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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第八十八話 映画を見ます?


 泉都門学園には、たくさんの建物があります。

 寮だけでなく宿泊施設も結構あって、実は申請すれば泉都門の学生も泊まることができたりするのです。

 そんな中、いつもの仕事をしていた私は晃先輩の言葉に目を瞬かせることになったのです。


「陽向、映画見に行かないか?」


 えーと。何と答えたらいいのでしょうか。

「映画…ですか? どちらの映画館に?」

「あー。陽向ちゃんは泉都門のシネマホール知らなかったっけ?」

「しねまほーるって何ですか?」

「泉都門の敷地内に映画をみるところがあるんだよ」

 ぎょっとして私は生徒会役員が持っている泉都門の地図をみました。

「シネマホール………あ、ありました。えええ」

「昔、泉都門学園の寮生は敷地内から出ることを許されていなかった時があったらしくて、それの名残だね」

「色んなお店があるのは知ってましたけど。まさか映画館があるなんて…」

「学割で見られるし、特別室なら飲食可だし」

「特別室?」

「別に料金取られるけどね」

「普通の席は飲食不可になっている。それでもたまに持ち込む奴がいてな。その取り締まりは風紀委員がしている。そのツテで特別室の予約ができたんだ」

 なるほど、晃先輩は色んなところに顔がきくのですね。

「このところ忙しかったし、たまには息抜きも良いだろう。行かないか? 多少遅くなるだろうが、送っていくぞ」

 現在午後五時半です。六時まで仕事をする予定なので早くとも八時は越えますね。

「それはボクたちも行っていいのかな?」

 芹先輩がニヤニヤしながら言いました。

「特別室だからな。おまえ等全員入れるだろう」

 少し不機嫌になりながら晃先輩は眉を寄せましたが、私が承諾すると笑顔になりました。


「六時になったら迎えに来る。早めに終わらせて待っていろよ」

 晃先輩が生徒会室を出て行くと、にわかに皆さんの動きが早くなりました。

 私は生徒会のメールチェックを終えていたので、カップなどを片付けて洗ったりしました。

 後はホームページに載せる文章の二次チェックです。

 どれだけ見ても、何故か見逃すことがあって誤字脱字の注意が来たりします。

 こういうのは疲れているときにやると、余計に訳が分からなくなるので明日の朝に来てやろうと思っています。


「よし、これで終わりー」

 芹先輩がぐっと伸びをしていうと。

「俺も終わった」

 静先輩が肩を自分の手で押しながら立ち上がりました。

「完了」

 修斗先輩は、ほっと息をつき。

「終わりました」

 真由ちゃんが笑顔で言いました。

 後は貴雅先輩と真琴ですね。

「はぁ、終わった」

 真琴が言った時、六時まであともう少しでした。

 貴雅先輩は急いで立ち上がると書類を手にしてドアに手をかけました。

「先生に確認してくる」

 ドアが閉まる前に走っていく音が聞こえました。

 先輩、廊下は走ってはだめですよ。

 って、私が言えないですね。


 パタンとドアが閉じて、パソコンの電源を落とす音が響きました。


「しっかし、今年の体育祭は力が入ってると思わない?」


 芹先輩は提出された種類を見ながら笑います。

 体育祭は紅組と白組に分かれて競技をします。仮装して走る競技があったり部活別で走ったりするのですが、今年は初めて応援団が二組結成されて白と赤に分かれて応援合戦が行われることになったのだそうです。

 少ない男子だけどころか女子もいるそうで、楽しみです。

「まさか、結城がゴリ押ししてくるとは思わなかったけど」

 結城春音先輩は高等部三年の女子です。確か静先輩と同じクラスでした。

「生徒会だけじゃないことを知らしめてやるのだ! と言ってたな」

 だけじゃない…の意味がわかりませんが、何度も生徒会に来ては応援団の魅力などを力説していました。

「団員が集まったら…っていったら二組ふたくみできるくらい集めてきちゃったもんねぇ」

 結城先輩の行動力はすごいですね。


「応援団の衣装をしつらえるのに寄付を募ったら、一日で集まったらしいぞ」

 静先輩が笑いながら応援団の衣装の案が書かれたイラストを数枚見て言いました。

 両方の団長は色は違いますが、長ランと言われる裾が長い学ランです。ちなみに紅組が黒い長ラン、白組が白い長ランです。

 赤い学ランにしようかという話もあったそうですが、結城先輩の強い勧めで黒になりました。ただし、長い鉢巻は赤いのになります。


 

「た、ただいま。間に合ったかな」

 帰りも走ってきたらしい貴雅先輩が入ってきて、この話は終わりました。



 その後、数分で晃先輩が迎えに来て私たちはシネマホールに向かうことになったのですけれど。



 やっぱり車で行くんですね…。

 


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