第八十話 巨大お化け屋敷です?
会長の許可を得て、生徒会の制服で花時学園の文化祭に行くことになりました。
他校の文化祭もしくは学園祭に行くのは初めてなので少しドキドキします。
私のチケットではもう一人一緒に行くことができるのですが、残念ながら会長たちは他の学校の学園祭に呼ばれていて、それぞれ各高校へ行くのでこちらへは来れないとの事でした。
当日制服を着てバスで行こうと思ったのですが、花時から車のお迎えがきました。
特別招待らしく、恭しく迎えていただきました。
何となく慣れてしまっている自分が怖いです。
花時学園は白い壁で覆われた白亜の城と呼ばれている学園です。
泉都門のツタが絡まっている壁とは違って眩しいです。
玄関では和香が立って待っていました。
「いらっしゃい、陽向」
えーとそれは仮装でしょうか?
灰色の犬耳としっぽがついています。
「お招きありがとうございます。ところで和香、それは…」
「あぁ、これは狼男」
「はぁ…ハロウィンには早いですよ」
「今年の花時は、全校舎でホーンテッドマンションなんだ」
「ホーンテッドマンション?」
「うん。いわゆるお化け屋敷だね」
「なるほど」
「花時の生徒から教師まで全員仮装してるよ」
「それは楽しみですね」
「さ、まずは生徒会室へご案内しますよ、レディ」
手を差し出されたので、思わず乗せていまいました。
今日は天使の階段もないですから、大丈夫ですよね。
花時は靴で校内を歩けるそうで、床の掃除が大変そうだと思ったら、自動で廊下を掃除するロボットが数時間ごとに動いているのだとか。
ハイテクな時代ですね。
生徒会室へ行くまでに生徒とすれ違いましたが、みなさん凝った扮装をなさっています。
「和洋折衷なんですね」
「まぁ、どちらかに決めちゃうと同じのばっかりになるし」
生徒会室直前でぬりかべに出会ったときはさすがに驚きました。
中に二名入っているそうです。
「はい、到着」
和香がそういってドアをノックしました。
「どうぞ」
声が聞こえて和香がドアを開けます。
中へ入ると、人魚姫…もとい柳宮会長がおられました。
さすがに貝殻ではありませんでしたけど。
上半身は真珠のように輝く色の首元まで覆う服でピッタリと体にそっている上に、レースのような細かい刺繍がなされていて、内側の生地が肌色っぽいので素肌に着ているように見えます。
うん、ちょっとドキドキ。
ウロコは虹色に輝いていて、少し動いただけでもキラキラとしていました。
「えーと…それお化けですか?」
思わず尋ねてしまいましたよ。
「うふふ、こんにちは水崎さん」
「あ、すみません。こんにちは、今日はお招きありがとうございます」
「こちらこそ、来ていただけて嬉しいですわ。人魚はお化けではありませんけど、人間ではないので」
そういう括りですか。
ちなみに人魚姫は椅子に座っています。
となりに吸血鬼の里塚先輩が立っていました。
きっと里塚先輩が会長を運ぶんですよね?
私の視線に気づいた里塚先輩が、何を言いたいのか分かったらしく微笑んで横にある物を指さしました。
その先をたどって見てみれば、そこにあるのは輿。
ええ、そうです。
神輿のように担ぐ乗り物です。
人魚はこれに乗って移動されるようです。
そうですか…。
少々甘く考えていたようですね。
輿の横に、待機しているらしい男性が二人椅子に腰かけて苦笑していました。
「我が校に少数しかいない男性教諭です」
先生を担ぎ手に使うとは恐ろしや柳宮会長。
「一応コースがありますけれど、それぞれリタイヤできるところが各所にありますわ。部室棟の一階が入口です。そこから四階まで上がって渡り廊下を通り本校舎の四階から一階へと降りて行くようになっています」
地図を渡されて見てみると、確かにリタイヤする場所があちこちに記されていました。
「部室棟が日本の妖怪が主です。本校舎が和洋折衷ですわね」
「さきほど、ぬりかべに会いました」
「あら、そうでしたの。ぬりかべは正面からの圧力に弱いので、色々工夫がありますのよ」
柳宮会長が持っているファイルには、妖怪やモンスターなどの服、もしくは構造が描かれたものが入っていて、ぬりかべの構造を見せてくれました。
なるほど…と言いたいところですが、いまいち分からない構造ですね。
カーボンナノファイバーが使われているとか…。
「色んな妖怪やモンスターがいるから、その特質や名前を知ってもらうためにアプリがあるんだ。携帯をかざすと…ほら」
里塚先輩が携帯を柳宮会長にかざしました。
そうすると“人魚”と名前が出て、その後に説明が出ていました。
最近はどこでもアプリが使われるんですねぇ。
「もっとも、見れる余裕があれば…だけどね」
そ、そんなに怖いんですか?
ちょっと、勇気がいりそうです。
スマホのことですが、一応携帯と書いています。ご了承ください。