第二十八話 親は結構ずるいです
さっそく連絡を取ってみたところ、やはり納涼祭に参加するとのことでした。
お互いに生徒会に入っているので、高校生になってからはまだ会っていませんでした。
楽しみです。
ハリセンのメンテナンスにも力が入るってものです。力が入りすぎて危うく壊しそうになりましたけど。
嬉々としてハリセンの手入れをしていたので、華さんに変な顔されました。
まぁ、ハリセンの出番はまだもう少し先ですから、この辺にしまして。
ここのところ生徒会の活動で忙しかったので、父と会える時間が少なかったなと思い出しました。
父の仕事は色々時間が変わるので、なかなか会えないのです。
家にいても書斎にこもっていることもありますし、まぁその方が大人しくて助かるときもあるのですが、本人に言うと泣きそうなので言えません。
そういうわけで、会える時間があるとベッタリと私に抱きつきます。
どこの恋人ですか?
暑苦しいことこの上ないです。
邪険にすると泣くので、我慢していますよ。
そんな父から珍しくお願いがあると言われました。
イヤな予感再来です。
「えーと、お願いとは?」
「うん。デートしよ?」
うん。
手入れしたハリセンでスパンと叩きました。
こうも早く使うことになるとは思いませんでした。
「お断りします」
「今度の日曜日、予定は無いって言ってたのに」
「お断りします」
「好きなもの買ってあげるから」
「お断りします」
「前みたいに手をつないで歩こうよ」
「オトコわりしますよ!?」
「わらないでっ」
そんな感じで何とかお断りしようとしたのですが、結局のところ泣かれると弱いのです。
何でしょう。
父に懸想している女性たちに見せたいくらいです。
ワンワンと子供みたいに泣くなら怒れもするんですが、さめざめと泣くのです。
「手を繋がなくて良いなら、行きます」
ため息混じりに言うと、満面の笑みで万歳されました。
はぁ。
「陽向もマナには弱いわね」
「仕方ないですよ。華さんだって泣かれると弱いですよね?」
「まぁ、何だかんだ言っても可愛い弟だからね」
二人でため息をついている横で、小躍りしている父。
百年の恋もいっぺんに覚めるのではと思うのです。
動画サイトにアップしてみましょうか。
「どうだろね。恋する乙女は恐ろしいから、子供みたいで可愛いとか言いそう。さらにファンができたら困るんじゃない?」
そうですね、諦めましょう。
お出かけは、なるべく遠くの街へ行くことを約束させました。
近くだと学園の生徒にみられる可能性がありますから。
ふむ。それにしても、ハリセンは良いですね。
今度から、父へのツッコミにも使いますか。