第二十九話 お出かけです
残念ながら晴天です。
てるてる坊主を逆さまに吊したりはさすがにやりたくなかったので、雨乞いでもすれば良かったのでしょうか。
日曜日。
快晴です。
父がウキウキとお弁当を作っています。
二人だけなので、そんなにいりませんよ。
誰に見せるわけでもないのですから、タコさんにしなくて良いですって。
なんで、一部キャラ弁になってるんですか!?
車に荷物を乗せて出発するのですが、どこに乗るかで少し揉めました。
私は助手席の後ろに乗りたかったのです。
だって、どこで誰がみているかわからないのですから。
しかし父は一歩も譲らず、結局私は助手席に乗ることになったのでした。
帽子を被ってきて正解でしたね。
目深に被って、寝たふりしました。
車で二時間ほど行ったところにあるショッピングモールへと着くと、あれだけ約束したのにあっさりと手を繋がれました。
「ちょっ、お父さん」
「はぐれたら困るよ」
いくつの子供ですか?
「ほら日曜日で人がいっぱいだから…ね?」
着いたばかりだというのに疲れます。
まぁ、言っていた通り欲しかったものを買ってもらえたので、ぐっと我慢しました。
さりげなく手を離そうとしても、がっしり捕まれていてダメでしたから。
洋服を選んでいるときに、恋人と間違われたので父だと訂正すると、驚かれたりしました。
すみませんね、平凡な娘で。
だから手を繋ぐのは嫌なのです。
でも、長年の経験で一度繋いだら嫌だと言っても離してもらえないのは分かっています。
「お父さん。私はもう高校生なんですが」
「うん、もちろん知ってるよ」
「あの、普通は高校生にもなると、親と手を繋がないと思うんですが」
「うん、その家庭はその家庭。うちはずっと手を繋ごうね」
ええと。
その笑顔を偶然みた奥様の目がハートになってるので、逃げます。
「あ、ほら陽向。ソフトクリーム打ってる! 食べようか」
ご当地ソフトクリームという幟が立っています。
それぞれ違う味を頼んで、お互いに食べ比べとかしたりして…。
鼻の頭についたクリームを指で取って舐められた時はさすがに慌てました。
視線が痛い。
買った洋服などが入った袋は4つありましたが、三つは父が持ってくれました。
「全部持ってあげたいけど、手が繋げなくなっちゃうから、ごめんね」
そこは全部持って手を離して欲しいのです…。
お弁当は外で食べる気力がありませんでしたので、車の中で食べました。
それでも視線は凄かったです。
そんな中でも美味しかったのは悔しいと思います。
そんな感じで私は家から遠いことで油断していました。
周りの視線から目を背けていたのもあって。
私はあの人がいたことに、まったく気づかなかったのです。
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