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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第七十八話 後夜祭です



「花時の会長さんが写真が欲しいと言っているそうです。静会長のところに連絡がいくと思います」

「あぁ、どこから聞いたのか他の奴らからもメールが来ていた」


 他の奴ら…というのは友好を結んでいる学校の生徒会の方ですよねきっと。


「断るか?」

「うーん。どうしても見たいなら理事長室へと言っておいてくださると嬉しいです」

 

 まさかそこまでは来ないでしょう。

 何て軽く考えていたのですけれど。


 後日、理事長室に…の面々が来るなんて想像もしていませんでした。


「わかった、そう言っておく。さて、そろそろここも撤収だな」

「はい」

「閉門になったら全員を呼んでおいてくれ」

 芹先輩が頷いて時計をみました。


 閉門まで後十五分。

 いよいよ学園祭が終わります。


 学園内に閉門のお知らせが流れ始めました。

 閉門してからが大変です。


 ギリギリまでいるお客さんもいるので、確認をするために風紀委員が走り回ります。


 某セキュリティシステムに近いものを使っているとかですが、そんなの学園で使ってもいいものなんでしょうか?

 閉門されてなお学園内にいるお客さんは、風紀委員によって生徒がいつも通る門まで案内します。

 それが終わったのが閉門から四十分後でした。


 ほとんどのクラスが片づけを半分ほど終えていて、指定されたゴミ置き場が山となっているのを見ました。


 生徒会も本部から撤収して生徒会室へと移動した後、各案内所へメールを送りました。


「何とか大きな事件もなく終わったな」

 ふうと息をついて静会長が椅子の背もたれに背中を預けて微笑みます。


「みんな、お疲れ様。少し休憩したら屋上へ行こうか」

 芹先輩が伸びをしながら言いました。

「屋上ですか? 何のために」

「生徒会の特権の一つだね。屋上から花火を見れるんだ」

 普段、屋上は立ち入り禁止となっています。

 生徒会でもめったなことでは上がれないのですが、今日は特別なんだそうです。


「屋上から見える花火綺麗だよ」

「ファイヤーストームはないんですね」

「うん、他の学校だとそういうのあるんだってね。うちの学園は花火が代わりなんだろうね」

 花火の方がだいぶ豪華だと思います。

「夏と違って早く日が暮れるし、六時前には終わっちゃうからね」

「あぁ、晩御飯の時間前にってことですか」

「そうそう。あと、後夜祭にはホールでオーケストラの演奏もあってね。こっちは参加自由なんだ。校歌を演奏してくれるんだけど、泣きそうになるんだよねー。なんでか」

「ホールの方へは行かなくても良いんですか? 生徒会って」

「後夜祭の準備はするけど、その後は全部先生方におまかせー。僕らは屋上で花火見物」

「それだけの仕事はしてるからな」

 学園で行われる行事のほとんどを生徒会が取り仕切ることで、特別待遇がされるんですね。

「先生たちが何もしないわけじゃないけど、ほとんどはこっちだからな。まぁ、そのおかげでやりたいようにはさせてもらってるが」

 静先輩が珍しく、ニヤリと笑いました。

「さて、そろそろ屋上へ行こうか。暗くなってきたし」

 貴雅先輩が言ったので、全員で屋上へと向かいました。

 時刻はもうすぐ五時半になるところでした。


 屋上へ上がるとまだ外に生徒がいるらしく、声が聞こえます。

 天窓が開けられているらしく、ホールの灯りが漏れていて開けられていたドアからオーケストラの校歌の最後の方が聞こえて緩やかに終わり、ホールの灯りがパッと消えた時でした。



 ドオオン。


 大きな花火が上がりました。


 続けて数発上がり、歓声が聞こえます。

 私はただ息を飲んで花火を見上げていました。


 忙しかった日々が思い出されて、泣きそうでした。


「お祭りの後って寂しくなるよね」

 隣に立っていた真琴の目が潤んでいるのが、花火の明りで見えます。

「うん」

 胸がきゅっと痛くなって、私は再び花火を見上げました。


 お祭りの終わりを告げる花火です。


 

 最後の花火が終わるまで、静かに私たちは空を見上げていました。 

 


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