎に笑って声をかけるアリア。


「ぁー・・あっははは、大丈夫です!

あと少しですし、最後までやらせて下さい。」

「そう? ・・あっ!?

ところで、リリットがイクト君をこっちに送った時、本当に他には何も言ってなかったの?」


育兎は少し痺れてきた腕を姿勢を動かす事で誤魔化している時に声を掛けられ、少し思い出すのに手間取っていた。


「え!? ぉ・・っとと!? あっ、そう言えば!?

ボクの趣味が料理だって言ったら、アリアさんに『初級魔術で料理を作りに来ました。』と言えって言われてるんでした。」

「あらあら! それじゃあこれから夕食の仕込みをするから、イクトも手伝ってね。

今日も美味しいご飯食べさせてあげるからね♪」


アリアは育兎と一緒に料理が出来る事が嬉しいのか、将又(はたまた)ただ単純に労働力の確保が嬉しいのか・・・


育兎はアリアの満面の笑顔で言われ、もう退路が無かった。


『せめて理由は前者で在って欲しいなぁ…。』


そんな事を考えながら木箱を持ち直す。


「あ・・はい!!

もちろんです、アリアさん。」


育兎は、今更一日三食の文化を説明する事も、ここには〝昼食〟を作りに来た事も、彼女の嬉しそうな笑顔を見た後には言い出し辛くなってしまった。


そして案の定、このまま野菜を届けた後は夕食の仕込みを手伝う事になるのだった。




   ◇◆◇◆◇◆◇



 厨房は屋敷の物だけあってとても広く、壁には保存食なども下がっていた。

火は薪を使っているようで、大量に積まれた薪が部屋の隅に置いてある。。


既に鍋が2、3個火にかけてあり、少しずつ湯気を立ち上らせている。


育兎は早速木箱を机の上に置き、山盛りの食材をアリアの指示を受けながら奥の部屋に保管していく。


「なんだかこの部屋ひんやりしてますね? 冷蔵室みたい。」

「あ~、冷蔵室ならそっちの扉の先に在る半地下だよ。 こっちは保冷室!

氷の魔術を使って部屋を冷やしてるのよ。」

「えっ!?

アリアさん今魔術使ってたんですか? 全然気付かなかった…。」


育兎が野菜を置きながら驚いていると、鍋の火を見ながらアリアさんが・・・


「えっ? …あぁー!?

違う違う、私は今魔術使って無いよ。」

「え? それじゃあ誰が魔術使ってるんですか?

ここには今ボク達しかいませんよね?」

「そうね~。

やっぱり今のイクト君に分からなかったかなぁ?」


お互い隣の部屋で姿が見えない事もあって、まるで幼い子供を見守る母親の様な声音でアリアが返事をするので、育兎は少しムスッとなっていた。


「もーなんなんですか?

はい、収納終わりましたよ。」


アリアは、育兎の言葉なの意に介さずにっこり笑って・・・


「本当? はーい、ご苦労様でした。

それじゃあ、さっそく夕食の手伝いでもしてもらおっかなぁ~♪」

「はぁ・・、まあ良いですけど。

それで、ボクは何をしますか?」

「それじゃあ、そこに有る野菜の皮を剥いて一口大に切ってもらって良いかしら。

後でこの鍋に入れるから。」


そう言ってアリアは木ベラで中身をかき回しているを指差す。


「ナイフはそこに立て掛けてあるから好きなの使ってね!」

「あ!? そうだアリアさん、ナイフなんですけど、自分の持ってるんでそれ使っても良いですか?」

「あれ!? そうなの?

でも、それなら自分の使って良いよ。

使い慣れたナイフの方が怪我もしないでしょう。」



アリアは笑顔で許可を出し、育兎は先程自室に取りに行った包丁を背中から取り出した。


包丁の刃渡りは、約20㎝程のシンプルな造りの牛刀だ。


料理好きが講じて何度も凛姉のご飯を作って上げてたら、ある日凛姉から日頃の感謝として現代の名工の手で作られたと言う、今まで使っていた文化包丁よりも、ちょっと良い包丁をプレゼントして貰ったのだ。


まあ、その後に御礼と称して仕込みの面倒な料理をリクエストされ、早速貰った包丁が活躍したのは想像に難くないと思う。


包丁には適当な布をグルグル巻きにして腰に差して持って来た。


布を取り、包丁を水で洗おうと瓶から木をくり貫いた桶に水を汲み、水に浸していると後ろから声が掛かって来た。


「何か珍しいナイフを持ってるんだね?」

「え!? ああ、これですか?」


洗い途中の牛刀をアリアに見易く目線にまで上げてやった。


「うわぁ~、見た事無いくらい綺麗なナイフね♪

見せて貰っても良い? わぁ・・本当に綺麗ねぇ・・。

イクトはこれを何処で手に入れたの?」

「ボクの・・故郷です。

運良く一緒に飛ばされて来たみたいで。」

「そうなの? それは良かったわね♪

それに、こんな切れ味の鋭そうなナイフが在るなら、獣とかも簡単に狩れそうだね!!

こんな立派なナイフ、王都でも珍しいんじゃあ無いかしら?」


ちょっと興奮気味のアリアに慌ててストップをかける育兎。


「あっ!? いえ。

このナイフは狩り用じゃあ無いので、獣とか狩る時にはそれ様の武器を買いますよ。」


その言葉を聞いて心底不思議そうに小首を傾げながらアリアが尋ねて来た。


「あら!? そうなの?」

「はい、それは牛刀と言って、多分狩りに使ったら普通に折れちゃいますから。」

「ギュウトウ?」

「あ!? こっちには包丁無いのかな?」

「ホウチョウ?」

「えーっとですね、ちょっと貸して貰って良いですか?」


一旦牛刀を返してもらう。


「こういった料理に使うナイフをボク達の国では包丁って言いまして、それでこの形の包丁を牛刀って言います。

本当は刃の形で色々な名前が在るんですが、今はちょっと省きますね。

とにかく、これは料理用のナイフなので狩りなんかに使ったら・・・少し見てて下さい。」


そう言って包丁を水平に少し掲げ刃の部分をグニグニと上下に曲げて見せる。


「こんな感じで野菜や動物の肉を切る事に特化させたナイフなので、少しでも硬い物、例えば骨とかに思いっきり強くぶつかったらポッキリ折れちゃうんですよ。」

「うわ~!! 確かにこの普通のナイフより断然っ薄いもんね。」


そしてもう一度包丁をアリアに包丁の柄を渡してあげる。


「うわぁ~!? うわ~!!」とまるで小さい子供の(見た目はともかく中身はボクの数倍生きているらしいし…)様に包丁を手にとって観察するアリア。


「料理に特化したナイフなんて、この辺りじゃあまず御目にかかれないわよ!!

イクト君は凄く若く見えるのに料理人だったのね♪」

「いえいえ、ボクは本当、趣味で作る程度ですよ。

専門でやっている人、特にこんなお屋敷で作ってるアリアに比べたら腕はたいした事はないです。」

「えぇ~、本当かなぁ~」


楽しそうな、アリアのニヤニヤともニコニコとも取れそうな笑顔。


育兎も料理の事で褒められて満更でもない様子。


「ねーイクト君。

少しだけこのナイフ、使わせて貰っても良いかな?

そのお仕事は私が代わるから?」


きっと無意識だろう。

ドワーフと言う種族特性を最大限に活かし、もじもじと上目使いなんて高等テクニックで責めてくるアリアに、育兎は即座に陥落。


「え・・ええ、もちろん良いですよ。

そうだ、野菜そこにある他のナイフ借りてボクも手伝いましょうか?」

「ありがとう。

でも大丈夫、イクト君には他にして欲しい事もあるし。

それにイクト君に切られちゃったら私が色々試せないし…」


そう言って、断固育兎の協力を拒否した。


その頑なさが、あからさま過ぎて、育兎には逆にアリアの意図が筒抜けになっているが、育兎はただ微笑ましい気持ちになるだけだった。


「それじゃあボクは何をしましょうか?」


育兎の包丁を片手に目をキラキラされているアリア。

育兎に聞かれ、漸く育兎の存在に気付いた様に驚く。


「え!? あぁ…うん、そうだったね。

イクトには鍋をかき回してももらうのと、火加減を見ててもらうわ。」

「ああ、それくらいだったら問題無いですよ。」

「うふふふっ、もう忘れてるわねイクト君!

あなたリリットから何て指示されて来たのかしら?」


包丁がそんなに嬉しかったのか、少し芝居がかったアリアが妙な雰囲気を醸し出し、ノリノリで育兎に指示を出す。


「え!? そりゃあ、『初級魔術で料理を作って来なさい。』って言われましたけど・・・」


育兎が少し自信なさげにそう告げると。


「そうだよ育兎君、初級魔術っ!

これから育兎君には魔術を使える様になってもらいま~す!!」

「え!? でもさっき訓練してた時、ボクは魔力感知を覚えられなくて魔術は・・」


育兎の声が段々と沈んでゆく。

そんな声を掻き消す様にアリアの明るい声が部屋に響く。


「大丈夫、これを使うから。」


そう言って取り出したのは今まで指にはめていた指輪を外し育兎へと差し出す。


「これを使いなさい、指輪型のワイドよ。

杖の代わりに触媒の役割りを果たしてくれるわ。」

「えぇっ! 指輪でも魔術が使えるんですか!?

それもこんな小さな指輪だ何て・・。 うわぁ、凄い指輪じゃないですかっ!!」


今度は育兎が子供の様に大興奮で指輪を眺めている。


「ふふん、そ、そうかな? この指輪作ったの、私なのよね。」

「えっ!? アリアさん指輪型のワイドなんて作れるんですか!!

見た目子供みたいなのに凄いですね!」

「子供みたいは余計よッッ!!!」


育兎が興奮の余り思わず余計な事まで口にしてしまい、案の定アリアを怒らせてしまった。


さっきまでのアリアさんなら、子供の姿で両腕を左右に振り下ろしたままプリプリ怒った処で、どうしても可愛らしさが勝ってしまったかも知れないが・・・。


今のアリアさんは、子供が怒りも露に包丁を片手に佇んでいる。


傍目から見ても、恐ろしすぎる状況だ。


「まったく、イクトはリリットから聞いていて通りの子だよね。・・・まあ良いか。

私こう見えてもう何百年も生きてるドワーフなのよ、だから手先はすっごく器用なの。」


何処がこう見えてなんだろう?

なんて、かなり失礼な事を考える育兎。


「まあ私は木工や彫金は得意なのよ。

それに、その指輪は私の可愛い人形達の為に私がずっと昔に考えた物だしね。」


そう言うとアリアの元にいつの間にか二人の影が佇んでいた。


一人は短髪の男性で、大きな体を跪かせ(こうべ)をアリアに下げている。

もう一人は女性で、長く綺麗な髪は背中まで覆い、男と同じくアリアに向かって跪いている。


二人共、体に獣の様な身体的特徴が無いので獣耳族(アルム)でも亜人族(アビス)でも無い様だ。


それに、二人の体は傷一つ無い綺麗な白い肌をしているから、人族(ヒューム)の使用人とかだろうか?


「いつも警護ありがとうね。 グレン、ソニア。」


アリアがそう言うと二人の男女が立ち上がり、面を上げ、コクンと一度肯いた。


二人の顔はとても綺麗で美しく、見る者を惹きつける何かを持っている。


しかしただ一点、二人は両目を深く閉ざしている。

顔を上げ、正面を向いても尚、瞳を開かないと言う事は、恐らく二人共・・・


「それじゃあイクト。 この子達は外で屋敷の警護を任せている私の可愛い子達だよ♪

【マリオネット・マジック(傀儡魔術)】って、もうリリットから聞いたかな?

【サモンス・マジック(召喚魔術)】と違って、契約とかしなくても下位の魔物や人形を自在に操る魔術なんだけど・・・。」

「マリオネットですか? って事は、その御二人はその魔術で出来た人形って事ですか?」


育兎が〝人〟だと思っていた二人は、実は人では無く、生き物でもかった様だ。


「う~ん、少し違うわね。 この魔術は飽く迄人形を魔術で動かしてるに過ぎないから。

人形は私が自分で作るか、用意しないとこの魔術は使えないのよ。」


アリアさんは魔術の事を少しだけ教えてくれた。


「それじゃあ、そこの御二人がアリアさんの人形って言うのは、アリアさんがこの二人を作ったんですか?」

「そういう事になるわね。

ちなみに、まだまだ外にも沢山居て、屋敷の外でここを警護してくれてるから。 屋敷の安全は保障するわよっ♪」


育兎にはまだそれがどれ程凄い事か知る由も無かったが、目の前に居る二人の人形から言葉にならない威圧感の様な物を感じ、恐ろしく感じつつも、頼もしく思う事にした。









「それと、さっきの指輪の話に戻るんだけどね。

杖型のワイドだと、杖を常時持っていないとこの子達を動かす事が出来なくて正直不便だったのよ。

依頼を受けて、冒険に出かけてる時は肌に離さず持っているんだけど・・・。

流石に日常生活で杖をいつも持ち歩くのは邪魔だったから、どうにか出来ないかって事で開発したのがこの指輪よ。」


そう言ってアリアは他の指に刺さっている指輪を育兎に見せる。


「既に基礎は在ったんんだけど、私はそれを研究・開発して指輪で指輪1個につき1体の人形を動かす事が可能になるまで進化したわ。

そして、その指輪はそれの劣化版。

人形は操れないけど、エレメンツマジックなら余裕で使えるよ。 イクトの訓練には丁度良いでしょう?」


そう言われて指輪をマジマジを見てしまう。


「あ!? でも私とイクトじゃあ指のサイズが違うかな?

ちょっと試してみて?」


言われて育兎は人差し指へと指輪を入れる。


指輪は第一関節で止まってしまった。

見た目的にも不恰好だ。


「あ…、少し小さいかも・・」

「あちゃ~、やっぱり駄目かしら? これが無理だと少し厄介なのよねぇ・・。

大人の(わたし)の指に合わせて作った指輪だけど、子供とは言え男の子には少し難しかったかな?」


自分の外見を無視したアリアの発言に育兎は何か言うべきか思案したが、そんな事より指輪をはめる事が先決だと思い、アリアの発言には触れなかった。


アリアが話してる間も中指、薬指と続いて、とうとう最後の小指に入れてみる事になった。


ここで駄目だともう後がなくなってしまう・・・そのプレッシャー育兎の心を覆ってゆく。


育兎は少し緊張した面持ちで右手に指輪を持ち、左の小指にゆっくりと入れてゆく。

第一関節を越え、直ぐに第二関節へと到達したその時・・・。


「ぬあ゛!? 第二関節が、ちょっと・・・」


小指の第一関節はスムーズに通ったが、二個目の第二関節で少してこずっていた。


「ふっん~~!?」

「イ、イクトー。

一応大切な物なんだからね!

そんなに乱暴に扱わないでよぉ?」


育兎は指輪を小指に入れる事に夢中でアリアの声は聞こえていない様だ。

中々通らず、右手にかなりの力を要れて押し込む育兎。すると…


 すぽっ!!


と、指輪が動き、右手が滑り滑ってしまった。


「あぁーーっ!?

イクト、私の指輪は大丈夫なの?」


慌てるアリアに育兎は。


「だ、大丈夫だよアリアさん。

ほら、これで魔術が使えるんだよね?」


育兎の小指にはまる指輪を見てアリアは。


「全然大丈夫じゃあ無いわよっ!!

それ一個作るのにすっごーーいお金と時間をかけてるんだからね!?

簡易版だからって乱暴に扱わないでもっと大切に扱ってよ!!」

「ごめんなさい、アリアさん。 でも、この指輪そんなに高い物だったの?

・・・さ、参考までにどの位するのか聞いても良い?」

「あの時は材料だけで1個約200万アースだったかしら? 最低金判が4枚は必要だったわね。」

「えぇ!? 指輪1個にその値段…。

しかもそれが材料費って事は、それからもっと掛かってるって事だよね。」

「まあ、魔術師の使うワイドは皆特殊な物が多いけど、これはその中でも特に特殊だからね。

お金が在っても材料が無かったら作れなかったりするから、必要な分を揃えるのにも結構時間が掛かるんだよ。」


そう言ってアリアは片手を上げ、そこに身に着けられた指輪を見せる。


「うわっ!? まさかそれ全部指輪型ワイドなの?」

「うふふふっ♪ さ~て、それはどうかしら・・ねぇ?」


と、今までの子供っぽい仕草とは少し雰囲気が違う、何故かその一言に育兎は言葉に表せない艶の様なものを感じさせた。


しかしそれも一瞬の事、次の瞬間にはまた先程までのアリアに戻っている。


「ところで、何をそんなに焦っているのか知らないけど、魔術なんてそんな余裕が無い状態で使っても上手く使いこなす事は出来ないわよ?」

「うぅ~、やっぱり魔術ってそう言うモノなんですか?

とにかく指輪を入れなきゃ、もう後が無いと思っちゃって・・・。」


育兎の言葉に納得と言った感じに肯くアリア。


「そうね、心の持ち様はとても大事なのよ。

精神的に安定している子の方が、同じ魔術を使うのでも、自在に操る事が出来るから。」


そんな話を聞いて緊張にますます顔を強張らせる育兎。


アリアが少し呆れた様に溜め息を吐く。


「はぁ~、だからイクト、力を入れ過ぎちゃ駄目なの?

大丈夫、その指輪でも杖と同じ様に魔術は使えるから!」

「えっと、さっきも言ったかも知れませんがボクまだ魔術は一度も使ってないんですよ。

杖を持って魔力感知の訓練をしただけで。」

「あれ!? そうだったの?」

「あぁ…はい。

それなのにここで行き成り魔術を使って来いってリリットに言われまして・・・。

杖はこのまま使うと大惨事に成ると言われてしまったので、このまま指輪で魔術使って暴発とかしないかが心配で・・・。」


育兎は不思議と今の自分の不安をアリアに話す事が出来ていた。

大人に余り頼って来なかった育兎は、もしかしたらアリアのこの何所から見ても子供な外見ながらも、不思議と頼りになりそうな雰囲気を持った彼女だから話せたのかも知れない。


「ワイドはね、タイプによって扱える魔力量が制限される様にリミッターが掛かっているんだよ。」


沈んだ声で話していた育兎の話を遮りアリアは語りだした。

その顔には不思議な雰囲気を含んだ微笑みを浮かべ、ある種の凛とした空気を醸し出していた。


「まずは長杖型のワイドは、知っての通り上級魔術まで唱える事が出来る、魔術師にとって最も基本的なワイドだよね。

そして短杖型のワイド、これは中級魔術まで唱える事が可能になってる。

しかも魔術の完成が長杖型より若干早いという事で、戦闘の多い職にいる魔術師が好んで使うわ。

そしてこの指輪型のワイドは、初級の魔術しか唱える事が出来ないけど、その代わり剣や槍といった武器との併用が可能な指輪よ。」

「・・・・」


アリアの笑顔に気圧された育兎は何も言えずに彼女の話に耳を傾けていた。


「まあ剣と併用出来るって言っても、指輪型を使うのは私みたいな特殊な魔術師ぐらいしか使わないんだけどね。」

「え!? どうしてですか?

剣と魔術の両方使えるのに!!」


話を聞きながら育兎が気を取戻していた様だ。


「あはははっ、それはまた今度ね。

今はイクト君の訓練とお料理の続きをしちゃいましょう♪」

「あっ!? ・・・そうです、よねぇ。

分かりました、お願いします。アリアさん!!」


「剣と魔術の併用」育兎にとって、とても魅力的に聞こえる内容だったが、自分の今の現状を思い出し、慌てて興奮を抑えて訓練へ戻った。


「はいはい、分かったよぉ。

でも理由は結構単純なんだけどね。

取りあえず、イクトの訓練が順調に進んだら教えてあげるから。訓練頑張ってね。」


アリアが苦笑しながらそう言ってくれた。


「あはははっ…。

すみません、ありがとうございます。」


『あーあ、慌てて気持ちを抑え様としたせいか、アリアさんに思いっきり落ち込んでるのがバレされちゃったな。

フォローされたのはちょっと恥ずかしいけど、知らない事を教えてくれるのは本当に助かるから、訓練頑張らないといけないな。』


単純に指輪を使って剣と魔術を両方使えば戦闘に有利なのでは?と考えていた育兎は、アリアの反応に少なからずの不安を感じつつも、今はリリットにも言われた様に魔術に集中して取り組む事にした。



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