第四十三話 降り注ぐ天使の階段side如月静
今日は雲が多かった。
雨が降らなかったのは良かったが、祭りというのは晴れているのが一番良い。
他校の生徒会に挨拶しながら時々空を見上げたりしていた。
一年生の三人を俺の後ろに隠すように並べて、向かい側に一条、東雲、更科と並んでもらう。
生徒会が通るときには頭を軽く下げるように言ってあるから気づかれないと思っていた。
後は納涼祭を無事に終わらせるだけだ。
花時の生徒会に仲の良い友達がいると聞いてはいたが、さすがに抱きついた時は驚いたな。
ハリセンが綺麗に決まるところもみれた。
愉快な気持ちになって笑ったところを花時の会長に見られて少し恥ずかしくなったが、彼女も笑っていたので恥ずかしさは半減する。
水崎が友人に、なにやら説教を始めるらしかったので、先に中へ入ることにして校長に挨拶をお願いしていた時だった。
ホールには開閉式の天窓がある。
開閉式の天窓とは言ってもあかり取りの目的なので普段は閉じられているのだが、今回は祭りということもあって自然のあかりを取り入れようと数カ所が開けられていた。
雲が晴れて。
光が入ってきたことに気づいた時。
それは網膜を焼き付けるがごとく視界に入ってきた。
目が離せない。
誰もが話すことを忘れて息をのみ、彼女たちを見ているのを肌で感じる。
天窓から降り注ぐ光の中に二人は立っていた。
雲の隙間から漏れる光のことを天使の階段というのだと昔、誰かに聞いたことがあったが、キラキラと光が踊っているように見えて俺は瞬きもできずにいた。
光の中を歩いてくる二人はまるで絵画の中にいるようで、まるで物語にでてくる王子と王女。
目を奪われて綺麗だと思う中で胸の奥がざわつく。
そしてしまったと気づいた。
あいつ等の目に入ってしまった。
俺はハッとして辺りを見回すと一条と更科、それから東雲が走っていっていた。
それなら俺は晃を呼びにいこうと踵をかえす。
あいつ等はそれぞれ油断ならない奴らだ。
のんきに構えてはいられない。
他校のやつに取られてはならないんだ。
あいつは俺の……。
俺の…何だ?
俺は首を傾げて考えた。
後輩…だよな。
可愛い後輩だ。
その後輩を守らなくてはならない。
飯塚真琴に目配せすると軽くうなずいたので、その場を頼み、俺は足早に歩きながら携帯で晃を呼び出す。
開かれた扉から空を見上げると再び曇り空になっていた。
何のイタズラだったのか。
スローモーションに見えたあの光景。
電話をしながら外を見ると遠くの方で雲の隙間から光が注いでいるのを見えて。
俺は目を閉じて…あの天使の階段を思い出していた…。
あともう一話で納涼祭が終わります