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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第七十七話 もうすぐ学園祭も終わりです



 塩焼きそばを全員で食べた後、後夜祭の準備に入ります。


 泉都門学園の後夜祭は、暗くなった後に花火が上がるので、それまでに粗方の片づけを終えることになっています。

 次の日は振り替え休日となるため、前の二日より早めに門を閉めて片づけゴミだしをするのですが、ゴミの量が半端ないらしいです。

 資源ゴミをのぞいても、大変な量になるので、この日だけは特別な収集車が来るとのこと。

 焼却炉があるとはいえ、さすがにそれで賄える量ではないと聞きました。

 想像を遙かに越えますね。


 花火が上がるまでに片づけを終えたいので、ものすごいスピードで片づけられるのが見られると聞きました。

 中等部からの生徒がテキパキしているので外部生がオロオロしてしまうらしく、そのために一年生はリーダーが内部生になるようになっているのだそうです。 

 なるほど。

 内部生をひいきにしているわけではないのですね。

 二年生になると内部生も外部生も関係なくリーダーが決められるそうです。



 そんな話を聞きつつ、後夜祭の準備をしていると委員長からメールが届きました。

 「急」という字が件名にあったので、急いで電話をかけてみます。


「もしもし?」

[あ、水崎さん?]

「何かありました?」

[いや実は、例のパネルのことなんだけど。欲しいって人がたくさんいてさー。じゃんけんで決めてもいいかなあ?]

「…却下」

[えええ]


 ダメだって…と教室にいる生徒に言ったのでしょう。「そんなぁ」「えー?」と声があがっているのが小さく聞こえました。

 例のパネルとは織り姫彦星の、ほぼ等身大パネルのことですよね。


[捨てちゃうの!?]

「いえ、自宅に持って帰ります」

[あ、うう。それなら仕方ないか…]

「織り姫のパネルは真琴本人に聞いてください」

[わかりましたー]

「今、近くにいないので真琴の携帯にかけてくださいね」

[ラジャー、今日持って帰る?]

「はい、後で取りに行きますから」

[それじゃ、後で]

「はい」


 通話を切って、ポケットに入れるとまた携帯が震えたので再び取り出してみました。


「静会長?……もしもし?」


[陽向、本部にすぐ戻ってきてくれ]

「あ、はい。わかりました」


 何かあったのでしょうか。

 急いで本部に戻ると、パソコンを開いている会長と後ろから見ている芹先輩がいました。

「何かありましたか?」

「あ、おかえり陽向ちゃん。実は、例の絵のことで美術部からメールが来たんだけど」

「はい」

「あの絵。欲しいって人がたくさんきたらしくって、買い取るって言い出す人まででたんだって」

「はあ」

「今、修斗と貴雅先輩が展示室に行ってるんだけど。学校にも電話がかかってきてるし、どうしようか」

「はぁ…あれには和歌が一緒に描かれてますし、和歌にも聞いてみないと」

「うん。それでね。じつは理事長が理事長室に飾りたいって言ってるんだ」

「理事長室には他にも卒業生の絵が飾られているし、問題ないだろうということだ」

 泉都門学園敷地内の中央にある“天命棟”“宿命棟”“運命棟”という三つの扇形の棟がありまして、その一つに理事長先生がいる棟があります。

 そもそも何故中央に三つの棟があるのかも知らないのですが、理事長がどの棟にいるのかさえも知らないのです。

 晃先輩なら知っているのでしょうか。


「それが一番落ち着くんじゃないかと思ってるんだけど…良かったら和歌ちゃんにも聞いてくれる?」

「はい。今からかけてみます」

「忙しいけど、お願い」


 さっそくかけてみると、あっさりツーコールで出ました。


「もしもし、和香?」

[陽向? 今日はまだ学園祭じゃなかったけ]

「そうなんですが、ちょっと確認したいことがありまして」

[うん。何?]


 昨日からの話を和香に説明すると、何故か向こう側の空気が変わりました。シンとしていたのに、小さいながらも声がたくさんしたのです。

[あー…。はいはい、わかりましたけど会長。理事長室に飾られるみたいです。…はあ。うーん。いや……あ、ごめん陽向。えっと、僕の方はそれでいいよ。それでさ、実はうちの会長がその絵の写真で良いから欲しいって]

「あぁ、ネットで検索すると出てくるかもしれませんけど」

[画質がよくて大きめのが欲しい…そうです]

「……えーと。それは静会長に言ってみてください」

[……わかった]

「落ち着いたらまたかけますね」

[うん。それじゃまたね]

「はい、また」


 通話を切って静会長と芹先輩を見ると二人とも頷いて、会長がメールを打つ音が聞こえました。



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