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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第六十九話 学園祭一日目です。



 十一時きっかり。

 事前に通達された通り開門されました。


 大きな混乱もなく、スムーズにお客さんが入ってくる中、私たちは生徒会本部にて待機中です。

 本部は生徒会室ではなく学園の大通りに面した教室なのです。

 一階で職員玄関が近いのですぐ外に出れるという利点があります。


 窓を開けるといつもより賑やかで、良い匂いが漂ってきました。

「明日が一番来場者が多い日だから、今日のうちに見ておきたいところは行った方が良いよ」

 芹先輩が差し入れのお菓子を食べながら言いました。

「最終日でなくですか?」

「最終日は早い時間に終わっちゃって、後は学生の後夜祭だからね。あ、そういえばミスコンは最終日みたいだよ」 

 日程表に書かれた時間は、最終日だけ一時間早く終わっています。

「一応僕らの休憩はそれぞれ三十分になってるけど、何か起きたら呼び出される可能性もあるから、携帯は持っていってね」

「はい」

 実は生徒会の休憩時間は三十分なのですが、あちこちから呼び出しがあったり、指定時間に呼ばれていたりするので他の方よりは見回れる時間があったりするのです。

 それでも「ずるい」と声があがらないのは、学園祭までの生徒会の仕事がハンパない…からなのでした。

 何しろ学園祭が終われば体育祭の仕事もあります。

 試験中も仕事があるのを皆さん知っていますし、あちこち移動している私たちを見ているので文句もでないというわけです。

 私は後三十分ほどで中等部へ行くことになっています。

 

「中等部の生徒会にこれ差し入れね」

 おじゅうが用意されていました。

 実はこれが毎年の恒例だそうで、大学部から高等部へ高等部から中等部へ差し入れをするのだそうです。

「重いから、修斗に持たせてね。それから、中等部の生徒会から最近おかしなメールが届くから注意しといて」

「おかしなメール?」

「うん、件名なしは…まぁ良いとして。二文字とか三文字とかで届くんだよ」

「はぁ」

「何度も問い合わせしたんだけど。どうなっているのか聞いてきてね」

「わかりました」

 自分のクラスへ行っていた修斗先輩が戻ってきて、私たちは中等部へと行くために車に乗ったのでした。

 

 はい、バスじゃありませんよ。

 バスが通らない道を通って中等部へ向かうのです。

 修斗先輩に風呂敷に包まれたお重を持ってもらい、中等部生徒会本部へと行くと、何やら慌てている様子でした。

「どうしました?」

「あっ! 更科先輩水崎先輩おはようございます」

「おはようございます」

「おはよう」

 奥で白縁のメガネをかけた中等部生徒会長が、何故かうなだれて座っているのが見えます。

「何かあったんですか?」

「さわるなって言ったのにパソコンにさわったんです」

「はい?」

「機械音痴なんですよ、あいつ」

 副会長が深いため息をつきました。

「何でかなあ。他のことは何でも得意なのに機械使えないって…」

「もしかして、例のメール生徒会長でしたか」

「あっ、すみません。これからは僕らがきちんと送りますので安心してください」

 こちらの会話が聞こえているのか、生徒会長は泣きそうになっているようでした。

「生徒会長なんだから、どっしり座ってくれてればいんですよ。僕らが動けば良いんだから」

 普段から交流があるので、周りの生徒が優秀なのは知っていました。でも生徒会長が機械音痴なのは初めて知りましたね。

 携帯電話もシンプルなのしか使えないそうですよ。

「おはようございます」

 うなだれながらも私たちに挨拶してきました。

「おはようございます、これ差し入れです」

「ありがとうございます」

 修斗先輩からお重を受け取って、頭を下げました。

「お前、しゃきっとしろよ」

 副会長がわき腹をつつきます。

「ええと、蝶ヶ原君。やるべきことは沢山ありますよ、しっかりしてくださいね」

「う…。は、はい」

 ちょっとお姉さんぶってみました。

 人様に説けるほど人生経験もないですが、今日一日うなだれていられても困ります。

「三日間お互いがんばりましょう」

「はい!」

 少し、はにかんで蝶ヶ原君は笑ってくれました。

「山影君。そのパソコンがなくても大丈夫ですか?」

 山影君が中等部副会長です。

「今、生徒会室から別なのを持ってきてもらっているところなんです」

「そうですか、困った事があったら私たちに連絡くださいね」

「ありがとうございます」


 パソコンの事以外は、それほど大きな事もなく大丈夫なようですね。ほっとしました。

 あまり長居しても迷惑をかけてしまうので、中等部生徒会に見送られて修斗先輩と高等部へと戻りました。



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