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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第五十一話 慰労会二日目です。


 

 夜更かしをしたのに朝早く目が覚める時ってありませんか?


 三人の中で一番早く起きてしまい、朝風呂と洒落込んでみました。

 うん、さわやかな朝です。

 小鳥の声が耳に染み入ります。


 身支度を整える時にショールが目に入り、昨夜の事を思い出しました。

 独りにならないということは分かっていましたが、いつもと違う場所ということで私も浮かれていたのでしょうか?

 

 今日会ったら何を言いましょう。

 

 そんなことをつらつら考えていると二人が起きてきました。

「「おはよう、陽向」」

「おはよう」

 

 朝食は別館の食堂でバイキングです。


 離れで朝食を取ることも可能らしいですが、ここはやはり皆さんとわいわい食べたいですよね。

 

 バイキングですよ、バイキング。


 目の前でオムレツを焼いてくれる人がいました。

 目玉焼きも注文してから目の前で焼いてくれるそうです。

 

 えーと。


 うん。

 普通に食べましょう。

 鮭と温泉卵お味噌汁、ほうれん草のお浸し。

「陽向、オムレツ食べないの? 美味しいよ」

「うっ」

「バゲットあったけど、食べる?」

「ううっ」

「チーズ乗せて焼いてくれるって」

 誘惑に負けました。

 でも温野菜はきっちり取りますよ。

「陽向はサラダに何もかけないんだね」

「うん。そのまま食べる派」

 ドレッシングが嫌いなわけではありませんが、そのまま食べると甘みとか苦みとかがダイレクトに舌にきて楽しいのです。

 シンプルがゆえに野菜の味が分かってしまいます。

 こだわっていると聞きましたが、確かに美味しい野菜ばかりでした。

 

 オムレツを頼んでいた一人の生徒がケチャップでクマの絵を描いたりして盛り上がり、他の生徒も絵を描こうとしていました。その日はいつもよりオムレツが出たそうです。それぞれ責任をもって食べてもらいましたよ? もちろん。


 お昼は麓のお蕎麦屋さんへ行きました。

 有名なお蕎麦屋さんらしく、並んでいる人が沢山いましたが、私たちは予約していたので二階の大部屋での食事を時間通りに取ることができました。

 今まで特に好きではなかったのですが、蕎麦への見方が変わりました。とても美味しかったです。

 父と華さんにも食べてもらいたかったので、宅配便で送ることにしました。

 冷凍で送られるそうなので帰ったら四人で食べましょう。


 お土産は何にしようかな…と考えている時に。

 そういえば携帯を丸一日見ていないことに気づきました。

 電源を切っていたような気もします。

 鞄から取り出して電源を入れた後、メールをチェックすると五十件。留守番電話に二十件。

 全部父からでした。


「龍矢さん」

「どうした陽向」

「龍矢さんに電話きました?」

「華と学から来てたが。大丈夫だと言って……」

 黙って携帯のメール着信を見せると龍矢さんは無言になりました。

「……陽向」

「電話してきます」

 その前にと留守電を聞いてみました。


『陽向? 陽向ちゃーん。何で電話にでてくれないの』

『もしもし? 陽向。今何してるの?』

『陽向ー。パパは寂しい』

『ぐすっ、嫌いになっちゃった?』


 後は聞かずに全部消去です。


 メールも似たり寄ったりで、ため息しか出てきません。


 バスに戻って父に連絡を入れました。


「もしもし?」

『陽向? 陽向ー』

「どこのストーカーですか! まだ一日ですよ…」

『だって今まで丸一日連絡が取れなかったことなんてないよ』

「電源切ってました…龍矢さんに連絡がつくんだから良いじゃないですか」

『陽向の声が聞きたいの!』

「はいはい。もう聞きましたよね。それじゃ」

『あっひな…』


 電源を再び切って、鞄に入れました。


 こんなんじゃ修学旅行が思いやられますよ。本当に。


 中学生の時はそうでもなかったのに、最近特に心配性ですね。拍車がかかってます。


 三十分後に電源を入れると、メールが五件来ていました。



 華さんに電話をかけて、何とかしてもらうことにします。



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