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お花さんの幸せ

作者: ゆみゆみこっこ

オアシスから落ちて、枯れそうになっていた花を、大切そうに娘がオアシスに戻す姿を見て思いついたお話です。忙しさにかまけ、落ちた花をそのままにしていた自分に反省し、子供の純粋な心を表現したいと思って作りました。

「シクシク グスン」


小さな泣き声がしたような気がしました。


でも、部屋にはママしか居ないし、気のせいかな?


マミちゃんは気にせず、おままごとを続けることにしました。 


「クマさん、美味しいスープですよー。あたたかいうちに召し上がれ。」


マミちゃんはお人形のクマさんにスープを出してあげました。


「それから、焼きたてのパンもね。お水はここに置いておくわよ。」


マミちゃんは、いつもママがしてくれるように、クマさんに言いました。


「お水ほしい・・・」


さっきと同じ小さな声が、今度はさっきよりもはっきりと聞えました。


「クマさん?」


マミちゃんはびっくりしてクマさんをマジマジと見つめました。


でも、クマさんはピクリとも動きません。


ママは台所で忙しそうにしています。


「もう、枯れちゃいそう」


弱々しい声がまた聞えました。


マミちゃんは、恐る恐る声のした方に首を伸ばしてみました。


はっ!


一瞬ドキッとしました。


昨日、ピアノの発表会でもらった花束が花瓶に飾ってあり、とても綺麗に咲いていて

その下に、一輪のお花が落ちているではありませんか。


「あ、ごめんなさい!」


マミちゃんは思わず叫んで、お花のところに駆け寄りました。


「ママ、大変!お花が枯れちゃいそうだって!」


急いでママのところにお花を持っていきました。


「あらら、大変。花瓶に移すときに落ちたのかしら。でも、大丈夫よ。お水につければすぐに元気になるわよ。」


そう言って、コップに水を張って、その中にお花を入れてくれました。


30分くらいすると、少しクニャっとしていた茎がピンとなって、お花もみずみずしく蘇りました。


「うわあ、良かった。」


マミちゃんはとっても嬉しくなりました。


心なしか、お花さんも嬉しそうです。


元気になった一輪の花を自分の部屋の窓際に置いて、その日は寝ることにしました。


次の日、お友達が遊びに来ました。


カエデちゃんとヒナちゃんは、そのお花を見て大喜びでした。


「可愛いね」


「綺麗だね」


マミちゃんはそれを聞いて、とても嬉しくなりました。


カエデちゃんとヒナちゃんが、ベッドの近くでお人形ごっこをはじめたときのことです。


「グスン」


と、すすり泣くような声がしました。


びっくりしてお花を見ると、一瞬、ゆらりと動いたように思いました。


ジーっと見つめながら近づいて行くと、今度ははっきりと声がしました。


「嬉しいの」


え?


「喜んでもらえるのが、何より幸せ」


そういうと、声はしなくなりました。


不思議なお花は、しばらくして元気がなくなり、10日ほどたつと茶色くなり、しぼんでしまいました。


話しかけても、もう声は聞えないけど、ゴミ箱には捨てられなくて、マミちゃんはお庭に埋めてあげることにしました。


冬が過ぎて、春らしくなってきたある日のこと。


お花を埋めた土のところに、小さな芽が出ていることに気が付きました。


あの日見たように、ゆらりと嬉しそうに動いたような気がして、お水をあげることにしました。


芽はすくすくと育ち、マミちゃんが小学校に入学してしばらくすると綺麗なお花が咲きました。


あの日、床の上で枯れそうになっていたお花は、冬を超え大地から息吹き、沢山の茎を出し、沢山の花を咲かせ、生き続けているのでした。


マミちゃんは、毎年少しずつお庭で増やし、大人になる頃には、お庭がそのお花でいっぱいになっていました。



・・・桜が散って、新緑の空気が漂う、気持ちの良いある朝のことでした。


それは、マミちゃんが、お嫁に行く日の朝でもありました。


マミちゃんは、大事に大事にスコップでお花を掘り、植木鉢に移しました。



お花は、新しいお庭で、きっとまた沢山のお花を咲かせ、みんなを喜ばせてくれることでしょう。


お花さんは、それが何よりも幸せなことなのでした。






大人になっても、純粋な心を忘れてはいけませんね。。。

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