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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第五十六話 これって何ですか?



 次の日から車での登下校となりました。


 今日は遅くなるので朝からカレーを作りました。

 父が帰ってきて温めれば食べられるようにです。


 そういえば最近なかなか夕食を一緒にとる時間がなく、父が拗ねているので何か考えなければいけませんね。

 休日はゆっくり休みたいので遠出は遠慮したいですが。


 車に乗って生徒玄関前につくと、そこに見覚えのある顔を発見しました。

「おはよう、陽向ちゃん」

 確か、風紀委員の………そうそう、速水はやみ君ですね。

「おはよう速水くん。早いですね」

「あ、うん。陽向ちゃんも早いね」

「色々ありまして…」

 速水君も例の卓球に参加していた風紀委員の一人なので、私のことを名前で呼びます。

「隣のクラスだし、途中まで一緒に行こうよ」

「そうですね」

 速水君は真由ちゃんと同じ二組なのです。

 結構会うことが多いのでお話をしたりします。

「そういえば上靴無くなったんだって? 見つかった?」

「それが結局見つからなかったんです、仕方ないので購買で新しいのを買いました。犯人を見つけたら弁償してもらいますよ!」

 もしかしたら焼却炉などにあるのではないかと思って確認してもらったのですが、無かったのでした。

 私の上靴を盗んでどうするんでしょう?

「風紀委員も探してるんだけどね。見つかってないんだ」

「そこまでお手を煩わせるつもりはなかったんですけど。自分で探しますから」

「僕たちの仕事の一環だし。気にしないで」

 人なつっこい顔で微笑んでくれました。

「そういえば卓球部のやつが、陽向ちゃんに入部の意向を聞いておいて欲しいって言ってたよ」

「家の事があるので、部活は無理ですね。生徒会はある程度、希望の時間に帰れるので何とかできてますけど」

 父にばかり家の仕事を押しつける訳にはいきませんし、華さんに頼りすぎるのも良くないと思っています。生徒会には事情を話してあるので、よっぽどのことが無い限りは、当番の日は早い時間に帰れるのです。

 二学期に入ってからは遅い時間が多いので朝に作っておくようになったのですが、そうするとレパートリーに限りがあって、父には申し訳ないことをしているなと思うのです。

 

「生徒会も大変だね。学園祭の後に体育祭だろ? その後に中間テストが待ってるもんなー」

「体育祭は外部の観覧が不可なので、学園祭よりは楽ですよ。風紀委員も同じでしょう?」

「あー。そっか。そうだね」

 そんな話をしながら一年生の階に到着しました。

「あっ、水崎さん」

 一組の生徒が血相を変えて駆け寄ってきました。

「どうしました?」

「それが…」

 速水君と顔を見合わせ後、一組に一緒に行ってみました。


「これは…」

 

 同じ一組の生徒が困ったようにこちらを見ています。

 そこは私の席で。


 教科書などをいれるところに血のように赤い薔薇が詰め込まれていました。

 そして机の上や椅子、その周りに薔薇の花びらが沢山まき散らされていたのでした。


 私が薔薇に手を伸ばそうとした時、速水君に止められて速水君は何処かへ電話をかけていました。

 すぐに風紀委員が数名来て、軍手を履いて薔薇を取り出します。

「ああ、やっぱり」

 速水君が呟いたので、薔薇を見ると棘がついたままだったのです。

 全ての薔薇を風紀委員の生徒が片づけてくれて、ホッとしました。

 何だか恐ろしくて触りたくなかったからです。

「このままだと気持ち悪いだろ? 新しい机持ってくるよ。これ、持ってくね」

 机と椅子を持って速水君が備品庫に行ってしまいました。

「水崎さん、大丈夫?」

「え、ええ。ありがとう。大丈夫です」

 実は二学期に入ってすぐに席替えがあったので、この薔薇が私宛とは限らないと思っていました。

 私の席は丁度真ん中です。

 以前は誰がいた場所だったでしょう。

 思いだそうとしていると、机があった場所に名刺サイズのカードが落ちているのが目に入りました。

 速水君が机を持った時にでも落ちたのでしょうか。


“水崎陽向さんへ 愛を込めて”


 裏には大きな文字で“あ”と書いてありました。


 何の意味でしょう?


 周りにみせたり生徒会の皆さんに見せましたが、さすがに“あ”だけではわかりませんよね。



 そしてそれは次の日、さらに次の日と続いたのです。



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