第三十七話 納涼祭です(2)
「他の高校の子に抱きついたりしないように、今日は納涼祭が終わるまで側にいるからね。ですので、ええと先輩?」
「あぁ、私は里塚七海」
「里塚先輩は、心おきなく納涼祭を楽しんでください」
「そう?」
どうやら里塚先輩が和香のストッパーみたいなので、今日だけでも楽をしてもらいたいです。
「生徒会長に抱きついたりしなかったでしょうね?」
「さすがにそこまでは無理。あの威厳ったらないでしょう。僕はかわいい系が好みだし」
かわいい系だったら抱きついてたんですか?
「それより、真由ちゃん紹介してよー」
「…友達だから紹介はするけど、半径二メートルは近づかないように」
「ええええ」
「守らなかった場合、向こう一ヶ月メールの返事をしないどころか口もききませんよ」
「へこむーーーーっ」
ガックリとその場に膝を付いてうなだれました。
「守れますよね? 和香」
「はっはいいいっ、守らせていただきますっ」
その様子を見ていた里塚先輩は「あっはっはっは」とお腹を抱えて笑いました。
「いや、おもしろい。今日は色々楽しめそうだ」
私の頭を撫でて里塚先輩はホールへと入って行きました。
「さ、私たちも行こう」
「うん」
和香は立ち上がると、先に行こうとした私を引き留めて手を差し出しました。
「久しぶりに陽向をエスコートさせてよ」
「本当に久しぶりだね」
和香の手の上に私の手を乗せます。
「姫。参りましょうか」
「はい若様」
中学生の時はよくこうやって廊下を歩きました。
二人で劇にでも出ているような感じで態と、姫と若と言って話したりしてました、黒歴史です。
でも楽しかったんですよ。
そんな時を思い出して、私たちはホールへと笑いながら入ったのでした。
最後に入ったからでしょうか。
何故かシンとなっていました。