第三十九話 納涼祭です(4)
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ツンツンと後ろから服を引っ張られたような気がして振り向くと、紺のブレザーを着た男子生徒が立っていました。
「松枝学園生徒会会長、梅園克也」
小声で言ってペコリと頭を下げました。
前髪がやたらと長くて目が隠れてしまっています。
「あ、水崎陽向です」
何となく私も小声で言うと、口元が笑ったのが分かりました。
そして前髪をあげようとしたのです。
「かっちゃんダメ!」
女性の声がして振り向くとツインテールの女子生徒が走り寄ってきていました。
「水崎さん」
梅園会長に呼ばれて、再びそちらを見ると前髪が上げられていて薄茶の瞳と目が合いました。
「はい? 何でしょうか」
ツインテールの女子生徒が唖然とした感じで立ち止まっています。
「まさか…」
ゆっくりと歩いて近づいてきたその子は私をじっとみた後、梅園会長の頭をぺしっと叩いたのでした。
「いてっ」
「危ないじゃない!」
「いや、だって。さっきから見てたら大丈夫そうだったし」
大きな声でツインテールの生徒に怒られて、梅園会長は小さな声で反論しています。
彼女が大きな声で怒ったので、注目が集まってしまいました。
そして一部女子から黄色い悲鳴があがったのでした。
「前髪下げて!」
梅園会長は渋々といったようすで前髪を下げました。あぁ、せっかくすっきりしてたのに。
「陽向ちゃんは、こっちね」
一条先輩にぐいっと引っ張られてホールの端っこにある椅子に座らされました。更科先輩付きで。
「ここから動かないこと! 会長からも言われたからね」
「えー」
「えー、じゃないの」
「私は和香に付いてないと…」
ははははと笑い声が近づいてきます。
「それ、借りてもいいかい?」
近づいてきた里塚先輩が手を差し出しました。
ハリセンのことですよね。
「ううう、お願いします。里塚先輩」
せっかく楽しんでもらおうと思っていたのに申し訳ないです。
「任せて」
ハリセンを受け取った里塚先輩は楽しそうに歩いて行きました。
「何だ、隔離か? 水崎」
「あ、和泉先輩。休憩ですか」
「見回り中だ。ほら」
「あ。ありがとうございます」
オレンジジュースを渡してくれました。
「お前にも」
更科先輩は頷いて小さく頭を下げた後、ラムネを受け取っていました。
「せっかく交流するチャンスなのに、この通りですよ」
「ふん。日頃の行いの結果だな」
「えええ? そんな悪行働いてませんよ」
「お前は…自分が分かっていないだろう」
「分かっていますよ、平凡も平凡の極みです」
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