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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第六十三話 糖分ください

21日午前11時半頃~22日午前4時頃まで、サーバー障害によりweb拍手のサービスが停止していました。とのことでした。

押してくださった方、コメントをくださった方。大変申し訳ありません。

 学園祭も間近に迫った頃。

 

 そういえば最近例の先輩が来ないなと思いました。

 まぁ大抵行く手を阻まれたりするので、その方がいいのですが。

 今日は貴雅先輩と走り回り、へとへとになって生徒会室に戻ってきました。

「おつかれー。ドーナツあるよ食べる?」

「あ、甘いものー!」

 芹先輩にもらって私は半泣き状態でドーナツを食べました。

 貴雅先輩は笑いながら向かい側に座っています。


 現在土曜日の午後三時なのですが、お昼ご飯をゆっくり食べられないためにオニギリ一つしか食べられず、お腹がグーグーなって大変だったのですよ。

「少し時間あるから、何か食べてきたら? ドーナツだけじゃ足りないでしょう」

 確かにお腹はまだ主張を続けています。

「カフェに行ってきます」

 この時間だと学食は夕食の仕込みのため、デザート系しか買えません。カフェなら軽食もあるので、何とかなるでしょう。

「あ、それならクラブサンド買ってきてくれる? 人数分。遅くなっても構わないから」

「わかりました」

「はい、これ」

 生徒会専用のチャージ式カードです。

 それを芹先輩から受け取って生徒会室を出ました。 カフェに行くとそこそこお客さんがいて、人数分のクラブサンドを作ってもらうには少し時間がかかりそうでした。

 私はホットサンド(ベーコンチーズ)と紅茶を頼んで席に座っていると、晃先輩がこちらへやってきました。

 周りの女子がそわそわし出してします。

「今頃、昼飯か?」

「一応そんな感じです。晃先輩は?」

「生徒会室に行ったら、こっちに来たと聞いたんでな」

 私と同じテーブルの向かいの席に座って溜息をつきました。

「晃先輩の分も買ってありますよ、クラブサンド」

「そうか」

 晃先輩はもう一度溜息をつきました。

「お疲れのご様子で」

「あぁ。疲れた。学園祭が近づくと浮ついた空気になるからな。学園祭前日になると徹夜組もいるから、今から頭が痛い」

「風紀委員って大変ですね」

「生徒会には負けるけどな。俺たちは忙しい分、それだけの人数がいる」

 私は運ばれてきたホットサンドにかぶりつきました。

「うまそうだなそれ」

「あげませんよ」

「一口よこせ」

「前に、一口だって言って90%くらい一気に食べたじゃないですか! 残りは静先輩が食べちゃいましたし」

「千切ればいいじゃないか、一口」

「いやです。クラブサンドができるまで我慢してください」

「待てない。よこせ」

「だめです。もれなく紅茶もよこせっていうじゃないですか」

「よくわかってるじゃないか」

「私だって学習します。ちょっ、ダメですってば」

 二つあったホットサンドのうち、私がかぶりついていないほう…つまりお皿にあった方を晃先輩は勝手に取って千切るどころか一気に口に押し込みました。

「あー!」

 チーズが熱かったのか、しばらく悶絶していましたがようやく飲み込んで、晃先輩はニヤリと笑います。

「ごちそうさん」

「私のご飯ーーー!」

 何とか紅茶は死守しましたが、にやにや笑いながら晃先輩は満足そうに脚を組みました。

「購買でチョコレート買ってやるから、我慢しろ」

「くぅぅ」

 こうなったら一番高いチョコレートを買ってもらいますからね!!

 私がホットサンドの残りを食べようと口を開けた時、走りよってくる人がいました。

 血相を変えていて、私がいたテーブルの前で立ち止まりました。

「あ、あなた。静様がいながら、他の男性とイチャイチャするなんて、ひどすぎますわ!」

 イチャイチャってどこをどう見たらそう見えるんですか?

 私はやっと食べれたご飯を半分取られたのですよ?

「あの、何か誤解をしているのでは…」

「誤解!? 誤解ですって!? どうみたってイチャイチャしてたじゃありませんか」

 晃先輩が私が呆然としている間に紅茶を飲んでいます。

「のどが渇いた。っていうか、こいつか」

「あっ、晃先輩!」

 後ろ姿しか見ていなかったのでしょう、二年生の先輩は私の言葉と振り返った晃先輩の顔をみて驚愕に固まりました。

「なっ、ナンバーツーまで手玉に取っているのですか、あなたは!」

 ナンバーツーって何ですか?

 視線で晃先輩に問うと、首を傾げました。

「よくわからんが、二年の辛田だよな? 前から話があったんだ、まぁ座れよ」

「和泉様と同じ席に座るなんてできませんー!」

 両手で顔を覆って走って逃げてしまいました。

 前が見えないと危ないのではないでしょうか?

 晃先輩は特に追いかけるでもなく、紅茶を飲み干してしまいました。

「あー、紅茶まで!」

「明日昼飯の差し入れしてやるから、な?」

「むううう」

「陽向が好きだっていう、いなり寿司にしてやろう」

「し、仕方ないですね」

「よしよし。それじゃ、クラブサンドもできあがったみたいだから、生徒会室に戻るか」

「え? あ、はい」

 八人分のクラブサンドです。結構かさばるのですが、ほとんど晃先輩が持ってくれました。

 もしかして、これのために来てくれたのでしょうか。


 帰り道、購買で約束通りチョコレートを買ってもらいました。

 薔薇の形をしたチョコで、ピンク・ブラウン・グリーン・ホワイトと色とりどりなのです。

「有り難うございます、晃先輩」

 ほくほくして笑顔で言うと頭を撫でられました。

 見上げると優しく微笑んだ晃先輩の顔があって、何だかとても特をしたような気がしました。

「この後もがんばれよ」

「はい、ありがとうございます」

「ほら、これもやる」

 晃先輩が私にくれたのは…。

「こ、これは幻のメロンパン!」

「食べたいって言ってたよな?」

「はい! いつも売り切れてて…。良いんですか?」

「ホットサンドを半分食ったお詫びだ」

 ホットサンドを食べる前に持っていたはずなんです。もしかして断られないようにしたんですか? 晃先輩。

「ううう、不甲斐ない」

「なんだ、どうした」

「いえ、良いんです。内省しつつ反省中です」

「よくわからんが、疲れた時には甘いもんだろう」

 生徒会の皆さんは意外と甘党が多いです。

 

 晃先輩は生徒会室でホットサンドを食べた後、すぐに戻って行ってしまいました。

 晃先輩も忙しいですよね。



 今度甘いものでも差し入れしましょうか。



本日(11/23)より私は急に止まれない。の小話を22時から投稿しております。

こちらは不定期となっております。

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