第七十六話 ミスコンです
いよいよ始まるということで、私たちは舞台そでに案内してもらいました。
客席にはもう沢山の人がいましたので、特等席だよと銀音先輩が笑いながらウィンクしました。
「あとどれくらい見ていける?」
「えーとバスの時間があるので、十五分くらいでしょうか」
「そっか。最後まではいられないね」
結果はホームページに載るそうです。もちろん本人の承諾を得てから二日ほどだけみたいですけど。
「さて、行きますか」
銀音先輩はそういって段差の高い階段を上って舞台に上がりました。
キャーという黄色い悲鳴やざわめきが大きく聞こえました。
「こんにちは、司会の銀音です」
綺麗です銀音先輩!と客席から声があがりました。
「あはは、どうもありがとう。今日行われるミスコンは時間の都合上五名のエントリーで締め切らせていただきました。評判が良かったら来年も行われるかもしれませんので、アプリの下の方にあるボタンもよかったら押してください。五名全員が出てから投票開始となります」
最初にアプリの説明が行われました。
修斗先輩の紹介だという人が作ったものらしいです。
まだダウンロードしていない人のために、場所を教えたりしたあと、いよいよエントリーされた人が登場します。
「それではエントリーナンバー一番。ユキさん。どうぞ」
舞台上に現れたのは、何故か看護師の格好をした人でした。ピンク色の制服です。たれ目がちの目に泣きボクロがある美人さんでした。
「ユキさんはこの舞台の近くで救護班として待機しているところをお願いして参加してもらいました。一言どうぞ」
「お酒に弱いか強いかをみるパッチテストを隣でやってます。よかったら参加してくださいね」
「おっと宣伝ですか、ちなみにユキさんはどちらです?」
「私は、うふふ強いですよ」
「なるほど。それではゆっくりと回転してください、急ぐと目をまわしちゃうので、ゆっくりです」
「はーい」
くるりと回って、にっこりと微笑んだため客席の男性陣からうおーと声があがりました。
「ありがとうございます、一旦後ろのイスにお座りください。次へ参りましょう。それではエントリーナンバー二番。サヤカさん」
次に舞台にあがってきたのはパンツスーツの涼やかな美人さんです。ノンフレームのメガネをかけていて、キリリとしています。少し困ったような顔をしていました。
「ご友人に勝手にエントリーされちゃったサヤカさんです。ようこそ」
「ど、どうも…」
「スーツがとてもお似合いですが、どのようなご職業ですか? 良かったら教えてください」
「公務員です」
「なるほど。それでは一言どうぞ」
「えっ…ええと。ゆうこ、後で覚えておきなさいよ!」
叱られてーと男性陣から声があがって笑いが起きました。
ゆうこさんと言う方が勝手にエントリーした人なのでしょうね。
「はい、それではくるっと回ってください。ゆっくりと」
「回らないとだめですか?」
「お願いします」
銀音先輩ににっこり笑顔で言われてサヤカさんは渋々ぎこちなく回りました。また男性陣からうおーと声があがります。
「はい、ありがとうございます。後ろの席へどうぞ。それでは次へ参りましょう。エントリーナンバー三番、チーさん」
舞台上に現れた人は、胸元が大胆に開いた赤い服の上に白衣を着た、色気たっぷり胸元のボリュームもたっぷりの美人さんでした。
「チーさんは実は大学部の教授であらせられます。どこの…というのは言えないことになっておりますが、興味のある方は泉都門大学部のホームページをごらんください。教授、ようこそ」
教授と呼ばれた女性は、ちらりと銀音先輩をみると、ふふんと鼻で笑いました。
「おまえにそんな趣味があったとは知らなかった」
「えーと趣味ってわけでないですよ、さささ、一言どうぞ」
「私も酒は強いぞ」
「…パッチテストはいらないようですね、回転お願いします」
ヒールがある靴を履いていたのですが、ダンスをしているかのように優雅に回転しました。
おおおと観客から声が漏れます。
「ありがとうございます、後ろの席へどうぞ」
イスに座ると、先の二人とは違って脚と腕を組んでいます。何だかスゴい教授ですね。後でホームページで探してみたいと思います。
「陽向、そろそろ行かないと」
真琴がそう言ったので、腕時計をみました。
「あ、本当」
バスの時間が迫っていました。
もう少し見ていたかったのですが、仕方ないですね。
臨時バス停まで少し歩くので、私たちはスタッフの方々に挨拶をしてからミスコンの舞台を離れました。