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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第五話 これほどの人見知りはみたことがありませんでした。

 次の日。


 約束通りに飯塚さんと従姉妹さんと学食へ向かいました。

 高等部の学食は学食と呼ぶのが相応しくないくらい凄いところでした。

 お弁当禁止なので一部を除き、高等部のほぼ全生徒が来るのです。

 ですから、ものすごい広さでテーブルや椅子が半端ない数ありました。

 もはやレストランです。

 レジで生徒手帳に付いているバーコードを読み取るとチャージされた金額から引かれるそうです。

 私はオムライスを頼んで次の場所でトレーを受け取ると、空いていた四人掛けのテーブルに着きました。

 私の向かい側には飯塚さんと従姉妹さんです。

 昨今黒髪のストレートを腰のあたりまで伸ばしている人をなかなか見ません。

 前髪を綺麗にそろえているのでお人形さんのようです。

 従姉妹さんは人見知りということでしたが、ここまでの人見知りは見たことがありませんでした。



 何しろ歩いている間中、飯塚さんの後ろに隠れているのです。



 飯塚さんのブレザーの袖をギュッと握ったまま斜め後ろでこちらを見ていました。

 歩きづらそうでしたが、慣れているのか何も言いません。

「ええと、あの。水崎陽向(みなさき ひなた)です。よろしくお願いします」

 私がそういうと、コクンと頷いたあと何かを(ささや)きました。

 …聞こえません。

「怖くないよ、ぼくのお友達だから。さぁ」

 椅子に座ってからようやく聞こえる声で名前を言ってくれました。

「いい…づか……ま…ゆ…です」

「マユちゃんですね。よろしくお願いします」

「ん、真由は名前で呼ぶの? ぼくの事も名前で呼んでよ。飯塚さんじゃなくてさ。ね、陽向」

 まぁ、どちらも飯塚さんですからその方がいいですね。

「わかりまし…ええとわかった。真琴ちゃん?」

「真琴って呼び捨てでいいよ。今日の放課後は暇?」

「あー、今日はご飯当番で無理かも」

「陽向がご飯作るんだ?」

「うん」

「そっか。分かった。それじゃ…うーん。明日は? 学校休みだけど、カフェ開いてるし」

 飯塚さんはお二人とも寮生活です。

 全校生徒が寮というわけではありませんが、良家子女の一部は寮生活らしいです。

 セキュリティーがなんたらと悟さん(そうです、担任の)が教えてくれましたが、きちんと聞いていなかったので、詳しいことは分かりません。

「うん、学校のカフェなら大丈夫だとおもう」

「……そんなに厳しいの?」

「厳しいというか心配性なの」

「それは大変そうだね」

 真琴が苦笑いしてパスタを口に運んでいます。

 スプーンを使わずに綺麗に食べれる人を久しぶりにみました。

 隣で真由ちゃんは静かにお粥を食べています。そんなメニューもあるんだと感心していると、真由ちゃんと目が合いました。

 さっとそらされたので、ちょっと傷つきましたが私より重度の人見知りです。仕方ありません。

「お粥もメニューにあるんですね?」

 と真由ちゃんに声をかけてみました。

 黙ってコクンと頷きます。



「は……の……から…………なの」



 …ほぼ聞こえませんでした。


「一番最後の方だから、気づかれないんだよね?真由」

 真由ちゃんはコクンとまた頷いて、静かに食事を続けます。中等部のメニューも同じだそうです。

 と言うことは中等部にもこんな学食が別にあるんですね…。

 隣のテーブルに三年生のグループが来たので、真由ちゃんがビクッと固まりました。

「ここは学年毎に席が決められたりしてないのね」

 私が通っていた女子中学校では、暗黙の了解で学年毎に席が決まっていました。

「あぁ、一つを除けばどこでも自由だよ」

「一つ?」

「うん、生徒会のことは聞いてる?」

「生徒会?」

「まぁそのうち耳に入るとは思うけどね。生徒会は色々と優遇されてるんだ。その一つが奥の個室」

「個室あるの!?」

「ほら、派手な女子が固まってるとこ、あの奥に個室があるんだ」

「はぁ。女子が固まっているってことは、生徒会の誰か狙い?」

 そのために固まって座っているのね?と言うところを省いていうと、案の定でした。

「そう。高等部になるとほら婚約とか結婚とかが視野に入って来るからね。熾烈な争いなんじゃないかな? 相手にされているかどうかは別だけど」

 まだ生徒会のメンバーが来ていないのにもかかわらず、待ち伏せですか。

 ストーカー並みですよね。口には出しませんが。

「ある意味あの場所も指定席になるかな? 親衛隊(仮)のね」

「(仮)って」

「公式じゃないし。交流もしてないから」

「へぇ。よく知ってるのね」

「聞かなくても教えてくれる人が沢山いるんだよ」

 苦笑いして真琴は水を飲みました。

「生徒会ってそんなに良いとこの人がいるの?」

 良いとこのという言葉に真琴は笑いました。

「そうだね。良いとこの(・・・・・)人ばかりだよ。陽向も興味ある?」

「面倒事に巻き込まれたくはないかな」

 平和な日常をおくりたいのです。これ以上面倒なのはごめんです。

 チラリと真由ちゃんが私を見ましたが、すぐに下を向いてしまいました。

「そうか、良かった。午後は移動教室だよね。早めに行こうか」

「あ、そうだね」

 トレーごと食器を指定の場所に置いて、私たちは学食を後にしました。

 後ろがなにやら騒がしくなっていましたが、気にすることもなく。

 次の授業に向けて一旦教室へと向かったのでした。




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