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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第八十二話 やっぱり苦手です



「ひっ」

「お疲れさまです」

 とっても怖い顔なのに、優しい女性の声でした。

「と、特殊メイクですよね? スゴイデス」

「陽向、何で棒読みになってるの?」

 お面じゃなくて表情も口も動くんです。

 スゴイデスヨネ。

 ドキドキしながらスタンプ帳にスタンプを押してもらいます。

「もう少し行くと休憩所がありますから、頑張ってくださいね」

「は、はい」

 笑っているのかもしれませんが、口の端から牙が見えて怖いです。

 

「わ、和香」

「はいはい。手ね」

 和歌が苦笑して手を出してくれました。

 握ってもらって、次へと出発します。

 

 次に出会ったのは砂が入った壷を持った砂かけ婆です。

 えーと目が怖いですよ。ギラギラして見えます。

 砂はかけてきませんでしたが、ニタリと笑われると怖くて怖くて。

 本当に花時の生徒さんですよね? ね?


 ここまで来ると子泣き爺とか出てきそうで背中が怖かったのですが、前方から何故か輪入道。

 ご存知ですか? 輪入道。

 よく火車と間違われる妖怪です。

 大きな怖い顔の周りに火のついた車輪がぐるぐる回る…。

 ううう、暗い中で見ると作りものだって分かっても怖いんですってば。


 ぐるぐる回ってるんですってば!


「和歌ぁぁぁ」

「大丈夫、僕がいるから。ほら、もうちょっとで休憩所だよ」


 輪入道は特に何もせずに通り過ぎて行き、ようやく明るい場所へとでました。


 結局携帯のアプリは使えませんでしたね。怖くて。


「甘酒いかがですか」

 ホッとして椅子に座ったところで老婆の姿をした生徒さんが、怪しい笑顔でいいました。

 これ、確か答えちゃいけない妖怪さんでは…。


「僕は紅茶、それから陽向はオレンジジュースで」

「畏まりました。何か軽い食事はいかがですか」

「今はまだいいかな。次の休憩所あたりで食べるよ」

 老婆の姿をした生徒さんはお辞儀をして離れていきました。

 わ、わかってますよ。本物じゃないことぐらい。

 

「それにしても部室棟の方は日本の妖怪なんですね」

「うん、まぁ本校舎の方へ行くと、色々になるけどね」

「作り物だってわかってても怖いです」

「うん。陽向みたいなお客さんばかりだと、お化け屋敷も助かるね」

 大笑いしながら通る人もいるそうです。

 すごいですね。

 私には無理です。


「そんなに怖いかなぁ?」

「怖いです」

「この後もっと怖くなるよ? 提灯じゃなくてロウソクになるから」

「はぁ?」


 提灯と同じく本物ではないロウソクだそうですが、灯りが心もとないことにかわりはありません。


「懐中電灯とか無いんですか」

「うーん。どっちにするか意見が分かれたんだけどね。燭台が好きな子が強く押してさ」

「燭台?」

「うん。銀色の受け皿に取っ手が付いているんだ。その受け皿にロウソクが立っていて、取っ手を持って歩くタイプ。取ってと受け皿のところに装飾が施されていて素敵なんですとのことです」

「暗いのであまり見えないのでは?」

「ま、気分だよ気分。懐中電灯だと現実に近いしさ」

「その方が良かったです…」


 紅茶とオレンジジュースが運ばれてきて、テーブルに置く時に老婆さんはニタリと笑いました。

 怖い! 怖すぎます。

 明るいところなのに、怖いです。


「一宮さん、お疲れ様です」


 声がして振り返ると、天狗様がおりました。

「お疲れ様です。お客さんの反応はどう?」

「結構楽しんでもらえてるみたいです。悲鳴も聞こえますし」

「注意書きはしてるけど、立ち止まったり倒れたりしたらすぐに救護班呼んでね」

「はい。それでは」

「うん、僕らもそろそろ行こうか」

 天狗様は私に手を振って部室棟の方へ行ってしまいました。

「も、もう行くのですか? 心の準備が…」

「陽向の心の準備待ってたら日が暮れるよ。さ、行こう」

「ううう」


 

 もう帰りたいです。



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