第六十六話 学園祭間近です
学園の門に学園祭用の飾りがされて、各教室が日々賑やかになってきました。
学園祭用のホームページもカウンターが結構な数が回っていますし、来場者も相当数見込めそうです。
高等部一年一組は星空カフェと銘打って、暗くした店内で星の形や星座のクッキーや、パンケーキに星形に抜いたバナナを添えて紅茶と共に出すことになりました。お皿がダークブルーでそこにホワイトチョコで星を描くのだとか。真っ暗だと足下が危ないですし、料理が見えなくなってしまうのでどれくらい暗くするのかという点が難しかったのです。結局足下に灯りを置くことになりました。
生徒会の仕事がある私と真琴は、お店の方を手伝えないのですが、休憩の時に当日用意される服を着て回って欲しいといわれました。それくらいなら簡単ですから、真琴と私は了承しましたよ。
生徒会室に入ると、何故かすでに晃先輩が来ていてソファに横になっていました。
私たちの後ろから入ってきた芹先輩が、人指し指を唇に当てて「しーっ」とウィンクしながら言います。
「どうしたんですか」
小声で聞くと風紀委員がしている仕事を教えてもらったのです。
「掲示板のチェックですか」
「一昨年にイタズラ予告とかあったし。その次の年から、そういうのは書き込めないようにしたけどね。掻い潜る人がいるからリアルタイムで見てるんだって」
「大変ですね…」
「夜中でも見つけたら報告するように言っているらしくて。睡眠不足らしいよ。先生たちも気をつけてはいるみたいだけど、先生たちは先生たちで色々忙しいからね。外部の人も雇っているみたいだけど、人数が限られてるから、風紀委員も交代で参加してるみたい」
丁度、晃先輩の携帯がブルブル震えて、ビクッと反応した先輩が飛び起きて電話に出ました。
「俺…さまだ。あぁ…わかった、向こうに転送してくれ」
通話を切ると、バタッとソファに横になりました。
珍しく呻いています。
「さて、仕事始めようか」
「良いんですか?」
「このままボーッと見てるわけにもいかないし。ここでボクらが仕事することはわかってるんだから」
それぞれの机に着いて、仕事を始めました。
私の今日の仕事は、まず生徒会に届いたメールのチェックです。それぞれ役員別に分けて転送します。
問い合わせの場合は先輩たちに聞いてから返信です。
カチャカチャと音がする中、晃先輩は相当疲れているのか、ぐっすりと眠っていました。
その時また携帯が震えて、晃先輩が飛び起きました。
その様子に、丁度入ってきた静先輩と貴雅先輩が驚いて固まっていましたね。
「なんだ……あぁ。ああ…ああ? このくそ忙しい時に何であいつがくる! ああ? もう通った!? ちっ」
一旦通話を切って何処かへかけ直していましたが、その相手がでないのか生徒会室を飛び出して行きました。
「何だ? 何があったんだ?」
静先輩に聞かれましたが、私たちもさっぱりわかりません。
首を傾げながら今まさに静先輩が席につこうとしたときでした。
生徒会室ドアのノッカーの音がしました。
一番近くにいた私がのぞき穴をのぞくと、見覚えのある人が立っているのが見えました。
「誰だ?」
「えーと。あの」
本当にハリセンを常備したいくらいです。
何でそんな格好で高等部に来るんですか。
「チャイナ服の銀音先輩です」
「は?」
「…目立つから、ともかく入れて」
芹先輩が頭痛の時のようにこめかみを押して言いました。
「はい」
ドアを開けると、滑らかに入ってきてにっこり微笑む銀音先輩。
今日はブルーのチャイナ服でした。前回のドラゴンではなく、蝶々が舞っているチャイナ服です。
「こんにちは」
足音がしないと思ったら布製の靴を履いています。
「今日はハイヒールじゃないんですね」
「うん。さすがに怒られてね」
「ハイヒールだけ?」
「そう、ハイヒールだけ」
「チャイナ服は?」
「別に怒られなかったよ?」
大丈夫でしょうか、泉都門学園。
そこはきちんと怒っておくところじゃないですか?
銀音先輩を知らない方は、「私は急に止まれない。小話」へ、レッツゴー!
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