第八話 カフェでの時間は楽しいです
「あぁ、それは三年の書記。東雲貴雅だね。腕を折れそうっていう陽向が持ったイメージも凄いけど…」
現生徒会に三年生は二人しかいないらしいです。
それならば確かに、その人なのでしょう。
女子と何処に一緒にいた…という事は言わずに説明すると真琴が教えてくれました。
真由ちゃんが私をちらっと見て、視線を抹茶ラテに移してしまいます。
何か言いたいことがあるのでしょうか?
今度の新入生歓迎会楽しみですね」
と話しかけてみたら、コクンと頷いてはくれましたが視線はそのままでした。
「真琴と真由ちゃんは、部活に入るの?」
「ぼくは入る予定はないよ。真由も無いよね?」
真由ちゃんはコクンと頷きます。
「歓迎会で入りたい部活とかできるかもよ?」
紅茶を飲んでカップを置くと、真琴のキョトンとした顔が目に入りました。
「何で?」
「何でって。歓迎会って部活の紹介したりするものじゃないの?」
「他の学校は知らないけど、泉都門学園の新入生歓迎会は立食パーティだよ?」
部活に入ることが必須ではないので、そういう事はしないらしいです。
その代りに泉都門学園のホームページにそれぞれの部活のページがあって、そちらで紹介が行われていると教えてもらいました。
予約をしないと見学できない部活もあるとか…。
帰ったら一応見てみようと思います。
「立食パーティって…制服で良いの?」
「どんなパーティを想像してるのさ。学生が出席するんだから制服だよ」
真琴は愉快そうに言いました。
ホッとして紅茶を飲み干すと、真由ちゃんが何かを言ったのが掠れて聞こえました。
「え?」
「何、真由?」
真琴にも聞こえなかったのか、聞き返しています。
「あの……がぃ……る………ろい……‥だめ?」
「ん? 三人でってことかい?」
私にはわかりませんでしたが、真琴はさすがに二回目のは聞こえたようです。
真由ちゃんがコクンと頷くと真琴はとっても綺麗な笑顔を浮かべました。
「あのね、真由が歓迎会で三人お揃いの何かをつけて出たいんだって。構わないかな?」
僕は髪が短いからリボンは無理だけど…と言って真琴は嬉しそうに笑います。
「もちろん! 嬉しいよ真由ちゃん! そうね…ヘアピンなんてどう?」
リングやネックレスは校則違反になります。
こっそりしている人はいますけど。
「今度の日曜日に探しに行こうよ。昼間なら親御さんの許可下りるよね?」
「うん、大丈夫だと思う。寮は大丈夫?」
「門限まで帰ればいいし、送り迎えの車を呼ぶから大丈夫だよ」
「車?」
「当日迎えに行った方がいい? それとも学校に来る?」
車でお出かけは決定らしいです。
あぁそういえば悟さんが、安全のために寮生は生徒だけで出かけてはいけないという規則があるってことを言っていたような気がします。
「学園敷地内にあるお店でも良いけど、他の子と被っちゃうかもしれないし
」
「自転車ですぐのところだから、学園に来るよ」
お出かけの約束をして、今日はそこで別れました。
自転車専用の門を抜けて私はワクワクしながら帰途につきました。