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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第七話 後悔先に立たずです



「ボタンレスの学ラン? えっ、陽向(ひなた)。生徒会役員と会ったの?」



「生徒会!?」

「うん、生徒会に入った生徒はぼくらが来ている制服とは違う制服を着るんだ。金のラインってことは三年生だろ。髪が短いっていうなら、それは間違いなく生徒会長だ。如月 静(きさらぎしずか)

 一番会ってはいけない人に会ってしまったようです。

「独りでいたなんて珍しいな。怪我がなくて良かったね」

「うん、歩きながら桜を見るのはやめにする」

 特に話しかけられたわけでもないので、まだセーフでしょう。

 これ以上関わらないようにがんばります。


「今日もカフェによって行こうよ。向こうのよりは小振りだけど、桜見れるし」

「そろそろ散っちゃいそうだもんね。いいよ」

 今日は晩御飯の当番ではないので大丈夫です。 

 念のため友達とカフェに寄る旨をメールで父に送っておきましょう。


 そういえば中庭の桜を真琴と真由ちゃんと3人で撮った写真を中学時代の友人に送ったところ、真由ちゃんに食い付きました。桜を見てほしかったのですけれど。


「日直の仕事がまだあるから、真由ちゃんと先に行ってて」

「分かった」

 真琴が笑って手を振りながら教室を出て行きました。

 日誌に今日の出来事を書いて西福先生に届けた後、チョークを補充しておこうと備品室へ向かいます。

 チョークや黒板消しなどが置いてあるところです。

 各階にありますので一年生がいる三階から一階まで移動しなくていいので助かります。

 中学校の備品室は一階にあったので、とても面倒でした。

 備品室ですから、特にノックの必要も感じずに勢いよく開けました。

 普通そうですよね? 誰かが居る時は大抵ドアが開けっぱなしにされていることが多い場所ですから。


 そして。



 固まりました。



 備品室で抱き合っている男女がいたからです。

 制服からして女子が一年生で男子が三年生です。

 私は脱力しそうになりましたが、何事もなかったように中へ入ります。

「チョークを取りに来ただけですから、そのままどうぞ」

 とは言いましたものの。

 見られた方はそうはいきませんよね。

 二人はしばらく動けないようでしたが、女子の方が慌てて備品室を出て行きました。

 そして女子が離れたために男子の制服が見えました。


 ボタンレスの学ラン…。


 ハッとして顔をみましたが、生徒会長ではありませんでした。

 ですが、これまた見目麗しい男子です。

 生徒会長はガッシリしたイメージでしたが、かの男子は線が細くて私でも力を込めればポキリと腕を折れるのではないかと思えました。

 ええ。見た目での判断ですから中身は知りませんよ?

 私の方を探るような眼で見ています。

 男前の真琴よりも髪が長かったのが印象的でした。


 何でしょう。

 生徒会には美形しか入れない条件でもあるのでしょうか。

 他の生徒会の方が普通の容姿であることを祈りつつ、どちらにせよこれ以上会わないように努力をする決意をたった今決めました!

 視線を外してから、そんなことをつらつら考えつつチョークをケースに入れます。


「お邪魔しました」


 速やかに備品室を出ようとしたところ、いきなり腕を取られました。

 チョークなんてほっといて帰れば良かったと後悔したのはいうまでもないでしょう。

 びっくりして危くチョークを落としそうになりましたが、取られた腕がチョークを持っていたのとは逆だったのでなんとか事無きを得ました。

 これはチョークを放り出して身の安全を図った方が良いかどうか考えた時に、ぐいっと引き寄せられました。

 顔が間近に迫って、これは危険だとチョークを放り投げようとしたときです。



「誰にも言わないでくれる?」



 甘い声で耳元で囁かれました。


 はい。


 ぞわわわわと寒気がしました。


 パニックになりそうな気持ちを何とか冷静に保ちつつ、私はその先輩を睨みつけます。

「離してください。こんなこと話したら女子の方に傷が付きますから、誰にも言いませんよ」

 あなたのためでは無いと言うことをハッキリ言って、私は掴まれた腕を振りました。

 引き寄せられた後は軽く握られていただけなので、なんとか拘束は解かれます。

「僕の事だけいえば良いんじゃないの?」

 訝しげに言うので、私は呆れました。

「女子の情報力を舐めないでくださいね。捜されて、嫌がらせされる確率高いですよ」

 目の前の先輩は、それだけの容姿を持っています。

 人の口には戸は立てられないと言いますし。

 恋に狂った女子を沢山見て来た私としましては、その恐ろしさを知っていますので、そもそも誰にも話すつもりはありません。

 というかこのままだと私も危険です。

 ドアを開けた時に、そのまま逃げだせば良かったのかなと今さら思っても遅いですね。

 これ以上関わり合いたくないので、さっと備品室のドアを開けて外にでました。


「失礼します」


 廊下に誰もいなかったので、私は教室へと全速力で走りました。

 後ろを振り返る余裕はなかったのですが、足音は聞こえませんでしたので追いかけて来なかったようです。

 これ以上生徒会役員に会わないためにはどういう努力をしたらいいのかと悩みながら、教室に入ってチョークを補充した後カバンを引っ掴んで逃げるようにカフェへと向かいました。



 この時からしばらくの間、私は誰もいないのにドアをノックをするという行為をして、同級生に不思議な顔をされるのですが、危険を回避するためでしたから不思議ちゃんに認定されても甘んじて受けいれました。



 それに返事が返ってきたこともありましたか・ら・ね。





同じ高等部内にいるので、まったく会わないのは無理ですよ陽向(ひなた)さん

10/07に一部東雲の一人称を変更しました

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